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第二章
22 ズークの足跡
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「やめろバカ者!! お前のせいではない、断じてお前のせいなどではない!!」
「そうだ。悪いのは全て私だ。許してくれとは言わない。だが、その責任と贖罪は必ず私がする。」
自傷行為を繰り返すウォリアをゼンが羽交い絞めにして抑えると、シルクは両手でウォリアの顔を挟んで目を見て言った。
ゼンに押さえつけられながらも、力の限り暴れて続けるウォリア。
しかしその目に映るシルクの眼を見て落ち着きを取り戻すと、力が抜け落ちたようにその場にへたれこんだ。
「違うだろ。悪いのはズークだ。あんたじゃない。」
「いや、これも全て私の考えが浅く、そしてズークの罠に嵌ってしまった私の責任だ。」
カリーの言葉に申し訳なさそうに返すシルク。
「そうか。まぁ俺には関係のない事だったな。それよりもフェイル。ダークマドウの向かった方角が分かったかもしれない。」
「本当か?」
「あぁ、人が走っていった痕跡が見える。多分、そのズークってクズ野郎のものだ。ズークとダークマドウは繋がっているはず、それなら今頃合流しているかもしれない。」
カリーは倒れている者を確認しながらも、周囲の状況を念入りに観察していた。
一見しただけではわかりづらいが、カリーは草葉の損傷から足跡を辿る事が出来る。
これもレンジャーの時に鍛えた経験の賜物であった。
「よくやった、カリー。じゃあ馬に乗って追うぞ。シルク王子、あなたにはついて来てもらう。悪いが時間がないから直ぐに追うぞ。」
「当然です。ゼン、すまないがウォリアを頼む。それと亡くなった仲間の体を集めておいてくれ。ローズを助けた後、彼らをしっかりと家族の下に返し、そして丁重に弔いたい。」
「はっ! し、しかし……。」
ゼンは迷っていた。
シルクが言う事は最もだし、自分がいなくとも勇者パーティがいれば自分といるより安全かもしれない。
とはいえ、勇者とてずっとシルクの護衛はできないだろう。
何があった時に、やはり身を挺してシルクを守れるのは自分だけ……。
どうすればいいのか、続く言葉に窮したゼンであったが、その時突然地面に突っ伏していたウォリアが立ち上がった。
「私なら問題ございませぬ! 隊長! あなたは王子を守って下さい。逝った仲間の為にも、王子を守りきってください。そして、ここにいる倒れた仲間達は……私が責任をもって対応します。」
「大丈夫なのかウォリア? お前はそれでいいのか?」
「本当は私の手でズークを八つ裂きにしてやりたいです……が、それよりも殺してしまった仲間の……」
「わかった。それ以上言わなくていい。お前の気持ちは私が受け取った。王子は必ず守る。だから……頼んだぞ、ウォリア!」
ゼンがそう言うと、ウォリアは大きくうなずく。
そしてフェイル達は馬に跨ると、カリーを先頭に再び進み始めるのであった。
「そうだ。悪いのは全て私だ。許してくれとは言わない。だが、その責任と贖罪は必ず私がする。」
自傷行為を繰り返すウォリアをゼンが羽交い絞めにして抑えると、シルクは両手でウォリアの顔を挟んで目を見て言った。
ゼンに押さえつけられながらも、力の限り暴れて続けるウォリア。
しかしその目に映るシルクの眼を見て落ち着きを取り戻すと、力が抜け落ちたようにその場にへたれこんだ。
「違うだろ。悪いのはズークだ。あんたじゃない。」
「いや、これも全て私の考えが浅く、そしてズークの罠に嵌ってしまった私の責任だ。」
カリーの言葉に申し訳なさそうに返すシルク。
「そうか。まぁ俺には関係のない事だったな。それよりもフェイル。ダークマドウの向かった方角が分かったかもしれない。」
「本当か?」
「あぁ、人が走っていった痕跡が見える。多分、そのズークってクズ野郎のものだ。ズークとダークマドウは繋がっているはず、それなら今頃合流しているかもしれない。」
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「当然です。ゼン、すまないがウォリアを頼む。それと亡くなった仲間の体を集めておいてくれ。ローズを助けた後、彼らをしっかりと家族の下に返し、そして丁重に弔いたい。」
「はっ! し、しかし……。」
ゼンは迷っていた。
シルクが言う事は最もだし、自分がいなくとも勇者パーティがいれば自分といるより安全かもしれない。
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「わかった。それ以上言わなくていい。お前の気持ちは私が受け取った。王子は必ず守る。だから……頼んだぞ、ウォリア!」
ゼンがそう言うと、ウォリアは大きくうなずく。
そしてフェイル達は馬に跨ると、カリーを先頭に再び進み始めるのであった。
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