上 下
76 / 397
第一部 サクセス編(改稿版)

75 ヌーの鏡

しおりを挟む
 俺達は、マモルの後に続いて通路を進んでいくと、囚人達が入るような監獄が見えてきた。
 監獄の檻は、通路を隔てて左右に数十部屋あり、この中で一つの部屋を探すのはかなり時間が掛かりそうである。
 それなので、どの部屋に入ればいいかマモルに聞いてみた。


「マモル、ヌーの鏡はどの部屋にあるんだ?」

「一番奥の右側の部屋だ。俺が生きていた頃は、そこは檻ではなく広間だった。しかし今は檻に囲まれている。ヌーの鏡に触れることができなかった偽王が、簡単に盗まれないようにダミーの檻を沢山用意したんだ。」

「檻の中には簡単に入れるのか?」

「そうだな、そこの魔法使いなら開けることはできるだろう。だが問題は結界だ、まぁ行ってみればわかる。」


 そう言うとマモルは、足早に進んで行った。
 マモルの足取りは、まるでモンスターに襲われないことを前提としているように不用心。
 俺とイーゼも置いて行かれないように速足で歩いて付いて行く。


 どうやら、ここにはモンスターはいないらしい……いやいるな。
 ふと檻の中をみると、骸骨の魔物が結構いる。


「なぁ、マモル。檻の中に魔物がいるけど大丈夫か?」


 俺は不安になって、前を速足で歩くマモルに一応聞いてみた。


「あぁ、大丈夫だ。この檻は外からしか開けられない。看守のヘルガーゴイルもいないみたいだしな。問題ないだろう。」


 ええ、魔物なのに看守って……。
 よくわからないな、この城は。
 まぁそのヘルガーゴイルが来る前にちゃっちゃと鏡を手に入れればいいか。


 そしていつのまにか、俺達は監獄の一番奥に来ており、マモルが扉の前で止まった。


「ここだ。見てくれ、檻の中に黒いモヤが見えるだろ? あれが闇の結界だ。」


 俺は、マモルに言われて檻の中を覗くと、確かに黒い霧のようなものが部屋全体を覆っている。
 そのモヤのせいで、檻の中がよく見えない。


「なるほどな。よし、ちょっと俺に任せてみろ。」


 俺はマモルにそう言うと、俺の装備スキル【光の波動】を使ってみた。
 俺の腕から光の粒子が放たれると、黒いモヤにぶつかり


ーー次の瞬間、そのモヤは綺麗サッパリと消滅した。


 マモルはそれを見て唖然としている。
 いやいや、驚くのはおかしいだろ。
 もし俺がこれ使えなかったらどうする気だったんだよ?

 
「よし、結界が消えたぞ。」

「やはり私の目に狂いは……。」

「おい、もういいよそれは。じゃあ、イーゼ。扉の鍵を開けてくれ。」

「はい、わかりましたわ。【ゴマカム】」


 ガチャッ!


 イーゼが開錠魔法を唱えると、扉の鍵が開いたので早速中に入る。
 部屋の中に入ると、奥に人間の骨と思われるものが二つ重なっていた。


「あれが……俺とヌーウの……骨だ。」


 マモルは小さく呟いた。


 そうか……あれがちびうさの両親……。
 二体の骨は抱き合うように倒れている。
 よく見ると、その二人の間に光るものが見えた。


「あれが、ヌーの鏡か?」


 俺は、それを指差してマモルに聞く。


「あぁ、そうだ。あれこそが、王の正体を暴くことができるヌーの……いや、ヌーウの魂が閉じ込められている鏡だ。」


 え?
 どういうこと?
 ヌーウの魂が込められている?
 つまり、ヌーの鏡じゃなくて、ヌーウの鏡じゃないか。
 って、そんなことはいい。


 とりあえず俺は、一歩づつ亡骸に向かって歩いて行った。
 そして、二人の骨の前で両手を合わせて冥福を祈った後、その鏡を手に取った瞬間……。


 鏡からまばゆい光が溢れ出し、周囲の色を真っ白に染めていく。
 気が付つくと俺は、何もない真っ白な空間の中にいた。


 そして目の前には、昨日の夜に夢に出て来た、ちびうさの両親が立っているのだった……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。

猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。 そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。 あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは? そこで彼は思った――もっと欲しい! 欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。 神様とゲームをすることになった悠斗はその結果―― ※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

旦那様、どうやら御子がお出来になられたようですのね ~アラフォー妻はヤンデレ夫から逃げられない⁉

Hinaki
ファンタジー
「初めまして、私あなたの旦那様の子供を身籠りました」  華奢で可憐な若い女性が共もつけずに一人で訪れた。  彼女の名はサブリーナ。  エアルドレッド帝国四公の一角でもある由緒正しいプレイステッド公爵夫人ヴィヴィアンは余りの事に瞠目してしまうのと同時に彼女の心の奥底で何時かは……と覚悟をしていたのだ。  そうヴィヴィアンの愛する夫は艶やかな漆黒の髪に皇族だけが持つ緋色の瞳をした帝国内でも上位に入るイケメンである。  然もである。  公爵は28歳で青年と大人の色香を併せ持つ何とも微妙なお年頃。    一方妻のヴィヴィアンは取り立てて美人でもなく寧ろ家庭的でぽっちゃりさんな12歳年上の姉さん女房。  趣味は社交ではなく高位貴族にはあるまじき的なお料理だったりする。  そして十人が十人共に声を大にして言うだろう。 「まだまだ若き公爵に相応しいのは結婚をして早五年ともなるのに子も授からぬ年増な妻よりも、若くて可憐で華奢な、何より公爵の子を身籠っているサブリーナこそが相応しい」と。  ある夜遅くに帰ってきた夫の――――と言うよりも最近の夫婦だからこそわかる彼を纏う空気の変化と首筋にある赤の刻印に気づいた妻は、暫くして決意の上行動を起こすのだった。  拗らせ妻と+ヤンデレストーカー気質の夫とのあるお話です。    

処理中です...