54 / 397
第一部 サクセス編(改稿版)
53 ちびうさ
しおりを挟む
「ん、ん? え!?」
ガバッ!!
「起きましたね、安心して下さい。いくら泥棒でも取って食べたりしませんから。」
シロマは、目が覚めて飛び起きた泥棒幼女に優しく話しかける。
「誰? あたちをどうするき!?」
幼女は、フードを外すとその素顔が露わになる。
ボサボサの金髪に、気の強そうな……というか生意気そうな目。
ん~、誰かに似てるな。
誰だろ?
「あぁ、うん。とりあえず泥棒が悪い事ってわかってるよな? お前は泥棒した後、俺たちに捕まったんだわ。ここまではわかるか?」
「知らない! あたちじゃないもん!」
う~ん、幼女ってどうやって接すればいいんだ……。
「ふむ、じゃあ君が持っていたこの財布は、何かな? これはそこにいるお姉さんが盗まれた物なんだが。」
俺は幼女にリーチュンの財布を見せる。
すると、その幼女はソワソワして慌て始めた。
「それは……拾ったの! 返そうと思ったの!」
どうする?
脅すか?
いや、相手は幼女だぞ?
うわぁ……もう、俺には無理!
誰か、誰かバトンタッチを!
俺が困っていると、盗まれた当事者であるリーチュンがその子に近寄った。
「そっか、拾ってくれたならありがとうね。じゃあお礼がしたいから名前を教えて欲しいな。アタイはリーチュンよ。」
「あたちは、ちびうさ!」
「そっかぁ、ちびうさちゃんって言うんだ。ちびうさちゃんは何歳なのかなぁ?」
「わかんない!」
「どうしてぇ?」
「あたちのママは、ずっと昔にいなくなったし、パパはあたちの事嫌いだから。だからわかんない!」
「それじゃあパパと住んでるのかな?」
ちびうさは何も言わず横に首を振る。
「パパはどこにいるのかな?」
「お城の下!」
ちびうさの言葉に、全員が顔を見合わす。
子供とは言え、誰一人として、言ってる事がわからなかった。
「お城の下?」
「じゃあ今誰と暮らしてるのかな?」
「一人!」
……。
リーチュンは、黙り込むと涙を流しながらちびうさを抱きしめた。
ギュッ!!
「やめるでち! はなすでち!」
「やだ! 離さない! だって、こんな小さいのに、こんな細くなって……可哀想よ!」
リーチュンは、そのまま話を聞くのをやめてしまい、ひたすら泣きながらちびうさを抱きしめていた。
リーチュンが思いの外上手く聞き出してくれたはいいけど、重要な事がサッパリ分からんな。
お城の下……お城の下ねぇ……。
そういや、俺もお城の下で公務員……!?
お城の下って牢屋か!
つまり母親は理由がわからないけど消えた。
父親は牢屋……。
何かが繋がった気がする。
でも重要な事が足りない。
なんだ?
わからないなら聞くしかないか。
ちびうさは未だにリーチュンの強い力に縛られながら、もがいている。
「リーチュン、ちょっと離してくれ。その子に聞きたい事がある。」
「……。」
「リーチュン、頼む離してくれ。」
「嫌……。この子は悪くないの! 怒らないで。」
「わかってる、怒らない。約束する。だから離してくれ。」
「……わかったわ。」
やっとちびうさは、リーチュンから解放された。
「ちびうさちゃん、一つ教えてくれないか? お父さんがお城の下に行ったのと、最後にあった日は同じかい?」
ちびうさは顔を横に振る。
「じゃあ最近、お父さんに会ったかい?」
今度は縦に振った。
なるほど、でも、ならどこで?
牢屋じゃ会えないはずだ。
ますます意味がわからないぞ。
仕方ない。
根気よく聞くしかないか。
「お父さんと会ったところはわかる?」
「闘技場!」
「闘技場……ね。なんでお父さんに嫌われてると思ったの?」
「だってね、パパはね、もう来るなって言うの。でもパパに会いたいから、お金が必要で……。」
「……そうか。」
なんとなくわかった気がする。
ここからは想像だが、まずこの子は生きるために常習的に泥棒を繰り返している。
そしてその理由は、父親に会うため。
一体どれくらいこんなことを続けて来たのだろうか。
それを考えるだけで悲しくなってくる。
自分の年齢がわからないってのはそういう事だ。
そして、父親が牢にいる理由も、闘技場に行かされている理由もわからない。
だが、これは後で調べればわかるかもな。
とりあえずこの子は保護する。
そして原因の調査だ。
マネア、俺は助けることに決めたぞ!
ガバッ!!
「起きましたね、安心して下さい。いくら泥棒でも取って食べたりしませんから。」
シロマは、目が覚めて飛び起きた泥棒幼女に優しく話しかける。
「誰? あたちをどうするき!?」
幼女は、フードを外すとその素顔が露わになる。
ボサボサの金髪に、気の強そうな……というか生意気そうな目。
ん~、誰かに似てるな。
誰だろ?
「あぁ、うん。とりあえず泥棒が悪い事ってわかってるよな? お前は泥棒した後、俺たちに捕まったんだわ。ここまではわかるか?」
「知らない! あたちじゃないもん!」
う~ん、幼女ってどうやって接すればいいんだ……。
「ふむ、じゃあ君が持っていたこの財布は、何かな? これはそこにいるお姉さんが盗まれた物なんだが。」
俺は幼女にリーチュンの財布を見せる。
すると、その幼女はソワソワして慌て始めた。
「それは……拾ったの! 返そうと思ったの!」
どうする?
脅すか?
いや、相手は幼女だぞ?
うわぁ……もう、俺には無理!
誰か、誰かバトンタッチを!
俺が困っていると、盗まれた当事者であるリーチュンがその子に近寄った。
「そっか、拾ってくれたならありがとうね。じゃあお礼がしたいから名前を教えて欲しいな。アタイはリーチュンよ。」
「あたちは、ちびうさ!」
「そっかぁ、ちびうさちゃんって言うんだ。ちびうさちゃんは何歳なのかなぁ?」
「わかんない!」
「どうしてぇ?」
「あたちのママは、ずっと昔にいなくなったし、パパはあたちの事嫌いだから。だからわかんない!」
「それじゃあパパと住んでるのかな?」
ちびうさは何も言わず横に首を振る。
「パパはどこにいるのかな?」
「お城の下!」
ちびうさの言葉に、全員が顔を見合わす。
子供とは言え、誰一人として、言ってる事がわからなかった。
「お城の下?」
「じゃあ今誰と暮らしてるのかな?」
「一人!」
……。
リーチュンは、黙り込むと涙を流しながらちびうさを抱きしめた。
ギュッ!!
「やめるでち! はなすでち!」
「やだ! 離さない! だって、こんな小さいのに、こんな細くなって……可哀想よ!」
リーチュンは、そのまま話を聞くのをやめてしまい、ひたすら泣きながらちびうさを抱きしめていた。
リーチュンが思いの外上手く聞き出してくれたはいいけど、重要な事がサッパリ分からんな。
お城の下……お城の下ねぇ……。
そういや、俺もお城の下で公務員……!?
お城の下って牢屋か!
つまり母親は理由がわからないけど消えた。
父親は牢屋……。
何かが繋がった気がする。
でも重要な事が足りない。
なんだ?
わからないなら聞くしかないか。
ちびうさは未だにリーチュンの強い力に縛られながら、もがいている。
「リーチュン、ちょっと離してくれ。その子に聞きたい事がある。」
「……。」
「リーチュン、頼む離してくれ。」
「嫌……。この子は悪くないの! 怒らないで。」
「わかってる、怒らない。約束する。だから離してくれ。」
「……わかったわ。」
やっとちびうさは、リーチュンから解放された。
「ちびうさちゃん、一つ教えてくれないか? お父さんがお城の下に行ったのと、最後にあった日は同じかい?」
ちびうさは顔を横に振る。
「じゃあ最近、お父さんに会ったかい?」
今度は縦に振った。
なるほど、でも、ならどこで?
牢屋じゃ会えないはずだ。
ますます意味がわからないぞ。
仕方ない。
根気よく聞くしかないか。
「お父さんと会ったところはわかる?」
「闘技場!」
「闘技場……ね。なんでお父さんに嫌われてると思ったの?」
「だってね、パパはね、もう来るなって言うの。でもパパに会いたいから、お金が必要で……。」
「……そうか。」
なんとなくわかった気がする。
ここからは想像だが、まずこの子は生きるために常習的に泥棒を繰り返している。
そしてその理由は、父親に会うため。
一体どれくらいこんなことを続けて来たのだろうか。
それを考えるだけで悲しくなってくる。
自分の年齢がわからないってのはそういう事だ。
そして、父親が牢にいる理由も、闘技場に行かされている理由もわからない。
だが、これは後で調べればわかるかもな。
とりあえずこの子は保護する。
そして原因の調査だ。
マネア、俺は助けることに決めたぞ!
0
お気に入りに追加
290
あなたにおすすめの小説
没落貴族の異世界領地経営!~生産スキルでガンガン成り上がります!
武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生した元日本人ノエルは、父の急死によりエトワール伯爵家を継承することになった。
亡くなった父はギャンブルに熱中し莫大な借金をしていた。
さらに借金を国王に咎められ、『王国貴族の恥!』と南方の辺境へ追放されてしまう。
南方は魔物も多く、非常に住みにくい土地だった。
ある日、猫獣人の騎士現れる。ノエルが女神様から与えられた生産スキル『マルチクラフト』が覚醒し、ノエルは次々と異世界にない商品を生産し、領地経営が軌道に乗る。
うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
今日も誰かが飯を食いに来る。異世界スローライフ希望者の憂鬱。
KBT
ファンタジー
神の気まぐれで異世界転移した荻野遼ことリョウ。
神がお詫びにどんな能力もくれると言う中で、リョウが選んだのは戦闘能力皆無の探索能力と生活魔法だった。
現代日本の荒んだ社会に疲れたリョウは、この地で素材採取の仕事をしながら第二の人生をのんびりと歩もうと決めた。
スローライフ、1人の自由な暮らしに憧れていたリョウは目立たないように、優れた能力をひた隠しにしつつ、街から少し離れた森の中でひっそりと暮らしていた。
しかし、何故か飯時になるとやって来る者達がリョウにのんびりとした生活を許してくれないのだ。
これは地味に生きたいリョウと派手に生きている者達の異世界物語です。
女勇者がクズ過ぎて皆逃げ出したい
白黒
ファンタジー
魔法使いのリリイは異世界から召喚された女勇者のPTの一人なんだけどその女勇者がクズ過ぎて早くも逃走したい。それはイケメンの仲間たちも同じで…。リリイ達は女勇者から無事に逃げることができるのだろうか?
正直魔王はどうでもいい。
W職業持ちの異世界スローライフ
Nowel
ファンタジー
仕事の帰り道、トラックに轢かれた鈴木健一。
目が覚めるとそこは魂の世界だった。
橋の神様に異世界に転生か転移することを選ばせてもらい、転移することに。
転移先は森の中、神様に貰った力を使いこの森の中でスローライフを目指す。
最強幼女は惰眠を求む! 〜神々のお節介で幼女になったが、悠々自適な自堕落ライフを送りたい〜
フウ
ファンタジー
※30話あたりで、タイトルにあるお節介があります。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
これは、最強な幼女が気の赴くままに自堕落ライフを手に入を手に入れる物語。
「……そこまでテンプレ守らなくていいんだよ!?」
絶叫から始まる異世界暗躍! レッツ裏世界の頂点へ!!
異世界に召喚されながらも神様達の思い込みから巻き込まれた事が発覚、お詫びにユニークスキルを授けて貰ったのだが…
「このスキル、チートすぎじゃないですか?」
ちょろ神様が力を込めすぎた結果ユニークスキルは、神の域へ昇格していた!!
これは、そんな公式チートスキルを駆使し異世界で成り上が……らない!?
「圧倒的な力で復讐を成し遂げる?メンド臭いんで結構です。
そんな事なら怠惰に毎日を過ごす為に金の力で裏から世界を支配します!」
そんな唐突に発想が飛躍した主人公が裏から世界を牛耳る物語です。
※やっぱり成り上がってるじゃねぇか。 と思われたそこの方……そこは見なかった事にした下さい。
この小説は「小説家になろう」 「カクヨム」でも公開しております。
上記サイトでは完結済みです。
上記サイトでの総PV1000万越え!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる