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第一部 サクセス編(改稿版)

49 朝チュン

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 チュンチュンチュン……。 


「……ん、んん~、ん!? あれ? ここは?」


 鳥の鳴き声で目が覚めた俺は、真っ白の大きなベッドの中にいた。

 服は……うん、着ていない。
 まるで生まれたばかりのような姿だ。
 一体、昨日俺に何が……。

 毎回酒を飲むたびに記憶が無くなるのはどうにかならんかねぇ。

 ふと、俺は気づいた。
 布団の中に大きな膨らみがある事に。 


「え? 嘘!? 嘘だろ!? まさかの、朝チュン!?」


 まさかな……きっとゲロゲロが大きく成長したんだな。
 あはは……。
 やめてくれ!
 どうせ手を出すなら記憶は残してくれ!

 その膨らみはゆっくりと俺に近づいてくる。

 やめて! 来ないで! 誰!? 誰なの!?

 そしてその膨らみは、俺の前まで来ると被っている布団を剥ぐ。 



「わしじゃよぉ!!」



 布団から出てきたのは、やべぇ水着を装着したセンニンだった。
 そしてセンニンは、顔を赤らめて俺にトドメを刺した。 


「……昨日は……よかったぞ!」


 ポッ……。


「うそだあああぁぁぁぁぁぁ!」



 ガバっ!!


 俺は目が覚めた。


「はぁ……はぁ……はぁ……。ひでぇ夢だ!」


 どうやら夢だったようだ。
 今度は自分の頬をつねって確かめてみたが、痛かったので間違いない現実だ。
 昨日は、大分酔っ払ってしまったようだな。
 あの夢が現実だったらと思うと死にたくなる。
 うん、ちゃんと服を着てるじゃないか。

 あれ? でもここで俺が寝てるってことは?

 すると、まるでデジャブのようにベッドの布団が膨らんでいるのに気付く。


 !?


 俺の顔は、真っ青になった。
 嘘だろ、今度も夢落ちだよね?
 やめてくれ! 知りたくない!
 俺は朝からとてつもない恐怖に襲われる。
 そしてさっきの夢と同じように、その膨らみは近づいて来た。


 ガバっ!!


 布団が剥がれる。
 さっきと同じだった。
 俺は思わず目を瞑る。


 頼む!
 センニンはやめてくれ!
 センニンだけは勘弁してくれ!


 俺がそう願っていると、出て来た何かは俺の鼻をつまんだ。 


「おはようございます、サクセス様。うなされていましたけど大丈夫ですか?」 

「……イージェ?」

 俺はイーゼの声を聞き、安心して目を開ける。

 ん? イーゼ? 安心?
 現実に返った俺がふとイーゼに目を向けると……そこには。
 ベッドの上に女の子座りをしている……


 やべぇやつがいた!!!


「お、おまっ! なんでそれを……。」


 俺は言葉を失う。 


「ふふふ、今頃起きるなんてお寝坊さんね。」


 イーゼは俺の息子を見て呟く。
 どこに言ってるっぺよ! これは、朝モッコ……て違う。

 そうじゃない。
 そんな事よりもそ、それは……まさか……!?


 俺の息子の戦闘力がどんどん上がっていく……。


 19000……20000……21000!?


 ベリベリッ!!


 スカウターが壊れただと!?
(パンツが破れただと!?) 


 こんな数値は間違いだ!
 スカウターの故障だ!


 なんと、目の前にいるやべぇやつは、伝説の防具


 【やっべぇ水着】


を装備していた。 


「うふふ、昨日はよかったですわぁ……サクセス様ったら、これを付けた瞬間……あぁ、思い出すだけで……。」


 え? まじ?
 まさか俺、大人になったの?
 うそ……だろ……。
 だって何にも覚えてないぞ?
 嫌だ! こんなの嫌だ!


 バンっ!


 すると扉が勢いよく開く。


「見つけたわよ! イーゼ!」
「もう言い逃れはできませんよ!」


 リーチュンとシロマが入ってきた。
 しかもなんかすごく怒ってる……。 


「……ちッ! 後少しでしたのに……。」


 イーゼは舌打ちした。
 だが、俺はそれどころではない。 


「お、俺は……やっちゃったのか!? なぁ誰か教えてくれ! 記憶がないんだ!」


 俺は困惑しながらも叫ぶ。 


「アンタ何言ったのよ? ねぇイーゼ。怒らないから白状しな?」 

「イーゼさん、その水着……昨日誰が最初に着て見せるか話し合いましたよね?」


 二人が何いってるかわからない。
 けど、俺には怒りの矛先は向かっていないようだ。
 少しホッとしたが、これはいったい……。 


「ごめんなさい、サクセス様が随分うなされていましたので、心配になって来ただけですわ。」 

「嘘おっしゃい! この部屋には入らないって約束したわよね?」 

「あら? わたくしとしたことが、ちょっとお酒が回りすぎて忘れていましたわ、ごめんなさい。」 

「ん。白々しいですね、昨日は飲んでいませんでしたよね? 私は見てましたよイーゼさん。」


 昨日は、入らない?
 ん? どういうことだ?
 つまり、俺はヤってない!?

 俺は安心すると同時に少しがっかりした。 


「はいはい、わかりました。白状しますわ。朝寝ぼけているサクセス様をそのまま誘惑して襲おうとしました、すいませんでした。」


 イーゼは完全に開き直って話す。 


「イーゼさん、あなたはどうしていつもこうなんですか? 少しは自重してください。」 

「そうよ! アタイが先にその水着を見せるはずだったのに!」 

「では、イーゼさん今回は1回分前借ですからね、次は私の番ですからね!」


 シロマが珍しくよくわからないことを言っている。
 実は、これは女子会で決めたルールの一つ

 「誘惑の権」

 という身も蓋もない権利である。

 誰が一番最初に俺を落とすか、そのチャンスを平等にしていた。
 当然、それを俺は知らない。
 むしろ違う事に焦っている。


 なぜ【やっべぇ水着】が奴らの手にあるかだ。


 多分、昨日俺が酔っ払って寝てしまった時に、メイドか誰かが脱がしてくれたのを渡したのだろう。
 しかし、俺があんなのを着ていたなんて知ったのに、何も言ってこない。

 なぜだ!


「あの~すみません。その水着は……。」


 俺は、勇気を出して尋ねてみる。 


「大丈夫ですよ、サクセスさん。人には言えない趣味の一つや二つありますから。むしろそういった所があって安心しました。」


 え?
 安心するようなところあった?
 ま、まぁいい。 侮蔑の目で蔑まれるよりかはましか……。
 いや、いいのかそれで? 


「とりあえずイーゼ! それ脱ぎなさいよ! それはアタイが着るの!」 

「いいんですの? サクセス様の前で着替えても? それでは喜んで……」

 イーゼは、装着した紐を解除しようとする。 


「待て待て待て! とりあえず落ち着け! な?」


 俺はイーゼを止めようとすると、胸の紐に指が引っかかった。


 ポロッ……。


 イーゼが乳ポロする。 


「あん、サクセス様に脱がされるわぁん。」 

「ちょっといい加減にしなさいよ! サクセスは出てって!」


 そう言うとリーチュンは、俺を綺麗な背負い投げでドアの外へ投げ飛ばす。

 お、俺が何したっていうんだよぉ……。
 まぁでも、脳内にはキチンと録画はしておいたから、後で再生しながら右手とダンスだ!
 朝からそんなハプニングに見舞われた俺であったが、その後、服を着替えて豪勢な朝食をとった。

 朝食を終えると、小間使いのような恰好をしたカッパが現れ、俺達を呼びに来る。
 その姿は、以前と比べるとみすぼらしくもみえるが、顔は生き生きとしていた。
 もちろん、頭の方も一段と輝いている。
 かくして俺達は、謁見の間に向かうこととなる。

 謁見の間は、一日で大分修復されていた。
 しかし、それでもまだ戦いの傷跡は大きく残っている。
 それと昨日と違うのはそれだけではない。
 玉座の前に宝箱が置かれていたのだ。

 ちょっと期待しちゃうな、おい。 


「英雄サクセスよ、前に!」

 昨日とは打って変わって、威厳ある声で俺に命じるセンニン。 


「はっ! ただいま参ります。」


 俺も空気は読めるから、当然礼儀正しくする返事をする。
 だが、どうにも朝の夢のせいでセンニンの顔をまともに見れない。 


「それでは、英雄サクセスに対して、国から褒賞を贈呈する。宝箱を開けるが良い。」


 俺は、言われた通り宝箱を開けた。
 そして中に入っていた物は……。

【50000ゴールド】

【女神の指輪】   知力+30 消費精神 50%減 レアリティ15

【スーパーリング】 全ステータス+5 状態異常無効 レアリティ12

【豪傑の腕輪】   攻撃力30 会心の一撃率UP  レアリティ45 

 そのどれもが、非常に高価かつ最高級の装飾品であった。


「こ、これは……すごい!」


 俺は思わず声が漏れた。 


「それは我が国に代々伝わる秘宝中の秘宝じゃ。今回の報酬とオーブの運搬等全ての報酬である。さぁ受け取るがよい」 

「ありがたき幸せ!!」


 俺は褒賞を手にいれると、センニンは、再度威厳のある声で俺達を送り出した。 


「それでは、旅立つがよい! 英雄達よ!!」


 パチパチパツパチ……!!


 謁見の間に雷鳴のような喝采が鳴り響く。

 なんだか自分が本当に勇者になったようにすら感じた。

 センニン、ありがとう!
 また必ず来るよ!


 こうして、俺達はアバロン王に見送られ、また新たな旅に出るのであった。
 だがこれは、最弱装備から始める俺の伝説の序章に過ぎない。
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