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第四章 パーティーを組もう
4-4 ひとつ屋根の下……なんてね
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日没前にトセマへ入った俺達は、とりあえずギルドへの報告を終え、メシも食わずに寝台に入った。
デルフィーヌさんも自分の宿に帰る気力がなく、ギルドの寝台を使ったようだ。
同じ屋根の下で寝てると思うと、ちょっとどころじゃなくドキドキしたけど、それ以上に疲れていたのか、寝台に横たわるなり俺はサクッと眠ってしまった。
……もっとこの夜を堪能したかった!
翌朝起きて歯を磨いていたら、洗面台でデルフィーヌさんと鉢合わせ。
向こうは半分寝ぼけててこっちには気づいてないみたいだったけど、パジャマ姿で寝ぼけている姿は尊かった。
一瞬女神がいるのかと思って目が離せなくなったけど、じろじろ見ているうちに彼女の目が覚めて、嫌われたら大変なので、俺は断腸の思いで目を逸らした。
それにしても、男女が同じフロアに泊まるのはどうかと思ったが、聞けばギルドの寝台にはふたり以上入れない仕掛けがあるらしい。
タダで泊まれる個室なんてのは、血の気の多い冒険者からすれば格好の盛り場だもんな。
そりゃそれなりの対策をしてるわけだ。
その後、身支度を終えて階段を降りようとしたところで、さっきとは別人みたいにシャキッとしてるデルフィーヌさんと合流。
うん、いつものデルフィーヌさんも、やっぱり尊いな!
「な、なによ?」
い、いかんいかん、つい見とれてしまった……。
少し顔を赤くしてるから、怒らせてしまったかも知れない。
「あ……い、いえ、別に。おはようございます」
「え、ああ、おはよう」
受付にいくと、いつものようにフェデーレさんが対応してくれた。
「や、おふたりさん。報酬届いてるよ」
ってことなので、カードを渡して報酬を受け取る。
依頼主的には、大型家具まで引き取れるとは思っていなかったらしく、想像を遥かに上回る成果だったので、なんと報酬は本来の倍、2,000Gとなった。
もともと何回かにわけて調査を依頼する予定だったのだが、めぼしいものはすべて《収納》しており、残りの物は写真を見た結果引き取るのは困難と判断したので、次回以降の調査が不要になった。
場合によっては高ランクの魔術士に高い報酬を払って《収納》してもらう予定だったものまで、俺たちが引き取ったので、倍払っても当初の予算を大幅に下回ることになるのだとか。
「高そうな物はほとんどデルフィーヌさんが《収納》したわけだし、俺の取り分は少なめでいいですよ」
「ダメよ! そもそもあなたがいないと受けられない依頼だったんだし、護衛料も兼ねてショウスケのほうが多く受け取るべきだわ!」
……いま、ショウスケって……俺を名前で呼んでくれたよ?
「護衛といっても、ゴーストはほとんどデルフィーヌさんが倒したわけですし……」
もう、充分です。
お金以上の物をいただきましたから!
「なにいってんの!? 私なんて、わーきゃー言いながら、あなたに、しがみ……ついて……ぁぅ……」
なんだか突然言葉に勢いがなくなり、顔を真っ赤にした彼女は、顔を逸らした。
「おねがい……報酬、せめて半分でいいから受け取って……それで、その……忘れて……?」
彼女は真っ赤な顔を逸らしたまま、うるうるとした目だけをこちらに向けた。
やばい、萌え死ぬ……!
次の瞬間死に戻りが発生しても、不思議じゃない……っつーか、何度も死んでこのやりとりを繰り返したい……!!
そのためなら、死ぬことなんて全然怖くねぇぜっ!!
「だめ……?」
「いや、その……」
うつむき加減のまま顔をこちらに向けるデルフィーヌさん。
涙目で上目遣いとか……この娘、確実に俺を殺しに来ている……!!
「わ、わかりました! じゃあ、折半ってことで……!」
この時間、永遠に続け! と思ったけど、マジ耐えられなさそうなので、彼女の提案を呑むことにした。
「じゃ、ひとり1,000Gね。いやいや、朝からいいもの見せてくれるじゃない」
フェデーレさんがからかい半分にそんなことをいうもんだから、デルフィーヌさん、さらに顔を赤くして完全に俯いちゃったよ……。
ああ、俺も顔が熱い……!
「それから、遺族の方からこれを預かってるよ」
手渡されたのは書斎で見つけた、エリックの手記だった。
しかも――、
「あら、鍵が開いてる?」
デルフィーヌさんもそこに気づいたのか、手記を見て声を上げた。
その驚きのおかげで、少し冷静になれた。
「ああ、なんでも遺族の方が以前、エリック当人から預かっていた鍵があったらしくてね。試したら開いたんだって。で、内容を見てもよくわからないし、本人の遺志に従うなら発見者に渡すのが妥当だろうってことで」
というわけで、とりあえず俺が受け取った。
「これ、どうする?」
「あなたが、見つけたんだから……あなたが持ってれば、いいと、思うわよ」
まだちょっと頬を染めて、時々視線を逸らしながらも、デルフィーヌさんがそう言ってくれたので、ありがたくいただくことにした。
魔法剣士を目指す者として、先輩の意見は気になるからな。
「それってあのエリック・エイタスの手記だよねぇ? どんなことが書いてあるの?」
フェデーレさんが興味津々だったので、とりあえず適当なページを開いてみる。
――――――――
魔法剣《風刃剣》について
まず魔法により風を刃に纏わせる。
それを遠くに飛ばすイメージで剣を振ると、遠くの敵を倒せるので便利だ。
しかし、それならば〈風魔術〉《風刃》を使ったほうが遥かに楽だし、威力も高い。
私は天才であるがゆえに〈風魔法〉と〈水魔法〉を数年で習得できたが、凡人である君らは一生かかっても単属性の魔法すら覚えることはできないかもしれない。
だが魔術士ギルドに行けば、金を払うだけで魔術を覚えられるのだから、凡人は修行する時間を労働に回して金を稼ぎ、その金で魔術を覚えるほうがいいに決まっている。
ああ、魔法ではなく、魔法剣の話だったな。
先日、新たに開発されたという《風斬飛剣》というものを試してみたが、やはりそちらの方が《風刃剣》より使いやすい。
無論、天才である私が使う《風刃剣》には及ばないが、魔力あたりのコストパフォーマンスを考えると《風斬飛剣》もありじゃないかな。
結論
凡人は魔法の修行をする暇があるなら、金を稼いで魔術を覚えろ。
――――――――
俺は手記を床に叩きつけた。
デルフィーヌさんも自分の宿に帰る気力がなく、ギルドの寝台を使ったようだ。
同じ屋根の下で寝てると思うと、ちょっとどころじゃなくドキドキしたけど、それ以上に疲れていたのか、寝台に横たわるなり俺はサクッと眠ってしまった。
……もっとこの夜を堪能したかった!
翌朝起きて歯を磨いていたら、洗面台でデルフィーヌさんと鉢合わせ。
向こうは半分寝ぼけててこっちには気づいてないみたいだったけど、パジャマ姿で寝ぼけている姿は尊かった。
一瞬女神がいるのかと思って目が離せなくなったけど、じろじろ見ているうちに彼女の目が覚めて、嫌われたら大変なので、俺は断腸の思いで目を逸らした。
それにしても、男女が同じフロアに泊まるのはどうかと思ったが、聞けばギルドの寝台にはふたり以上入れない仕掛けがあるらしい。
タダで泊まれる個室なんてのは、血の気の多い冒険者からすれば格好の盛り場だもんな。
そりゃそれなりの対策をしてるわけだ。
その後、身支度を終えて階段を降りようとしたところで、さっきとは別人みたいにシャキッとしてるデルフィーヌさんと合流。
うん、いつものデルフィーヌさんも、やっぱり尊いな!
「な、なによ?」
い、いかんいかん、つい見とれてしまった……。
少し顔を赤くしてるから、怒らせてしまったかも知れない。
「あ……い、いえ、別に。おはようございます」
「え、ああ、おはよう」
受付にいくと、いつものようにフェデーレさんが対応してくれた。
「や、おふたりさん。報酬届いてるよ」
ってことなので、カードを渡して報酬を受け取る。
依頼主的には、大型家具まで引き取れるとは思っていなかったらしく、想像を遥かに上回る成果だったので、なんと報酬は本来の倍、2,000Gとなった。
もともと何回かにわけて調査を依頼する予定だったのだが、めぼしいものはすべて《収納》しており、残りの物は写真を見た結果引き取るのは困難と判断したので、次回以降の調査が不要になった。
場合によっては高ランクの魔術士に高い報酬を払って《収納》してもらう予定だったものまで、俺たちが引き取ったので、倍払っても当初の予算を大幅に下回ることになるのだとか。
「高そうな物はほとんどデルフィーヌさんが《収納》したわけだし、俺の取り分は少なめでいいですよ」
「ダメよ! そもそもあなたがいないと受けられない依頼だったんだし、護衛料も兼ねてショウスケのほうが多く受け取るべきだわ!」
……いま、ショウスケって……俺を名前で呼んでくれたよ?
「護衛といっても、ゴーストはほとんどデルフィーヌさんが倒したわけですし……」
もう、充分です。
お金以上の物をいただきましたから!
「なにいってんの!? 私なんて、わーきゃー言いながら、あなたに、しがみ……ついて……ぁぅ……」
なんだか突然言葉に勢いがなくなり、顔を真っ赤にした彼女は、顔を逸らした。
「おねがい……報酬、せめて半分でいいから受け取って……それで、その……忘れて……?」
彼女は真っ赤な顔を逸らしたまま、うるうるとした目だけをこちらに向けた。
やばい、萌え死ぬ……!
次の瞬間死に戻りが発生しても、不思議じゃない……っつーか、何度も死んでこのやりとりを繰り返したい……!!
そのためなら、死ぬことなんて全然怖くねぇぜっ!!
「だめ……?」
「いや、その……」
うつむき加減のまま顔をこちらに向けるデルフィーヌさん。
涙目で上目遣いとか……この娘、確実に俺を殺しに来ている……!!
「わ、わかりました! じゃあ、折半ってことで……!」
この時間、永遠に続け! と思ったけど、マジ耐えられなさそうなので、彼女の提案を呑むことにした。
「じゃ、ひとり1,000Gね。いやいや、朝からいいもの見せてくれるじゃない」
フェデーレさんがからかい半分にそんなことをいうもんだから、デルフィーヌさん、さらに顔を赤くして完全に俯いちゃったよ……。
ああ、俺も顔が熱い……!
「それから、遺族の方からこれを預かってるよ」
手渡されたのは書斎で見つけた、エリックの手記だった。
しかも――、
「あら、鍵が開いてる?」
デルフィーヌさんもそこに気づいたのか、手記を見て声を上げた。
その驚きのおかげで、少し冷静になれた。
「ああ、なんでも遺族の方が以前、エリック当人から預かっていた鍵があったらしくてね。試したら開いたんだって。で、内容を見てもよくわからないし、本人の遺志に従うなら発見者に渡すのが妥当だろうってことで」
というわけで、とりあえず俺が受け取った。
「これ、どうする?」
「あなたが、見つけたんだから……あなたが持ってれば、いいと、思うわよ」
まだちょっと頬を染めて、時々視線を逸らしながらも、デルフィーヌさんがそう言ってくれたので、ありがたくいただくことにした。
魔法剣士を目指す者として、先輩の意見は気になるからな。
「それってあのエリック・エイタスの手記だよねぇ? どんなことが書いてあるの?」
フェデーレさんが興味津々だったので、とりあえず適当なページを開いてみる。
――――――――
魔法剣《風刃剣》について
まず魔法により風を刃に纏わせる。
それを遠くに飛ばすイメージで剣を振ると、遠くの敵を倒せるので便利だ。
しかし、それならば〈風魔術〉《風刃》を使ったほうが遥かに楽だし、威力も高い。
私は天才であるがゆえに〈風魔法〉と〈水魔法〉を数年で習得できたが、凡人である君らは一生かかっても単属性の魔法すら覚えることはできないかもしれない。
だが魔術士ギルドに行けば、金を払うだけで魔術を覚えられるのだから、凡人は修行する時間を労働に回して金を稼ぎ、その金で魔術を覚えるほうがいいに決まっている。
ああ、魔法ではなく、魔法剣の話だったな。
先日、新たに開発されたという《風斬飛剣》というものを試してみたが、やはりそちらの方が《風刃剣》より使いやすい。
無論、天才である私が使う《風刃剣》には及ばないが、魔力あたりのコストパフォーマンスを考えると《風斬飛剣》もありじゃないかな。
結論
凡人は魔法の修行をする暇があるなら、金を稼いで魔術を覚えろ。
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俺は手記を床に叩きつけた。
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