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第二章

19 大賢者バンバーラ

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「やめろ! 今はそんな事をやってる場合じゃないだろ。それに今回ミスったのは俺だ。悪かったカリー。奴を取り逃したのは俺なんだ。そのせいで姫様が攫われてしまった。だけど今はそんな事を言ってる場合じゃない、直ぐに助けに行くぞ。奴はどっちに向かったんだ?」


 カリーはその言葉に弱弱しくもダークマドウが逃げた方角を指し示した。


「あっちだ、フェイル。情けねぇ……やっぱり俺は昔とちっとも変わっちゃいねぇ! 成長してねぇ!! 冷静にならなければいけなかったのに……俺は……俺はぁぁぁぁぁぁ!!」


 あまりの悔しさから、カリーは地面に両手を打ち付ける。
 その姿を見てシルクの頭も冷えていった。
 そして自分の事を棚に上げて、その怒りをカリーにぶつけてしまった自分を恥じる。


「さっきは悪かった。何も出来なかったのは俺も同じだ。いや、同じじゃない……俺の方が……」

「そこまでだ、二人とも。後悔も反省も後にしろ。今は姫様を助けに行くのが先だ。それでも……まだそうやって女々しくやってるなら好きにすればいい。そんな奴は置いていく。」


 フェイルからの厳しい言葉に、二人とも顔を上げるて叫んだ。


「行く! 行くに決まってんだろ! 今度こそ、必ずローズは俺が助ける!」

「私もだ! 何も出来ないままでなんていられるか!」

「よし、わかった。ならさっさと行くぞ。バーラ、走りながらカリーを回復できるか? というか、カリーは走れるのか?」


 カリーの損傷は激しい。
 普通に見れば歩くこともできない状況だった。
 しかしカリーは気合で体を起こすと、直ぐに走り出そうとする。


「走れる……走れるに決まってるだろ! こんな怪我痛くもなんともねぇ!」


 そんな状態で走れるはずがない。
 誰の目にもそれが強がりであることがわかる。
 それを見たバンバーラは回復魔法を唱えた。


「【ハイヒーリング】そういう痩せ我慢が後で仲間の足を引っ張るのよ。こんな魔法、走りながらかけるまでもないわ。」


 賢者になったバンバーラの詠唱速度は早かった。
 バンバーラが勇者の加護で得た力は

 【高速詠唱、高速発動】

 バンバーラのレベルであれば、最上位の回復魔法であるエクスヒーリングでもなければ直ぐに魔法を発動できる。
 それによりカリーの顔色が土気色から赤みを帯びていった。
 完全回復とは言わないが、走れるくらいには回復する。


「流石だ、バーラ。よし、急ぐぞ! 今度こそ、姫様を俺たちが助けるんだ!」


 こうしてカリー達は再びダークマドウを追うため、隠しアジトを後にするのであった。
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