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第四部 サムスピジャポン編
36 サムスピ会議2
しおりを挟む「それはわかるけどさ……。しかしそうなるとどうすれば……。」
話が泥沼化しそうになったその時、黙って聞いていたシロマが発言する。
「サクセスさん。一つよろしいですか?」
「あぁ、一つと言わずどんどん意見をいってくれ。」
「今、卑弥呼様の話をしている為か、そちらに意識が行き過ぎています。仮定の卑弥呼様の対応よりも、先にやる事があるはずです。」
「ん?」
「ですから、まず最初にするべきはサイトウという男の捕縛です。その者は確実に何かを知っているはずですので、仮定の話で結論づけるよりも、先にそこから情報を吸い出しましょう。」
確かにそうだ。
いつの間にか場の雰囲気に飲み込まれていて、肝心なとるべき行動について頭が回らなかった。
「つまり今必要なのは、サイトウに関する情報であり、卑弥呼様をどうするかという話ではありません。」
毅然とした表情でハッキリと述べるシロマ。
多分黙っていたのは、みんなの話を聞きながら何をすべきかをずっと考えていたのだろう。
やはり、こういう時のシロマは本当に頼りになる。
ついでに、エロ本について忘れてくれるとありがたい。
「確かに! 流石シロマだ。セイメイはどう思う?」
「恥ずかしながら、シロマ殿の言う通りでございますね。不安を煽るような事を話して申し訳ございませんでした。」
セイメイは正座をしながら、綺麗に頭を下げて謝罪する。
謝る事なんてないのに……とはいえ、謝罪の仕方が様になりすぎだろ。
「いやいや、それも必要な事だ。だがそうなると、どうやって情報を得るかだな。」
「それならば某にお任せを。某の知っている信頼できる商人から話を聞くでござる。」
イモコは自信に満ちた目をして言った。
「まじか。でも、そいつは信頼できるのか?」
「金さえ積めば信頼できるでござる。それに某に嘘をつけばどうなるかもよくわかっている者故、問題はないでござるよ。そしてハンゾウ……その者の情報は大陸一でござる。」
今ぽろっと名前をいったような。
「まぁ、イモコがそこまで言うなら間違いないな。ちなみに今名前を言っていたが……ハンゾウであってる?」
「然様でござる。そやつの名は……ハッタリハンゾウ。呼び名はハンゾウで通っている者でござる。職業は忍者でござるが、生業は商人でござるよ。」
「ぶっ!!」
ハッタリ ハンゾウだと!?
思わずその名前を聞いて噴出した俺。
ハッタリハンゾウとか、名前がやばすぎる。
つうか、ハッタリとか名前付いてる時点で情報の信憑性を疑うぞ!
「ま、まじで、そいつの情報信用できるの? つか、商人って言うけど何を売ってる人なのかな?」
「ハンゾウの商品は情報でござる。大陸各地に放った伊賀草と呼ばれる忍びを使って情報を集めているでござるよ。そしてその情報は表から裏まで全て揃っているでござる。値は張るでござるが、その情報の信用は確かでござる。」
「はい。私もハンゾウの噂は耳にしております。どうやってハンゾウと接触できるのかはわかりませんが、イモコ殿がそこまで言うのであれば自信がおありなのでしょう。」
うげ……。
マジかよ、まぁこの国のネーミングセンスについて今更驚いてもしょうがないか。
「まぁ、二人がそう言うなら任せるよ。だけど、そいつとは別の方面でもセイメイには調べて欲しい。」
「かしこまりました。」
ようやくある程度、今後の方針が決まった。
しかし、俺は一つだけ気になっている事がある。
「んで、さっきからカリーは黙ってるけど何かないのか?」
「ん? いや、話はちゃんと聞いてるぞ。いいんじゃないか?」
随分軽いな。
まぁ俺も含めてカリーもこの大陸の事がわからないんだから、意見もくそもないか。
「ならいいんだけど。」
「……ただ、俺から話す事があるとすれば、ロゼちゃんをどうするかって事だな。」
あ……。
そういえばそれを話し合うつもりだったわ。
「そうだった! 今の状況を考えれば一緒に連れていくしかないと思うけど、みんなはどう思う?」
「私は賛成です。何かあれば、私が彼女を守ります。」
そこで真っ先に賛成したのはシロマだった。
どういうわけか、どこか嬉しそうな表情すら浮かべている。
「私も特に反対はございません。ですが、一国の姫様が国を移動するとなると、色々とよからぬ事を考える者が現れるかもしれません。」
「そんな輩は全部切り捨てれば良いでござる。」
イモコはセイメイの杞憂をズバッと切り捨てるが……。
「そういう訳にはいかない場合もあるのはご存じでしょう? イモコ殿。」
その言葉に恥ずかしそうに頭をかくイモコ。
んで、どういう場合よ?
俺もイモコの意見に賛成なんだけど。
「確かにそうでござるな。野盗であればそれでもいいでござるが、他国の城主クラスだと色々と問題があるでござる。これを機に、婚姻を求められるような事があれば面倒でござるな。」
はい?
またついていけなくなりました。
脈絡なくいきなり婚姻とかさ、お前らだけで納得してウンウンしてるなよ!
「何を話しているんだ?」
「失礼しました。我々が心配するのは、ロゼ様に会おうとする者のお話でございます。相手の立場によっては、通行を妨害してでも引き留めてくる可能性が予想されます。ですので、姫様が国の外に出るという事が周囲に漏れる訳にはいかないのでございます。」
あぁ~そう言う事か。
何も悪い奴らだけを考えればいい訳じゃないのか。
確かに姫が外国に行くなら、表向きには外遊になるだろうし、そこをチャンスと見る奴はいるだろうな。
「なるほど、何となくわかった。じゃあ変装は必須として、状況次第では俺のミラージュで何とかする。それと、移動は人目に触れない馬車を使おう。」
「それがよろしいかと。カリー殿もそれで問題ありませんね?」
「あぁ、みんな悪いけど頼む。」
ここにきて、カリーは申し訳なさそうに頭を下げた。
しめたぜ、やり返すチャンスきた!
「なんでカリーが謝るんだよ? 自分で言ってただろ? 俺達はみんなで一つだって。」
「すまねぇ。そうだったな。俺としたことが何言ってんだかな。」
へっへーん。やり返してやったぜ。
とまぁそれは冗談だけど、カリーがこの事で心苦しく思う必要は何一つない。
だって、俺達は仲間だからな。
「ところでサクセス様。まだ一つお忘れになっておりませんか?」
俺の中で全て話し終えた感マックスになっていると、セイメイが質問してきた。
正直、もう話すことなんて思い浮かばない。
「ん? 他になんかあったっけ?」
「イモコ殿の転職でございます。」
おっと。
当初の予定と大分変わったから、すっかり忘れてたわ。
イモコ、めんご!
「あぁーー! そうだった! すまん、イモコ!」
「いえ、気にしなくていいでござるよ。今は国の大事。某の事など些末な事でござる。全てが終わってからでもいいでござるよ。」
どうやらイモコはあまり気にしていないらしい。
……いや、そんなはずはないな。
あいつは今誰よりも力を求めている。
表に見せていないだけで、本当は早く試練に臨みたいのだろう。
とはいえ、今の状況じゃそれを叶えるのが難しいのも事実なんだよなぁ。
「んー、そうは言うけどさ……。でもここでイモコが抜けるのは痛いのも事実なんだよなぁ。」
俺がどっちつかずな言葉を並べていると、再度セイメイが口を開く。
「サクセス様。ちなみにイモコ殿が行くべき場所についてはお伺いになられておりますか?」
「いや? 聞いてないけど……知ってるのか?」
「はい。ハロワの書物庫で調べました。そこはイザナミの祠と呼ばれる場所で、邪魔大国に向かうルート上に存在します。」
うおぉぉぉ! 流石セイメイちゃん!
頼りになるぅ~。
俺が性書を巡って馬鹿をやっている間にも、こいつはちゃんと仕事しているんだな。
申し訳なさ過ぎて、顔向けできません!
「おぉ!! なら道中に寄ってみるか。時間が掛かりそうなら後にすればいいし、2,3日で終わるなら転職してからでも遅くはないだろ?」
「そうでございますね。城主殿の話が真実であれば、その黒い玉を持って動けばこの付近の異変は収まるはずです。それであれば巨大魔獣も出現することはないと思われますので、そこまで急いで邪魔大国に向かう必要もありません。」
あっ……。
また肝心な事を忘れてた。
やっぱりあの玉はもっていかないといけないよな。
まぁそれによってとりあえずは、この国でこの間のような事は起こらないだろう。
逆に俺達のリスクはあがるが……それは仕方ない。
「かたじけないでござる。某の為に……。」
「何言ってんだよ? イモコの為だけじゃない、俺達の為だ。だからこそ、必ず試練を乗り越えろよイモコ。俺は信じてる。」
俺は力強く拳を握りしめてイモコを奮い立たせる。
「はっ! このイモコ、師匠の期待を裏切らぬよう、死ぬ気で試練に臨むでござる。」
おぉ~!
イモコの目に炎マークが見えるぞ。
気合十分だな。
「よし、じゃあやる事は決まった。まずはサイトウの情報収集、その後、イザナミの祠を経由して邪魔大国に向かう。そして当然、ロゼは旅に同道させるぞ。」
「はい!」
「わかった。」
「御意。」
「仰せのままに。」
「ゲロ!(おなかすいた!)」
みんなが俺の言葉に力強く返事をする……一匹だけ違う事を言っているが、可愛いから許す!
そして話し合いが終わると、カリーが俺の肩を軽く叩いた。
「上手くまとまったなサクセス。」
「みんなのお蔭さ。それじゃ、早速だけど俺とカリーはそれを報告しに城に向かう。他のみんなは更に詳しい情報を集めてくれ。」
俺がそう言って解散させようとすると、シロマが近づいてきた。
「あの、サクセスさん! お願いがあるのですが、私も一緒に城に行ってもいいですか?」
「ん? いや、それは構わないけど。書物庫行かなくていいのか? シロマなら書物庫で情報を集めると思ったんだけど。」
「はい。それも良いのですが、セイメイさんが調べてくれるはずです。それなら私は、ロゼちゃんと今後の事についてお話しようかと。彼女とはお友達ですし……初めての旅なら不安は大きいでしょうから。」
なんという心配り!
俺にはロゼちゃんの気持ちなんて全く頭になかったわ。
ん? でも今、友達っていってなかったか?
「いつの間にそんな仲になったんだ? まぁシロマがいいっていうなら、それで俺は構わないよ。カリーもいいだろ?」
「あぁ、問題ない。むしろお願いしたいくらいだ。サンキュ、シロマちゃん。」
「こちらこそありがとうございます。ではご一緒させてもらいますね。」
シロマは嬉しそうに微笑む。
そういえばイーゼとリーチュンと別れてから、同性の仲間はいなかったな。
同性の友達が一緒なのは、シロマにとっても嬉しいのだろう。
ロゼちゃんの体はシロマに任せるしかないし、仲が良いなら寧ろ喜ばしい事だ。
「おう。んじゃ、みんな行くぞ! くれぐれも内密に頼むな。」
こうして俺達は今後の予定が決まり、早速それを伝える為に城に向かうのであった。
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