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エピローグ
3 シルクの悲しみ
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一方メリッサ城では……
「父上、葬儀の準備が整いました。」
現在シルクは玉座の前で膝を折って報告する。
そしてその玉座に座るは、つい最近まで病に伏していた王、そうシルクの父だ。
あの日……ローズが亡くなったその日に、父親の体調は突然快方に向かう。
それはズークが王に対してかけていた呪いが、ダークマドウの死によって解除されたからであった。
そして父が回復した今、国政は元の通り父が執り行う事となる。
そんなシルクもまた、城に戻った当初は、ローズを失った悲しみに暮れ、暫くは私室に篭っていたのだが、いつまでもそうしているわけにはいかない。
王子というその立場である自分は、自分の為に死んだ者との約束を果たさなければならない。
それが自分が負う責任であり、義務だ。
その責任感からシルクは何とか自分を持ち直す。
その後、シルクは自ら葬儀の準備を進めていき今に至るのであるが、シルクの報告を受けた王は口を開いた。
「そうか……。ローズが亡くなったのは本当に残念じゃ。しかし、それと同時に生きていてくれたのがお前の方で良かったと余は安心しておる。」
「父上……御言葉ですが、ローズは私より優秀であり父上を慕っておりました。そのローズが亡くなった事をよかったなどと……。」
「わかっておる。しかし、お前は私の跡継ぎであり、ローズは違う。隣国に嫁がせる予定じゃったが、それも今は叶わぬ。残念じゃ。」
その言葉にシルクは深い憤りを感じた。
まるでローズを物として見ているような物言い。
シルクには、それがあの時のダークマドウと被って見えた。
しかし、それ以上は口にしない。
例え父親であっても、相手はこの国の王だ。
自分が何か言える立場でない事はわかっている。
故に、口の中から血が出る程歯を食いしばって耐えてみせたのだが、次に続いた父の言葉までは耐えられなかった。
「そう言えばそうじゃ、お前たちがやっていたオママゴト……いや貴族制度の廃止についてじゃが、あれは本日撤廃する事を発表するつもりじゃ。牢獄に入れていた貴族も元に戻す予定じゃよ。」
!?
その言葉に驚きを隠せないシルク。
自分とローズがやってきたことを「おままごと」と表現し、あまつさえ、それを元に戻すというのだ。
これには流石にシルクも耐えかねてしまった。
「父上!! なぜそのような事を! お考え直し下さい! それではローズが……いやこの国がまた……。」
「何を言っておる!! そもそもお前たちがそんなくだらない事をした結果、このような事態が起きたのではないか! その責については、余も病に伏していたという事もあるから目を瞑っておるのじゃぞ! 恥を知れ!」
シルクの言葉に激怒する王。
これ以上は何を言っても無駄だとわかった。
そして、自分とローズが必死にやってきたことさえ、全て無駄だったと……。
再びシルクは思い知る、自分が如何に無力な存在であるかを……。
「まぁよい。とにかく、これは決定事項じゃ。そろそろ葬儀が始まるじゃろうて、お前も準備をするがよい。」
「……失礼します。」
そしてシルクは王の間から退出すると、茫然自失といった表情で呟く。
「俺は……俺は何て無力なんだ……。教えてくれローズ……。俺は、俺はどうしたらいい……。」
その言葉に答えてくれる者は……もうこの世のどこにもいなかった。
「父上、葬儀の準備が整いました。」
現在シルクは玉座の前で膝を折って報告する。
そしてその玉座に座るは、つい最近まで病に伏していた王、そうシルクの父だ。
あの日……ローズが亡くなったその日に、父親の体調は突然快方に向かう。
それはズークが王に対してかけていた呪いが、ダークマドウの死によって解除されたからであった。
そして父が回復した今、国政は元の通り父が執り行う事となる。
そんなシルクもまた、城に戻った当初は、ローズを失った悲しみに暮れ、暫くは私室に篭っていたのだが、いつまでもそうしているわけにはいかない。
王子というその立場である自分は、自分の為に死んだ者との約束を果たさなければならない。
それが自分が負う責任であり、義務だ。
その責任感からシルクは何とか自分を持ち直す。
その後、シルクは自ら葬儀の準備を進めていき今に至るのであるが、シルクの報告を受けた王は口を開いた。
「そうか……。ローズが亡くなったのは本当に残念じゃ。しかし、それと同時に生きていてくれたのがお前の方で良かったと余は安心しておる。」
「父上……御言葉ですが、ローズは私より優秀であり父上を慕っておりました。そのローズが亡くなった事をよかったなどと……。」
「わかっておる。しかし、お前は私の跡継ぎであり、ローズは違う。隣国に嫁がせる予定じゃったが、それも今は叶わぬ。残念じゃ。」
その言葉にシルクは深い憤りを感じた。
まるでローズを物として見ているような物言い。
シルクには、それがあの時のダークマドウと被って見えた。
しかし、それ以上は口にしない。
例え父親であっても、相手はこの国の王だ。
自分が何か言える立場でない事はわかっている。
故に、口の中から血が出る程歯を食いしばって耐えてみせたのだが、次に続いた父の言葉までは耐えられなかった。
「そう言えばそうじゃ、お前たちがやっていたオママゴト……いや貴族制度の廃止についてじゃが、あれは本日撤廃する事を発表するつもりじゃ。牢獄に入れていた貴族も元に戻す予定じゃよ。」
!?
その言葉に驚きを隠せないシルク。
自分とローズがやってきたことを「おままごと」と表現し、あまつさえ、それを元に戻すというのだ。
これには流石にシルクも耐えかねてしまった。
「父上!! なぜそのような事を! お考え直し下さい! それではローズが……いやこの国がまた……。」
「何を言っておる!! そもそもお前たちがそんなくだらない事をした結果、このような事態が起きたのではないか! その責については、余も病に伏していたという事もあるから目を瞑っておるのじゃぞ! 恥を知れ!」
シルクの言葉に激怒する王。
これ以上は何を言っても無駄だとわかった。
そして、自分とローズが必死にやってきたことさえ、全て無駄だったと……。
再びシルクは思い知る、自分が如何に無力な存在であるかを……。
「まぁよい。とにかく、これは決定事項じゃ。そろそろ葬儀が始まるじゃろうて、お前も準備をするがよい。」
「……失礼します。」
そしてシルクは王の間から退出すると、茫然自失といった表情で呟く。
「俺は……俺は何て無力なんだ……。教えてくれローズ……。俺は、俺はどうしたらいい……。」
その言葉に答えてくれる者は……もうこの世のどこにもいなかった。
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