上 下
24 / 397
第一部 サクセス編(改稿版)

23 旅のほこら

しおりを挟む
 無事リーチュンとイーゼのわだかまりも消えたところで、俺たちは足場の悪い岩場を進んでいく。 
 一部、崖になっているところがあり、慎重に進まなければならなかった俺たちは、周囲を警戒しながらゆっくりと進んでいった。 


「最初はビビったけど、モンスターも少ないし思ったよりも危険は少なそうだな。」 

「はい、サソリボアやヒールスライムなど、少し強めのモンスターもいましたが、今の私たちからすれば弱いモンスターですからね。」 


 俺の言葉にシロマが返す。 


「アタイはちょっと暇かなぁ、これじゃなまっちゃうからちょっと周り見てきてもいい?」 


 リーチュンは戦闘が少ないせいか、張り合いがなく暇を持て余していた。 


「ダメです。最初に話し合いましたよね? 勝手な行動は謹んでください。」 


 そんなリーチュンを間髪入れずに注意するイーゼ。 
 しかし、以前のようにここで喧嘩とはならない。 
 二人とも口を開く度に喧嘩するのは変わらないが、前よりはソフトになっている。 
 故に、リーチュンはイーゼの言葉に素直に従った。 


「はいはーい、わかってますよーだ。大人しくしてればいいんでしょ。」 


 どうやら二人の関係についての心配は、杞憂に終わったようだ。 
 道中に現れたモンスターは、イノシシクラスの大きさのサソリや、ギャッピーという毒を吐くイモムシ、それからスライムの進化系のヒールスライムであったが、苦戦するはずもなく、俺が戦う前にリーチュンとイーゼのタッグが一網打尽とする。 

 口では言い争っていたが、息はピッタリで、いいコンビネーションだった。 

 素早い動きで的確に急所を狙うリーチュン。 

 相手と仲間の動きを見て、的確に必要な魔法を使うイーゼ。 

 補助魔法で、二人をサポートするシロマ。 

 そして、何もしない俺! 


 何というかヒモだな、うん、これヒモ男だわ。 
 こんな姿を他のパーティに見られたらなんと噂されるかわかったもんじゃない。 


「あそこのパーティ、綺麗な女性にだけ戦わせるクズがいるわ。」 

「うらやましい、夜だけ攻撃してんじゃねぇだろうな」 


 等と言われるのが目に見えてくる。

 だが仕方ないんだ! 

 だって俺が戦うとつまらないから、ピンチになるまで俺には来るなと言うんだ! 

 俺だって戦いたいさ! 
 自慢じゃないが、俺はステータスこそ高いが、戦いの経験は少ないし、動きは素人だ! 

 俺だって、色々と練習したい! 

 そういうわけで俺は、とりあえず暇な時にひたすら素振りやシャドーチャンバラをして一人寂しく訓練をしている。 

 まぁ、そうは言ってみたけどさ、このポジションって案外悪くないんだよね。 
 美女の戦う姿を眺めている俺。 
 大きさの違う果物が風に揺れるのを見るのもまたイトオカシ! 

 まぁ個人的には、お尻の……ゲフン! 
 桃を眺める方が好きですが……。 

 一度リーチュンの細い足が伸びるチャイナ服の隙間から、パンチラをどうにか見れないものか考えた俺は、みんなが戦闘中に、必死で腹筋をしている振りをしながら覗こうとしていた。
 だが、それがシロマにばれてしまったようで白い目で見られてしまう。 

 せっかく積み上げてきた好感度が急降下してしまった。

 逆にイーゼは、そんな俺を見て、嬉しそうに自分から見せてくる。 

 だが断る! 違うんだ! そうじゃない! 
 あいつは全然わかってない! 
 見えちゃダメなんだよ! 
 見えそうで見えないのがイイんだ! 

 そんなことばかり考えている今の俺。 
 何をやってるんだか……。 
 人間暇だと碌な事をしないと聞いたことがあるが、まさに今の俺がそうかもしれない。 

 そうこうして岩場を進み続け、はや5日。 
 やっと目的の旅の祠が見えてきた。 
 パッと見は、なんていうかな、石作りの遺跡って感じである。 


「イーゼ、あれがそうか?」 

「はい、サクセス様。どうやらたどり着いたようです。」 


 目の前の遺跡には、扉などはなく、そのまま中に入れそうだった。 


「なんか普通に入れそうだな。入っても平気か?」 

「はい、中に入ってそのまま真っ直ぐ進むと行き止まりにぶつかります。そこでこの魔法の玉を使うと壁が壊れて先に進めるようになるのです。」 


 そう言って、いつぞやのダンジョンで手に入れた魔法の玉を取り出すイーゼ。 


「へぇ、なんかそれだと誰かが入れば、次の人からは普通に入れそうだな。」 

「いいえ、壊れた壁はしばらくすると元に戻ります。それに、仮に進めたとしてもワープの泉が起動しなければワープはできませんから意味がないですわ。」 


 イーゼから詳しい説明を聞くが、俺にはよく理解できない。


「ワープの泉?」 

「はい、旅の祠には全てワープの泉があり、魔法の玉を動力にして、繋がっている旅のほこらに飛ぶのです。サクセス様は初めてかと思いますが安心して下さい。私がずっと手を握っててあげますわ。」 


 そう言いつつ、イーゼは俺に手を伸ばす。 

 おい、そこは手じゃねぇだろ! 
 どこを握ろうとしているんだ、この変態エルフは! 

 イーゼはどさくさに紛れて、またしても俺のお股をニギニギしようとするが、そうはさせない。 


 パシっ! 


 そんな事をしている場合ではないのだ。 


「触るな、変態。」 


 俺が蔑んだ目でイーゼを睨むと、何故かイーぜの息が荒くなる。 


「イイ、その目でもっと罵ってください!」 


 だめだぁ、相変わらずこいつはダメだ! 
 さっきまでの理知的な姿が嘘のようだ。

 そんなふざけたパーティだが、初の祠という事で緊張感が漂っている。 
 これもまぁ、緊張をほぐすのに丁度いいのかもしれないな。 

 俺たちは、馬車を引っ張りながら旅の祠に入る。 
 祠の入り口はかなり広く、そして当然中も広くなっており、天井も高い。 
 これなら十分に馬車も通れる。 
 そのまま俺達は、しばらく一本道を歩いて行くと、言われていた通り行き止まりになった。 
 聞いていなければ引き返してしまうだろう。 
 そこでイーゼは、魔法の玉を掲げて魔力を玉に注ぎ始めた。


 ドガン! ドガン! ドガン! 


 激しい音をたてながら壁が爆発すると、道ができていった。

 ちょっと予想とは違う。
 魔法の玉が綺麗なので、もう少し神秘的に道が開くかと……。 
 目の前の道は、何重にも壁で塞がれていたようで、どんどん奥に向かって壁が破壊されて行く。 


「すげぇな、魔法の玉。これ攻撃にもつかえんじゃね?」 

「いいえ、この玉は一定の場所でしか発動できませんのでそれは無理ですわ。しかし、私が賢者に転職すれば、これよりもっと凄いのを見せられます。なんなら、サクセス様から白い爆裂魔法を出させることも出来ますわ! いいですか? いいですよね?」 

 イーゼは血走った目で俺に向かってくる。 
 大分溜まっているようだ。
 まぁ俺もだが。 


「アンタこんな時に何言ってんのよ! サクセスもバシっと言ってよ! もう!」 


 いや、俺は白い爆裂魔法が何かを少し考えていただけで、決してやましい気持ちは……。
 
 すみません、あります。 


「そ、そうだべ。TPOをわきまえたまえ。」 


 俺はリーチュンに言われて注意しようとするが、ちょっとテンパって変な言葉になってしまうのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。

猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。 そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。 あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは? そこで彼は思った――もっと欲しい! 欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。 神様とゲームをすることになった悠斗はその結果―― ※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

旦那様、どうやら御子がお出来になられたようですのね ~アラフォー妻はヤンデレ夫から逃げられない⁉

Hinaki
ファンタジー
「初めまして、私あなたの旦那様の子供を身籠りました」  華奢で可憐な若い女性が共もつけずに一人で訪れた。  彼女の名はサブリーナ。  エアルドレッド帝国四公の一角でもある由緒正しいプレイステッド公爵夫人ヴィヴィアンは余りの事に瞠目してしまうのと同時に彼女の心の奥底で何時かは……と覚悟をしていたのだ。  そうヴィヴィアンの愛する夫は艶やかな漆黒の髪に皇族だけが持つ緋色の瞳をした帝国内でも上位に入るイケメンである。  然もである。  公爵は28歳で青年と大人の色香を併せ持つ何とも微妙なお年頃。    一方妻のヴィヴィアンは取り立てて美人でもなく寧ろ家庭的でぽっちゃりさんな12歳年上の姉さん女房。  趣味は社交ではなく高位貴族にはあるまじき的なお料理だったりする。  そして十人が十人共に声を大にして言うだろう。 「まだまだ若き公爵に相応しいのは結婚をして早五年ともなるのに子も授からぬ年増な妻よりも、若くて可憐で華奢な、何より公爵の子を身籠っているサブリーナこそが相応しい」と。  ある夜遅くに帰ってきた夫の――――と言うよりも最近の夫婦だからこそわかる彼を纏う空気の変化と首筋にある赤の刻印に気づいた妻は、暫くして決意の上行動を起こすのだった。  拗らせ妻と+ヤンデレストーカー気質の夫とのあるお話です。    

処理中です...