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Prologue
盗賊団 剛腕のマシェット 1
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「あぁ、そういや五歳だっけかねぇ、アッハッハッハッハ!」
金猫の異名を持つチャルチュさん、少し適当な所がある人だけれど、僕によく話しかけてくれるとても良い人だ。
ただこうも肩を組まれると女性的な部分が柔らかさを主張してきて顔に熱が灯るので困ってしまう。
「それなら肉を食え肉を!大きくなれないぞ?」
「ぼ、僕だって歳を重ねればマシェットさんくらい大きくなりますよ!」
マシェットさんはこの盗賊団の稼ぎ頭だ、身長二メートル超えの巨漢剛腕両斧使い、盗み家業では無くモンスターの討伐で稼いでいる所が盗賊団の稼ぎ頭としての悩みどころだとぼやいていた。
「マシェットォ~?私は嫌だぁ!ユーマがあんなゴツゴツ強面野郎になるなんて!」
チャルチュさんがお酒を一気に煽りながらそう言うけれど、男の子としてはあれ程までに分かりやすい強さには憧れを抱くものだ。
「一緒に飲んでいて目の前にいる私が傷つくとは思わないのか…」
そんな繊細な一面も持っているマシェットさん、手に持った小さな樽に取手が付いたビールグラスを傾けて一息に酒を煽ったのを見てチャルチュさんが「いいぞー!」と囃し立てていた。
冷静なところも憧れる要因だ、しかし何よりも憧れているのは、その知識、これまでの生活で培われたマシェットさんの知識に僕はとても惹かれていた。
今から三日前、僕はマシェットさんと一緒に山に狩りに行った。
マシェットさんは、その…あの人の悩みでもあるからあまり言いたくは無いのだけれどスキンヘッドだ。口髭をたくわえている所がワンポイントで、僕にも馴染みのある日本風な顔をしている。
「ユーマ、あれを見てみろ」
指差された先を見ると、青く美しい羽根を持つ鳥がいた。尾が長く、嘴は黄色くて丁度ひし形を半分にした様な形をしていた。目元がアイシャドウを使用しているかと見紛う程に黒く縁取られていた。体長は目算で一メートル、羽根を広げれば三メートルに近い大きな鳥だ。
「マシェットさん、あれは?」
「ケーラノウスという鳥だ、この辺りでは清鳥とも呼ばれている」
清鳥…確かにあのケーラノウスは不思議と危険な生き物には見えないし、こちらから害する気持ちもまるで起きない。
『キーキキキキキキキキキキキキキ』
ケーラノウスが高い声でその鳴き声を披露してくれた。周囲に響き渡るその声、静かな山の中、ケーラノウスの声だけが僕達の耳に届いていた。
鳥の声、僕が知っているのは朝、目覚めの合図にもしていた僕の家の何処かで飼われていた鶏の『コケコッコー』と時折外から聞こえた雀の『ちゅんちゅん』だけだった。
だから、マシェットさんに言われ、気付き聞くことが出来たケーラノウスの鳴き声に僕は感動を覚えていた。
「美しい声ですね」
「あぁ、私が知る鳥の中でもあれ程美しい鳴き声を持つ鳥は他にいない」
僕が昔いた世界でも、美しい鳥、声、容姿、そして佇まいを評価して高額で取引される鳥はいた。
いた…と言ったけれど、所詮は本の中の知識だ。僕は文章の中にある表現からその姿を想像することや、図鑑にある鳥の絵や写真を見ることはあったけれども鳴き声を聞いたことは無い。
成程、これは高額を支払ってでも聞く価値のある物だ。
「『何も知らぬ者の心にこそ、美しさは真の姿を見せる』…ですね」
「…良い言葉だ。まさにその通りだな」
「ある書籍の中で心打たれた言葉です。何かに先入観を持った人間は、真に美しい物を見ても美醜の価値を正確に測ることが出来ないといいます」
「私達の様に悪行を重ねてきた人間は何も知らぬ者の眼にどう映るのだろうか…」
盗賊を盗賊と知らずに出会ったら…か、僕はまさにその立場だったから、きっとこの言葉を投げ掛けたのだろう。
僕の眼に映ったこの人達は、
「きっと、何も見えませんよ」
「何も見えない?」
「はい、少なくとも僕は何も見えませんでした。美しさも汚さも、初対面では見えないものも、この世界にはあるのではありませんか?」
「そうなると、先程の言葉は間違いとなるな」
「一例ですよ、この世の全てを一つの言葉で表現することなんて出来ませんから」
もしもそんなことが可能なら、この世界も、前の世界も、もっと簡単な世の中になっていたはずだ。
「そうだな、その通りだ」
それっきり、マシェットさんは口を閉ざしてケーラノウスの鳴き声に聞き入っていた。
少し時間が経って、ケーラノウスは美しい青い尾を靡かせながら空へと旅立っていった。
「ケーラノウスはこの辺りでは清鳥と言われ、見ることが出来た者は一日が幸せに過ごせるといわれている」
「それなら、これから行う狩りも上手くいきそうですね」
「あぁ、知っているか?ケーラノウスは自分に害意を持っている相手に対してとても敏感なんだ」
「…えっと、それってつまり」
「いるぞ、灰猪だ」
マシェットさんは背中に括り付けていた両斧をその手に持つと、僕達から見て右方へと体の向きを変えた。
いるぞ…と言われたけれども僕の眼には映らない、単に身長が低くて草木の向こう側が見えないという理由だけれども。
「灰猪、どんな動物ですか?」
僕の知る猪と知識を照らし合わせようと思い、そう尋ねた。
猪というと、猪突猛進という言葉もあるように突進してくるイメージが強い、けれども、僕の読んだ狩猟教本の中には猪の恐ろしさは頭の良さにあると書いてった。
猪は強者と弱者を判別することが非常に上手いという。例えば、人と犬が共闘して猪と相対していたとして、犬よりも人を優先して襲いに来るとのことだ。
「そうだな…肉に臭みや硬さこそあるが、食事の際に感じるそれらは私が打ち果たしたのだと実感させてくれるスパイスになる」
マシェットさん、出来れば味よりも生態系とかそういった方面の話が聞きたかったです。
「強い、ですか?」
僕の顔を一度見て、マシェットさんは再度前を向いた。
「いや、私程では無い」
僕を安心させるためなのか、マシェットさんは優しげな声音でそう言った。
飛び立ったケーラノウスが灰猪を恐れていたのか、それとも灰猪を見付けたマシェットさんを恐れていたのか、僕には分からなかった。
金猫の異名を持つチャルチュさん、少し適当な所がある人だけれど、僕によく話しかけてくれるとても良い人だ。
ただこうも肩を組まれると女性的な部分が柔らかさを主張してきて顔に熱が灯るので困ってしまう。
「それなら肉を食え肉を!大きくなれないぞ?」
「ぼ、僕だって歳を重ねればマシェットさんくらい大きくなりますよ!」
マシェットさんはこの盗賊団の稼ぎ頭だ、身長二メートル超えの巨漢剛腕両斧使い、盗み家業では無くモンスターの討伐で稼いでいる所が盗賊団の稼ぎ頭としての悩みどころだとぼやいていた。
「マシェットォ~?私は嫌だぁ!ユーマがあんなゴツゴツ強面野郎になるなんて!」
チャルチュさんがお酒を一気に煽りながらそう言うけれど、男の子としてはあれ程までに分かりやすい強さには憧れを抱くものだ。
「一緒に飲んでいて目の前にいる私が傷つくとは思わないのか…」
そんな繊細な一面も持っているマシェットさん、手に持った小さな樽に取手が付いたビールグラスを傾けて一息に酒を煽ったのを見てチャルチュさんが「いいぞー!」と囃し立てていた。
冷静なところも憧れる要因だ、しかし何よりも憧れているのは、その知識、これまでの生活で培われたマシェットさんの知識に僕はとても惹かれていた。
今から三日前、僕はマシェットさんと一緒に山に狩りに行った。
マシェットさんは、その…あの人の悩みでもあるからあまり言いたくは無いのだけれどスキンヘッドだ。口髭をたくわえている所がワンポイントで、僕にも馴染みのある日本風な顔をしている。
「ユーマ、あれを見てみろ」
指差された先を見ると、青く美しい羽根を持つ鳥がいた。尾が長く、嘴は黄色くて丁度ひし形を半分にした様な形をしていた。目元がアイシャドウを使用しているかと見紛う程に黒く縁取られていた。体長は目算で一メートル、羽根を広げれば三メートルに近い大きな鳥だ。
「マシェットさん、あれは?」
「ケーラノウスという鳥だ、この辺りでは清鳥とも呼ばれている」
清鳥…確かにあのケーラノウスは不思議と危険な生き物には見えないし、こちらから害する気持ちもまるで起きない。
『キーキキキキキキキキキキキキキ』
ケーラノウスが高い声でその鳴き声を披露してくれた。周囲に響き渡るその声、静かな山の中、ケーラノウスの声だけが僕達の耳に届いていた。
鳥の声、僕が知っているのは朝、目覚めの合図にもしていた僕の家の何処かで飼われていた鶏の『コケコッコー』と時折外から聞こえた雀の『ちゅんちゅん』だけだった。
だから、マシェットさんに言われ、気付き聞くことが出来たケーラノウスの鳴き声に僕は感動を覚えていた。
「美しい声ですね」
「あぁ、私が知る鳥の中でもあれ程美しい鳴き声を持つ鳥は他にいない」
僕が昔いた世界でも、美しい鳥、声、容姿、そして佇まいを評価して高額で取引される鳥はいた。
いた…と言ったけれど、所詮は本の中の知識だ。僕は文章の中にある表現からその姿を想像することや、図鑑にある鳥の絵や写真を見ることはあったけれども鳴き声を聞いたことは無い。
成程、これは高額を支払ってでも聞く価値のある物だ。
「『何も知らぬ者の心にこそ、美しさは真の姿を見せる』…ですね」
「…良い言葉だ。まさにその通りだな」
「ある書籍の中で心打たれた言葉です。何かに先入観を持った人間は、真に美しい物を見ても美醜の価値を正確に測ることが出来ないといいます」
「私達の様に悪行を重ねてきた人間は何も知らぬ者の眼にどう映るのだろうか…」
盗賊を盗賊と知らずに出会ったら…か、僕はまさにその立場だったから、きっとこの言葉を投げ掛けたのだろう。
僕の眼に映ったこの人達は、
「きっと、何も見えませんよ」
「何も見えない?」
「はい、少なくとも僕は何も見えませんでした。美しさも汚さも、初対面では見えないものも、この世界にはあるのではありませんか?」
「そうなると、先程の言葉は間違いとなるな」
「一例ですよ、この世の全てを一つの言葉で表現することなんて出来ませんから」
もしもそんなことが可能なら、この世界も、前の世界も、もっと簡単な世の中になっていたはずだ。
「そうだな、その通りだ」
それっきり、マシェットさんは口を閉ざしてケーラノウスの鳴き声に聞き入っていた。
少し時間が経って、ケーラノウスは美しい青い尾を靡かせながら空へと旅立っていった。
「ケーラノウスはこの辺りでは清鳥と言われ、見ることが出来た者は一日が幸せに過ごせるといわれている」
「それなら、これから行う狩りも上手くいきそうですね」
「あぁ、知っているか?ケーラノウスは自分に害意を持っている相手に対してとても敏感なんだ」
「…えっと、それってつまり」
「いるぞ、灰猪だ」
マシェットさんは背中に括り付けていた両斧をその手に持つと、僕達から見て右方へと体の向きを変えた。
いるぞ…と言われたけれども僕の眼には映らない、単に身長が低くて草木の向こう側が見えないという理由だけれども。
「灰猪、どんな動物ですか?」
僕の知る猪と知識を照らし合わせようと思い、そう尋ねた。
猪というと、猪突猛進という言葉もあるように突進してくるイメージが強い、けれども、僕の読んだ狩猟教本の中には猪の恐ろしさは頭の良さにあると書いてった。
猪は強者と弱者を判別することが非常に上手いという。例えば、人と犬が共闘して猪と相対していたとして、犬よりも人を優先して襲いに来るとのことだ。
「そうだな…肉に臭みや硬さこそあるが、食事の際に感じるそれらは私が打ち果たしたのだと実感させてくれるスパイスになる」
マシェットさん、出来れば味よりも生態系とかそういった方面の話が聞きたかったです。
「強い、ですか?」
僕の顔を一度見て、マシェットさんは再度前を向いた。
「いや、私程では無い」
僕を安心させるためなのか、マシェットさんは優しげな声音でそう言った。
飛び立ったケーラノウスが灰猪を恐れていたのか、それとも灰猪を見付けたマシェットさんを恐れていたのか、僕には分からなかった。
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