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第四部 サムスピジャポン編

117 ウロボロス覚醒

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 俺はシロマと共にゲロゲロに飛び乗ると、そのまま上空へと舞い上がる。

 そして上空から卑弥呼がいた場所に目を向けると、そこはまるで黒い暴風が集まって竜巻のようなものが出来上がっていた。

 あの黒い暴風は、間違いなく生命力を吸い取る危険なもの。

 いくら卑弥呼の呪いがあるといっても、完全に防げる訳ではないため、無策でそこに飛び込むのは危険だ。

 しかしそうは言っても、このままここで指を咥えて見ている訳にもいかない。

 卑弥呼は既にあの竜巻の中心に取り込まれている。

 助けるならば、行動をしなくては……。


「シロマ、どう思う? あの中に卑弥呼はいると思うんだけど。」

「はい。それは間違いないでしょう。しかし、やはり今あそこに飛び込むのは危険すぎます。」


 シロマは俺と同じように不安そうな目で、その先に見える竜巻を見ている。


「わかってる。俺だって自分やシロマの命を危険に晒す気はないさ。だけど、このままじゃ卑弥呼が……。」


 吹き荒れる暴風の中、俺はどうすればいいか判断がつかないでいた。
 普段ならこういう時は、他の仲間と相談して最善の道を模索しながら行動をしている。

 しかしながら今ここには、シロマと俺とゲロゲロしかいない。
 当然シロマの知識は何よりも頼りになるが、決断の負担をシロマにだけ負わせるわけにはいかなかった。


「サクセスさん、ディメンションアローなら穴を開けられるかもしれません。やってみますか?」

「確かにそれも一つの手か。その穴に俺が飛び込めば……」

「それは危険すぎます! 私はあくまで中の様子が少しでもわかればと思っただけです。もしサクセスさんが飛び込むつもりなら私は撃てません。」


 クソっ! シロマの作戦は悪くはない。
 だけど、確かに中に入って俺に何ができるかもわからない状況だ。
 どうすればいいんだ……。


 結局どうする事もできないまま、俺達はその光景を見守る事しかできなかった。

 すると、辺りに吹き荒れていた漆黒の暴風が弱くなっていく。


「シロマ! もしかして今なら……。」

「はい、少し近づいてみましょう。何かわかるかもしれません。その上でやれる事を考えましょう。」


 シロマが俺の意見に同意すると、ゲロゲロはウロボロスに近づいていった。


ーーだが……


「う、嘘だろ……あれって……。」

「そんな……」


 渦巻く竜巻が消えた後、その場に現れたのは……


ーーー巨大な卑弥呼の顔だった。


 流石にそれを見た俺達は声を失う。

 まさかこれは想定していなかった。

 巨大な卑弥呼の顔に、大量に生えている龍の頭。

 なんと髪の毛一本一本が黒龍の頭になっていたのだった。


「わじぃぃぃをぉぉぉ! だおぜぇぇ! だおずのじゃ!」


 卑弥呼の声が辺り一面に広がっていく。

 どうやらウロボロスは卑弥呼を取り込んだ事で完全体になったようだ。

 しかし、未だに卑弥呼の意識は残っているらしい。

 どうする?

 どうすればいい?

 助けられるのか?

 あの状態になって本当に助けられるのか?


 俺はどうすればいいかわからなくなった。

 完全に絶望といってもいい。


 その時、地上では三つの人影がその完全体となったウロボロスに接近するのが見えた。


 カリー、イモコ……そしてセイメイだ。


 あの姿を見て尚、カリー達はウロボロスを倒しに行ってしまったのである。


「やめろ……やめてくれ! やめてくれよ!! カリー! 卑弥呼!!」


 俺は必死に叫ぶも、その声はカリー達には届いていない。


 すると、卑弥呼の髪……いや龍の頭達がカリー達に襲い掛かっていった。

 その様子を見る限り、頭に生えている龍たちは卑弥呼の意思とは関係なく動いているように見える。

 無数の龍がカリー達に向けて突撃をしたり、ブレスを吐いて攻撃をしている。

 それをカリーとイモコはギリギリ避けながら反撃をし、少しづつだがウロボロスに近づいていった。


「シロマ! どうすればいい? 俺はどうすればいいんだ? このままじゃカリー達が!」

「降りましょうサクセスさん! まずはカリーさん達を守るのが優先です。どうすればいいかは、その後です。」


 シロマは気丈な姿で俺に伝えてくれた。

 それに比べて俺は、頭がパンクしそうになってただ動揺しているだけ。

 だが、その言葉を聞いた事により、とりあえず俺にもやるべき事が見えてきた。


「わかった。ゲロゲロ! 降下してくれ! カリー達を助けるぞ!」

「ゲロ!(わかった!)」


 ゲロゲロは即座に地上へと急降下する。

 こうして俺達は遂に完全体となったウロボロスと戦う事になった。

 この先待ち構えている未来は、救いか……絶望か……それはまだ誰にもわからない。
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