誰にでもできる異世界救済 ~【トライ&エラー】と【ステータス】でニートの君も今日から勇者だ!~

平尾正和/ほーち

文字の大きさ
上 下
47 / 100
第三章 ダンジョンへ行こう

3-2 基礎戦闘訓練-基礎体力-

しおりを挟む
 Fランクへのランクアップを終えた翌日、いよいよ、訓練初日を迎えた。

 指定された二刻半(午前5時)に、冒険者ギルドの訓練場へと向かう。
 場所は冒険者ギルドの地下3階。

 はっきり言おう、めちゃくちゃ広い。
 なんでも冒険者ギルドの敷地だけじゃなく、魔術士ギルトと治療士ギルドの敷地にもまたがっているらしい。
 治療士ギルドとは道を挟んでいるので、その道の下にも訓練場は延びているわけだ。

 朝早い時間だが、何人もの冒険者が訓練に励んでいる。
 俺は“基礎戦闘訓練受講者はこちら”と書かれた案内に沿って、進んでいった。
 何人かの男女が、結構な間隔をあけて立っている。
 それぞれ持っている武器が違っているので、おそらくは彼らが教官なのだろう。

 この日は大剣、長剣、槌、槍、そして細剣の教官がいるみたいだ。
 俺以外にも到着している人がいて、すでに教官らしき人たちの前には列ができ始めていた。
 ほぼ同時に到着したり、あとから来た人も、各々希望する武器の教官の前に並んでいった。

 さて、持っている武器で、ある程度判別出来るんだが、長剣と細剣は見極めが難しいな。
 ひとりは男性で、ひとりは女性。

 俺と同じように、どっちに並ぼうかオロオロしてる人が何人かいたんだが、それに気付いた男性のほうが手を挙げる。

「あー、長剣術希望の人はこっち、細剣術の人は彼女のほうに並んでくれ」

 どうやら女性のほうが細剣術の教官らしいので、そちらへ移動した。

 その教官の容姿だが、紅毛碧眼っていうんですかね?
 いわゆるファンタジー的な赤毛じゃなく、元の世界でいうところの、クセのある赤毛を肩の辺りまで伸ばしてて、目は深い青、身長は俺と同じかちょい低いくらいだから、170cm程度かな。
 背筋がピンっと伸びてて、宝塚の男役みたいな感じだな、この教官。
 腰の剣以外に、胸甲と手甲、それにすね当てだけという軽装だったけど、全身鎧とか似合いそう。

 彼女含め、教官全員がバインダーみたいなの持ってるけど、あれは名簿か何かかな?
 俺が列の先頭だったんだが、続けて3人がうしろに並んだ。

「私は細剣術教官の、カーリーだ」

 教官が自己紹介を始める。
 同じタイミングで、ほかの教官も自己紹介を始めたようだ。
 長剣のところは、10人くらいいるな。
 大剣とか槍でも、5人以上はいるみたいだ。
 槌が意外と人気高くて、えーっと8人いるな。

 あとで知ったんだが、ハンマーやメイスなどの槌系武器は、刃物系と違ってメンテナンスが格段に楽だし、刃こぼれや血糊で威力が落ちるということもないので、意外と人気なんだそうな。
 サブウェポンとしてとりあえず持っとく、って人も多いらしい。
 とはいえ、刃物系のそのあたりの欠点も、魔術でカバーできるみたいだけどね。

 話はそれたが、俺のいる細剣術が、一番人気がないってことが言いたかったわけ。

「では点呼を取る」

 そこでカーリー教官は、バインダーに目を落とした。

「ショウスケ」

 お、いきなり俺か?

「はい」

 返事だけでいいよな?

「ダリル」

 俺の後ろにいた、育ちの良さそうな金髪の青年が、一歩踏み出し、胸に手を当てて軽くお辞儀する。

「お初にお目にかかります。私はラザフォード男爵家の三男、ダリル・ラザフォードと――」
「返事だけでいい。次、アルダベルト」

 口上を途中で遮られた男爵家の坊っちゃんは、一瞬鼻白んだが、すぐに余裕の笑みをたたえて、列に戻った。

「あ……えーっと、アルダベルトっす」

 アルダベルトという人は、たぶん犬獣人かな。
 けっこうガッチリした体格で、背は俺より低いかも。
 緊張しているのか、頭の犬耳がピコピコ動いてる。

「最後、ジータ」
「はい」

 ジータさんは長身の女性で、この人も獣人だな。
 猫っぽいんだが、なんかちょっと違うような……。
 ギルド受付のエレナさんと比べると、この人のほうが背も高いし、筋肉もなんかしっかりしてる感じがするんだよ。
 カラスの濡れ羽色っていうのかな?
 艶のある黒髪が、すっごく綺麗。
 もしかすると黒豹とかそんなん?

「よし。この中で細剣術専門はショウスケとジータ、後のふたりは剣術全般を希望でいいか」
「ええ」
「うっす」

 返事をしたのはダリルとアルダベルト。

「では早速だが、現在の身体能力を見る。まずは訓練場の壁沿いを全力で走れ」

 そのあと俺たちは、2時間くらい走ったり跳んだりと、いろいろやらされた。
 体力に関しては、俺がダントツのビリだったよ……。
 獣人のふたりはともかく、男爵家の坊っちゃんとかひ弱そうなのに、結構体力あんのな。
 最終的に、気絶寸前でぶっ倒れたんだが、ちょっと休憩したら不思議と元気になった。

「この訓練場には回復魔術が施されている。訓練場内の疲労や怪我はすぐに回復するからな」

 なるほど、そういうことか。
 たしかに疲労は回復したんだけど、精神的な疲れが、身体の芯のほうに残ってるような気がするなぁ……。

「さて、君らの基礎体力はなんとなくわかった。では早速だが型をいくつか覚えてもらおう」

 俺たちは、カーリー教官から訓練用のレイピアを受け取った。

「あのぉ、ちょっといいっすか?」

 そろそろ剣を使った訓練が始まろうかというとき、犬獣人のアルダベルトが、手を挙げた。
しおりを挟む
感想 31

あなたにおすすめの小説

外れスキル『収納』がSSS級スキル『亜空間』に成長しました~剣撃も魔法もモンスターも収納できます~

春小麦
ファンタジー
——『収納』という、ただバッグに物をたくさん入れられるだけの外れスキル。 冒険者になることを夢見ていたカイル・ファルグレッドは落胆し、冒険者になることを諦めた。 しかし、ある日ゴブリンに襲われたカイルは、無意識に自身の『収納』スキルを覚醒させる。 パンチや蹴りの衝撃、剣撃や魔法、はたまたドラゴンなど、この世のありとあらゆるものを【アイテムボックス】へ『収納』することができるようになる。 そこから郵便屋を辞めて冒険者へと転向し、もはや外れスキルどころかブッ壊れスキルとなった『収納(亜空間)』を駆使して、仲間と共に最強冒険者を目指していく。

スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜

櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。 パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。 車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。 ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!! 相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム! けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!! パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!

ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~

むらくも航
ファンタジー
Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。 配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。 誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。 そんなホシは、ぼそっと一言。 「うちのペット達の方が手応えあるかな」 それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。 ☆10/25からは、毎日18時に更新予定!

黄金蒐覇のグリード 〜力と財貨を欲しても、理性と対価は忘れずに〜

黒城白爵
ファンタジー
 とある異世界を救い、元の世界へと帰還した玄鐘理音は、その後の人生を平凡に送った末に病でこの世を去った。  死後、不可思議な空間にいた謎の神性存在から、異世界を救った報酬として全盛期の肉体と変質したかつての力である〈強欲〉を受け取り、以前とは別の異世界にて第二の人生をはじめる。  自由気儘に人を救い、スキルやアイテムを集め、敵を滅する日々は、リオンの空虚だった心を満たしていく。  黄金と力を蒐集し目指すは世界最高ランクの冒険者。  使命も宿命も無き救世の勇者は、今日も欲望と理性を秤にかけて我が道を往く。 ※ 更新予定日は【月曜日】と【金曜日】です。 ※第301話から更新時間を朝5時からに変更します。

帰還した吞兵衛勇者〜異世界から帰ってきたら日本がダンジョンだらけになっていたんだが?〜

まぐな
ファンタジー
 異世界転移に巻き込まれた主人公、梶谷太一は無事に異世界の魔王討伐を成し遂げ、元の世界の日本に帰還した……はずだった。  だが、太一が戻った日本には異世界でよくみたモンスターが蔓延るダンジョンが発生。  日本には元々ダンジョンがあったかのように人々の生活に馴染んでおり、モンスターを討伐する専門組織、討伐隊ギルドなども設立されていた。 「とりあえず難しいことは置いておいて酒盛りだ!」  しかし、太一は何よりも酒のことで頭がいっぱいだった。  異世界で鍛え上げた能力を持つ太一を、人手不足に陥っている討伐隊ギルドは放っておくはずもなく……。 カクヨムにも掲載してます。

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~

はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。 俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。 ある日の昼休み……高校で事は起こった。 俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。 しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。 ……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

転移したらダンジョンの下層だった

Gai
ファンタジー
交通事故で死んでしまった坂崎総助は本来なら自分が生きていた世界とは別世界の一般家庭に転生できるはずだったが神側の都合により異世界にあるダンジョンの下層に飛ばされることになった。 もちろん総助を転生させる転生神は出来る限りの援助をした。 そして総助は援助を受け取るとダンジョンの下層に転移してそこからとりあえずダンジョンを冒険して地上を目指すといった物語です。

処理中です...