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第一章 

1 勇者フェイル

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 フェイルが16歳の誕生日……


 その日フェイルは、突然天空より舞い降りた神から蒼き光を授かると、勇者の力を手にする。


 神は言った。

 その蒼き力で世界を魔の手から救えと。


 フェイルはその力を手にすると同時に、現在の世界の状況が記憶に送り込まれる。


 魔物に襲われ、滅亡した国。
 魔物に親を食われ、その親を探し求めて餓死した幼子。


 世界はあまりに残酷だった。
  
 そしてそれを知ったフェイルは立ち上がる。ここにフェイルの冒険は始まった。
 

 一方、フェイルの家族は、フェイルが勇者となった事を単純に喜びあった。

 フェイルを抱きしめる父と母。
 輝く羨望の眼差しで見つめる幼き兄弟達。

 
ーーしかし、その喜びは長くは続かない。


 それから数日も経たない内に、フェイルの母国はモンスターの大群に襲われた。


 勇者の誕生を察知した魔王は、その危険性を危惧すると、人が到底抗えない程のモンスターの大軍をその国に差し向ける。

 そして次々と襲い掛かってくる凶悪な魔物達。

 その数は膨大であり、抗う事叶わぬ国民達は次々と殺され、多くの村が焼き尽くされていった。
 

 そんな中、フェイルは若干16歳でありながらも、国を守る為に兵士を率いて戦い続け、多くの犠牲を払いつつも、ギリギリのところで国を持ちこたえさせた。


 だがしかし、ある時を境に戦況が一変する。

 それは後の魔王四天王と呼ばれる魔王軍幹部の参戦だった。

 そして激しい戦いの中、フェイルがそいつとの戦いで負けた事により、戦況は一気に劣勢に傾く。


 勇者と言えど、フェイルはまだ成長しきれていない。魔王軍幹部に勝つにはレベルも経験も足りな過ぎた。


 故に王は人類の未来を守る為、魔法でフェイルを遠い地に飛ばすことに決める。

 国が滅んだとしても、フェイルさえ生きていれば、人類に未来はある。
 16歳というまだ年若き者一人に背負わせるには重すぎる責任。

 それでも人類の存亡をフェイルに託し、まだ傷の癒えぬフェイルを他国に魔法で飛ばすのであった。


 そしてその日、フェイルの母国はその世界から消えた……。


【フェイルの母国が滅亡してから4年後】


 あれからフェイルは旅を続けながら、行く先々の国で魔王軍と戦い続けてきた。

 しかし、フェイルのいる戦場は常に激戦であり、新たに仲間が加わっても守り切る事は出来ず、必ず最後には一人となってしまう。

 その度にフェイルは絶望したが、勇者の血はそんな彼を戦場に立たせ続ける。

 自分が傷つくのはいい。
 だが、これ以上仲間を失いたくない。

 次第にフェイルの心は擦り切れていった。
 そしてフェイルは覚悟を決める。


 もう二度と仲間は作らない……と。

 
 そんなフェイルであるが、次に向かった国は、美しい姫と聡明な王子がいると噂の

 【メリッサ国】

 そこは屈強な戦士や魔法使いが多く、唯一魔王軍に勇者なしで対抗できている国の一つだ。

 だからこそ、人類にとってそこが落とされる訳にはいかない。
 故にフェイルはその国を目指す。


 ……そしてそこでフェイルは出会った。

 生涯共に歩み続ける運命の者達に。


 それは後の世に、伝説の勇者パーティと呼ばれる仲間達との出会いだった。
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