338 / 397
第四部 サムスピジャポン編
88 恐怖のマグマ将軍 前編
しおりを挟む
その姿……一言で表すならば
【憤怒の巨人】
カリーは改めて近くでマグマ将軍を見た……否、見上げた時にそう感じた。
遠目からはわからなかったが、その巨人の顔はまるで人間と同じものであり、その表情は激しい怒りに歪んでいる。
何に対してそれほどまで怒りを感じているのか……
俺達が仲間の兵士達を倒したからなのか?
否、あれはきっとそういうものじゃない。
魔獣として生まれた時から、きっとその表情だったはずだ。
実際にそうなのかはわからないが、多分間違いないだろう。
少なくともカリーはそう確信する。
「シルク、動けるか?」
「問題ないでがんす。しかし、以前よりこいつ……速いでがんす。」
「みたいだな。それにあっちもやっかいそうだ。」
カリーがそう言った瞬間、上空から黒い球が飛来してくる。
それに直ぐに気付いたカリーは当然のようにそれを躱すのだが、地面に直撃した球を見てギョッとした。
地面に付着した黒い何かは、そのまま溶けたスライムの様に蠢いて地面を溶かしていたからだ。
そしてその球を放った方を見やると、既にそこに向かってイモコは走りだしていた。
現在俺達が相対しているのは、マグマ将軍だけではない。
杖を持った魔導士風の魔獣、大剣を担いだ騎兵を合わせて三体だ。
その二体はマグマ将軍程ではないが、さっきまで戦っていた人型の魔獣よりも一回り大きい。
つまりは、マグマ将軍の側近といえる存在なのだろう。
前回シルクが戦った時は、そんな魔獣はいなかった。
であれば、やはりウロボロスから出る瘴気の影響で新しく生まれた存在かもしれない。
イモコは素早く、その魔術師型の魔獣に接近し斬撃を浴びせようとしたのだが、その瞬間、空気を断ち切るような金属音がするとイモコの刀が弾かれた。
「やるでござるな!」
なんと、いつの間にかイモコと魔術師型の間に騎兵魔獣が現れ、その刀を大剣で弾き返したのである。
実はイモコは騎兵型が接近しているのに気づいていた上に、更にそれが割り込んでくることも想定内だった。
故に、騎兵型の剣ごと叩き折って攻撃するつもりで刀を振っていたのである。
それが予想外に敵の刀を折るどころか、弾かれた衝撃でイモコ自身が後退したのは完全に想定外だった。
そして更に予想外な事が起きる。
なんと魔術師型の魔獣が、騎兵魔獣の馬に飛び乗ったのだ。
これにより、イモコは直接魔術師型を攻撃することが難しくなり、更に騎兵型を相手にしながら、魔術師型の遠距離攻撃も捌かなければならない状況になる。
「やっかいでござるな!」
そう言いながら、上空より飛来する黒い球をよけ続けるイモコ。
そしてそれによって体勢が少しでも崩れると、騎兵型が一撃を入れてくる。
イモコはその攻撃を刀で捌きつつ、カウンターの一撃を加えようとするも、騎兵型は攻撃した瞬間に後退をする、
いわゆるヒットバック戦法
を使っており、中々掴ませてくれない。
それでもイモコには光速剣等の超高速スキルもあるので、捕まえようと思えばできるかとも思うが、実際には難しかった。
義経のようなローラーブレイドさえあれば、左右自在に超高速で移動できるかもしれないが、イモコにそれはない。
イモコの技は、あくまでその力の使い方を応用しているに過ぎず、平面的な超高速移動は難しかったのだ。
それでも騎兵型が単調に前後に逃げるだけだったならば、対応は可能だったかもしれないが、残念ながら騎兵型の動きは単純でも単調でも無い。
騎兵型は円を描くような動きで移動をしたかと思えば、反復横跳びのように左右交互に移動したりと、とても馬ができる移動ではないような動きでイモコを翻弄していた。
だがイモコは知っている。
どんな動きであっても、それはあくまで点が集合した線の動きに過ぎないと。
つまり、敵の動きを追う必要はない。
敵の攻撃をただジッと待ち、自分の攻撃範囲の点に来た時に刀を振るえばいい。
それができれば、確実に動きを止められるのだ。そう、それができれば……だが。
今回、イモコはその作戦をとる事はできない。
なぜならば、腐食性の球がさっきからひっきりなしにイモコに飛んでくるからだ。
しかもその球は飛ばされながらも若干形を変えたりして動いている。
そう。なんと飛んでくる球は、その形が変化するのだ。
それを見たイモコは、その魔法の正体に気づく。
それは……生物魔法と呼ばれる陰陽師の魔法だ。
魔術師型は、ブラックアメーバと呼ばれる腐食魔獣を召喚し、それを飛ばしている。
故に、紙一重で避けたところで、ブラックアメーバは形を変えてイモコに付着してくるだろうし、そうなればジワジワと体を溶かされてしまう。
だが、かといって避け続ければ問題無いという訳でもない。
当然召喚魔獣であれば、地面に着弾して、「はい、さよなら」と消えるわけもなく、しばらくの間は消える事なく地面で蠢き続ける。
それはまるで地雷のように、イモコの行動を制限した。
つまり今イモコが相対している二体の魔獣は、イモコにとって最も相性の悪い相手である。
【憤怒の巨人】
カリーは改めて近くでマグマ将軍を見た……否、見上げた時にそう感じた。
遠目からはわからなかったが、その巨人の顔はまるで人間と同じものであり、その表情は激しい怒りに歪んでいる。
何に対してそれほどまで怒りを感じているのか……
俺達が仲間の兵士達を倒したからなのか?
否、あれはきっとそういうものじゃない。
魔獣として生まれた時から、きっとその表情だったはずだ。
実際にそうなのかはわからないが、多分間違いないだろう。
少なくともカリーはそう確信する。
「シルク、動けるか?」
「問題ないでがんす。しかし、以前よりこいつ……速いでがんす。」
「みたいだな。それにあっちもやっかいそうだ。」
カリーがそう言った瞬間、上空から黒い球が飛来してくる。
それに直ぐに気付いたカリーは当然のようにそれを躱すのだが、地面に直撃した球を見てギョッとした。
地面に付着した黒い何かは、そのまま溶けたスライムの様に蠢いて地面を溶かしていたからだ。
そしてその球を放った方を見やると、既にそこに向かってイモコは走りだしていた。
現在俺達が相対しているのは、マグマ将軍だけではない。
杖を持った魔導士風の魔獣、大剣を担いだ騎兵を合わせて三体だ。
その二体はマグマ将軍程ではないが、さっきまで戦っていた人型の魔獣よりも一回り大きい。
つまりは、マグマ将軍の側近といえる存在なのだろう。
前回シルクが戦った時は、そんな魔獣はいなかった。
であれば、やはりウロボロスから出る瘴気の影響で新しく生まれた存在かもしれない。
イモコは素早く、その魔術師型の魔獣に接近し斬撃を浴びせようとしたのだが、その瞬間、空気を断ち切るような金属音がするとイモコの刀が弾かれた。
「やるでござるな!」
なんと、いつの間にかイモコと魔術師型の間に騎兵魔獣が現れ、その刀を大剣で弾き返したのである。
実はイモコは騎兵型が接近しているのに気づいていた上に、更にそれが割り込んでくることも想定内だった。
故に、騎兵型の剣ごと叩き折って攻撃するつもりで刀を振っていたのである。
それが予想外に敵の刀を折るどころか、弾かれた衝撃でイモコ自身が後退したのは完全に想定外だった。
そして更に予想外な事が起きる。
なんと魔術師型の魔獣が、騎兵魔獣の馬に飛び乗ったのだ。
これにより、イモコは直接魔術師型を攻撃することが難しくなり、更に騎兵型を相手にしながら、魔術師型の遠距離攻撃も捌かなければならない状況になる。
「やっかいでござるな!」
そう言いながら、上空より飛来する黒い球をよけ続けるイモコ。
そしてそれによって体勢が少しでも崩れると、騎兵型が一撃を入れてくる。
イモコはその攻撃を刀で捌きつつ、カウンターの一撃を加えようとするも、騎兵型は攻撃した瞬間に後退をする、
いわゆるヒットバック戦法
を使っており、中々掴ませてくれない。
それでもイモコには光速剣等の超高速スキルもあるので、捕まえようと思えばできるかとも思うが、実際には難しかった。
義経のようなローラーブレイドさえあれば、左右自在に超高速で移動できるかもしれないが、イモコにそれはない。
イモコの技は、あくまでその力の使い方を応用しているに過ぎず、平面的な超高速移動は難しかったのだ。
それでも騎兵型が単調に前後に逃げるだけだったならば、対応は可能だったかもしれないが、残念ながら騎兵型の動きは単純でも単調でも無い。
騎兵型は円を描くような動きで移動をしたかと思えば、反復横跳びのように左右交互に移動したりと、とても馬ができる移動ではないような動きでイモコを翻弄していた。
だがイモコは知っている。
どんな動きであっても、それはあくまで点が集合した線の動きに過ぎないと。
つまり、敵の動きを追う必要はない。
敵の攻撃をただジッと待ち、自分の攻撃範囲の点に来た時に刀を振るえばいい。
それができれば、確実に動きを止められるのだ。そう、それができれば……だが。
今回、イモコはその作戦をとる事はできない。
なぜならば、腐食性の球がさっきからひっきりなしにイモコに飛んでくるからだ。
しかもその球は飛ばされながらも若干形を変えたりして動いている。
そう。なんと飛んでくる球は、その形が変化するのだ。
それを見たイモコは、その魔法の正体に気づく。
それは……生物魔法と呼ばれる陰陽師の魔法だ。
魔術師型は、ブラックアメーバと呼ばれる腐食魔獣を召喚し、それを飛ばしている。
故に、紙一重で避けたところで、ブラックアメーバは形を変えてイモコに付着してくるだろうし、そうなればジワジワと体を溶かされてしまう。
だが、かといって避け続ければ問題無いという訳でもない。
当然召喚魔獣であれば、地面に着弾して、「はい、さよなら」と消えるわけもなく、しばらくの間は消える事なく地面で蠢き続ける。
それはまるで地雷のように、イモコの行動を制限した。
つまり今イモコが相対している二体の魔獣は、イモコにとって最も相性の悪い相手である。
0
お気に入りに追加
290
あなたにおすすめの小説
クラス転移したひきこもり、僕だけシステムがゲームと同じなんですが・・・ログアウトしたら地球に帰れるみたいです
こたろう文庫
ファンタジー
学校をズル休みしてオンラインゲームをプレイするクオンこと斉藤悠人は、登校していなかったのにも関わらずクラス転移させられた。
異世界に来たはずなのに、ステータス画面はさっきやっていたゲームそのもので…。
さようなら、家族の皆さま~不要だと捨てられた妻は、精霊王の愛し子でした~
みなと
ファンタジー
目が覚めた私は、ぼんやりする頭で考えた。
生まれた息子は乳母と義母、父親である夫には懐いている。私のことは、無関心。むしろ馬鹿にする対象でしかない。
夫は、私の実家の資産にしか興味は無い。
なら、私は何に興味を持てばいいのかしら。
きっと、私が生きているのが邪魔な人がいるんでしょうね。
お生憎様、死んでやるつもりなんてないの。
やっと、私は『私』をやり直せる。
死の淵から舞い戻った私は、遅ればせながら『自分』をやり直して楽しく生きていきましょう。
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
田舎貴族の学園無双~普通にしてるだけなのに、次々と慕われることに~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
田舎貴族であるユウマ-バルムンクは、十五歳を迎え王都にある貴族学校に通うことになった。
最強の師匠達に鍛えられ、田舎から出てきた彼は知らない。
自分の力が、王都にいる同世代の中で抜きん出ていることを。
そして、その価値観がずれているということも。
これは自分にとって普通の行動をしているのに、いつの間にかモテモテになったり、次々と降りかかる問題を平和?的に解決していく少年の学園無双物語である。
※ 極端なざまぁや寝取られはなしてす。
基本ほのぼのやラブコメ、時に戦闘などをします。
続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜
ぽん
ファンタジー
⭐︎書籍化決定⭐︎
『拾ってたものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜』
第2巻:2024年5月20日(月)に各書店に発送されます。
書籍化される[106話]まで引き下げレンタル版と差し替えさせて頂きます。
第1巻:2023年12月〜
改稿を入れて読みやすくなっております。
是非♪
==================
1人ぼっちだった相沢庵は小さな子狼に気に入られ、共に異世界に送られた。
絶対神リュオンが求めたのは2人で自由に生きる事。
前作でダークエルフの脅威に触れた世界は各地で起こっている不可解な事に憂慮し始めた。
そんな中、異世界にて様々な出会いをし家族を得たイオリはリュオンの願い通り自由に生きていく。
まだ、読んでらっしゃらない方は先に『拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜』をご覧下さい。
前作に続き、のんびりと投稿してまいります。
気長なお付き合いを願います。
よろしくお願いします。
※念の為R15にしています。
※誤字脱字が存在する可能性か高いです。
苦笑いで許して下さい。
幼女からスタートした侯爵令嬢は騎士団参謀に溺愛される~神獣は私を選んだようです~
桜もふ
恋愛
家族を事故で亡くしたルルナ・エメルロ侯爵令嬢は男爵家である叔父家族に引き取られたが、何をするにも平手打ちやムチ打ち、物を投げつけられる暴力・暴言の【虐待】だ。衣服も与えて貰えず、食事は食べ残しの少ないスープと一欠片のパンだけだった。私の味方はお兄様の従魔であった女神様の眷属の【マロン】だけだが、そのマロンは私の従魔に。
そして5歳になり、スキル鑑定でゴミ以下のスキルだと判断された私は王宮の広間で大勢の貴族連中に笑われ罵倒の嵐の中、男爵家の叔父夫婦に【侯爵家】を乗っ取られ私は、縁切りされ平民へと堕とされた。
頭空っぽアホ第2王子には婚約破棄された挙句に、国王に【無一文】で国外追放を命じられ、放り出された後、頭を打った衝撃で前世(地球)の記憶が蘇り【賢者】【草集め】【特殊想像生成】のスキルを使い国境を目指すが、ある日たどり着いた街で、優しい人達に出会い。ギルマスの養女になり、私が3人組に誘拐された時に神獣のスオウに再開することに! そして、今日も周りのみんなから溺愛されながら、日銭を稼ぐ為に頑張ります!
エメルロ一族には重大な秘密があり……。
そして、隣国の騎士団参謀(元ローバル国の第1王子)との甘々な恋愛は至福のひとときなのです。ギルマス(パパ)に邪魔されながら楽しい日々を過ごします。
異世界二度目のおっさん、どう考えても高校生勇者より強い
八神 凪
ファンタジー
旧題:久しぶりに異世界召喚に巻き込まれたおっさんの俺は、どう考えても一緒に召喚された勇者候補よりも強い
【第二回ファンタジーカップ大賞 編集部賞受賞! 書籍化します!】
高柳 陸はどこにでもいるサラリーマン。
満員電車に揺られて上司にどやされ、取引先には愛想笑い。
彼女も居ないごく普通の男である。
そんな彼が定時で帰宅しているある日、どこかの飲み屋で一杯飲むかと考えていた。
繁華街へ繰り出す陸。
まだ時間が早いので学生が賑わっているなと懐かしさに目を細めている時、それは起きた。
陸の前を歩いていた男女の高校生の足元に紫色の魔法陣が出現した。
まずい、と思ったが少し足が入っていた陸は魔法陣に吸い込まれるように引きずられていく。
魔法陣の中心で困惑する男女の高校生と陸。そして眼鏡をかけた女子高生が中心へ近づいた瞬間、目の前が真っ白に包まれる。
次に目が覚めた時、男女の高校生と眼鏡の女子高生、そして陸の目の前には中世のお姫様のような恰好をした女性が両手を組んで声を上げる。
「異世界の勇者様、どうかこの国を助けてください」と。
困惑する高校生に自分はこの国の姫でここが剣と魔法の世界であること、魔王と呼ばれる存在が世界を闇に包もうとしていて隣国がそれに乗じて我が国に攻めてこようとしていると説明をする。
元の世界に戻る方法は魔王を倒すしかないといい、高校生二人は渋々了承。
なにがなんだか分からない眼鏡の女子高生と陸を見た姫はにこやかに口を開く。
『あなた達はなんですか? 自分が召喚したのは二人だけなのに』
そう言い放つと城から追い出そうとする姫。
そこで男女の高校生は残った女生徒は幼馴染だと言い、自分と一緒に行こうと提案。
残された陸は慣れた感じで城を出て行くことに決めた。
「さて、久しぶりの異世界だが……前と違う世界みたいだな」
陸はしがないただのサラリーマン。
しかしその実態は過去に異世界へ旅立ったことのある経歴を持つ男だった。
今度も魔王がいるのかとため息を吐きながら、陸は以前手に入れた力を駆使し異世界へと足を踏み出す――
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる