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第一部 サクセス編(改稿版)

73 マーダ神殿の危機

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 俺達は隠し通路を通り、現在ヒルダーム城の地下にいる。


 殺人マシンを倒した先にある扉を開けると、そこは死臭が漂う、石の壁でできた通路になっていた。
 その通路は魔物が通る為か、道幅が広くなっている。


 だがそこまで長くはなく、10分も進むと石の階段が見えてきた。
 戦闘がなければ5分もあれば着く距離である。


「あの階段を上ると牢獄に出る、気を付けてくれ。そこには結構魔物がいるからな。」

 マモルは、階段を上る前に俺達に警告した。
 俺も油断していた訳ではないが、今の内に詳しい話は聞いておいたほうがいいだろう。

 この通路を通る際中にも、ゴーストと呼ばれる浮遊系のモンスターは数体現れたが、どれも雑魚であった。

 
【バーンゴースト】
 燃えている火の幽霊でイーゼの氷魔法で一瞬で消滅する。

【ゴースト】
 帽子をかぶったお化けの魔物で、俺の剣で一撃で消える。

【怪しげな影】
 人間の目には見えない影のモンスターであるが、マモルには見えており、出現早々にマモルが魔法戦士のスキル【火炎斬り】を使って倒した。


 この通路上で現れたモンスターは、その三種類である。
 ここでマモルがわざわざ警告をしてきたという事は、この階段を上がると、今よりもっと強いモンスターたちが多いという事だ。

 マモルが言うには、牢獄はかなり広いらしい。
 中央の大広間には、いくつか通路があり、そこから各牢獄に繋がっているようだ。
 偽王は、この牢獄で人間を殺し、魔物化させ、より強力なモンスターを作っているらしい。


 そしてその中のいくつかは、モンスター闘技場で客寄せパンダとして使っていたとの事。
 確かに、コロシアム後半で見たモンスターは、到底使役できるとは思えないくらい強かった。

 中でも目を引いたのは
   
    ワイトボーンキング
    じごくのナイト
    デュラッハンナイト
    ヘルガーゴイル

 この四体に関しては、ギャンブルに夢中になっていたシロマでさえ驚いていた。
 討伐パーティの平均レベルは30から50レベルらしい。


 それも一匹だけでだ。


 つまり、このレベルの敵がうじゃうじゃ出てくるとなると、流石の俺も辛いかもしれない。
 俺だけならば、なんとかなるだろうが、イーゼやマモルに危険が及ぶ可能性がある。
 二人を守りながら戦うには、できるだけ狭い場所でなければだめだ。


 しかし、どうやらこの地下はどこも通路が広く、更にところどころに広いエリアを挟むらしく、とても厄介みたいだ。


「マモル、ここに闘技場のモンスターより強い奴はいるか?」


 俺は一応階段を登る前にマモルに確認しておく。
 それがいるといないとでは、難易度がかなり変わる。
 少なくとも、闘技場で一度戦闘を見ているモンスターならば対応は可能だ。


「すまない、詳しくはわからない。俺も他のモンスターと話したりしているわけではないからな。ただ、あの偽王の事だ、一つや二つ隠し玉があってもおかしくはない。どうやらここでモンスターを大量に発生させて、近々マーダ神殿に総攻撃をかけるつもりらしい。」

「マーダ神殿に!? それは本当か?」

「あぁ、俺達モンスターは月に一度広間に集められて戦闘をする。そして、その後に偽王の演説がある。どうやら大魔王が復活するらしい。それに備えて、まずは転職の要であるマーダ神殿を落とすようだ。こことは別のところからも攻めるらしいぞ。」

「それはまずいな、なら、なおさらここの拠点は潰さないといけないな。」


 俺はマモルからの話を聞いて、更に危機感が跳ね上がった。
 俺の様子を見てイーゼも心配そうだ。
 イーゼはマモルの言葉が聞けないから、俺から間接的に説明をすることにした。


「そうですか。遂に大魔王が復活するのですか。確かに今、マーダ神殿を落とされるわけには行きませんね。」


 イーゼも話を聞いて、危機感を持ったようだ。


「よし、まぁ色々分かった事も多いが、やる事は変わらない。俺達はここで、偽王とモンスターを殲滅して、ちびうさとこの国を救うだけだ。行くぞ!」

 俺はそれだけ言うと、階段を上り始めた。


 そして俺達は、遂にヒルダーム城地下の牢獄に入ることとなる。
    
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