28 / 48
第1章
20話 経験値と能力値
しおりを挟む
「ケント、これって……?」
「たぶん、次のレベルまでの目安だと思う」
「次のレベルまでの目安?」
「ああ。魔物を倒せば増えて、100になったらレベルアップ、みたいな感じだろう」
「それがわかるってすごいことよ!?」
ルーシーはそう言いながら、慌てて自分の加護板も取り出した。
**********
【名前】ルーシー
【レベル】24
【HP】100/100
【MP】100/100
【EXP】89/100
【SP】0
【冒険者】F
**********
「あ、あたしのところにも、出てるよ!!」
「……だろうな」
どうやら経験値を見たいというケントの想いに、〈魔女の恩恵〉が応えたらしい。
(じゃあほかにも……)
そう思っていろいろ念じてみたが、HPを割合ではなく絶対値で表示したい、などの要望には応えてくれなかった。
「ところでこれ、なんて読むの? EとPはわかるんだけど……」
「イー・エックス・ピーだな」
Experience Point、すなわち経験値である。
「じゃあ、それが89ってことは、あたしもうすぐレベルアップってこと?」
ルーシーは自身の【EXP】が9割近く貯まっていることに、自然と笑みを浮かべた。
「そうだ、ケントは今回の【SP】どうするの?」
「とりあえずまた【攻撃力】に……いや、だめだな」
今回も【攻撃力】上昇を試みたが、FからEへ上げるのに【SP】3では足りないとわかった。
「じゃあ、別の上げとく?」
「そうだな……じゃあ」
**********
【名前】ケント
【レベル】3
【HP】100/100
【MP】22/100
【EXP】12/100
【SP】3→1
【冒険者】G
【攻撃力】F(A~G)
【防御力】H(S)
【魔力】F(B)
【精神力】G(B)
【敏捷性】H
【器用さ】G→F
【運】G
**********
【SP】2を使って【器用さ】をGからFに上げた。
「【敏捷性】は上げないの?」
HからGであれば、残った1ポイントで上昇可能だ。
「いや、これで様子を見る」
だがケントには考えがあるのか、そのまま行動を開始した。
少し歩いたところでホーンラビットを発見し、MP3の威力で倒せた。
【攻撃力】を上げていないので、MPの絶対値が増えたおかげだろう。
そのぶん、MPの回復速度は少し遅くなっていた。
ちなみに【EXP】はおよそ50。
どうやら個体によって多少変動するようだ。
それでも大きな差はなかったので、もう1匹倒したところでレベルが4になった。
**********
【名前】ケント
【レベル】4
【HP】100/100
【MP】20/100
【EXP】4/100
【SP】5
【冒険者】G
**********
レベル4になり【SP】を4獲得したことで、前回のあまりと合わせて5になった。
(つまり、余った【SP】が消えたり勝手に振り分けられたりってことはないわけだ)
これを確認したいがために、ケントは先ほど【SP】を1ポイント取っておいたのだった。
また、【EXP】の余剰分から察するに、レベルアップによって同じ魔物から得られるポイントが半減することもわかった。
「よし、それじゃ……」
**********
【名前】ケント
【レベル】4
【HP】100/100
【MP】20/100
【EXP】6/100
【SP】5→0
【冒険者】G
【攻撃力】F→E(A~G)
【防御力】H(S)
【魔力】F(B)
【精神力】G(B)
【敏捷性】H→G
【器用さ】F
【運】G
**********
「どう?」
「FからEに上げるには4ポイント必要だったよ」
ここまでの法則を見るに、能力値のランクをひとつあげるたびに、必要な【SP】は倍になるようだった。
「じゃあさ、次はあたしが倒していい?」
「もちろん」
続けて発見したホーンラビットを、ルーシーは駆け寄るなりあっさりと両断した。
「……だめね。ひとつも増えないわ」
つまり、レベル24のルーシーがホーンラビットを倒した場合の獲得経験値は1以下ということだ。
「あれ? 俺は5ポイント増えてるな」
「そりゃそうよ、パーティーだもの」
「でも、なんにもしてないぞ?」
「警戒はしてたでしょ?」
「それは、まぁ」
「じゃあ、おかしくないわね」
パーティーを組み、メンバーが魔物を倒した場合、攻撃に参加しなくてもレベルがあがるのだという。
回復役なら回復や支援、盾役なら防御、斥候役なら戦闘中の警戒はもちろん、敵を発見したり不意打ちを防いだりしても、レベルアップに繋がるのだ。
「レベルの上がりやすさは、貢献度に応じて変わってくるわね」
たとえば他のメンバーが充分に弱らせていれば、トドメを刺したからといってレベルが上がりやすくなる、ということはないらしい。
(なるほど、貢献度に応じてかなり複雑に経験値が割り振られるみたいだな)
ケントはそう解釈した。
「ここからしばらくは、ケントが戦ったほうがいいわね」
「だな」
さしずめパワーレベリングだな、と思いながら、ケントは戦闘を続けた。
ホーンラビットを数匹倒したあたりで森に到着し、ゴブリンと戦ったが、とくに問題はなかった。
レベルアップでアイテムボックスのスロットが増えたおかげで、ドロップアイテムも問題なく収納できている。
ちなみに1スロットあたりの収納量だが、ホーンラビットの角は2~3本、ゴブリンの骨は5~6本だった。
個体によって品質が異なり、それにともなって収納できる量も変わってくるようだ。
「新人のなかにはホーンラビットを避けながら森にきて、ゴブリンでレベル上げをする人もいるわね」
聞けばゴブリンはホーンラビットより弱いという。
実際獲得経験値も低かった。
「なるほど」
そうは言っても、ケントにしてみれば離れた場所から1発で仕留めているだけなので、その実感はなかった。
ただ、こうも戦闘がうまくいっているのは、ルーシーの存在が大きい。
向こうが気づくよりも先にルーシーが敵を発見するので、毎回のように不意打ちが成功するのだ。
ケントひとりなら、成果は半分以下だろう。
手痛い反撃を喰らっていたかもしれない。
「あたしは〈気配察知〉とか、いろいろ持ってるからね」
なにかコツがあるのかと尋ねた際の、彼女の答えがこうだった。
スキルとは、本来その人が持っているもの、あるいは習得した技能を、加護が底上げしてくれるのものらしい。
なのでレベルアップとは関係なく習得可能なのだ。
「なるほど」
ケントが〈射撃〉スキルを持っていたのも、加護獲得以前の経験のおかげだと判明した。
「コボルトがいるわね……あたしにまかせて」
少し森の奥に入ったところでコボルトを発見したルーシーは、生い茂る木々を縫うように移動し、数回斬りつけて倒してしまった。
「やった! イーなんとかが1増えたわ」
【EXP】の上昇を確認したルーシーは、さらなる敵を求めて森を進む。
ケントもあとに続いた。
(意外と、平気だな)
町を出て数時間、ほとんど歩き通しだが、軽い疲労を覚える程度だった。
どうやらレベルアップによって、体力が底上げされているらしい。
「あれ? 今度は増えないわね」
2匹目のコボルトを倒したが、ルーシーの【EXP】は増えなかった。
さらに森を歩き回って2匹倒したところで、ようやく1ポイント獲得した。
どうやら最初の時点で小数点以下のポイントがある程度貯まっていたようだ。
「つまり、あと20~30匹はコボルトを倒さなくちゃいけないわけね……」
「いけそう?」
「さすがに2~3日はかかると思う」
コボルトはゴブリンやラビット系に比べて数が少ない。
1撃で倒せる相手でもないので、逃げられるだけならまだしも、思わぬ反撃を喰らうおそれもあった。
「どうする?」
「そうね。無理をしてもよくないし、1度森を出て休憩しよっか。ケントのMPも残り少ないだろうし」
ホーンラビットとコボルトの連戦で、MPはひと桁になっていた
「ああ、そうだな」
そう返事しながら、ケントは感心していた。
新たに【SP】の存在を知り、自分が強くなれる可能性を知ったルーシーは、一刻も早くレベルを上げたいはずだ。
だがそのはやる気持ちを抑え、安全を意識した判断を下してくれた。
十数年におよぶ冒険者としての経験は、ダテじゃないのだろう。
「とはいえ……」
ケントは不意に、あたりを見回す。
「ケント、どうかした?」
「いや、森を出るには、どっちへいけばいいのかな……」
鬱蒼と生い茂る草木のせいで、じぶんがどの方向から来たのかがまったくわからなかった。
「あっちに向かえば、すぐに出られるわよ」
「すごいな」
「まぁ、このあたりは庭みたいなものだしね」
ルーシーはそう言って肩をすくめた。
それだけ長く低ランク生活を続けているということは、あまり自慢ともいえないのだろう。
だが、ケントは素直に感心した。
「ルーシーとはぐれたら、遭難してしまうね」
「あら、そのときはマップを使えばいいじゃない」
「あー、それがあったか」
加護板には能力値の確認以外に、マップという機能があった。
そのことを思い出したケントは、加護板を取り出す。
「なんとなく念じれば、でてくるわよ」
「なるほど……おっ」
ケントがマップを見たいと念じると、加護板の表面に簡素な地図が表示された。
そこにはエデの町を示す光点と、そこから彼が歩いた道のりが表示されていた。
さらに念じることで縮尺や基点を変えられるようだった。
(オートマッピングとはありがたい)
そう心の中で呟きながら、マップの縮尺を小さくしていく。
「ん?」
「どうしたの?」
「いや、これ……」
エデの町から少し離れた場所に、別の光点を見つけた。
マップ上では未到達の地点だ。
「加護を得る前に寄ったことのある町なんかが表示されることもあるから、問題ないと思うけど」
「いや、でも、俺は……」
「あっ、そっか」
異世界人であるケントは、エデの町以外のどこにも行ったことがない。
さらに森の奥らしいのだが、いったいこれはなにを示すものなのか。
「ねぇ、ケント、これってあたしたちがはじめて出会った場所の、近くみたいだけど」
「そうなのか?」
あのときどこをどう歩いたかまったく覚えていないが、ルーシーがそう言うならそうなのだろう。
「もしかして……」
「なにか心当たりがあるの?」
マップを見ただけでは見当がつかない。
だがルーシーと出会った場所の近くだというなら……。
「俺がこの世界に飛ばされた、最初の場所かもしれない」
「たぶん、次のレベルまでの目安だと思う」
「次のレベルまでの目安?」
「ああ。魔物を倒せば増えて、100になったらレベルアップ、みたいな感じだろう」
「それがわかるってすごいことよ!?」
ルーシーはそう言いながら、慌てて自分の加護板も取り出した。
**********
【名前】ルーシー
【レベル】24
【HP】100/100
【MP】100/100
【EXP】89/100
【SP】0
【冒険者】F
**********
「あ、あたしのところにも、出てるよ!!」
「……だろうな」
どうやら経験値を見たいというケントの想いに、〈魔女の恩恵〉が応えたらしい。
(じゃあほかにも……)
そう思っていろいろ念じてみたが、HPを割合ではなく絶対値で表示したい、などの要望には応えてくれなかった。
「ところでこれ、なんて読むの? EとPはわかるんだけど……」
「イー・エックス・ピーだな」
Experience Point、すなわち経験値である。
「じゃあ、それが89ってことは、あたしもうすぐレベルアップってこと?」
ルーシーは自身の【EXP】が9割近く貯まっていることに、自然と笑みを浮かべた。
「そうだ、ケントは今回の【SP】どうするの?」
「とりあえずまた【攻撃力】に……いや、だめだな」
今回も【攻撃力】上昇を試みたが、FからEへ上げるのに【SP】3では足りないとわかった。
「じゃあ、別の上げとく?」
「そうだな……じゃあ」
**********
【名前】ケント
【レベル】3
【HP】100/100
【MP】22/100
【EXP】12/100
【SP】3→1
【冒険者】G
【攻撃力】F(A~G)
【防御力】H(S)
【魔力】F(B)
【精神力】G(B)
【敏捷性】H
【器用さ】G→F
【運】G
**********
【SP】2を使って【器用さ】をGからFに上げた。
「【敏捷性】は上げないの?」
HからGであれば、残った1ポイントで上昇可能だ。
「いや、これで様子を見る」
だがケントには考えがあるのか、そのまま行動を開始した。
少し歩いたところでホーンラビットを発見し、MP3の威力で倒せた。
【攻撃力】を上げていないので、MPの絶対値が増えたおかげだろう。
そのぶん、MPの回復速度は少し遅くなっていた。
ちなみに【EXP】はおよそ50。
どうやら個体によって多少変動するようだ。
それでも大きな差はなかったので、もう1匹倒したところでレベルが4になった。
**********
【名前】ケント
【レベル】4
【HP】100/100
【MP】20/100
【EXP】4/100
【SP】5
【冒険者】G
**********
レベル4になり【SP】を4獲得したことで、前回のあまりと合わせて5になった。
(つまり、余った【SP】が消えたり勝手に振り分けられたりってことはないわけだ)
これを確認したいがために、ケントは先ほど【SP】を1ポイント取っておいたのだった。
また、【EXP】の余剰分から察するに、レベルアップによって同じ魔物から得られるポイントが半減することもわかった。
「よし、それじゃ……」
**********
【名前】ケント
【レベル】4
【HP】100/100
【MP】20/100
【EXP】6/100
【SP】5→0
【冒険者】G
【攻撃力】F→E(A~G)
【防御力】H(S)
【魔力】F(B)
【精神力】G(B)
【敏捷性】H→G
【器用さ】F
【運】G
**********
「どう?」
「FからEに上げるには4ポイント必要だったよ」
ここまでの法則を見るに、能力値のランクをひとつあげるたびに、必要な【SP】は倍になるようだった。
「じゃあさ、次はあたしが倒していい?」
「もちろん」
続けて発見したホーンラビットを、ルーシーは駆け寄るなりあっさりと両断した。
「……だめね。ひとつも増えないわ」
つまり、レベル24のルーシーがホーンラビットを倒した場合の獲得経験値は1以下ということだ。
「あれ? 俺は5ポイント増えてるな」
「そりゃそうよ、パーティーだもの」
「でも、なんにもしてないぞ?」
「警戒はしてたでしょ?」
「それは、まぁ」
「じゃあ、おかしくないわね」
パーティーを組み、メンバーが魔物を倒した場合、攻撃に参加しなくてもレベルがあがるのだという。
回復役なら回復や支援、盾役なら防御、斥候役なら戦闘中の警戒はもちろん、敵を発見したり不意打ちを防いだりしても、レベルアップに繋がるのだ。
「レベルの上がりやすさは、貢献度に応じて変わってくるわね」
たとえば他のメンバーが充分に弱らせていれば、トドメを刺したからといってレベルが上がりやすくなる、ということはないらしい。
(なるほど、貢献度に応じてかなり複雑に経験値が割り振られるみたいだな)
ケントはそう解釈した。
「ここからしばらくは、ケントが戦ったほうがいいわね」
「だな」
さしずめパワーレベリングだな、と思いながら、ケントは戦闘を続けた。
ホーンラビットを数匹倒したあたりで森に到着し、ゴブリンと戦ったが、とくに問題はなかった。
レベルアップでアイテムボックスのスロットが増えたおかげで、ドロップアイテムも問題なく収納できている。
ちなみに1スロットあたりの収納量だが、ホーンラビットの角は2~3本、ゴブリンの骨は5~6本だった。
個体によって品質が異なり、それにともなって収納できる量も変わってくるようだ。
「新人のなかにはホーンラビットを避けながら森にきて、ゴブリンでレベル上げをする人もいるわね」
聞けばゴブリンはホーンラビットより弱いという。
実際獲得経験値も低かった。
「なるほど」
そうは言っても、ケントにしてみれば離れた場所から1発で仕留めているだけなので、その実感はなかった。
ただ、こうも戦闘がうまくいっているのは、ルーシーの存在が大きい。
向こうが気づくよりも先にルーシーが敵を発見するので、毎回のように不意打ちが成功するのだ。
ケントひとりなら、成果は半分以下だろう。
手痛い反撃を喰らっていたかもしれない。
「あたしは〈気配察知〉とか、いろいろ持ってるからね」
なにかコツがあるのかと尋ねた際の、彼女の答えがこうだった。
スキルとは、本来その人が持っているもの、あるいは習得した技能を、加護が底上げしてくれるのものらしい。
なのでレベルアップとは関係なく習得可能なのだ。
「なるほど」
ケントが〈射撃〉スキルを持っていたのも、加護獲得以前の経験のおかげだと判明した。
「コボルトがいるわね……あたしにまかせて」
少し森の奥に入ったところでコボルトを発見したルーシーは、生い茂る木々を縫うように移動し、数回斬りつけて倒してしまった。
「やった! イーなんとかが1増えたわ」
【EXP】の上昇を確認したルーシーは、さらなる敵を求めて森を進む。
ケントもあとに続いた。
(意外と、平気だな)
町を出て数時間、ほとんど歩き通しだが、軽い疲労を覚える程度だった。
どうやらレベルアップによって、体力が底上げされているらしい。
「あれ? 今度は増えないわね」
2匹目のコボルトを倒したが、ルーシーの【EXP】は増えなかった。
さらに森を歩き回って2匹倒したところで、ようやく1ポイント獲得した。
どうやら最初の時点で小数点以下のポイントがある程度貯まっていたようだ。
「つまり、あと20~30匹はコボルトを倒さなくちゃいけないわけね……」
「いけそう?」
「さすがに2~3日はかかると思う」
コボルトはゴブリンやラビット系に比べて数が少ない。
1撃で倒せる相手でもないので、逃げられるだけならまだしも、思わぬ反撃を喰らうおそれもあった。
「どうする?」
「そうね。無理をしてもよくないし、1度森を出て休憩しよっか。ケントのMPも残り少ないだろうし」
ホーンラビットとコボルトの連戦で、MPはひと桁になっていた
「ああ、そうだな」
そう返事しながら、ケントは感心していた。
新たに【SP】の存在を知り、自分が強くなれる可能性を知ったルーシーは、一刻も早くレベルを上げたいはずだ。
だがそのはやる気持ちを抑え、安全を意識した判断を下してくれた。
十数年におよぶ冒険者としての経験は、ダテじゃないのだろう。
「とはいえ……」
ケントは不意に、あたりを見回す。
「ケント、どうかした?」
「いや、森を出るには、どっちへいけばいいのかな……」
鬱蒼と生い茂る草木のせいで、じぶんがどの方向から来たのかがまったくわからなかった。
「あっちに向かえば、すぐに出られるわよ」
「すごいな」
「まぁ、このあたりは庭みたいなものだしね」
ルーシーはそう言って肩をすくめた。
それだけ長く低ランク生活を続けているということは、あまり自慢ともいえないのだろう。
だが、ケントは素直に感心した。
「ルーシーとはぐれたら、遭難してしまうね」
「あら、そのときはマップを使えばいいじゃない」
「あー、それがあったか」
加護板には能力値の確認以外に、マップという機能があった。
そのことを思い出したケントは、加護板を取り出す。
「なんとなく念じれば、でてくるわよ」
「なるほど……おっ」
ケントがマップを見たいと念じると、加護板の表面に簡素な地図が表示された。
そこにはエデの町を示す光点と、そこから彼が歩いた道のりが表示されていた。
さらに念じることで縮尺や基点を変えられるようだった。
(オートマッピングとはありがたい)
そう心の中で呟きながら、マップの縮尺を小さくしていく。
「ん?」
「どうしたの?」
「いや、これ……」
エデの町から少し離れた場所に、別の光点を見つけた。
マップ上では未到達の地点だ。
「加護を得る前に寄ったことのある町なんかが表示されることもあるから、問題ないと思うけど」
「いや、でも、俺は……」
「あっ、そっか」
異世界人であるケントは、エデの町以外のどこにも行ったことがない。
さらに森の奥らしいのだが、いったいこれはなにを示すものなのか。
「ねぇ、ケント、これってあたしたちがはじめて出会った場所の、近くみたいだけど」
「そうなのか?」
あのときどこをどう歩いたかまったく覚えていないが、ルーシーがそう言うならそうなのだろう。
「もしかして……」
「なにか心当たりがあるの?」
マップを見ただけでは見当がつかない。
だがルーシーと出会った場所の近くだというなら……。
「俺がこの世界に飛ばされた、最初の場所かもしれない」
0
お気に入りに追加
608
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
地球にダンジョンができたと思ったら俺だけ異世界へ行けるようになった
平尾正和/ほーち
ファンタジー
地球にダンジョンができて10年。
そのせいで世界から孤立した日本だったが、ダンジョンから採れる資源や魔素の登場、魔法と科学を組み合わせた錬金術の発達により、かつての文明を取り戻した。
ダンジョンにはモンスターが存在し、通常兵器では倒せず、ダンジョン産の武器が必要となった。
そこでそういった武器や、新たに発見されたスキルオーブによって得られる〈スキル〉を駆使してモンスターと戦う冒険者が生まれた。
ダンジョン発生の混乱で家族のほとんどを失った主人公のアラタは、当時全財産をはたいて〈鑑定〉〈収納〉〈翻訳〉〈帰還〉〈健康〉というスキルを得て冒険者となった。
だが冒険者支援用の魔道具『ギア』の登場により、スキルは大きく価値を落としてしまう。
底辺冒険者として活動を続けるアラタは、雇い主であるAランク冒険者のジンに裏切られ、トワイライトホールと呼ばれる時空の切れ目に飛び込む羽目になった。
1度入れば2度と戻れないその穴の先には、異世界があった。
アラタは異世界の人たちから協力を得て、地球との行き来ができるようになる。
そしてアラタは、地球と異世界におけるさまざまなものの価値の違いを利用し、力と金を手に入れ、新たな人生を歩み始めるのだった。
ねえ、私の本性を暴いてよ♡ オナニークラブで働く女子大生
花野りら
恋愛
オナニークラブとは、個室で男性客のオナニーを見てあげたり手コキする風俗店のひとつ。
女子大生がエッチなアルバイトをしているという背徳感!
イケナイことをしている羞恥プレイからの過激なセックスシーンは必読♡
NTRエロゲの世界に転移した俺、ヒロインの好感度は限界突破。レベルアップ出来ない俺はスキルを取得して無双する。~お前らNTRを狙いすぎだろ~
ぐうのすけ
ファンタジー
高校生で18才の【黒野 速人】はクラス転移で異世界に召喚される。
城に召喚され、ステータス確認で他の者はレア固有スキルを持つ中、速人の固有スキルは呪い扱いされ城を追い出された。
速人は気づく。
この世界、俺がやっていたエロゲ、プリンセストラップダンジョン学園・NTRと同じ世界だ!
この世界の攻略法を俺は知っている!
そして自分のステータスを見て気づく。
そうか、俺の固有スキルは大器晩成型の強スキルだ!
こうして速人は徐々に頭角を現し、ハーレムと大きな地位を築いていく。
一方速人を追放したクラスメートの勇者源氏朝陽はゲームの仕様を知らず、徐々に成長が止まり、落ちぶれていく。
そしてクラス1の美人【姫野 姫】にも逃げられ更に追い込まれる。
順調に強くなっていく中速人は気づく。
俺達が転移した事でゲームの歴史が変わっていく。
更にゲームオーバーを回避するためにヒロインを助けた事でヒロインの好感度が限界突破していく。
強くなり、ヒロインを救いつつ成り上がっていくお話。
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
カクヨムとアルファポリス同時掲載。
ヒューマンテイム ~人間を奴隷化するスキルを使って、俺は王妃の体を手に入れる~
三浦裕
ファンタジー
【ヒューマンテイム】
人間を洗脳し、意のままに操るスキル。
非常に希少なスキルで、使い手は史上3人程度しか存在しない。
「ヒューマンテイムの力を使えば、俺はどんな人間だって意のままに操れる。あの美しい王妃に、ベッドで腰を振らせる事だって」
禁断のスキル【ヒューマンテイム】の力に目覚めた少年リュートは、その力を立身出世のために悪用する。
商人を操って富を得たり、
領主を操って権力を手にしたり、
貴族の女を操って、次々子を産ませたり。
リュートの最終目標は『王妃の胎に子種を仕込み、自らの子孫を王にする事』
王家に近づくためには、出世を重ねて国の英雄にまで上り詰める必要がある。
邪悪なスキルで王家乗っ取りを目指すリュートの、ダーク成り上がり譚!
【R18】転生?した先は、リアルよりもHな世界でした。
N.M.V
ファンタジー
注)本小説は、1話毎にエロシーンが御座います。嫌悪感を抱かれる方、苦手な方は閲覧をお控えください。
……そこはダンジョン奥深く、戦闘の狭間で休憩していたワタシは、パーティーメンバーの1人、後衛の魔法士にいきなり弱の麻痺魔法をかけられ、押し倒された。
「なに考えれんろのよ!!、やめれぇ!!」
麻痺のせいでろれつが回らない。
「テメェが、素直にヤラせてくれねーからだろ?」
他のメンバーに助けを求め視線を向けた。だけど、全員が下卑た笑いをしてる。コイツら全員最初からワタシを犯す気なんだ。
最悪だわ。
魔法士は、ワタシの装備を剥がし、その下の服を引き裂いて、下半身の下着を引きちぎった。
「ペナルティ食らうわよ……」
「そんなもん怖くねーよ、気持ち良けりゃイイんだよ」
魔法士はそう言ってズボンを下ろした。ギンギンに張ったサオを握りしめ、ワタシの股を割って腰を入れて来る。
「や、やめてぇ、いやぁん」
「好き者のくせに、カマトトぶるんじゃねーよ、最初に誘ったのはオメエじゃねーか」
強引なのは嫌なのよ!
魔法士のサオがワタシのアソコに当てがわれ、先っちょが入って来る。太くて硬い、リアルとは異なるモノが……
「や、いやっ、あっ、ああっ」
………
ワタシの名前は、「エム」
人類は平和だろうが戦争中だろうが、心に余裕があろうがなかろうが、生きるも死ぬも関係なしに、とにかく欲望のままにHをしたがる。
ワタシがプレイしていたゲームは、そんな人類の中で、人より頭がちょっと賢くてオカシなゲームマスターが
「とにかくHがしたい」
なーんて感じで娯楽を創造したんだと思う。
類い稀なるフルダイブ型エロゲー。世界設定は、剣と魔法のファンタジー、エロゲーだけあり、Hもできちゃう。
でも内容は本格的、一切の妥協はなし。
生と死の間、命のやりとり、バトルオブサスペンス!、世界も広い!、未踏の大地、拡張されるストーリー!、無限に広がるナントやら。
因みに、H出来るのは倫理上、人同士のみ。
ゴブリンに攫われてヤラレちゃうとかナンセンス。そんなのは他所でヤレ、です。
…そんなゲーム世界から、いきなり異世界に飛ばされてしまった不幸なワタシの物語です。
【R18】淫乱メイドは今日も乱れる
ねんごろ
恋愛
ご主人様のお屋敷にお仕えするメイドの私は、乱れるしかない運命なのです。
毎日のように訪ねてくるご主人様のご友人は、私を……
※性的な表現が多分にあるのでご注意ください
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる