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第一部 サクセス編(改稿版)

53 ちびうさ

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「ん、ん? え!?」


 ガバッ!!


「起きましたね、安心して下さい。いくら泥棒でも取って食べたりしませんから。」

 
シロマは、目が覚めて飛び起きた泥棒幼女に優しく話しかける。


「誰? あたちをどうするき!?」


 幼女は、フードを外すとその素顔が露わになる。

 ボサボサの金髪に、気の強そうな……というか生意気そうな目。


 ん~、誰かに似てるな。
 誰だろ?


「あぁ、うん。とりあえず泥棒が悪い事ってわかってるよな? お前は泥棒した後、俺たちに捕まったんだわ。ここまではわかるか?」

「知らない! あたちじゃないもん!」


 う~ん、幼女ってどうやって接すればいいんだ……。


「ふむ、じゃあ君が持っていたこの財布は、何かな? これはそこにいるお姉さんが盗まれた物なんだが。」


 俺は幼女にリーチュンの財布を見せる。
 すると、その幼女はソワソワして慌て始めた。


「それは……拾ったの! 返そうと思ったの!」


 どうする?
 脅すか?
 いや、相手は幼女だぞ?

 うわぁ……もう、俺には無理!
 誰か、誰かバトンタッチを!


 俺が困っていると、盗まれた当事者であるリーチュンがその子に近寄った。


「そっか、拾ってくれたならありがとうね。じゃあお礼がしたいから名前を教えて欲しいな。アタイはリーチュンよ。」

「あたちは、ちびうさ!」

「そっかぁ、ちびうさちゃんって言うんだ。ちびうさちゃんは何歳なのかなぁ?」

「わかんない!」

「どうしてぇ?」

「あたちのママは、ずっと昔にいなくなったし、パパはあたちの事嫌いだから。だからわかんない!」

「それじゃあパパと住んでるのかな?」


 ちびうさは何も言わず横に首を振る。


「パパはどこにいるのかな?」

「お城の下!」


 ちびうさの言葉に、全員が顔を見合わす。
 子供とは言え、誰一人として、言ってる事がわからなかった。


「お城の下?」

「じゃあ今誰と暮らしてるのかな?」

「一人!」


 ……。


 リーチュンは、黙り込むと涙を流しながらちびうさを抱きしめた。


 ギュッ!!


「やめるでち! はなすでち!」

「やだ! 離さない! だって、こんな小さいのに、こんな細くなって……可哀想よ!」


 リーチュンは、そのまま話を聞くのをやめてしまい、ひたすら泣きながらちびうさを抱きしめていた。


 リーチュンが思いの外上手く聞き出してくれたはいいけど、重要な事がサッパリ分からんな。


 お城の下……お城の下ねぇ……。
 そういや、俺もお城の下で公務員……!?
 お城の下って牢屋か!

 つまり母親は理由がわからないけど消えた。
 父親は牢屋……。

 何かが繋がった気がする。
 でも重要な事が足りない。
 なんだ?
 わからないなら聞くしかないか。


 ちびうさは未だにリーチュンの強い力に縛られながら、もがいている。


「リーチュン、ちょっと離してくれ。その子に聞きたい事がある。」

「……。」

「リーチュン、頼む離してくれ。」

「嫌……。この子は悪くないの! 怒らないで。」

「わかってる、怒らない。約束する。だから離してくれ。」

「……わかったわ。」


 やっとちびうさは、リーチュンから解放された。


「ちびうさちゃん、一つ教えてくれないか? お父さんがお城の下に行ったのと、最後にあった日は同じかい?」


 ちびうさは顔を横に振る。


「じゃあ最近、お父さんに会ったかい?」


 今度は縦に振った。
 なるほど、でも、ならどこで?
 牢屋じゃ会えないはずだ。
 ますます意味がわからないぞ。

 仕方ない。
 根気よく聞くしかないか。


「お父さんと会ったところはわかる?」

「闘技場!」

「闘技場……ね。なんでお父さんに嫌われてると思ったの?」

「だってね、パパはね、もう来るなって言うの。でもパパに会いたいから、お金が必要で……。」

「……そうか。」


 なんとなくわかった気がする。

 ここからは想像だが、まずこの子は生きるために常習的に泥棒を繰り返している。
 そしてその理由は、父親に会うため。

 一体どれくらいこんなことを続けて来たのだろうか。
 それを考えるだけで悲しくなってくる。
 自分の年齢がわからないってのはそういう事だ。

 そして、父親が牢にいる理由も、闘技場に行かされている理由もわからない。

 だが、これは後で調べればわかるかもな。


 とりあえずこの子は保護する。
 そして原因の調査だ。

 マネア、俺は助けることに決めたぞ!
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