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第四章 パーティーを組もう

4-7 デルフィーヌのランクアップ

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「ショウスケくん、さっきからバンバン撃ってるけど、魔力酔いとか大丈夫?」
「魔力酔い? 魔弾くらいなら100発撃っても全然平気っすよ」
 
 そんな俺の返事に、フェデーレさんは眉をひそめて首を傾げる。
 
「いやいや、ショウスケくんヒト族だよねぇ?」
「ええ、まあ」
「だったらそんなに魔術バンバン撃ったらまずいでしょ」
「ああ、いや、俺、何回も気絶寸前まで魔術の練習してたから、そのたびに魔力が増えちゃって」
「はぁ? そんなので魔力が増えたら、みんなもっと魔力持ってるでしょ。普通のヒト族は日常生活レベルの生活魔術を使うくらいの魔力しか持ってないんだよ? 僕ら獣人はそれ以下だけどさ」
 
 あれあれ? なんか変だぞ?
 
「えーっと、普通はそんなに魔術って使えないんですか?」
「そりゃそうでしょ。そんなにポンポン魔術が使えるのなんて、エルフくらいのもんだよ」
 
 ここでデルフィーヌさんが、無言で自慢気に胸を張る。
 
「もちろんヒト族の中にも、生まれつき魔力を多く持ってる人はいるみたいだけど、ほんのひと握りだよね。もしくは、エルフや魔族の血を取り入れてる特殊な一族とかさ」
 
 ああ、そういうサラブレッド的な人たちもいるのね。
 
「修行である程度伸ばせるらしいけど、気絶寸前まで魔力消費したら保有魔力量が増えるなんて話、聞いたことないし、それが事実ならとっくに魔術士ギルドあたりが魔術士養成に使ってるでしょ。あそこ、研究者は多いけど、魔術士は万年人手不足だから」
 
 ふむう……、どうやらここにも加護の成長補正が働いてるのかもしれんなぁ。
 なんというか、ゲーマー的には、MPをガンガン消費したら、そのぶん最大MPが増えるってイメージがあるんだよねー。
 その思い込みが加護の成長補正に影響してるのかもしれないな。
 
 じゃあなんで死に戻りで何回もHPが0になってんのにそっちは増えないんだ、って話だけど、MPは消費した時点で最大値アップ、HPは0になった時点でノーカウント、ってイメージがあるわ。
 このあたりの意識改革ができれば、死に戻りの度にHPが増える可能性もあるけど、長年染み込んだゲーマーの意識はそうそう変えられないだろうなぁ。
 
「じゃあ、普通のヒトは魔力増やせないと?」
「そうだねぇ。魔術をたくさん使って魔物を倒していくと、“強化”で増えることが多い、とは聞くけどね。それでも個人差はかなりあるみたい。人によっては、消費魔力量を減らすってことができるみたいだけど、いまのところ体系化できてないから、そっちは“天啓”に頼るしかないかな」
 
 なるほどねー。
 運がよければレベルアップでMPが増えるって感じか。
 あとは、〈消費MP軽減〉的なスキルがあるんだろうな。
 
「ショウスケくん、まさかエルフの血が入ってる、とかないよね?」
 
 なんかデルフィーヌさんが興味津々な表情でこっち見てるよ。
 ちょっと照れくさいっす……。
 
「あははー、どうなんでしょうねぇ? 両親とか家族とか、昔のことはあんま覚えてないんで」
 
 すっかり忘れてたけど、記憶喪失の設定を引っ張り出してくる。
 俺の家系は縄文時代まで遡っても、人間の先祖しかいないと思うけど、こっちの俺は一応お稲荷さん製だからなぁ。
 とりあえず笑ってごまかしとこ。
 
「あ、そーだ。ふたりともちょっと待ってて」
 
 俺から納得のいく答えが得られないとわかったフェデーレさんは、訓練場をキョロキョロと見回した後、小走りに俺たちのもとを離れた。
 
 そして1分もしないうちにひとりの男性を連れてくる。
 さらっさらの金髪ロン毛、整った顔立ちに尖った耳。
 うん、エルフだね。
 
「こちら、弓術教官のクロードさん」
「なんだフェデーレ、急に」
 
 突然連れてこられたクロードさんは少し困惑している。
 
「まぁまぁ。えーっと、こちらはEランク冒険者のショウスケくん。で、こちらはFランク冒険者のデルフィーヌちゃん」
 
 フェデーレさんがクロードさんに俺たちを紹介し、お互い適当に挨拶を済ませる。
 
「で、クロードさんに見て欲しいんだけど……」
 
 そういいつつ、フェデーレさんがコントロールパネルを操作すると、8体のゴーレムが動きまわり始めた。
 
「デルフィーヌちゃん、やっちゃって」
「え? あ、うん」
 
 デルフィーヌさんは多少困惑しつつも魔弓を構え、各種《矢》系魔術を放ってゴーレムを破壊していく。
 
「ほう……」
 
 クロードさんはその様子に、感心しているようだった。
 
「……とまぁこんな感じだけど、どうかな?」
「どうかな、とは?」
「Eランク、大丈夫だと思う?」
「Eランク程度なら問題あるまい」
「オッケー。じゃああとで承認よろしくー。というわけで、デルフィーヌちゃん、Eランクに昇格ね」
「え? えぇ!?」
 
 突然のことで困惑するデルフィーヌさん。
 正直俺も状況がイマイチ飲み込めていない。
 
「デルフィーヌちゃんは普段からFランク依頼の薬草採取をコツコツがんばってたでしょ? それで昨日、Eランク依頼を無事成功させたわけだから、その実績があって、ギルド公認の教官からお墨付きが貰えれば、ランクアップは問題ないんだよ」
「えっと、じゃあ、私……」
「うん、ソロでダンジョン探索出来るね」
「……!!」
 
 驚きと嬉しさで声も出ねぇって感じだな、デルフィーヌさん。
 
「よかったですね、デルフィーヌさん」
「ええ。すぐに追いつくから、待ってなさいよ!」
 
 ビシッと指をさされ、宣言された。
 どうやらライバル視されちゃったみたいだ。
 うん、それはそれで嬉しいかも。
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