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第三部 オーブを求めて

第五十話 イモコ果てる②

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「ぐぼらぁぁっ!!」


「立て! イモコ! 立つんだじょーーー!」


 ゲロゲロにボコボコにされ続けるイモコ。

 イモコは、さっき俺に使った必殺技を何度もゲロゲロに浴びせるが、ゲロゲロにダメージは全くない。

 本来、ゲロゲロのスピードならば全部避けれるはずだが、ゲロゲロはそれをちゃんとくらってあげている。

 どうやら、稽古という事をちゃんと理解してくれているようだ。


 攻撃にしても、ちゃんと急所は狙わずに、全身ボロボロにするくらいにとどめてくれている。
 その姿はまるで、猫が虫をおもちゃにして遊んでいるようだった。

 そしてボロボロになったイモコには、俺がライトヒールをかけて回復させている。
 シロマが回復してもいいのだが、俺のライトヒールと違ってシロマの回復には時間がかかるからだ。

 しかし、血液が不足しているときだけは、シロマに回復してもらっているけどね。
 俺のライトヒールは失った血液までは回復させない。
 だが、シロマのエクスヒーリングは違う。
 ちゃんと、血液までも補填してくれるのだ。


 うーむ、いい連携だな。
 俺とシロマの回復コンボ。
 これなら、何回だって蘇れる。


 げろぉぉ!(早く立って遊ぼう!!)


 禍々しい姿のゲロゲロが、可愛らしい事を言っている。


 いや、ゲロゲロちゃん。
 遊びじゃなくて稽古だよ?


 だが、当の本人(イモコ)には、ゲロゲロが何を言っているかわからない。
 ただ目の前いる恐怖の象徴が、恐ろしい遠吠えをあげているようにしか聞こえなかった。

 ゲロゲロの声を聞くだけで、イモコの体はビクッとする。

 どうやら、トラウマになっているっぽい。


 やりすぎたかな?



「ま、まらまら……でござるよ……。」


 それでも、ふらふらになりながら立ち上がるイモコ。
 負けるとわかっていても立ち向かう姿。

 剣をリングに突き刺し、剣を支えにしてなんとか立ち上がる。
 それはまるで絵本の中で出てくる伝説の勇者のような姿だった……。


 やばい、涙が出そう。
 頑張って! 勇者イモコ!


 その後もイモコは、ボロボロになりながら何度でも立ち上がり、ゲロゲロに挑み続けた。
 通算、100回程死の淵を彷徨うイモコ。


 イモコは戦闘技術だけでなく、その精神力も相当なものだった。
 流石は国の代表として派遣されるだけはある。


 そして日も落ち、時間も大分過ぎた事から訓練を終わらせることにした。
 流石にもう、イモコは限界だった。
 いや、既に限界を何度も越えている。


「それまで!! イモコ! よく頑張った!」


 イモコはモンスターと戦う事に慣れているつもりだった。
 だが、ゲロゲロと何度も戦うことで自分が間違っていた事に気付く。

 モンスターは自分が思っているより賢い。
 そして、なによりも力が桁違いである。
 それを今回思い知らされた。

 全く歯が立たなかったイモコであるが、これはかなり良い経験であったと言える。
 イモコにとっては、この一日は十年の修行よりも価値があった。


「し、ししょう……す、すばら……しい、稽古……ござる。」


「お、おい! イモコ大丈夫か! 無理すんな! シロマ、回復してやってくれ。」

「はい。【エクスヒーリング】」


 シロマの回復魔法を受け、少しづつ心身共に回復するイモコ。

 だが、精神がもうかなりやばいところまで来ている。
 歩ける程に回復するには、大分時間が掛かりそうだった。


 そして、俺はというと……


「さて……と、じゃあやるか。ゲロゲロ」


 ゲロ!!(待ってた!!)


 そう、今度は俺がゲロゲロと訓練する番である。

 俺も今のゲロゲロの強さを知っておきたかった。
 イモコとの訓練では、ゲロゲロは力を全く出しておらず、あれではわからない。

 それともう一つ、俺はリヴァイアサンとの闘いで思い知らされた。

 ステータスだけではダメだという事。

 カリーを見ても、イモコを見てもわかる。
 今ある力を100%発揮するには、戦闘技術、知識、そして経験が大事だということを。


 確かに俺は今のままでも強いかもしれない。
 ましてや、龍化なんていう反則技だってあるんだ。
 普通に考えたら、俺より強い奴なんてそうはいないだろう。

 だが肝心の龍化はもう使えない。
 あれが本当に危険なスキルだとわかった今、使うわけにはいかないんだ。
 ムッツから聞いていなければ、危なかった。


 そして、その力が無ければ俺はカリーを救えなかった。
 更に言えば、その力を持ってしても、シロマが来なければ俺は死んでいる。


 つまり、今の俺は弱い!!


 それじゃだめだ。
 それじゃ、俺はまた失ってしまう。
 また……守れない!
 仲間を……大切な者を……。


 だから、それ以外の方法で俺は強くなる!


 敵を知り、そして自分を知る。
 その上で、確実に勝てる為の策を練らないといけない。
 その策は力が強いだけでは足りないんだ。

 スキルだったり、アイテムだったり、使える物は全て使う。
 その為に必要なのは、経験と知識。
 俺にはこれが絶対的に足りていない。


 故に、まずは自分がどこまでできるか、何ができるかをこの訓練で把握する。
 次に、ゲロゲロという最強のパートナーの力もしっかり把握したい。


 つまりは、イモコに稽古をつけると言った時から、俺はこれを想定していた。


 ゲロゲロとの死闘を。


 当然、ゲロゲロにもそれは伝わっている。
 なんていったって、ゲロゲロと俺は一心同体みたいなもんだからな。


 と、いうことで……



 やりますかな、本気の死闘ってやつを!
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