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第一章 

6 フェイルとカリー

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 ローズ姫がカリーの家に泊まった日の翌朝

「じゃあ気を付けて帰れよ。こんな狭い家だけど、城が嫌になったらいつでも泊まりに来ていいぜ。お前一人くらいの面倒なら見れるからな。」

「えぇ? それってプロポーズ??」

「ば、ばか! んな事は言ってねぇよ!」

「そうよ。こんな愚弟にローズ姫は勿体ないわ。」

「もう、おねぇ様! 姫はやめてください。ローズでいいです。でもいいなぁ……昨日は本当に楽しかったです。また来てもいいですか?」

「もちろんよ。ローズ姫……ローズちゃんなら大歓迎よ。これからも弟をよろしくね。」

「はい! もちろんです。それではありがとうございました! クロちゃんもまたね!」

「にゃ~。」


 ローズはカリー達に挨拶すると、その足で城の正門に向かう。帰る時はいつも抜け道ではなく正々堂々と帰るらしいが……それって意味あるのか? とカリーは思う。


「さて、俺もギルドに行ってくっかな。いい討伐クエストがあるといいんだけど。」

「あら、今日は私もギルドに行く予定があるのよ。じゃあ久しぶりにおねぇちゃんと一緒に行く?」

「やだよ! 姉さんと一緒に行くと面倒だし!」

「んもう! 生意気な弟にはこうしてやるんだから!」

「ちょ! まじでやめて、まじで痛いから、それ!」


 バンバーラはカリーを抱き寄せると、頭を拳でぐりぐりした。


「わかったわかったって。行くよ、一緒に行くからやめてくれよ。」

「よろしい! じゃあやめてあげるわ。あ、そうだ。討伐クエスト行くなら、フェイルさんと一緒に行きなさいよ。ここら辺の地理案内位にはあんたも役に立つはずだわ。」

「はぁぁぁ? 姉さん俺を舐めすぎだろ? 冒険者ギルドの中で、もう俺より強い奴なんていないんだぜ。フェイルって奴にだって負けねぇよ。」

「カリーが強くなってるのは知ってるわ。それでもあの人は別格よ。よし、決めた! ギルド行ったらお願いしてくるわ!」

「ちょ! ふざけんな、俺は絶対あいつと一緒にクエストなんかいかねぇからな!」

「何よ!? 姉さんの命の恩人なのよ? 失礼な事を言ったら、ただじゃおかないからね。」

「だったら紹介すんなよ!」


 そうカリーは文句を言いながらも、二人で冒険者ギルドに向かう。
 そしてカリーにとって運が悪い事に、冒険者ギルドの扉の前にフェイルはいた。


「おはようございますフェイルさん。」

 
 フェイルを見つけたバンバーラは早速声を掛ける。しかし、その横にいるカリーはしかめっ面で挨拶はしない。


「おはよう、バンバーラさん。弟君もおはよう。」

「…………。」

「ほら! ちゃんと挨拶しなさい!!」


 フェイルに挨拶をされてもカリーは返さなかった。
 それを見て、直ぐにバンバーラは叱り、なんとかカリーは頭だけの会釈する。


「カリー!!」

「いやいや、そのくらいの時はそんなもんだよ。それより、バンバーラさんは今日は何を?」

「今日はちょっとギルドマスターに話しがあるのです。フェイルさんは?」

「あぁ。俺はちょっとこの付近の魔物で異変がないか調査するつもりだよ。俺に何か用があるのかい?」

「えぇ。もしよければ、その調査にカリーを連れて行ってあげてください。この子はここらへんの地理に詳しいですから。」

「はぁ?? なんで、俺があいつと……。」

「それは助かる。弟君、お願いできるかな?」

「……わかったよ。」


 カリーの悪い態度にも、決して態度を変えないフェイル。
 そしてフェイルの澄んだ瞳で見つめられると、なぜかカリーは断る事ができなかった。

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