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第四部 サムスピジャポン編

40 イザナミの祠

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 皮肥城を出て三日。

 現在俺の目の前には、大きく赤い鳥居が見える。

 そしてそれを潜った先には、人が一人入れるような岩で造られた洞穴があった。

 ここがイザナミの祠であることは間違いなさそうであるが、一応俺はセイメイに確認する。


「セイメイ。ここであってるか?」

「はい。地図と場所が一致しておりますし、外観も書物に記載されていた通りでございます。」


 どうやら間違いないらしい。

 
 地図の位置と違うかもしれないと聞いていたが、杞憂に終わったようだ。
 
 とりあえず目的地に辿り着いた事で、俺はホッとする。

 その後、全員で馬車を降りて鳥居に近づいたのだが、ふと俺は隣にいるイモコを見ると、心無しかイモコの足が震えて見えた。


 イモコにしては珍しいな。


「イモコ、大丈夫か? 足が震えてるぞ?」

「だ、大丈夫でござるよ。これは武者震いでござる。」

 
 イモコはそう言うが、足だけでなく、声も若干震えている。

 どうやら試練を前に、緊張しているようだ。


「あのなぁ、気負うなって言っても無理かもしれないけどさ、肩の力抜こうぜ。」


 俺はそう言って、イモコの肩を両手で揉む。


 そしてイモコは深く深呼吸をすると、震えがおさまったようだ。


 だがしかし、それがいけなかった。

 ここでイモコがまさかの行動に出る。


「かたじけないでござる。では、行くでござるよ!」


 イモコはそう言うと、一人で鳥居を潜り始めた。


 精神を落ち着けて覚悟を決めたイモコは、その勢いのまま進んでしまったのである。


「お、おい。ちょっと待てって! イモコ!!」


 突然の行動に焦った俺は、直ぐにイモコを引き留めようとするが、イモコはその鳥居を潜った瞬間……


ーー俺達の目の前から消えてしまった……。



「まじかよ? どういうことだ?」


 俺はその現象に驚いてセイメイに確認するも、セイメイは首を横に振る。


「申し訳ございません。このような事は書物には記載されておりませんでした。ですので、お気を付けください。私どもは慎重に進みましょう。」


 セイメイは険しい顔をしている。

 確かにこんな訳の分からない事が起きたならば、油断は禁物だ。

 様子見のつもりが、とんだトラップがあったもんだよ。


 そして俺達はイモコを追うため、慎重に一人づづゆっくりと鳥居を潜るが……


「あれ? あれれ? みんな、俺の事見える?」

「はい、見えますよ。サクセスさん。」


 どうやらみんなには俺が見えているらしい。

 俺はイモコと同じように鳥居を潜ったのだが、特に何の変化もなく前に進めた。


 どういうことだ?


 不思議に思いつつも、安全を確認した俺はみんなを呼ぶ。


「とりあえずみんなも来てくれ。」


 俺の声に応じた仲間達は、ゆっくりと鳥居を潜っていく。

 しかし、誰一人消えることは無い。

 普通に祠の前に辿り着いてしまった。


「みんな無事か? 何か変わった事はないか?」


「はい。特に異常はありません。」

「俺も平気だぜ、サクセス。」

「俺っちも何ともないでがす。」


 どうやら全員問題はないようだ。

 しかし、それであればイモコはどこに行ってしまったのだろう?

 
 俺がそんな疑問を浮かべていると、シルクが口を開く。


「多分、イモコは試練の間に飛んだでがんすね。あの剣を持ち、レベルが99の者は転移させられるしかけかもしれないでがんす。」


 あの剣とは、城主の間でシルクが渡した呪われた剣の事だ。

 確かにそれしか考えられないだろう。


「他に何か言い伝えとかないのか? シルク。」

「ないでがんすね。そもそも、試練を受けた者がいるという話も聞いた事はないでがんす。」


 シルクがそう答えた瞬間、今度は祠に近づいたセイメイが叫んだ。


「サクセス様!! 見て下さい、この祠……行き止まりです。」

「何!?」


 その声を聞き、俺も岩でできた洞窟に近づくと、開いている穴の先は岩で塞がれていた。


「まじかよ。じゃあ、やっぱり試練の間は……」

「そのようですね。ここはあくまで転移場所に過ぎないという事かと。」


 俺の予想をセイメイが口にする。


 なるほどな。
 
 しかしこれは困ったぞ。

 これだとイモコに何かあった時、助けに行くことができない。

 本来は、今日は様子見のつもりだった。

 試練にどの程度の日数が必要か謎だったし、ある程度調べてから試練を受けるか決めるつもりだったのに……。


 しかしこうなると、イモコも心配だが、いつ帰ってくるかわからないイモコを、いつまでもここで待つわけにもいかない。


 どうするか……。



 俺がこの状況に悩んでいると、カリーが言った。


「サクセス。悩んでも仕方ないぜ。イモコを信じて待つだけだ。一応予定通り、三日くらいはここで待つとして、それでも戻らなければ……。」

「行くしかないよな。」


 カリーの言葉の続きを俺が言う。


 そう、進むしかないのだ。

 イモコには悪いが、俺達にはやるべき事があるし、いつまでもここにいる訳にもいかない。

 ただそうなると、ハッタリハンゾウと会えなくなるが……仕方ないか。


「みんな、聞いてくれ! 今話した通りだ。とりあえず俺達はイモコを信じて、ここで3日間待機する。だが、もしもその間にイモコが戻らなかった場合、俺達は先に進むぞ。」


 俺がみんなにそう宣言すると、全員が少し不安な顔をしながらも頷く。


 不安に思う気持ちは俺も同じ。

 それでも納得するしかないという事を、全員わかってくれたみたいだ。



「頑張れよ……イモコ。お前ならきっと……。」


 俺は空を見上げながらそう呟いた。
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