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第四部 サムスピジャポン編
90 恐怖のマグマ将軍 後編①
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「カリー!! 攻撃を続けるでがんす!」
嫌な予感を感じたシルクは、カリーにそう叫びながらその場から離れる。
「任せろ!」
カリーはシルクの叫びに応えると、再度数十本の聖なる矢を今も白く燃え続けているマグマ将軍に放った。
ーーーだがしかし、刺さらない。
見れば、マグマ将軍の体がどんどん大きくなっていき、その身に纏う聖なる炎も小さくなっている。
「カリー殿! シルク殿! すまないでござる!」
するとそこに遅れてイモコが到着した。
「あぁ、あれはなんだ? ホーリーアローが効かないぞ。」
「わからないでがんす! でもヤバイ予感をビンビン感じるでがす。」
気付けばマグマ将軍の体は10メートル程の大きさになっており、その成長は未だ止まらず大きくなり続けている。
当然カリー達もそれをただ見ているわけではなく、全員で一斉に攻撃を続けている。
しかし巨大化し続けるマグマ将軍に、ダメージを与えている手応えを感じられない。
やがてマグマ将軍を包む聖なる炎は全てかき消え、そして遂にその姿を現した。
それはいわゆる
ケンタウロス
と呼ばれる馬と人が合体した魔獣のような姿。
しかし目の前のソレは、ケンタウロスが可愛く見える程悍ましい。
なんとマグマ将軍の全身には、人の顔と思われるものが無数に浮かび上がっていたのだ。
苦しみに歪んでいる顔。
憎悪に塗れた顔
絶望に表情を失った顔
まるで兵士型の魔獣達の怨念がその身に宿ったかのような、その姿。
それを見た三人は、全員が背筋に冷たいものを感じた。
「まずいでがんす! 撤退するでがんす!」
三人の中で一番最初に口を開いたのはシルクだった。
マグマ将軍が完全体になる前、カリー達がいくら攻撃しても、それがダメージを負った様子を全く感じなかった。
それ故に、今の三人では目の前のアレと戦う事が難しいと悟る。
だからこそ一度撤退しようと決めたのであるが、次の瞬間、盾を持つシルクの腕が消し飛ばされてしまった。
「ぐぁぁぁぁ!!」
悶絶するような痛みに顔を歪めるシルク。
そしてその前には、大剣を振った後のマグマ将軍がこっちを見ている。
一体何が起きたのか、余りの速さに攻撃を受けたシルク以外は理解できない。
そう。シルクは知っていた。
マグマ将軍が目にも止まらぬ速さで、その大剣を振り抜いていた事を。
シルクはマグマ将軍の腕が動いたのを目にした瞬間、咄嗟に盾を構えた
……にも関わらず、マグマ将軍は盾ごとシルクの腕を消し飛ばしたのだ。
その大剣の一振りで。
「シルクゥゥ! 撤退だ、イモコ!」
カリーはシルクの腕が斬り飛ばされた次の瞬間には、シルクを抱きかかえて逃げる体勢を取った。
だがマグマ将軍がそれを許さない。
「ジネェェェェェェェ!」
マグマ将軍は怨嗟の咆哮と同時に、カリーの周りに黒い雨を降らせた。
それはただ雨ではない。
あまりの数に雨の様に見えたが、それは魔術師型が放っていたブラックアメーバだった。
しかもご丁寧な事に、そのアメーバ一つ一つにも人の顔がついており、悍ましさが増している。
「クソ! これじゃ逃げられねぇ!」
カリーはシルクを抱えながら、上空から落ちてくるブラックアメーバを薙ぎ払いながら叫んだ。
カリー達は、完全に動きが封じられてしまっており、今攻撃されたら無事に避ける術はない。
正に隙だらけの状態である。
……にもかかわらず、マグマ将軍はさっきのように大剣を振り払ってこなかった。
それはまるで恨みを晴らすため、簡単に殺すまいと、ジワジワと甚振っているようにすら感じる。
絶対絶命のその状況。
どう考えても、この状況が好転する事はない。
しかしイモコとカリーの目は死んでいなかった。
なぜなら二人は知っている。
この絶望とも呼べる状況を、いとも容易く跳ね飛ばしてくれる存在を。
そして信じている。
その者が目の前の化け物を必ず倒してくれると。
「大丈夫でござる! 某達には……」
イモコがそう口にした瞬間、黒い雨が降る上空に光が見え、そして声が聞こえる。
「「助けにきたぞ!」」
カリー達はその声を聞き、頭上から舞い降りる一つの蒼い光を仰ぎ見る。
その声の主こそ、二人が信じていた男……
ーーーサクセスだ!!
【ディバインチャージ】
その光は、マグマ将軍の頭上から落下すると、巨大な体を一刀両断する。
「あれは……フェイル様の……いや、威力がそれとは桁違いでがんす。」
その蒼き光の一撃をみて、シルクは過去に一緒に旅をしてきた勇者フェイルを思い出した。
だが今見た技の大きさと威力は、当時自分が目にした技と比べても強大過ぎた。
その事に痛みも忘れて困惑していると、マグマ将軍の最後の叫びが聞こえてくる。
「グワォォォォ! ナァァジェェェダァァ! オドレェェェェェ!」
マグマ将軍はその断末魔と同時に塵へと変わり、そして降り注いでいたブラックアメーバ達も消滅した。
嫌な予感を感じたシルクは、カリーにそう叫びながらその場から離れる。
「任せろ!」
カリーはシルクの叫びに応えると、再度数十本の聖なる矢を今も白く燃え続けているマグマ将軍に放った。
ーーーだがしかし、刺さらない。
見れば、マグマ将軍の体がどんどん大きくなっていき、その身に纏う聖なる炎も小さくなっている。
「カリー殿! シルク殿! すまないでござる!」
するとそこに遅れてイモコが到着した。
「あぁ、あれはなんだ? ホーリーアローが効かないぞ。」
「わからないでがんす! でもヤバイ予感をビンビン感じるでがす。」
気付けばマグマ将軍の体は10メートル程の大きさになっており、その成長は未だ止まらず大きくなり続けている。
当然カリー達もそれをただ見ているわけではなく、全員で一斉に攻撃を続けている。
しかし巨大化し続けるマグマ将軍に、ダメージを与えている手応えを感じられない。
やがてマグマ将軍を包む聖なる炎は全てかき消え、そして遂にその姿を現した。
それはいわゆる
ケンタウロス
と呼ばれる馬と人が合体した魔獣のような姿。
しかし目の前のソレは、ケンタウロスが可愛く見える程悍ましい。
なんとマグマ将軍の全身には、人の顔と思われるものが無数に浮かび上がっていたのだ。
苦しみに歪んでいる顔。
憎悪に塗れた顔
絶望に表情を失った顔
まるで兵士型の魔獣達の怨念がその身に宿ったかのような、その姿。
それを見た三人は、全員が背筋に冷たいものを感じた。
「まずいでがんす! 撤退するでがんす!」
三人の中で一番最初に口を開いたのはシルクだった。
マグマ将軍が完全体になる前、カリー達がいくら攻撃しても、それがダメージを負った様子を全く感じなかった。
それ故に、今の三人では目の前のアレと戦う事が難しいと悟る。
だからこそ一度撤退しようと決めたのであるが、次の瞬間、盾を持つシルクの腕が消し飛ばされてしまった。
「ぐぁぁぁぁ!!」
悶絶するような痛みに顔を歪めるシルク。
そしてその前には、大剣を振った後のマグマ将軍がこっちを見ている。
一体何が起きたのか、余りの速さに攻撃を受けたシルク以外は理解できない。
そう。シルクは知っていた。
マグマ将軍が目にも止まらぬ速さで、その大剣を振り抜いていた事を。
シルクはマグマ将軍の腕が動いたのを目にした瞬間、咄嗟に盾を構えた
……にも関わらず、マグマ将軍は盾ごとシルクの腕を消し飛ばしたのだ。
その大剣の一振りで。
「シルクゥゥ! 撤退だ、イモコ!」
カリーはシルクの腕が斬り飛ばされた次の瞬間には、シルクを抱きかかえて逃げる体勢を取った。
だがマグマ将軍がそれを許さない。
「ジネェェェェェェェ!」
マグマ将軍は怨嗟の咆哮と同時に、カリーの周りに黒い雨を降らせた。
それはただ雨ではない。
あまりの数に雨の様に見えたが、それは魔術師型が放っていたブラックアメーバだった。
しかもご丁寧な事に、そのアメーバ一つ一つにも人の顔がついており、悍ましさが増している。
「クソ! これじゃ逃げられねぇ!」
カリーはシルクを抱えながら、上空から落ちてくるブラックアメーバを薙ぎ払いながら叫んだ。
カリー達は、完全に動きが封じられてしまっており、今攻撃されたら無事に避ける術はない。
正に隙だらけの状態である。
……にもかかわらず、マグマ将軍はさっきのように大剣を振り払ってこなかった。
それはまるで恨みを晴らすため、簡単に殺すまいと、ジワジワと甚振っているようにすら感じる。
絶対絶命のその状況。
どう考えても、この状況が好転する事はない。
しかしイモコとカリーの目は死んでいなかった。
なぜなら二人は知っている。
この絶望とも呼べる状況を、いとも容易く跳ね飛ばしてくれる存在を。
そして信じている。
その者が目の前の化け物を必ず倒してくれると。
「大丈夫でござる! 某達には……」
イモコがそう口にした瞬間、黒い雨が降る上空に光が見え、そして声が聞こえる。
「「助けにきたぞ!」」
カリー達はその声を聞き、頭上から舞い降りる一つの蒼い光を仰ぎ見る。
その声の主こそ、二人が信じていた男……
ーーーサクセスだ!!
【ディバインチャージ】
その光は、マグマ将軍の頭上から落下すると、巨大な体を一刀両断する。
「あれは……フェイル様の……いや、威力がそれとは桁違いでがんす。」
その蒼き光の一撃をみて、シルクは過去に一緒に旅をしてきた勇者フェイルを思い出した。
だが今見た技の大きさと威力は、当時自分が目にした技と比べても強大過ぎた。
その事に痛みも忘れて困惑していると、マグマ将軍の最後の叫びが聞こえてくる。
「グワォォォォ! ナァァジェェェダァァ! オドレェェェェェ!」
マグマ将軍はその断末魔と同時に塵へと変わり、そして降り注いでいたブラックアメーバ達も消滅した。
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