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第29章 ジャスミンのノート(その3)
29-2 夢からさめて 夢を見た
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夢からさめて 夢を見た。
夢からさめて 現実を見たのかもしれない。
もしかして 現実からさめて 夢を見たのかな。
ぜんぶ 同じなのかも。
なんかよく分かんなくなる。
──────────────
「まり、大丈夫?」
兄が飛行機の事故にあって 死んだという 夢。
お葬式の 夢。
兄の夢をなんども見た 夢。
サイの川原みたいな荒れ野を どこまでも 歩いていくみたいな 夢。
そんな夢から わたしは 肩をゆすられて 覚めた。
「大丈夫だよ まり。怖くないよ。」
兄の手が わたしのおでこに さわった。体温と 手のひらの触感が 伝わってくる。
わたしは お兄ちゃんのシャツのそでを ぎゅっとつかまえた。
「お兄ちゃん……?」
「夢を見てたんだね?」
「ずっと……。すごく長い夢。砂漠みたいなとこを歩いてて……お兄ちゃんは……お兄ちゃんが……。」
兄は わたしの頭を やさしくなでてくれた。
「なにも心配することはないよ。夢っていうのは 悪いものじゃない。」
わたしは まだ寝ぼけた頭で ぼんやりと思っていた。
そっか ぜんぶ 夢だったんだな。
お兄ちゃんは 死んでなんかいなかった。
飛行機事故も シンガポールに行ったのも みんな夢だったんだ――
「嫌な夢を 見たの……何度も。お兄ちゃん 帰ってきたと思ったのに 目が覚めたら夢だったの。そんな夢。お兄ちゃんは 外国に出張行って 飛行機で……。」
「僕はちゃんと ここにいるよ。」
「うん……。」
――でも。
今日は 何月何日?
お兄ちゃんが出張に行ってから 何日目?
お兄ちゃんの 時計は?
どうしてわたしは ニワトリのクッションを抱いてるの?
これは リョウ君が 元気のないわたしのために ゲームで取ってくれたものだ。
わたしは急に不安になって ふとんから飛び起きて お仏だんを 確かめた。
お兄ちゃんの位はい こわれた時計 新しい時計。
全部 ある。
やっと わたしは理解した。
事故は あった。でもお兄ちゃんは 無事だった。そして 今 ここに――
「ほんとに……帰ってきたのね?」
わたしは 子どもにもどって 思いっきり 兄に抱きついた。
「やっぱり生きてたんじゃない!」
夢からさめて 現実を見たのかもしれない。
もしかして 現実からさめて 夢を見たのかな。
ぜんぶ 同じなのかも。
なんかよく分かんなくなる。
──────────────
「まり、大丈夫?」
兄が飛行機の事故にあって 死んだという 夢。
お葬式の 夢。
兄の夢をなんども見た 夢。
サイの川原みたいな荒れ野を どこまでも 歩いていくみたいな 夢。
そんな夢から わたしは 肩をゆすられて 覚めた。
「大丈夫だよ まり。怖くないよ。」
兄の手が わたしのおでこに さわった。体温と 手のひらの触感が 伝わってくる。
わたしは お兄ちゃんのシャツのそでを ぎゅっとつかまえた。
「お兄ちゃん……?」
「夢を見てたんだね?」
「ずっと……。すごく長い夢。砂漠みたいなとこを歩いてて……お兄ちゃんは……お兄ちゃんが……。」
兄は わたしの頭を やさしくなでてくれた。
「なにも心配することはないよ。夢っていうのは 悪いものじゃない。」
わたしは まだ寝ぼけた頭で ぼんやりと思っていた。
そっか ぜんぶ 夢だったんだな。
お兄ちゃんは 死んでなんかいなかった。
飛行機事故も シンガポールに行ったのも みんな夢だったんだ――
「嫌な夢を 見たの……何度も。お兄ちゃん 帰ってきたと思ったのに 目が覚めたら夢だったの。そんな夢。お兄ちゃんは 外国に出張行って 飛行機で……。」
「僕はちゃんと ここにいるよ。」
「うん……。」
――でも。
今日は 何月何日?
お兄ちゃんが出張に行ってから 何日目?
お兄ちゃんの 時計は?
どうしてわたしは ニワトリのクッションを抱いてるの?
これは リョウ君が 元気のないわたしのために ゲームで取ってくれたものだ。
わたしは急に不安になって ふとんから飛び起きて お仏だんを 確かめた。
お兄ちゃんの位はい こわれた時計 新しい時計。
全部 ある。
やっと わたしは理解した。
事故は あった。でもお兄ちゃんは 無事だった。そして 今 ここに――
「ほんとに……帰ってきたのね?」
わたしは 子どもにもどって 思いっきり 兄に抱きついた。
「やっぱり生きてたんじゃない!」
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