上 下
214 / 397
第三部 オーブを求めて

第五十七話 ロマンティックが止まらない

しおりを挟む
「とりあえず、席に着くでござるよ師匠。あっ! 師匠はこっちでござる! ここに座るでござる。」


 俺はとりあえず目の前の椅子に座ろうとすると、イモコが違う場所を指す。
 そこは卑弥呼の写真の前で、一際豪華な椅子が置かれている場所だ。

 多分、船長の席なんだろう。


「いや、俺はここでいいよ。船長はイモコ、お前だ。俺がそこに座る資格はない。」


 という事で俺は断る。
 そんな偉そうな椅子になんか座りたくないやい!


「ダメでござる! 指揮系統ははっきりさせないと、何かが起こった時に対処が遅れるでござるよ! 申し訳ないでござるが、これは決まりでござる。」


 だが、イモコも譲らない。
 イモコの言う事はわかるが、俺が船の事について何か言える立場ではないし、なおさらイモコでいいんじゃないか?


「俺、船の事何もわからないから、何も指示できないよ? それなら、やっぱりイモコがそこに座ってくれよ。」


「無理でござる! 船の事は心配しないで良いでござる! 最終決定だけ師匠がしてくれればいいでござるよ。だから、お願いでござるからこちらに座ってほしいでござる。」


 イモコは必死だった。
 なぜそんな事にこだわるのだろうか。
 まぁいっか、そこまで言うなら仕方ない、そこに座ろう。


「ん~、座る場所くらいでもめてたんじゃ、話が進まないしな。わかったよ。そこに座るよ。」

「ありがたいでござる。間もなく、部下が飲み物を持ってくるので、それまで寛いでほしいでござるよ。」


 俺の言葉を聞いてホッとしたのか、イモコがやっと冷静になった。


 しばらくして、船員が温かいカモミールティーを持ってきたことから、その上品な香りと味を堪能しつつ、本題に入る。


「んで、イモコ。さっき女王様については教えてもらったが、国の文化、土地、モンスター、そう言ったことについて、知る限り教えてもらっていいか?」

「わかったでござる、話すと長くなると思うでござるが、平気でござるか?」

「もちろんだ。続けてくれ。」

「御意でござる! では説明するでござる。」


 イモコからの長い説明で色々分かった。
 ある程度端折って言うとこういう事である。


 サムスピジャポンという島国は、俺が思ったよりも大きな国というか、実際には大陸と言った方が正しい。
 その大陸は、43個の小国があり、それを全部総括してサムスピジャポンというらしい。
 そして、女王というのはその43国を統べる者。

 43個ある小国の中心には邪魔大国と呼ばれる大きな都があって、そこに卑弥呼はいるらしい。

 文化と言語については、基本的には俺達の住んでいる大陸と同じみたいだ。
 海沿いは海産物が豊富で、和食と呼ばれる食べ物がメインらしい。
 こっちの大陸と同じで牧畜等もしていることから、別に魚だけが主食ではないみたいで、基本はお米料理のようだ。


 米料理は好物なので、嬉しい誤算といえるだろう。


 それとサムライ文化というのがあって、町の殆どの人は刀を持っている。
 イモコを初めて見た時から、普通の剣と形が違ったので不思議に思っていたが、この国では刀が普通みたいだ。

 サムスピジャポンにも、マーダ神殿のようなものは転職できる場所があるらしい。
 そこがどんなところかわからないが、またターニャのような駄女神……いや、女神様がいるのだろうか?
 そういえば、女神が一人とは聞いていない。
 まぁ、もしかしたら男の神かもしれないな。


 それと、こっちの大陸と転職できる職業が異なるというのにも驚いた。
 サムスピジャポンで転職できる職業は、主に


 薬師、サムライ、柔術師、陰陽師、忍者


 この5つだ。
 どれも聞いた事がない職業のため、サムライと薬師以外は想像もできない。

 更に上位職もあるらしいが、イモコは会った事がないので、それはただの伝説ではないかと言っている。


 サムスピジャポンに現れる魔物はどれも狂暴かつ、こちらの大陸よりも強い魔物が多いらしい。
 といっても、平均的に見ればというだけで、そこまで大差はないそうだ。
 むしろ、魔王や凶悪なモンスターについては、俺達がいた大陸の方が強いと思われる。


 各小国の法律は、そこを統治する者によって異なるので、できるだけわからない事はしない方がいいらしい。
 国によっては、即刻斬りかかってくる場所もあるらしいので、注意が必要だ。
 まぁ、もしそうなったら、俺は仲間を守るために小国と戦う事もいとわないがね。


 目的は観光ではなく、オーブを探す事。
 女神の導に従って、俺達は進むだけだ。


 しかしまぁ、それだけ多くの国をまとめあげている卑弥呼という女王はさぞ凄いのだろう。
 イモコがいうには、もしも上位職があるならば、それは卑弥呼だと思うと言っていた。
 通常では使えない程の術で、他の小国全てを統一したそうだから、きっと戦闘力も高いのだろう。
 政治的手腕だけとは、思わない方がいい。


 まぁ、なんにせよ、とりあえずイモコから聞いたサムスピジャポンについては以上である。
 さっきは観光ではないといったが……やっぱ楽しみだべなぁ~。


 おっと、最後にもう一つ大事な事があった。

 イモコが最後に耳打ちして教えてくれたのだが……
 サムスピジャポンには、どうやら4大性域と呼ばれる浪漫の都もあるらしい。


スズキノ、ハラヨシ、トビタティンティン、ナカシュウ


 そこでは、着物と呼ばれる和服をきた別嬪さんたちが、外から見えるお店の中から「おいでやすぅ」と声を掛けて誘ってくるらしい。

 何に誘うかって?
 そいつぁ、ちょっと俺の口からは言えないな。

 まぁ和服の他にも、セーラー服と呼ばれる装備や、ブルマ、スク水と呼ばれる装備を装着した女性が、「先輩こっちです!」とか「お兄ちゃん、来てくれないの?」とか言って誘ってくる小屋もあるそうだ。

 全くイメージができない俺だが、なぜかわからないが、絶対素晴らしいと言える場所だと確信している。
 中でも、【冥途喫茶】と呼ばれるところでは、お客をご主人様と言いながら、色々ご奉仕してくれるらしい。


 もうさっきから、高鳴る胸の鼓動が抑えきれず、張り裂けそうだ。


 パンツが。


 童貞の呪いが掛かっている俺だが、それでもやはり、こう、なんつううか、ドキがむねむねである。
 本当に呪いの効果があるのかどうか、シロマにばれないように是非行こうと胸に誓うのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。

猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。 そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。 あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは? そこで彼は思った――もっと欲しい! 欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。 神様とゲームをすることになった悠斗はその結果―― ※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

冷宮の人形姫

りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。 幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。 ※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。 ※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので) そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

処理中です...