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第三章 ダンジョンへ行こう
3-2 基礎戦闘訓練-基礎体力-
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Fランクへのランクアップを終えた翌日、いよいよ、訓練初日を迎えた。
指定された二刻半(午前5時)に、冒険者ギルドの訓練場へと向かう。
場所は冒険者ギルドの地下3階。
はっきり言おう、めちゃくちゃ広い。
なんでも冒険者ギルドの敷地だけじゃなく、魔術士ギルトと治療士ギルドの敷地にもまたがっているらしい。
治療士ギルドとは道を挟んでいるので、その道の下にも訓練場は延びているわけだ。
朝早い時間だが、何人もの冒険者が訓練に励んでいる。
俺は“基礎戦闘訓練受講者はこちら”と書かれた案内に沿って、進んでいった。
何人かの男女が、結構な間隔をあけて立っている。
それぞれ持っている武器が違っているので、おそらくは彼らが教官なのだろう。
この日は大剣、長剣、槌、槍、そして細剣の教官がいるみたいだ。
俺以外にも到着している人がいて、すでに教官らしき人たちの前には列ができ始めていた。
ほぼ同時に到着したり、あとから来た人も、各々希望する武器の教官の前に並んでいった。
さて、持っている武器で、ある程度判別出来るんだが、長剣と細剣は見極めが難しいな。
ひとりは男性で、ひとりは女性。
俺と同じように、どっちに並ぼうかオロオロしてる人が何人かいたんだが、それに気付いた男性のほうが手を挙げる。
「あー、長剣術希望の人はこっち、細剣術の人は彼女のほうに並んでくれ」
どうやら女性のほうが細剣術の教官らしいので、そちらへ移動した。
その教官の容姿だが、紅毛碧眼っていうんですかね?
いわゆるファンタジー的な赤毛じゃなく、元の世界でいうところの、クセのある赤毛を肩の辺りまで伸ばしてて、目は深い青、身長は俺と同じかちょい低いくらいだから、170cm程度かな。
背筋がピンっと伸びてて、宝塚の男役みたいな感じだな、この教官。
腰の剣以外に、胸甲と手甲、それにすね当てだけという軽装だったけど、全身鎧とか似合いそう。
彼女含め、教官全員がバインダーみたいなの持ってるけど、あれは名簿か何かかな?
俺が列の先頭だったんだが、続けて3人がうしろに並んだ。
「私は細剣術教官の、カーリーだ」
教官が自己紹介を始める。
同じタイミングで、ほかの教官も自己紹介を始めたようだ。
長剣のところは、10人くらいいるな。
大剣とか槍でも、5人以上はいるみたいだ。
槌が意外と人気高くて、えーっと8人いるな。
あとで知ったんだが、ハンマーやメイスなどの槌系武器は、刃物系と違ってメンテナンスが格段に楽だし、刃こぼれや血糊で威力が落ちるということもないので、意外と人気なんだそうな。
サブウェポンとしてとりあえず持っとく、って人も多いらしい。
とはいえ、刃物系のそのあたりの欠点も、魔術でカバーできるみたいだけどね。
話はそれたが、俺のいる細剣術が、一番人気がないってことが言いたかったわけ。
「では点呼を取る」
そこでカーリー教官は、バインダーに目を落とした。
「ショウスケ」
お、いきなり俺か?
「はい」
返事だけでいいよな?
「ダリル」
俺の後ろにいた、育ちの良さそうな金髪の青年が、一歩踏み出し、胸に手を当てて軽くお辞儀する。
「お初にお目にかかります。私はラザフォード男爵家の三男、ダリル・ラザフォードと――」
「返事だけでいい。次、アルダベルト」
口上を途中で遮られた男爵家の坊っちゃんは、一瞬鼻白んだが、すぐに余裕の笑みをたたえて、列に戻った。
「あ……えーっと、アルダベルトっす」
アルダベルトという人は、たぶん犬獣人かな。
けっこうガッチリした体格で、背は俺より低いかも。
緊張しているのか、頭の犬耳がピコピコ動いてる。
「最後、ジータ」
「はい」
ジータさんは長身の女性で、この人も獣人だな。
猫っぽいんだが、なんかちょっと違うような……。
ギルド受付のエレナさんと比べると、この人のほうが背も高いし、筋肉もなんかしっかりしてる感じがするんだよ。
カラスの濡れ羽色っていうのかな?
艶のある黒髪が、すっごく綺麗。
もしかすると黒豹とかそんなん?
「よし。この中で細剣術専門はショウスケとジータ、後のふたりは剣術全般を希望でいいか」
「ええ」
「うっす」
返事をしたのはダリルとアルダベルト。
「では早速だが、現在の身体能力を見る。まずは訓練場の壁沿いを全力で走れ」
そのあと俺たちは、2時間くらい走ったり跳んだりと、いろいろやらされた。
体力に関しては、俺がダントツのビリだったよ……。
獣人のふたりはともかく、男爵家の坊っちゃんとかひ弱そうなのに、結構体力あんのな。
最終的に、気絶寸前でぶっ倒れたんだが、ちょっと休憩したら不思議と元気になった。
「この訓練場には回復魔術が施されている。訓練場内の疲労や怪我はすぐに回復するからな」
なるほど、そういうことか。
たしかに疲労は回復したんだけど、精神的な疲れが、身体の芯のほうに残ってるような気がするなぁ……。
「さて、君らの基礎体力はなんとなくわかった。では早速だが型をいくつか覚えてもらおう」
俺たちは、カーリー教官から訓練用のレイピアを受け取った。
「あのぉ、ちょっといいっすか?」
そろそろ剣を使った訓練が始まろうかというとき、犬獣人のアルダベルトが、手を挙げた。
指定された二刻半(午前5時)に、冒険者ギルドの訓練場へと向かう。
場所は冒険者ギルドの地下3階。
はっきり言おう、めちゃくちゃ広い。
なんでも冒険者ギルドの敷地だけじゃなく、魔術士ギルトと治療士ギルドの敷地にもまたがっているらしい。
治療士ギルドとは道を挟んでいるので、その道の下にも訓練場は延びているわけだ。
朝早い時間だが、何人もの冒険者が訓練に励んでいる。
俺は“基礎戦闘訓練受講者はこちら”と書かれた案内に沿って、進んでいった。
何人かの男女が、結構な間隔をあけて立っている。
それぞれ持っている武器が違っているので、おそらくは彼らが教官なのだろう。
この日は大剣、長剣、槌、槍、そして細剣の教官がいるみたいだ。
俺以外にも到着している人がいて、すでに教官らしき人たちの前には列ができ始めていた。
ほぼ同時に到着したり、あとから来た人も、各々希望する武器の教官の前に並んでいった。
さて、持っている武器で、ある程度判別出来るんだが、長剣と細剣は見極めが難しいな。
ひとりは男性で、ひとりは女性。
俺と同じように、どっちに並ぼうかオロオロしてる人が何人かいたんだが、それに気付いた男性のほうが手を挙げる。
「あー、長剣術希望の人はこっち、細剣術の人は彼女のほうに並んでくれ」
どうやら女性のほうが細剣術の教官らしいので、そちらへ移動した。
その教官の容姿だが、紅毛碧眼っていうんですかね?
いわゆるファンタジー的な赤毛じゃなく、元の世界でいうところの、クセのある赤毛を肩の辺りまで伸ばしてて、目は深い青、身長は俺と同じかちょい低いくらいだから、170cm程度かな。
背筋がピンっと伸びてて、宝塚の男役みたいな感じだな、この教官。
腰の剣以外に、胸甲と手甲、それにすね当てだけという軽装だったけど、全身鎧とか似合いそう。
彼女含め、教官全員がバインダーみたいなの持ってるけど、あれは名簿か何かかな?
俺が列の先頭だったんだが、続けて3人がうしろに並んだ。
「私は細剣術教官の、カーリーだ」
教官が自己紹介を始める。
同じタイミングで、ほかの教官も自己紹介を始めたようだ。
長剣のところは、10人くらいいるな。
大剣とか槍でも、5人以上はいるみたいだ。
槌が意外と人気高くて、えーっと8人いるな。
あとで知ったんだが、ハンマーやメイスなどの槌系武器は、刃物系と違ってメンテナンスが格段に楽だし、刃こぼれや血糊で威力が落ちるということもないので、意外と人気なんだそうな。
サブウェポンとしてとりあえず持っとく、って人も多いらしい。
とはいえ、刃物系のそのあたりの欠点も、魔術でカバーできるみたいだけどね。
話はそれたが、俺のいる細剣術が、一番人気がないってことが言いたかったわけ。
「では点呼を取る」
そこでカーリー教官は、バインダーに目を落とした。
「ショウスケ」
お、いきなり俺か?
「はい」
返事だけでいいよな?
「ダリル」
俺の後ろにいた、育ちの良さそうな金髪の青年が、一歩踏み出し、胸に手を当てて軽くお辞儀する。
「お初にお目にかかります。私はラザフォード男爵家の三男、ダリル・ラザフォードと――」
「返事だけでいい。次、アルダベルト」
口上を途中で遮られた男爵家の坊っちゃんは、一瞬鼻白んだが、すぐに余裕の笑みをたたえて、列に戻った。
「あ……えーっと、アルダベルトっす」
アルダベルトという人は、たぶん犬獣人かな。
けっこうガッチリした体格で、背は俺より低いかも。
緊張しているのか、頭の犬耳がピコピコ動いてる。
「最後、ジータ」
「はい」
ジータさんは長身の女性で、この人も獣人だな。
猫っぽいんだが、なんかちょっと違うような……。
ギルド受付のエレナさんと比べると、この人のほうが背も高いし、筋肉もなんかしっかりしてる感じがするんだよ。
カラスの濡れ羽色っていうのかな?
艶のある黒髪が、すっごく綺麗。
もしかすると黒豹とかそんなん?
「よし。この中で細剣術専門はショウスケとジータ、後のふたりは剣術全般を希望でいいか」
「ええ」
「うっす」
返事をしたのはダリルとアルダベルト。
「では早速だが、現在の身体能力を見る。まずは訓練場の壁沿いを全力で走れ」
そのあと俺たちは、2時間くらい走ったり跳んだりと、いろいろやらされた。
体力に関しては、俺がダントツのビリだったよ……。
獣人のふたりはともかく、男爵家の坊っちゃんとかひ弱そうなのに、結構体力あんのな。
最終的に、気絶寸前でぶっ倒れたんだが、ちょっと休憩したら不思議と元気になった。
「この訓練場には回復魔術が施されている。訓練場内の疲労や怪我はすぐに回復するからな」
なるほど、そういうことか。
たしかに疲労は回復したんだけど、精神的な疲れが、身体の芯のほうに残ってるような気がするなぁ……。
「さて、君らの基礎体力はなんとなくわかった。では早速だが型をいくつか覚えてもらおう」
俺たちは、カーリー教官から訓練用のレイピアを受け取った。
「あのぉ、ちょっといいっすか?」
そろそろ剣を使った訓練が始まろうかというとき、犬獣人のアルダベルトが、手を挙げた。
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