15 / 113
第一章
15 闇の躍動
しおりを挟む
【とある元貴族の館】
「くそっ!! 忌々しい奴らめ……どこまでワシの計画を邪魔すれば気がすむんじゃ!」
バスローブに身を包んだ男は、手にしているワイングラスを床に投げつけた。
「ふん。まぁよい。ワシにはあの方がおる。あの方の言う事さえ聞いてれば……ワシが……このワシが国を牛耳ることになろうぞ。遂にワシが王になる時がくるのだ!! わっはっは。」
男が高笑いをしていると、突然部屋の扉が開く。
その時に気付いた男は、気持ちよくなっている所を邪魔された事で怒りをあらわにしながら誰何した。
「何者か!?」
「ほう。随分上機嫌じゃないか? 怒ったり喜んだり、人族とは忙しいものよ。」
その部屋に現れたのは、漆黒のローブに身を包んだ一見して不審な男。
普通に考えれば刺客等を疑うものであるが、この部屋にいる貴族はその声を聞いた瞬間に安堵する。
なぜならば、先ほど独り言で呟いていた相手こそがその怪しげな男であったからだ。
「こ、これはお見苦しい所をお見せしてしまいました。」
元貴族の男はこの国で王族を抜かせば一番の権力者であり、王族以外に頭を下げる事はない。
しかし今彼は、王相手以上に深々と頭を下げている。
それだけ、目の前の怪しげな男に忠誠を誓っていたからだ。
「よい。それよりも……例の準備は滞りないか?」
「ははっ! 抜かりはございません。既にルートの確保とスケジュール調整……万事うまくいっております。」
「ふむ。ならよい。それと勇者の動向は掴めたか?」
元貴族の男はその質問を前に初めて固まる。
勇者の動向を探ることは最優先事項と言われているにもかかわらず、いまだにその足取りが不明だからだ。
いくつか情報自体は上がってはいるが、どれも信憑性が高くない。
そんな中途半端な情報を提供し、もしも間違っていた場合には自分がどうなるかわかったものではない……故に黙る事しかできなかった。
「……沈黙か。いいだろう、お前が精力的に調べて回っているのは知っておる。故に許す。些細な情報でもよい。間違っていても構わぬ。話せ。その情報は私の方で精査しよう。」
その言葉に歓喜の表情を浮かべて、頭を上げる元貴族。
「ありがたき御言葉! それではいくつか届いている情報についてお話させていただきます。」
「ふむ。」
………………。
「そうか。どれも可能性としては低そうだが、一応我がシモベ達に確認させよう。それでは明日お前が成功することを期待する。」
「ははっ!! 全力でやり遂げさせて頂きます!」
その言葉を聞いた瞬間、謎の男はその場から姿を消すのであった。
「くそっ!! 忌々しい奴らめ……どこまでワシの計画を邪魔すれば気がすむんじゃ!」
バスローブに身を包んだ男は、手にしているワイングラスを床に投げつけた。
「ふん。まぁよい。ワシにはあの方がおる。あの方の言う事さえ聞いてれば……ワシが……このワシが国を牛耳ることになろうぞ。遂にワシが王になる時がくるのだ!! わっはっは。」
男が高笑いをしていると、突然部屋の扉が開く。
その時に気付いた男は、気持ちよくなっている所を邪魔された事で怒りをあらわにしながら誰何した。
「何者か!?」
「ほう。随分上機嫌じゃないか? 怒ったり喜んだり、人族とは忙しいものよ。」
その部屋に現れたのは、漆黒のローブに身を包んだ一見して不審な男。
普通に考えれば刺客等を疑うものであるが、この部屋にいる貴族はその声を聞いた瞬間に安堵する。
なぜならば、先ほど独り言で呟いていた相手こそがその怪しげな男であったからだ。
「こ、これはお見苦しい所をお見せしてしまいました。」
元貴族の男はこの国で王族を抜かせば一番の権力者であり、王族以外に頭を下げる事はない。
しかし今彼は、王相手以上に深々と頭を下げている。
それだけ、目の前の怪しげな男に忠誠を誓っていたからだ。
「よい。それよりも……例の準備は滞りないか?」
「ははっ! 抜かりはございません。既にルートの確保とスケジュール調整……万事うまくいっております。」
「ふむ。ならよい。それと勇者の動向は掴めたか?」
元貴族の男はその質問を前に初めて固まる。
勇者の動向を探ることは最優先事項と言われているにもかかわらず、いまだにその足取りが不明だからだ。
いくつか情報自体は上がってはいるが、どれも信憑性が高くない。
そんな中途半端な情報を提供し、もしも間違っていた場合には自分がどうなるかわかったものではない……故に黙る事しかできなかった。
「……沈黙か。いいだろう、お前が精力的に調べて回っているのは知っておる。故に許す。些細な情報でもよい。間違っていても構わぬ。話せ。その情報は私の方で精査しよう。」
その言葉に歓喜の表情を浮かべて、頭を上げる元貴族。
「ありがたき御言葉! それではいくつか届いている情報についてお話させていただきます。」
「ふむ。」
………………。
「そうか。どれも可能性としては低そうだが、一応我がシモベ達に確認させよう。それでは明日お前が成功することを期待する。」
「ははっ!! 全力でやり遂げさせて頂きます!」
その言葉を聞いた瞬間、謎の男はその場から姿を消すのであった。
0
お気に入りに追加
67
あなたにおすすめの小説
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
美しい姉と痩せこけた妹
サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
【完結】実家に捨てられた私は侯爵邸に拾われ、使用人としてのんびりとスローライフを満喫しています〜なお、実家はどんどん崩壊しているようです〜
よどら文鳥
恋愛
フィアラの父は、再婚してから新たな妻と子供だけの生活を望んでいたため、フィアラは邪魔者だった。
フィアラは毎日毎日、家事だけではなく父の仕事までも強制的にやらされる毎日である。
だがフィアラが十四歳になったとある日、長く奴隷生活を続けていたデジョレーン子爵邸から抹消される運命になる。
侯爵がフィアラを除名したうえで専属使用人として雇いたいという申し出があったからだ。
金銭面で余裕のないデジョレーン子爵にとってはこのうえない案件であったため、フィアラはゴミのように捨てられた。
父の発言では『侯爵一家は非常に悪名高く、さらに過酷な日々になるだろう』と宣言していたため、フィアラは不安なまま侯爵邸へ向かう。
だが侯爵邸で待っていたのは過酷な毎日ではなくむしろ……。
いっぽう、フィアラのいなくなった子爵邸では大金が入ってきて全員が大喜び。
さっそくこの大金を手にして新たな使用人を雇う。
お金にも困らずのびのびとした生活ができるかと思っていたのだが、現実は……。
悪役令嬢の残した毒が回る時
水月 潮
恋愛
その日、一人の公爵令嬢が処刑された。
処刑されたのはエレオノール・ブロワ公爵令嬢。
彼女はシモン王太子殿下の婚約者だ。
エレオノールの処刑後、様々なものが動き出す。
※設定は緩いです。物語として見て下さい
※ストーリー上、処刑が出てくるので苦手な方は閲覧注意
(血飛沫や身体切断などの残虐な描写は一切なしです)
※ストーリーの矛盾点が発生するかもしれませんが、多めに見て下さい
*HOTランキング4位(2021.9.13)
読んで下さった方ありがとうございます(*´ ˘ `*)♡
冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる