上 下
53 / 113
第三章

7 姫、目覚める!

しおりを挟む
【ローズ視点】


「……ん、んん……。はっ!? ここはどこ? 岩? 洞窟?」


 ローズはダークマドウに攫われた後、魔法で眠らされてしまった。
 だがどうやらその効果が切れたようで目を覚ますと、そこに映るのは岩で囲まれた高い天井が見える。
 そして横に振り向く事で見えた岩の上には


――ズーク大臣が座っていた。


「おやおや、お目覚めになりましたかな? ローズ姫。」

「ズーク大臣! これは全てあなたが仕組んだ罠だったのね!?」

「今頃お気づきですか? 安心してください、あなたは私の大切な花嫁になるのですから傷つけたりはしませんよ。」


 興奮するローズをよそに、ズークは何でもない事のように答える。
 しかし、当然それに気づいたローズの怒りはおさまらない。


「……何を言っているのかわかっているのですか!? 直ぐに私を開放しなさい! それと、あなたのようなケダモノと結婚することなどありえないわ!」


 ズークの言葉に強い嫌悪感を覚えたローズは、そう叫ぶと同時に体を動かそうとする……が動かない。


(なんで? 理由はわからないけど、縄で縛られてないのに……。なぜ動かないの!)


「おやおや、無駄ですからおやめなさい、姫……いや、我が妻よ。」

「いいかげんにして! 何度でもいいまずが、私はあなたのような心も体も顔も醜い人と結婚等しません!」

「ふふふ、いいですねぇ~。その顔、その侮辱……。今のそのあなたが私の作った薬で肉奴隷になるのが、楽しみで仕方ありませんぞ……。ぐふふふふ。」


 ズークは気持ち悪い表情でローズを舐めまわすように見る。 
 その薄汚い性欲に塗れた(まみれた)ドロドロとした目で見られるだけで、ローズは寒気を通り越して吐きそうになった。

 すると、突然どこからかズークを呼ぶ声が聞こえてくる。


「随分と楽しそうじゃないか、ズークよ。」

 
 いつからそこにいたのかわからないが……ローズはその声に聞き覚えがある。
 そう、ローズたちの後ろから現れたのは、あの時……カリーが助けに来てくれた時に突然現れて、自分を攫っていった魔族だった。


 その声に気付いたズークは、一瞬で表情を戻すとその場で片膝をついて頭を下げる。


「ははっ!! お見苦しい所をお見せして誠に申し訳ありません。ダークマドウ様。」

「よい、面を上げよ。それよりも例の準備が整った。付いてくるがよい。」

「はっ! ありがたき幸せ! では、姫は私が担いで……。」

「その必要はない。闇の鎖を足の部分だけ解放しよう。これなら歩けるであろう? 娘よ。」


 ダークマドウがそう言うと、ローズの足にあった縛られている感覚が解け、何とか起き上がることができた。


「あなたは一体何なのですか? 何の目的があってこのような事をしているのですか!」

「威勢が良いではないか、小娘よ。私の考えなど、貴様に伝える必要等ない。」


 ダークマドウはそれだけ告げて手を捻ると、ローズは何かに強く引っ張られるようにダークマドウの前に引き寄せられる。

 そしてダークマドウはそつけていた仮面を外しその素顔をローズに見せた。
 

 その素顔を見たローズは恐怖する……。


 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました

結城芙由奈 
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】 私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。 2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます *「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています ※2023年8月 書籍化

冷宮の人形姫

りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。 幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。 ※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。 ※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので) そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。

(完結)私は家政婦だったのですか?(全5話)

青空一夏
恋愛
夫の母親を5年介護していた私に子供はいない。お義母様が亡くなってすぐに夫に告げられた言葉は「わたしには6歳になる子供がいるんだよ。だから離婚してくれ」だった。 ありがちなテーマをさくっと書きたくて、短いお話しにしてみました。 さくっと因果応報物語です。ショートショートの全5話。1話ごとの字数には偏りがあります。3話目が多分1番長いかも。 青空異世界のゆるふわ設定ご都合主義です。現代的表現や現代的感覚、現代的機器など出てくる場合あります。貴族がいるヨーロッパ風の社会ですが、作者独自の世界です。

虐げられた令嬢、ペネロペの場合

キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。 幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。 父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。 まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。 可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。 1話完結のショートショートです。 虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい…… という願望から生まれたお話です。 ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。 R15は念のため。

処理中です...