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第二部 新たなる旅立ち

第二十四話 ハーレム戦争勃発

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【サクセスの話に戻ります。】

「へぇ~、ここがマーダ神殿の町か。なんか凄くね? 人もやたら多いし、賑わいすぎだろ。」

 町に到着した俺は、そんな感想を漏らす。

 それもそのはず。
 ここは元々沢山の冒険者が集まることから、商業施設や宿泊施設が多く建ち並んでいる町であり、それに加えて、今日は歴史的大戦に勝利した日だ。
 町は完全にお祭りムード。

 いつも以上に、道には露店が沢山並んでいるほか、冒険者や兵士が大戦で沢山集まっていたため、歩くスペースがないほどに人がごった返している。

「確かにここまで凄い賑わっているのは初めてですわ。やはりあの大戦があったからでしょうね。」

「ねぇねぇサクセス! あの露店に売ってる焼き鳥食べようよ! アタイ、お腹ペコペコ。」

 リーチュンは俺の腕を掴むと、露店まで引っ張ろうとする。

「待ってください。宿を探すのが先です! これだけ人が多いのですから、泊まれる宿が無くなってしまいます。」

 今度は逆の腕をシロマが引っ張る。

 二人の美しき女性が俺の腕を使って綱引きだ。
 嬉しいけど、やめてくれ。
 見ろ、周りの冴えない男達が、俺を親の仇のような目で見ているぞ。
 
「リア充死ね。」
「くそ……なんであの大戦で死ななかったんだよ……ペッ!」
「ナンダラカンダラドウテイウラヤム……ハーレムシスベシ……発っ!!」

 怨嗟の声や謎の呪いを放ってくる者まで現れた。

 怖っ!!
 なんだよ、この町。
 まじで怖いわ。

「ちょっと落ち着け、シロマの言う通りだ。先に宿屋を探そう。」

「えぇ~。チェっ! ちょっとくらいいいじゃん……。」

 リーチュンは諦めてくれた。
 意外に俺の言う事は素直に聞いてくれるんだよな。
 そこがまた可愛いんだが……。

「悪いなリーチュン。後でたらふくうまいもん食べような。それで、イーゼ。どこかお勧めはあるか?」

「本当は一度行ってみたい豪華な宿もあったのですが、多分この様子じゃ無理ですわね。見てください、サクセス様。今日は色んな国の偉い人達も来ているようですわ。」

 イーゼに言われて見てみると、確かに兵士や冒険者だけでなく、貴族や王族が乗る様な豪華な馬車も通路をゆっくりと走っている。
 その横には、多くの護衛の兵士が並んでいた。

「ん? ここはお城とか無いんだろ? あぁ、なるほどね。だから高級な宿はないって事か。でもなんでわざわざここに集まってきているんだろな? 兵士達をねぎらいに来たとか?」

 俺は単純に疑問に思った。
 でも労うならば、自分の国に戻ってきてからすればいいし、何も勝ったその日に来る必要もないだろ。

「そうですね。多分、それが口実だと思います。でも本当に目的は違いますね。」

「どういう意味だ、シロマ?」

「勇者様ですよ、サクセスさん。伝説の勇者が歴史的大戦に勝利したんです。当然、そうなれば世界中から王様達が勇者様と関係を作りたくて集まってきます。今ならこの町にいるのは間違いないですしね。自分の国に招き入れようと、今頃各国の王様達は四苦八苦しているはずですよ。」

「へぇ~。みんなビビアンに会いにきているのか。やっぱ凄いな、勇者って。」

「私は気に入りませんわ。今回の魔王だってサクセス様が倒したじゃありませんか。ビビアンとかいう雌ブ……幼馴染さんだけが褒められるのは納得いきませんわ。」

 こいつ、今絶対ビビアンの事を雌豚って言おうとしたな。
 やっぱ話したのは失敗か?
 イーゼだけは、ビビアンに会わせられないな。

「そうね、アタイもビビアンとか言う女に会ったら勝負するわ。絶対負けないもんね!」

 !?

 お前もか!
 だめだ、リーチュンにも会わせられん!

「皆さん落ち着いてください。勇者様はサクセス様の大事なお友達です。失礼な事はいけませんよ。」

 おっと、シロマだけはやはりまともだったか。

「そうですよね、サクセスさん。た・だ・の、お友達ですよね?」

 だめだ、やはりシロマもダメだったか。
 明らかに友達認定を求めている。

「いや……えっと……。だから話しただろ。幼馴染で、俺の初恋の相手だ。」

「それは昔の話ですわよね? 今は違いますわよね?」

 イーゼが詰め寄ってくる。
 もう勘弁してくれ。
 だから嫌だったんだよ……。
 こんな所をビビアンに見られたら……。

 その時、突然大きな声が聞こえて来た。

「あ! サクセス! 見つけたわ!!」

 何かが人の合間を縫うようにして、凄い勢いで接近してくる。

「グボファッ!!」

 それは、弾丸のように俺に向かってくると、勢いよく俺に抱き着いてきた。

「び、ビビアン!?」

「そうよ! サクセス。あなたがずっと会いたがっていたビビアンよ! 無事でよかったわサクセス~。」

 なんと俺の目の前にいきなりラスボスが現れてしまった。
 今のビビアンの恰好は戦場で着ていた服ではなく、淡い青のワンピースにフリフリのスカートを履いている。
 まさに可憐な少女といった格好だ。

「サクセスサクセスぅぅ~。」

 ビビアンは顔を俺の胸にスリスリこすり付けてくる。
 その顔を見ると、とても嬉しそうで……可愛かった。

「ちょっとアンタ! 離れなさいよ! いきなりサクセスに何するのよ。ぐぐぐ、動かないわ!」

 さっそくリーチュンがビビアンを俺から引きはがそうとするが……ビクともしない。
 勇者のステータスは伊達じゃなかった。

「ちょっと町の往来ではやめて欲しいですわね。雌ブ……勇者ビビアン様。はしたないですわよ。」

 イーゼも冷たい目をビビアンに送った。
 だが、さすがにこれには言わせてもらおう。

 お前が言うな!

「は? 何よアンタ達? 邪魔しないで! やっと会えなかった彼氏に会えたんだから。そっちこそ邪魔よ。」

 ビビアンも負けずに、イーゼ達を睨みつける。

 え? 
 彼氏って誰の事?
 お、俺!?
 いつ、俺がビビアンの彼氏に……。

「それは流石に聞き捨てなりませんね。勇者様と言えど、嘘はよくないと思います。サクセスさんから、彼女がいるなんて一度も聞いていませんよ。」

 おっと、シロマ。
 君まで火に油を注ぐつもりか。

「ふん! あなた達がなんなのかわからないけど、よっぽどサクセスに信用されていないのね。そんな事も聞いていないなんて。ね、ダーリン。」

 ふぁっつ!?
 ダーリンだと!?
 今まで俺の事そんな風に言った事ないじゃないか!?
 一体どうしちまったんだ、ビビアンは。

「待て待て! みんな落ち着け。ビビアン、突然どうしたんだ? なんかいつもと違うぞ? つか、ダーリンってなんだよ。今まで一度もそんなこと言った事ないじゃないか?」

「そうだったわね、でもあの時、アタシの気持ちは分かってるっていってくれたじゃない。だから、わかるわよね?」

 え? 
 あの時ってどの時?
 なんの事っすか?

「え、いや。えっと……ごめん。ちょっとわからない……。」

「そうだったわね。サクセスは昔から照れ屋だったわね。悪かったわ、こんなところで言わせようとして。まぁいいわ、積もる話もあるから、アタシの宿にいくわよ。今日はサクセスの為に特別な部屋を用意したの。今日は一緒に寝ようね、ダーリン。」

 えええええ!?
 どういうことだ?
 何が起こっている?
 い、い、一緒に寝るだと!?

「ちょ、待ってくれ! 俺達はもう子供じゃないんだぞ? 一緒に寝るとか……。」

「そうよ。もうアタシ達は子供じゃないわ。だから、ね。いいでしょ? もうアタシ我慢できないわ。」

 グハっ!

「アタシもう我慢できないわ」だと!?
 人生で女性に言われたいワードベスト3じゃないか!?
 しかも、そんな潤んだ瞳で……。

 いや、えっと。
 え?
 いいの?
 いや、っつうかこれ一体なんなんだよ!

「何が我慢できないですか! こんな白昼堂々と。サクセスさんが困ってます。それに今日は私達全員で宿屋に泊るんです。勇者様はお帰りください。」

 シロマが強い口調で言った。

「アンタさっきから何なの? 邪魔するわけ?」

 ビビアンから殺気が漏れる。
 
「ちょ、ちょっとたんま! 落ち着けビビアン! シロマも落ち着いてくれ。」

「何よ? アンタやる気? いいわよ、アタイがその勝負受けるわ!」

 うけるなあぁぁぁ!
 やめろ、リーチュン!
 流石に殺されるぞ!

「あら、抜け駆けはよくないわ。わたくしも混ぜて下さらないかしら? 少し調教の必要があるようですわね」

 ピシィン!

 イーゼは鞭を取り出した。

「ふん、そんなものでアタシとやる気? アンタ達なんか素手で十分よ。丁度いいわ。サクセスについた悪い虫は取り除いてあげるわ。」

 ビビアンも完全に戦闘モードになった。

 だ、だれか助けて……。
 

 遂に俺を巡る争いが勃発してしまうのであった。


 
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