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第三章

9 横たわるおっさん

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【カリー視点】


 カリーは龍の巣穴の中を進み続けていくと、遂にその目に人の姿をした者が倒れているのを視認する。
 とはいえまだかなり離れていることから、それがローズであるかどうかまでわからない。
 だが少なくとも岩盤に潰されたりしている様子は見受けられない事から、少しだけ安心した。


「この先の大広間……の中心? なぜこんなところにローズが放置……!?」


 大広間に入った瞬間、カリーは後方にジャンプして元の通路に後退する。
 なぜならば、その広間の地面には今まで見た事が無いほど巨大な魔法陣が敷かれていたからだ。
 それはどう考えても罠の類だと感じ後方に避けるも、足を付けたはずの魔法陣は何も反応を示さない。
 
ーーだが、それよりも残念な事が目に映る……


「くそっ! ローズじゃない!! それに何だよこの魔法陣は!」


 カリーは思わず叫んだ。


 なんと魔法陣の中央に倒れていたのは、最愛のローズではなく、ずんぐりむっくりしたオッサン。
 その男は外傷こそ見受けられないものの、激しい苦悶の表情のまま固まって動かない。

 当然カリーはそこで倒れている男が最低のクズ大臣であるズークと気付いたが、直ぐに魔法陣に飛び込んで助けようとはしない。


 ローズ救出が最優先の状況で、こいつをこの場から連れ出す必要はあるだろうか?
 ローズの事で何か聞ける可能性もあるが、正直生きているかどうかすら怪しい。
 魔法陣が反応しなかったのは、一瞬だけしか触れていないためかもしれないのでリスクが高い。


 カリーは数瞬の間、思考を巡らせると直ぐに決断した。


「こっちの反応がコイツなら、ローズは東に向かっている。こいつに構っている暇はない!」


ーーーそして。カリーはズークを見捨てる事を決めたその時だった……


 突然、ズークの体から黒いモヤが沸き上がってくると、今まで全く反応していなかった魔法陣が光り始める。
 それと同時に洞窟全体がゴゴゴッ……という地響きのような音を立てて揺れ始めた。


「まずい!! やはり罠だったか!」


 この魔法陣が一体なんのかはわからないが、カリーは今の自分がかなり危険な状況である事を察知する。
 そしてそれの感覚はやはり正しく、龍の巣穴は崩れ落ち始めた。

 現在地から東側の一番近い出入口まで、急いでも5分。
 間に合うか間に合わないかはわからないが、カリーは急ぎローズの反応がある東口に向かって駆けだすのであった。
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