大戦乱記

バッファローウォーズ

文字の大きさ
上 下
185 / 448
正しき忠誠

営水撃沈

しおりを挟む
 営水隊を降伏させた連合軍は、淡咲によって懐柔された洛夏集落へ入る。
ここでナイツと涼周は改めて営水と面会するのだが、営水を欲しがっている当の涼周に、彼を説得する余裕が全くと言ってよい程になかった。
と言うのも、淡咲が営水を引き渡す代わりに涼周へ御褒美を要求し、それを聞き入れた涼周は淡咲好みの衣装を着させられたのだ。

「似合っています! とても良く似合っていますよ!」

「……ぅにゅぅ……! ……にぃにぃ……!」

 腹部を大きく露出している為か、袂のある長袖を持った胸当ての様に見える薄い白衣(当然ながら襦袢もなければ掛襟もなく、正真正銘の白衣一枚。水でも被れば一撃で透ける)。へその下辺りから始まる短い緋袴に、白い足袋と黒の草履。何より最終兵器たる傾国のおへそ。

 巫女服らしからぬ巫女服を纏った美幼女然とした涼周が、そこに居た。
そこに居て、顔を真っ赤にした状態で、ナイツに小声の救援要請を出していた。

「…………淡咲、もう満足した? そろそろ解放してあげて」

 弟の見せる色に魅了され、ご執心もご執心な淡咲を制止する。
ところが残念。彼女の欲求は数分の眼福程度で収まる事はなく、営水の存在を重く捉える涼周の心に悪乗りして、更に要求を続ける。

「良いではないですか良いではないですか。減るものではありませんし、御仲間の士気も爆上がりってもんでぃ! 皆さんももっと長く見たいですよね!」

「うおおおぉぉぉぉーーー!!」

 時間延長を望む淡咲の一声は、いとも簡単に彼女の同士を増やした。
と言うより、ナイツと営水以外の全員が涼周の独特の色に堕ちていた。

 それ即ち、輝士兵や銹達及び彼の部下達に留まらず、捕縛された営水兵や懐柔されたばかりの洛夏・芹夏集落守備兵も涼周色に染まったという事。

 特に、縄目に遭っている営水隊の兵士達は興奮のあまりに拘束を気合いで解き、早くも輝士兵や銹達兵と共鳴して雄叫びを上げていた。

(…………単純な奴等。…………まぁ、でも……気持ちは分からなくは……ない……)

 ナイツ自身も涼周を見て悪い気はしない。寧ろ純粋に、気持ちが良かったという。

「……むぅぅ…………営水! 営水、営水! スイスイ!」

 頼みのナイツさえも、淡咲の策によって無力化された現状。
涼周は一転して、物理的な無力化を受けているとも精神的な陥落がまだである営水を最後の頼みとして、高露出のままに彼へ近寄った。

「私を説得するつもりでしょうが、無駄です」

 然し、機先を制したのは営水だった。
目元麗しい顔立ちながら、厳しい声音と毅然とした態度で涼周を拒む。
ただ一つ、敢えて言うならば、鼻血を垂らしていなければ絵になった。

「…………これでどうです?」

「……ぅ? ぃあぁっ!?」

 陥落までもう一押しと見た淡咲が涼周の背後より迫り、緋袴の前をたくし上げる。
被害者かつサービス主たる美幼女巫女は大勢の仲間候補達の前で、傾国のおへそに加えて純白の下着までさらけ出された事により、甘い驚鳴を上げて赤面を極めた。

「うぶはあぁっ!?」

 営水と彼の背後に控えていた営水兵は大量の鼻血を出して気絶。血の海とは正にこれを言い、エロが世界を救う力と言われる所以でもあった。

「いいなぁ……営水隊はいいなぁ……俺達も見たいなぁ……!」

「ふふふ……残念ですがチラ・エロリズムは勧誘特典なのですよ。ねぇ、弟君?」

「………………ぅにゅ…………!」

 輝士兵、銹達兵、集落守備兵は、営水隊限定で特別公開された涼周の中を自分達も見たいと訴えるが、淡咲の言葉と涼周の小さな頷きによって断念させられる。

「くぅぅ、無念だが……新たな仲間の為だ。……お前達、これから宜しくな!」

「………………(グッ!)」

 血の涙を流す連合軍の兵士達が気絶した営水兵に寄り添い、今後の協力を要求。
対する営水兵は意識がなくとも体が反応し、力強く親指を立ててそれに応えた。

 連合軍兵士の血の涙と、営水隊兵士の鼻血。二つの熱く鮮やかな液体が大地に浸透して交わり、情熱という名の強固な結束が生まれた事は、言うまでもないだろう。

「上手くいって何よりです。ナイツ御兄様の弟君たるは、伊達ではありませんね」

「…………何だかよく分からない表現だけど取り敢えず……涼周、とっっってもお疲れ様。……それとそこの変態猫はいい加減にしなさい」

 平静を取り戻したナイツが涼周の頭を撫で、涼周を後ろから抱き締めて白衣の中や緋袴の中に手を這わせる淡咲もとい変態猫を制止した。

「ふふふ……ではこのくらいで遠慮しますね」

 淡咲は名残惜しそうに涼周から離れ、一変して真剣な表情を浮かべる。

「営水殿の説得は果たされておりませんが、部下共々気絶した状態では保留にする他ありません。今は一先ず、この勢いに乗じて北と南の集落を占拠いたしましょう」

「分かった。両集落に利害を説き、戦況を更に有利にしよう!」

 打てる手を確実に打つ事が、淡咲の戦法である。
これには同意を示したナイツは自らが南に進出し、淡咲には北を任せ、銹達と涼周には現在地の守備及び営水隊の保護等を任せた。

 ナイツと淡咲は次の目標と定めた集落に到着次第、ナムール家の劣勢と営水隊の降伏を、虚偽を交えて誇張する。

 南北の集落は洛夏・芹夏集落同様、ナムール家の突然の離反に仕方なく呼応したに過ぎなかった為、いとも簡単に無血開城した。
これによりナムール家の拠点は、田俚が籠る文尊集落と本拠地である泉葉センヨウ城のみとなった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後

空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。 魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。 そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。 すると、キースの態度が豹変して……?

側妃に追放された王太子

基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」 正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。 そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。 王の代理が側妃など異例の出来事だ。 「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」 王太子は息を吐いた。 「それが国のためなら」 貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。 無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

婚約破棄?王子様の婚約者は私ではなく檻の中にいますよ?

荷居人(にいと)
恋愛
「貴様とは婚約破棄だ!」 そうかっこつけ王子に言われたのは私でした。しかし、そう言われるのは想定済み……というより、前世の記憶で知ってましたのですでに婚約者は代えてあります。 「殿下、お言葉ですが、貴方の婚約者は私の妹であって私ではありませんよ?」 「妹……?何を言うかと思えば貴様にいるのは兄ひとりだろう!」 「いいえ?実は父が養女にした妹がいるのです。今は檻の中ですから殿下が知らないのも無理はありません」 「は?」 さあ、初めての感動のご対面の日です。婚約破棄するなら勝手にどうぞ?妹は今日のために頑張ってきましたからね、気持ちが変わるかもしれませんし。 荷居人の婚約破棄シリーズ第八弾!今回もギャグ寄りです。個性な作品を目指して今回も完結向けて頑張ります! 第七弾まで完結済み(番外編は生涯連載中)!荷居人タグで検索!どれも繋がりのない短編集となります。 表紙に特に意味はありません。お疲れの方、猫で癒されてねというだけです。

【完結】結婚式前~婚約者の王太子に「最愛の女が別にいるので、お前を愛することはない」と言われました~

黒塔真実
恋愛
挙式が迫るなか婚約者の王太子に「結婚しても俺の最愛の女は別にいる。お前を愛することはない」とはっきり言い切られた公爵令嬢アデル。しかしどんなに婚約者としてないがしろにされても女性としての誇りを傷つけられても彼女は平気だった。なぜなら大切な「心の拠り所」があるから……。しかし、王立学園の卒業ダンスパーティーの夜、アデルはかつてない、世にも酷い仕打ちを受けるのだった―― ※神視点。■なろうにも別タイトルで重複投稿←【ジャンル日間4位】。

処理中です...