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第四部 サムスピジャポン編

22 ソレイユストーリー

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「……なるほどな。お前も大変だったな、ソレイユ。」

「いや、単に長く生きただけでがす。それにこの国の城主になってからは、平穏の一言でがんす。」

 
 庭園を眺められる長椅子の上で、カリーはソレイユのこれまでの事を聞いていた。


 ソレイユがこのサムスピの大地に辿り着いてから、城主になるまでのサクセスストーリー。


 この地に飛ばされたソレイユが最初に始めたのは、当然仲間達を探す事だった。
 しかしどれだけ必死に探しても、カリー達の場所はおろか、自分のいる所さえもわからない。


 それもそのはず。
 飛ばされた場所は、今まで生きてきた世界ではないのだ。
 情報収集を続けて唯一わかった事は、


 この世界が全く別の世界であるという事。


 この事に絶望しそうになったソレイユであったが、彼は諦めなかった。

 例えこの世界が違う世界であっても、一緒に飛ばされた仲間達もどこかにいるはず。

 そう思えばこそ、何とか平静を保つことができ、そしてそれからも仲間達を探し続けた。

 だが、全く見知らぬ土地でどこにいるかも分からない人を探すの容易ではない。
 それならば、情報が多く集まる場所を探すべきだ。
 ということで、ソレイユはとりあえず冒険者ギルドを探し始める。

 しかし残念な事に、ソレイユが冒険者ギルドを見つける事はできなかった。

 なぜならば、その当時のサムスピジャポンは……戦国時代と呼ばれる動乱期であったからである。


 各地で起こる国盗り合戦。

 
 そんな状況で冒険者ギルドみたいな場所が存在するわけがない。
 そこにあるのはただ、奪う者と奪われる者だけ。


 その状況を踏まえて考えた結果、ソレイユは軍に入る事に決めた。
 軍に入る事で世界の情勢を知り、そしてカリー達の情報を収集する事にしたのである。

 とはいえ、軍に入るといっても、異世界から来たソレイユには身分を証明する物がない。
 もしかしたらそれすらも無理かと思っていたのだが、杞憂に終わった。
 なぜならば、乱世の世において一般人の身分等あってないようなもの。
 欲しいのは戦で戦える人間のみだ。


ーーつまり


 戦えるなら誰でもウェルカム


 というなんともガバガバな国が殆どであったため、ソレイユは簡単に軍に入る事ができた。


 そしてそこが皮肥という国であったという話であるが、軍に所属したソレイユは大躍進を果たしていく。

 
 それも当然だ。今まで勇者と共に激戦を潜り抜けたソレイユにとって、この世界の人間は弱すぎる。
 ソレイユがいる戦場は連戦連勝。
 指揮官としても、個人戦力として圧倒的なソレイユがいて、負けるはずなどない。

 もともと王子として人を指揮してきた立場なのもあり、更にはそのカリスマ性に全員が魅了された。
 そしてその功績から、ソレイユは瞬く間に将軍へと昇りつめる。

 しかしソレイユは、戦争がしたくて軍に入ったわけではない。
 欲しいのは、カリー達の行方の情報であり、いつまでもその地に留まるつもりはなかった。


 自分は何のためにここで戦っているのか?
 いつまでこんな事を続けているのか?
 このままではいつまでたっても仲間を探す事ができない。


 ソレイユは悩んだ。
 この状況を脱するにはどうすればいいか?


 乱世を終わらせることができれば、それも可能かもしれないが、それでは時間がかかり過ぎる。
 それにこの世界に来てから、この地に関わり続け、この国にある程度の愛着もある。
 そしてその国自体が今、あまりに酷い状態である事も悩む要因の一つだ。

 ソレイユのお蔭で国は大きくなるも、そこに住む者達の生活が改善されることはない。

 当時、古川貴夫という城主が皮肥の領主をしていたのだが、これが最悪だったのだ。

 ソレイユが現れるまでは、いつ自分の国が滅ぼされるかと身を隠していたのだが、状況が変わると気が大きくなり、ひたすら他の国を侵略し続け、本人は自分の城で贅沢三昧。


 戦争続きで国が疲弊してようがおかまいなし。
 悪徳狸と呼ばれたその城主がいる限り、この国が救われる事はないだろう。


 そこでソレイユは遂に立ち上がった。


 悪徳狸とその一族を討ち、自分が代わりに城主となると。


 カリー達の情報が欲しくて入った軍であるが、こんな戦争ばかりでは情報収集もままならない。
 それならば自分が一国の主となり、国を挙げて捜索した方がよほど効率はいいだろう。
 何より、目の前で起こり続ける不幸をこれ以上見てはいられない。

 そう考えたソレイユは、単身で直接皮肥城に乗り込むと、古川一族及びその家臣全てを斬り伏せた。


 千の軍より強いと呼ばれた、鬼のソレイユを止められる者はどこにもいない。
 一夜にしてソレイユは単身で城を落とした。

 そして全身を返り血で赤く染めたソレイユは、遂に古川一族を滅ぼすと下剋上を果たしたのである。


 ソレイユが城主となってからは、他国への侵略を禁止して内政に力を入れた。
 そして民の目線で善政を敷き続け、国民の生活は少しづつ改善されいく。

 それから数年後、邪魔大国がサムスピジャポンを統一した事で乱世は終わると、皮肥国に平穏な日々が訪れた。
 そうなって初めて、ソレイユはカリー達の捜索を再開し始めたのだが、数十年経っても見つける事が叶わない。
 
 
 そして今、やっと再会することができた。
 

 ここまでの道がどれだけ過酷であったかは、想像を絶するものであるが、ソレイユは語らない。


 しかし、カリーに再会できた事でようやくソレイユの時は動き始めたのである。 


 
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