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第三部 オーブを求めて
第二十五話 初航海①
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「おい! 船で出た奴らはどっちに向かった?」
「はっ! これは大野隊長!? ではなかった、元隊長! 船は北西方向に逃走中であります。船の中に、ノロ隊長が乗り込んだのを見たと、他の隊員から報告もありました!」
「よし、わかった! それではお前たちは、まだ付近にガンダッダの関係者が潜んでいないか、灯台の中も含めて再度確認せよ! これはギルドマスター命令だ!」
「はっ! 了解しました!」
船着き場に到着すると、既にそこを警戒していた兵士団が集まっている。
イモコは、その中にいた元部下に声を掛け、状況を把握した。
なんだかそのやり取りを見ると、とても立派であり、言葉遣いもまるでこの国の兵士のようだった。
「師匠! 敵は北西方向に逃走中とのことです。既に某の部下は船に乗り込んで準備をしております。直ぐに船に乗り込みましょう。」
「お、おう。意外に手際がいいのな。それで、イモコの船はどれなんだ?」
「はっ! あれでござるよ! ペリー号という名前の船でござる!」
イモコは、船着場に停戦している船の中で、キマイラの頭が船首に取り付けてある立派な船を指した。
「か、かっけえぇぇ……。格好良い船じゃないか。つかデカいな。」
「師匠ならわかっていただけると思ったでござる。あれで、某達はここまで来たでござるよ。100人は余裕で乗れるでござる。」
ペリー号は、全体が黒く塗りつぶされており、船のサイドには立派な砲台が多数取り付けられていた。
一見して漁船ではなく、軍艦であることが見て取れた。
しかし大丈夫なのだろうか?
あれだけ大きな船を動かすのに、こんな急遽で人が足りるかな?
「イモコ、あれ……本当に動かせるのか?」
「はっ! 運がいい事に、船を動かす魔法使いの人員はぎりぎり間に合ったでござる。」
「ん? 魔法使い? 船って魔法で動かすのか?」
「左様でござる。この船は特殊で、炎魔法で蒸気を発生させ、その力で動くでござる。加速が必要な場合や、急旋回が必要な場合には、風当てに風魔法を使ってコントロールするでござる。つまり、そこらへんの船よりも何倍も速いでござるよ。」
思いの他、イモコの船はハイテクであった。
船というものに乗った事もないので、普通がどんなのかはわからないが、聞く限り、この船は特別っぽい。
これなら……
「本当か!? それなら追いつけそうか?」
「時間さえあれば確実に追いつけるでござる。見失わない内に、早く出航するでござるよ!」
「よしわかった! カリー、乗り込むぞ。」
「おう、よくわかんねぇけどスゲェな。とりあえず、船に乗ったら色々説明してくれるとありがたい。」
あっ……
そういえば、何も話してなかったな。
まぁとりあえず、出航したら簡単に説明するとしますか。
そして俺達はペリー号に急いで乗り込むと、自動的に梯子が縮んで船に収納され、代わりに巨大で真っ黒な帆が夜空に広がった。
どうやら、この船は帆まで黒くなっているらしい。
黒い船体に黒い帆。
月明かりしかない、この真夜中だと、遠くからこの船の存在に気付くのは難しいであろう。
まるでステルス船だ。
好都合だぜ。
「それでは出港でござる! ヨーソロー!!」
「ヨーソロー!」
「宜候!!」
「よう、早漏!」
イモコの掛け声で動き出すペリー号。
船員達も同じ様に掛け声をリピートさせて、合図を返す。
若干、発音が違うやつが混じっているのは気のせいだろうか。
とりあえず俺達は甲板の上で、海を眺めることにした。
別に旅行じゃないから、眺めるといっても、目的の船がないか探すためである。
しかし、真夜中の海は本当に真っ暗であり、正直何も見えない。
月明かりが若干ある程度では、真下の海ですら黒く映るだけだった。
「やばいなこれ、見つけられるのか?」
「あぁ、俺にもなんも見えねぇな。それよりも、この状況をそろそろ説明してほしいんだが。」
「おっと、悪かったカリー。何も言わずに付き合わせてしまってすまない。実を言うとだな……。」
俺は敵船を見つけるのを諦め、カリーに事の次第を説明する。
「なるほどな、そういう事か。しかし、まぁなんつうかよ。本当にサクセスは運がいいな。つまりは、この船に乗って目的の場所に行けるってことだろ? てっきり一ヵ月は船を待つことになると思ってたぜ。」
船というのはそういうものらしい。
漁船ならいざ知らず、他の大陸に向けて出港する船というのは数少ないという事は、前にカリーから聞いた。
大体は早くて一ヵ月待ち、それも天候によって大きく影響するから、どうなるかわからないそうだ。
つまり、ここで船と船員と手に入れられるというのは、俺達にとって、極めて幸運なのである。
「あぁ、イモコのお蔭だ。成り行きで弟子にしちまったけど、良かったと思ってる。落ち着いたら、少し稽古つけてやるかな。」
「おぉ、いいな。でもサクセスに教えられるのか? 何なら俺が教えてやってもいいぜ。俺は武器なら何でも使いこなせるからな。あいつが持ってる刀だって、俺は扱えるぜ。」
「本当か!? むしろ俺に戦い方を教えてくれ! でも恥ずかしいからイモコの居ないところでな……。」
「ふっ。いいぜ。俺はフェイルに戦い方の基本を教わった。それをお前に返すのも、何かの縁かもな。」
「はっ! これは大野隊長!? ではなかった、元隊長! 船は北西方向に逃走中であります。船の中に、ノロ隊長が乗り込んだのを見たと、他の隊員から報告もありました!」
「よし、わかった! それではお前たちは、まだ付近にガンダッダの関係者が潜んでいないか、灯台の中も含めて再度確認せよ! これはギルドマスター命令だ!」
「はっ! 了解しました!」
船着き場に到着すると、既にそこを警戒していた兵士団が集まっている。
イモコは、その中にいた元部下に声を掛け、状況を把握した。
なんだかそのやり取りを見ると、とても立派であり、言葉遣いもまるでこの国の兵士のようだった。
「師匠! 敵は北西方向に逃走中とのことです。既に某の部下は船に乗り込んで準備をしております。直ぐに船に乗り込みましょう。」
「お、おう。意外に手際がいいのな。それで、イモコの船はどれなんだ?」
「はっ! あれでござるよ! ペリー号という名前の船でござる!」
イモコは、船着場に停戦している船の中で、キマイラの頭が船首に取り付けてある立派な船を指した。
「か、かっけえぇぇ……。格好良い船じゃないか。つかデカいな。」
「師匠ならわかっていただけると思ったでござる。あれで、某達はここまで来たでござるよ。100人は余裕で乗れるでござる。」
ペリー号は、全体が黒く塗りつぶされており、船のサイドには立派な砲台が多数取り付けられていた。
一見して漁船ではなく、軍艦であることが見て取れた。
しかし大丈夫なのだろうか?
あれだけ大きな船を動かすのに、こんな急遽で人が足りるかな?
「イモコ、あれ……本当に動かせるのか?」
「はっ! 運がいい事に、船を動かす魔法使いの人員はぎりぎり間に合ったでござる。」
「ん? 魔法使い? 船って魔法で動かすのか?」
「左様でござる。この船は特殊で、炎魔法で蒸気を発生させ、その力で動くでござる。加速が必要な場合や、急旋回が必要な場合には、風当てに風魔法を使ってコントロールするでござる。つまり、そこらへんの船よりも何倍も速いでござるよ。」
思いの他、イモコの船はハイテクであった。
船というものに乗った事もないので、普通がどんなのかはわからないが、聞く限り、この船は特別っぽい。
これなら……
「本当か!? それなら追いつけそうか?」
「時間さえあれば確実に追いつけるでござる。見失わない内に、早く出航するでござるよ!」
「よしわかった! カリー、乗り込むぞ。」
「おう、よくわかんねぇけどスゲェな。とりあえず、船に乗ったら色々説明してくれるとありがたい。」
あっ……
そういえば、何も話してなかったな。
まぁとりあえず、出航したら簡単に説明するとしますか。
そして俺達はペリー号に急いで乗り込むと、自動的に梯子が縮んで船に収納され、代わりに巨大で真っ黒な帆が夜空に広がった。
どうやら、この船は帆まで黒くなっているらしい。
黒い船体に黒い帆。
月明かりしかない、この真夜中だと、遠くからこの船の存在に気付くのは難しいであろう。
まるでステルス船だ。
好都合だぜ。
「それでは出港でござる! ヨーソロー!!」
「ヨーソロー!」
「宜候!!」
「よう、早漏!」
イモコの掛け声で動き出すペリー号。
船員達も同じ様に掛け声をリピートさせて、合図を返す。
若干、発音が違うやつが混じっているのは気のせいだろうか。
とりあえず俺達は甲板の上で、海を眺めることにした。
別に旅行じゃないから、眺めるといっても、目的の船がないか探すためである。
しかし、真夜中の海は本当に真っ暗であり、正直何も見えない。
月明かりが若干ある程度では、真下の海ですら黒く映るだけだった。
「やばいなこれ、見つけられるのか?」
「あぁ、俺にもなんも見えねぇな。それよりも、この状況をそろそろ説明してほしいんだが。」
「おっと、悪かったカリー。何も言わずに付き合わせてしまってすまない。実を言うとだな……。」
俺は敵船を見つけるのを諦め、カリーに事の次第を説明する。
「なるほどな、そういう事か。しかし、まぁなんつうかよ。本当にサクセスは運がいいな。つまりは、この船に乗って目的の場所に行けるってことだろ? てっきり一ヵ月は船を待つことになると思ってたぜ。」
船というのはそういうものらしい。
漁船ならいざ知らず、他の大陸に向けて出港する船というのは数少ないという事は、前にカリーから聞いた。
大体は早くて一ヵ月待ち、それも天候によって大きく影響するから、どうなるかわからないそうだ。
つまり、ここで船と船員と手に入れられるというのは、俺達にとって、極めて幸運なのである。
「あぁ、イモコのお蔭だ。成り行きで弟子にしちまったけど、良かったと思ってる。落ち着いたら、少し稽古つけてやるかな。」
「おぉ、いいな。でもサクセスに教えられるのか? 何なら俺が教えてやってもいいぜ。俺は武器なら何でも使いこなせるからな。あいつが持ってる刀だって、俺は扱えるぜ。」
「本当か!? むしろ俺に戦い方を教えてくれ! でも恥ずかしいからイモコの居ないところでな……。」
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