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Prologue
盗賊団 継ぎし者 レイシュール 1
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私は、強くなど無い。
その事に気が付いたのは兄が私を打ち果たし、敗北の味を知ったその日だった。
家督相続の争いに負けただけ、後は兄を支えながら生きていく。それが私に残された道だったハズなのに、私は今、レイシュール盗賊団という仲間を率いている。
レイシュール盗賊団の首領なんて言えば響きは格好良いが、私はこの中で一番、他の仲間たちと比べると経緯を見るに盗賊らしい男だ。いや、盗賊として生きる事を、誘われたでも無く自ら選択したというのが一番しっくりくるだろうか。
私は自分の家を継がない事が決まった段階で何かが振り切れた。
弱いのなら、何処までも弱さを抱えて生きてやると思い切った行動に出たのだ。
まずは父の金庫から金を盗んだ。その金で遊ぶ訳でも無く。ただただ盗んだ事も隠して銀行に私の口座を作った。手元に残った私の口座を示す木板が…何故か、凄く重たく感じたのを覚えている。
木板を渡せば預けた金を引き出してくれる。そういうシステムだ。
そして私は、その木板を手に持った瞬間…確かに感じたんだ。
罪悪感を…それに伴う。背徳的な楽しさを…。
段々と家族も私を見なくなった。自由奔放な生活を始めた私を、『気が狂った』とまで誹り見て見ぬふりをした。
『お前を、勘当する』
その言葉を受け、次の日には出て行けと言われた。
喜んで…と言った所だった。
そして、家宝の白銀の盾と剣を持って私は飛び出した。ただ山の中へ、山の中へ、何かを考えていた訳でも無い、父の金を盗んだ時と同じ、ただ衝動的に何かを求めて。
そしてそこで、私は1人の女性に出会った。
その山で暮らしていると言いながら、血の付いた短剣を振るって辺りに血を飛ばした姿は私には今でも…今だからこそ脳裏に焼き付いて離れない光景となっている。
山の中で暮らしているから、まともな人間では無いことは分かりきっていた。今時、樵ですら山の麓で暮らす世の中だ。
なぜ山の中に?
そんな疑問はあったが、彼女との出会いは私が野犬の群れに襲われて命を助けられるという何とも情けない形だったので、尋ねたのはしばらく後になってからだ。短剣の血は、その為だ。
野犬に襲われて血を流していた私は彼女の下で療養し、山の中での暮らしを覚えた私は毎晩ふらりと家から出ては朝方近くにふらりと帰ってくる彼女に、「山奥にいるのと夜に出掛けているのは関係が?」と尋ねた。
すると彼女は悪びれる様子も無く。爽やかな笑顔と共に「盗賊やってんのよ!」と私に告げた。
それが、私と彼女…後に私が名を継ぐ女性、レイシュールとの出会いだった。
盗賊団 団長 継ぎし者 レイシュール
私は彼女に盗賊だと告げられて驚く反面、憧れを抱いた。
盗賊という存在が悪として見られているのは、この世の中では周知の事実、彼女もそれを分かり切った上で盗賊だと名乗ったのだろう。
彼女の下で療養をしながら、私はその仕事ぶりに耳を傾けた。
『今日は貧困街を任されてるのに着服してるヤツの金をバラ撒いてやった』
『乱暴な盗賊連中から宝を奪い取った』
『酒場で女に手を出してる馬鹿を全裸で柱に縛りつけて来た』
何処までも面白可笑しくて、盗賊というよりは義賊の働きを彼女はそれでも『盗んでいる事に変わりは無いのよ!』と自分を悪として貫いていた。
たった一人の盗賊、レイシュール。
私は療養の中で、彼女に惹かれて行った。
誰にもトロッコの脱線を予期出来ない様に、私も自分の幸せな日々が突如として道を踏み外す所など想像していなかった。
レイシュールは強かった。私などとは違い、彼女は涙を流す姿も、悔しさに震える姿も私には見せなかった。
だがある日、彼女がボロボロになって帰って来た。涙も流して、短剣も折れて、土と砂を身体に付けて泣いていた。
『護れなかった』
とある街から離れた所に建てられた小さな教会、孤児院も営むその教会、彼女はそこに寄付を続けていたのだという。だが、彼女の努力は国の騎士によって壊されてしまった。
豊かな財源を有しているのに、虚偽の報告をして王国より金を騙し取った罪…らしい。彼女が寄付をした事で、孤児院の経営は成り立っていた。だが、成り立つ筈の無い孤児院が未だに続いている事を王国は疑問に思い、調査し…多額の寄付金の帳簿をみつけられてしまったらしい。
そして、王国の騎士団が攻め入って来たのだという。異端の徒を駆逐せよと、宗教国家でも無いくせに邪魔な存在を潰す為の隠れ蓑に宗教を一時利用する事を選んだのだ。
王国騎士団12人に対して、レイシュールはたった1人で戦ったのだ。
結果は…相手は撤退して行ったが、教会はもう建てなおす事も出来ない程に壊れてしまった。
そしてレイシュールはその日から、夜中にも出かける事は無くなった。
ベッドの上で、傷付いた身体を休める日々だった。
一カ月が経って、彼女はベッドの上で泣きながら私に告げた。
『脚が動かなくなった』と、『もう誰からも盗めない』と、涙を流した。
彼女は語った。盗賊を始めた理由を、彼女もまた盗賊に拾われ、盗賊に育てられ、盗賊である義父が亡くなった時、盗賊を継ぐと決めたのだという。
苦難の日々だった。それでも、自分の行動が誰かの未来に繋がるのだと、義父に拾われ、命を救われた自分の様に未来を作るのだと信じて行動を続けたのだと話してくれた。
彼女の持つ短剣は、その義父の形見だったとも話してくれた。
決して弱者からは盗まず。強者からのみ盗んでいた父の姿に、彼女は盗賊に憧れすら抱いていたという。
強かった彼女が俺の胸にしがみついて涙を流す姿は、胸を締め付ける痛みを私に与えた。
そして段々と、彼女の容態は悪くなっていった。傷が化膿している訳でも無く。彼女の体力そのものが限界を迎えていたのだ。出血、心的疲労、睡眠不足から彼女は視界さえも曖昧な中で…私に告げた。
『君は、強くなれるよ』
そして、息絶えた。
恋愛関係にあった訳でも無い、ただ恩があっただけだ。
本名すら教えず。彼女が作ってくれるご飯を食べるばかりの日々だった。
今なら分かる。私にはそれで充分だったんだと…。
私はその日から、己の名を捨てた。強くなる為に、強く在った彼女の名を受け継いだ。
それが私、レイシュールという人間の真実だ。
そして出会う。
私に光をくれる。彼等と…。
その事に気が付いたのは兄が私を打ち果たし、敗北の味を知ったその日だった。
家督相続の争いに負けただけ、後は兄を支えながら生きていく。それが私に残された道だったハズなのに、私は今、レイシュール盗賊団という仲間を率いている。
レイシュール盗賊団の首領なんて言えば響きは格好良いが、私はこの中で一番、他の仲間たちと比べると経緯を見るに盗賊らしい男だ。いや、盗賊として生きる事を、誘われたでも無く自ら選択したというのが一番しっくりくるだろうか。
私は自分の家を継がない事が決まった段階で何かが振り切れた。
弱いのなら、何処までも弱さを抱えて生きてやると思い切った行動に出たのだ。
まずは父の金庫から金を盗んだ。その金で遊ぶ訳でも無く。ただただ盗んだ事も隠して銀行に私の口座を作った。手元に残った私の口座を示す木板が…何故か、凄く重たく感じたのを覚えている。
木板を渡せば預けた金を引き出してくれる。そういうシステムだ。
そして私は、その木板を手に持った瞬間…確かに感じたんだ。
罪悪感を…それに伴う。背徳的な楽しさを…。
段々と家族も私を見なくなった。自由奔放な生活を始めた私を、『気が狂った』とまで誹り見て見ぬふりをした。
『お前を、勘当する』
その言葉を受け、次の日には出て行けと言われた。
喜んで…と言った所だった。
そして、家宝の白銀の盾と剣を持って私は飛び出した。ただ山の中へ、山の中へ、何かを考えていた訳でも無い、父の金を盗んだ時と同じ、ただ衝動的に何かを求めて。
そしてそこで、私は1人の女性に出会った。
その山で暮らしていると言いながら、血の付いた短剣を振るって辺りに血を飛ばした姿は私には今でも…今だからこそ脳裏に焼き付いて離れない光景となっている。
山の中で暮らしているから、まともな人間では無いことは分かりきっていた。今時、樵ですら山の麓で暮らす世の中だ。
なぜ山の中に?
そんな疑問はあったが、彼女との出会いは私が野犬の群れに襲われて命を助けられるという何とも情けない形だったので、尋ねたのはしばらく後になってからだ。短剣の血は、その為だ。
野犬に襲われて血を流していた私は彼女の下で療養し、山の中での暮らしを覚えた私は毎晩ふらりと家から出ては朝方近くにふらりと帰ってくる彼女に、「山奥にいるのと夜に出掛けているのは関係が?」と尋ねた。
すると彼女は悪びれる様子も無く。爽やかな笑顔と共に「盗賊やってんのよ!」と私に告げた。
それが、私と彼女…後に私が名を継ぐ女性、レイシュールとの出会いだった。
盗賊団 団長 継ぎし者 レイシュール
私は彼女に盗賊だと告げられて驚く反面、憧れを抱いた。
盗賊という存在が悪として見られているのは、この世の中では周知の事実、彼女もそれを分かり切った上で盗賊だと名乗ったのだろう。
彼女の下で療養をしながら、私はその仕事ぶりに耳を傾けた。
『今日は貧困街を任されてるのに着服してるヤツの金をバラ撒いてやった』
『乱暴な盗賊連中から宝を奪い取った』
『酒場で女に手を出してる馬鹿を全裸で柱に縛りつけて来た』
何処までも面白可笑しくて、盗賊というよりは義賊の働きを彼女はそれでも『盗んでいる事に変わりは無いのよ!』と自分を悪として貫いていた。
たった一人の盗賊、レイシュール。
私は療養の中で、彼女に惹かれて行った。
誰にもトロッコの脱線を予期出来ない様に、私も自分の幸せな日々が突如として道を踏み外す所など想像していなかった。
レイシュールは強かった。私などとは違い、彼女は涙を流す姿も、悔しさに震える姿も私には見せなかった。
だがある日、彼女がボロボロになって帰って来た。涙も流して、短剣も折れて、土と砂を身体に付けて泣いていた。
『護れなかった』
とある街から離れた所に建てられた小さな教会、孤児院も営むその教会、彼女はそこに寄付を続けていたのだという。だが、彼女の努力は国の騎士によって壊されてしまった。
豊かな財源を有しているのに、虚偽の報告をして王国より金を騙し取った罪…らしい。彼女が寄付をした事で、孤児院の経営は成り立っていた。だが、成り立つ筈の無い孤児院が未だに続いている事を王国は疑問に思い、調査し…多額の寄付金の帳簿をみつけられてしまったらしい。
そして、王国の騎士団が攻め入って来たのだという。異端の徒を駆逐せよと、宗教国家でも無いくせに邪魔な存在を潰す為の隠れ蓑に宗教を一時利用する事を選んだのだ。
王国騎士団12人に対して、レイシュールはたった1人で戦ったのだ。
結果は…相手は撤退して行ったが、教会はもう建てなおす事も出来ない程に壊れてしまった。
そしてレイシュールはその日から、夜中にも出かける事は無くなった。
ベッドの上で、傷付いた身体を休める日々だった。
一カ月が経って、彼女はベッドの上で泣きながら私に告げた。
『脚が動かなくなった』と、『もう誰からも盗めない』と、涙を流した。
彼女は語った。盗賊を始めた理由を、彼女もまた盗賊に拾われ、盗賊に育てられ、盗賊である義父が亡くなった時、盗賊を継ぐと決めたのだという。
苦難の日々だった。それでも、自分の行動が誰かの未来に繋がるのだと、義父に拾われ、命を救われた自分の様に未来を作るのだと信じて行動を続けたのだと話してくれた。
彼女の持つ短剣は、その義父の形見だったとも話してくれた。
決して弱者からは盗まず。強者からのみ盗んでいた父の姿に、彼女は盗賊に憧れすら抱いていたという。
強かった彼女が俺の胸にしがみついて涙を流す姿は、胸を締め付ける痛みを私に与えた。
そして段々と、彼女の容態は悪くなっていった。傷が化膿している訳でも無く。彼女の体力そのものが限界を迎えていたのだ。出血、心的疲労、睡眠不足から彼女は視界さえも曖昧な中で…私に告げた。
『君は、強くなれるよ』
そして、息絶えた。
恋愛関係にあった訳でも無い、ただ恩があっただけだ。
本名すら教えず。彼女が作ってくれるご飯を食べるばかりの日々だった。
今なら分かる。私にはそれで充分だったんだと…。
私はその日から、己の名を捨てた。強くなる為に、強く在った彼女の名を受け継いだ。
それが私、レイシュールという人間の真実だ。
そして出会う。
私に光をくれる。彼等と…。
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