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第二章

13 臆病な幹部

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 一方、フェイル達は……


「バーラ、奴の動きを止めてくれ。それに合わせて俺が一撃で仕留める。」

「わかったわ! ブリザック!!」


 フェイルとバンバーラはダークマドウに気付かれぬように背後から近づいていくと、バンバーラが最上級氷魔法をダークマドウの足に向けて放つ。

 それと同時にフェイルが一気に接近した。


「うおぉぉぉぉぉ!!!」


 バンバーラの放った魔法が、何らかの結界に阻まれ足止めが失敗する。
 それでもフェイルはそのままつっ込んでいったが、ダークマドウはそれに気づいて宙に逃げるとフェイルの斬撃が空を斬る。


「何っ!? なぜ勇者がここにいる!! どうしてだ! いつ気づいた!?」


 不意打ちが失敗したにもかかわらず、ダークマドウは焦っていた。
 後少しで作戦が成功するところで、一番危惧していた勇者が突然現れたからである。

 以前ダークマドウは、勇者の一撃により瀕死の重傷を負った事があった。
 それ以来、勇者にはどうあがいても敵わないと判断し、敵わないなら極力近づかないように決めている。
 そして、もしも遭遇した場合の逃げる対策も何重にもを講じていた。

 今回、勇者の一撃を躱すことができたのはまさにそれのおかげである。
 あの日以来、ダークマドウは常に魔法のバリア(一度攻撃を食らうと消滅する)を張っており、もしもそれが壊れた場合は自動で宙に逃げれるアイテムを忍ばせていたのだ。

 だが、それでもいざ勇者を前にしたダークマドウは完全に動揺……否、ビビりまくっている事に変わりはない。
 ダークマドウの頭の中は、とにかくここから逃げないといけないという思いで一杯だった。


 しかし、それを許す勇者ではない。


「バーラ追撃だ。奴のバリアは切れている。魔法で奴を撃ち落とせ!!」

「わかったわ! 【ギガナゾン】」


 フェイルの言葉に咄嗟に爆裂魔法を放つバンバーラ。
 今回は動揺していたのもあり、ダークマドウはそれを直撃して地面に落下した。


「ぐわぁぁぁ!! くそ……はやく……早く逃げねば!! はっ!! そうだ! あれがあった! あれだ、あれがあれば勇者も……。」

「くだばれぇぇぇ!!」


 フェイルはダークマドウが落下した地点に飛び降りると、袈裟斬りでダークマドウをぶった斬る!

 体の中央から半分が分断されるダークマドウ。


「やったぞ!! 奴を倒し……!? いない! 奴がいないぞ! どこだ? どこに消えた!?」


 真っ二つに斬り裂いたはずの敵が、フェイルの前で急に消えた。
 この事に驚いたフェイルは、瞬時に周囲を見渡す。


ーーすると、少し離れた建物の上から声が聞こえた。


「ふふふ……ここですよ。勇者さん。こんなこともあろうかと、変わり身の玉を用意していたのです。今あなたが切ったのは偽物。それでは、また! できれば追わないでくださると助かります。」

「しまった! くそっ! 追うぞ! バーラ!」

「はいっ!!」


 追撃に失敗した事を知り、焦りの表情を浮かべるフェイル。
 しかし直ぐに気持ちを切り替えると、奴を追い始めるのだった。



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