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第三部 オーブを求めて

第十九話 ルーズベルト②

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 俺が割って入ろうとしたところ、一人の兵士が隊長に近づき報告する。


「失礼します! 馬車に異常はありませんでした! 一味と思われるものも所持しておりません!」


 部下と思われる兵士は、馬車を調べ終わったのか、快活に部下らしく報告をした。
 のであるが、隊長はクソだった。


「おい、ちゃんと調べたのか? こんな時間に入ろうとする輩だぞ。もっとしっかり調べろ! わかったか!」

「は! 再度確認して参ります。」

 
 兵士の報告を隊長は信用せず、更に唸り飛ばす。
 これは俗に言うパワハラという奴だろうか。
 まぁ確認するのは上司の仕事だが……


 疑うなら、自分で調べろや。


 と俺が思った瞬間である……。


 バゴッ!!


 いきなり鈍い音が響いた。
 一瞬、何が起こったのかわからなかったが、直ぐに気づく。
 隊長がそこから消えていたのだ。

 というか、移動している。


 つまりは……カリーが隊長をぶん殴った。


「おい? 二度言わせるなよ? 誰に断ってやってんだ? あぁん? 立てやこら!!」


 気付けば、遠くに吹っ飛ばされた隊長の下にカリーは移動し、胸倉を掴んで、無理矢理倒れている状態から立たせている。





「て……敵襲!! 敵襲!!」


 それを見ていた兵士が叫ぶと、門の中からぞろぞろと兵士達が湧き出てきた。


 あっという間に、俺達は100人に及ぶ兵に囲まれる。
 ちなみに隊長は、見た目とは裏腹に雑魚だったらしく、カリーの一撃で気絶していた。
 白目を剥いて、不細工な顔を露呈している。


「わりぃ! サクセス。ちょっと面倒な事になっちまったわ。」

「あぁ、全然かまわないぜ。むしろ、俺が殴り飛ばしてやりかったくらいだ。」


 俺達は大人数に囲まれていても、余裕そうに笑いながら話す。


 まぁ、倒すだけならば、全然余裕なんだがね。
 あんな奴ら、指先一つでダウンさ!


「お前ら、ガンダッダ一味に間違いないな? こんな堂々と襲撃するとは、随分舐めた真似をしてくれるじゃねぇか? おいこら、生きて帰れると思うなよ?」


 そこに一人だけ和服姿で刀を持った男が前に出てくる。
 他の兵士達と違って軽装だし、なんとなく雰囲気が強そうだ。


 って待てよ。
 今ガンダッダって言わなかったか?
 あらぁ~、なんとなくこの流れになった理由が分かったわ。
 そういうことか。


「おい、何度も言っているが俺達は怪しい者じゃないし、ガンダッダ一味でもない。最初に失礼な事をしてきたのはお前たちだろ? お前たちは勘違いで、善良な冒険者にこんな事をするのか?」


 俺は無益な戦闘はできるだけ避けたいので、一応、対話を試みる。
 といっても、俺の口調も攻撃的だけどね。
 だって、頭に来てるし、仕方ないじゃん。


「けっ。随分肝っ玉が据わってるじゃねぇか。それだけで、ガンダッダ一味だと馬鹿でもわかるぜ? んで、投稿するのか? それともここで死ぬか? さっさと選べ。」


 ゲルルルル!(サクセス! コイツラキライ!!)


「よせ、ゲロゲロ。お前は出なくていい。ゲロゲロが戦ったら、こんな雑魚は直ぐに死んじまうよ。俺がやるから、ゲロゲロは大人しくしててくれ。手加減なら得意なんだ。馬鹿は殴らないとわからないみたいだけど、こいつらは弱そうだからデコピンにしておくぜ。」


 俺はゲロゲロを抑えると同時に、その男を軽く挑発する。
 いきなり冤罪を吹っかけてきたのは、あいつらだからな。
 俺のはらわたも煮えくり返ってるぜ。

「言うじゃねぇか小童(こわっぱ)いいだろう、殺してやるよ。」

 俺の挑発によほど頭に来たのか、その和服チョンマゲ男は俺に向かって走って来た。
 剣はまだ鞘の中にある。
 近づいたら抜いて斬るつもりかな?


 俺はそれに対して、同じように剣は出さない。
 それどころか、右腕を伸ばし、デコピンの準備をして、そのままの場所に立ちつくしていた。
 

「ふ、反応できないか……なら……死ね!!」


 そいつは自分の間合いに入ると、居合斬りをするため、高速で鞘から剣を引き出そうとする。

ーーが、俺にはその動きが止まって見えた。

  故に、鞘から剣を引き出す瞬間に、剣を抜こうとする、その手にデコピンを放つ。


 バチーーン!!

 バーーーン!

 およそ、デコピンとは思えない炸裂音が鳴り響くと、俺のデコピンはそいつの手を砕き、その衝撃波で体ごと塀まで吹っ飛ばしてしまった。


 またしても白目を剥いて倒れる兵士。
 うーん、こいつは強そうに見えたけど、こんなもんか。
 いや、実際この中では強いのかもしれないな。

 でも、残念。
 俺とこいつとでは、蟻とサイクロプス位の差がある……いや、それ以上か?


 その光景を目の当たりにいた兵士達は、何が起こったのかさっぱり理解できない。
 兵士達には、チョンマゲが俺に近づいて、斬ろうとした瞬間に吹っ飛ばされたようにしか見えなかったのだ。
 だから、俺は敢えて右腕は伸ばしたままにして、デコピンエンドのポーズを崩さない。
 ちゃんと、有言実行であった事を見せてやらねば。


「サクセス。凄いのはわかったが、多分意味ないぞ。そんなポーズしてたって、誰がデコピンでやっつけたなんて信じるかよ。」


 俺達の戦い? を唯一、ちゃんと見ることができたカリーは呆れた声で言った。
 カリーとしても、まさか本当にデコピンで倒すとは思っていなかったようだ。
 といっても、俺のステータスを知っているから、特に驚いた様子はない。


 すると、突然門の方からまた違う一人の男が歩いて近づいてきて言った。


「おう、俺は信じるぜ。なぁ、サクセス! つうか、お前ら馬鹿か?」


 そこに現れたのは、まさかの……
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