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第三章

18 思考する化け物

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【フェイル視点】


(くそっ! 遅かったか……だが、今はそっちに気を回している余裕はないな。)


 フェイルの目の前に聳え立つ(そびえたつ)は巨大なドラゴンゾンビ。
 そいつは威圧を込めた咆哮を吠えた以降、動きをみせてはいない。
 普通に考えればそれをチャンスと思うところだが、フェイルは違った。


(こいつ……記憶まで復活しているのか?)

 
 そいつは攻撃こそしてこないものの、先ほどから周囲を何度も見渡し、そして己の姿を見て固まっている。
 その行動から考えられる状況は、復活後の記憶の混濁、そして現状確認といったところか。
 それはつまり、この化け物は生前の記憶を有した状態で復活した可能性が高いという事。

 一応ダークマドウが命令しなければ攻撃してこない、と言った可能性も考えられるがそれはないだろう。
 それならば、ダークマドウが何も言わずこいつから離れる訳がなかったからだ。

 となればやはり最初の推察とおり、こいつは今、高速度で今の状況を把握している。
 とはいえ、どう考えても攻撃するならば今がチャンスなのも変わりなく、もしも勇者の力が使えるならばフェイルは迷わず攻撃しただろう。

 しかしその力を使えない今、攻撃を仕掛けるのは危険すぎる。
 中途半端な攻撃を仕掛ける事でその化け物を刺激し、無差別に暴れられたら目も当てられない。
 少なくとも、カリー達がこの場からもう少し離れるまでは攻撃を控えるべきである。


 そして時は来た。

 
 遂にエンシェントドラゴンゾンビが、その巨大な体を上げて動きだそうとする。
 このままこいつをカリー達の所に行かせるわけにはいかない。
 注意を引くなら未だ。


 そう判断したフェイルは。自分より100倍以上巨大な化け物に向かって駆けだす。
  
 
 俺にこいつがやれるか?
 いや、やれるかやれないかじゃない、やるんだ!
 ならばどうする? 決まっている。
 自分のステータスを信じて叩き斬るだけだ!!


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