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第二章
第3話 〈アイテムボックス〉を使いました
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「え、【攻撃力】って、銃の威力も上がるのか?」
「当たり前でしょう?」
賢人がよくやっていたロールプレイングゲームなどでは、能力値が上がっても銃などの機械式武器には影響がない、というものが多かった。
レベルが上がると銃よりも剣や弓のほうが強くなる、などということが当たり前のようにあったのだが、この世界では異なるようだ。
「……そうか、【攻撃力】だもんなぁ」
加護の能力値は【力】でも【筋力】でも【STR】でもなく、あくまで【攻撃力】ということなのだった。
「どうする? もう少し森の奥まで入ってみる?」
「んー、下手に入って迷ったら怖いしなぁ」
鬱蒼と草木の生い茂る森の奥を見ながら、賢人は少し不安げに漏らした。
「平気よ、あたしたちには〈マップ〉があるんだもの」
「ああ、そういえばそうだった」
初めてルーシーに会い、この森を抜けたとき、彼女が口にした〈マップ〉という言葉。
それも冒険者に与えられる加護のひとつだ。
「たしか、加護板で見れるんだよな」
冒険者登録の際に受けた講習を思い出しながら、ポケットから加護板を取り出す。
「あら、〈アイテムボックス〉に入れてないの? 加護板はスロット消費がないから、そっちに入れておいたほうがいいわよ。ポケットだとかさばるでしょう?」
常日頃スマートフォンをポケットに入れていた賢人にしてみれば、それほど大きさの変わらない加護板を入れておくことにそれほどの違和感はない。
ただ、出し入れは多少面倒なので、以前ルーシーがやっていたように、何もないところから出し入れできるのならばそちらのほうがいいのだろうが……。
「〈アイテムボックス〉ってどうやって使うの?」
「え? ……あー」
賢人の問いかけにきょとんしたあと、ルーシーは申し訳なさそうな声を漏らす。
「ごめんなさい、それはあたしがちゃんと教えておくべきことだったわね」
本来であれば、〈マップ〉や〈アイテムボックス〉の使い方は講習でしっかりと教わるのだが、賢人の場合はルーシーが細かい指導をすることになったので、講習ではざっと終わらせていたのだ。
「まぁ、いろいろバタバタしてたしね」
本来ならば先ほど部屋で賢人の加護板を確認したときに、そのあたりの基本的なことは教えておくつもりだったのだ。
しかし、これまで意味不明だった【運】の値『S』の意味がなんとなくわかり、一向に上がらなかった能力値を上げられる、という人生を覆すような出来事があったため、ルーシーは本来やるべき基本的なことをすっ飛ばしてしまったのだった。
「本当にごめんなさい」
「ああ、いや、いいよ、うん」
「それで、〈アイテムボックス〉の使い方だけど、特に難しいことはなくて、手にした物を〝収納する〟って念じるだけよ」
「念じる…………おお!」
言われたとおり〝収納する〟と念じると、手に持っていた加護板がフッと消えた。
「収納した物は、なんとなく〝そこ〟にある、というのを感じられると思うわ」
「あ、ああ……そうだな。不思議な感覚だ」
ルーシーの言うとおり、〈アイテムボックス〉に収納した加護板は〝そこにある〟という感覚でその存在を認識できた。
ならばその〝そこ〟がどこなのかは、言語化することが難しいのだが、とにかくいつでも手の届く場所にある、としか言えない感覚だった。
それを手に取るようイメージすると――、
「……出た」
――手の中に加護板が現れた。
どうやら〈アイテムボックス〉の使い方はマスターできたようだ。
「当たり前でしょう?」
賢人がよくやっていたロールプレイングゲームなどでは、能力値が上がっても銃などの機械式武器には影響がない、というものが多かった。
レベルが上がると銃よりも剣や弓のほうが強くなる、などということが当たり前のようにあったのだが、この世界では異なるようだ。
「……そうか、【攻撃力】だもんなぁ」
加護の能力値は【力】でも【筋力】でも【STR】でもなく、あくまで【攻撃力】ということなのだった。
「どうする? もう少し森の奥まで入ってみる?」
「んー、下手に入って迷ったら怖いしなぁ」
鬱蒼と草木の生い茂る森の奥を見ながら、賢人は少し不安げに漏らした。
「平気よ、あたしたちには〈マップ〉があるんだもの」
「ああ、そういえばそうだった」
初めてルーシーに会い、この森を抜けたとき、彼女が口にした〈マップ〉という言葉。
それも冒険者に与えられる加護のひとつだ。
「たしか、加護板で見れるんだよな」
冒険者登録の際に受けた講習を思い出しながら、ポケットから加護板を取り出す。
「あら、〈アイテムボックス〉に入れてないの? 加護板はスロット消費がないから、そっちに入れておいたほうがいいわよ。ポケットだとかさばるでしょう?」
常日頃スマートフォンをポケットに入れていた賢人にしてみれば、それほど大きさの変わらない加護板を入れておくことにそれほどの違和感はない。
ただ、出し入れは多少面倒なので、以前ルーシーがやっていたように、何もないところから出し入れできるのならばそちらのほうがいいのだろうが……。
「〈アイテムボックス〉ってどうやって使うの?」
「え? ……あー」
賢人の問いかけにきょとんしたあと、ルーシーは申し訳なさそうな声を漏らす。
「ごめんなさい、それはあたしがちゃんと教えておくべきことだったわね」
本来であれば、〈マップ〉や〈アイテムボックス〉の使い方は講習でしっかりと教わるのだが、賢人の場合はルーシーが細かい指導をすることになったので、講習ではざっと終わらせていたのだ。
「まぁ、いろいろバタバタしてたしね」
本来ならば先ほど部屋で賢人の加護板を確認したときに、そのあたりの基本的なことは教えておくつもりだったのだ。
しかし、これまで意味不明だった【運】の値『S』の意味がなんとなくわかり、一向に上がらなかった能力値を上げられる、という人生を覆すような出来事があったため、ルーシーは本来やるべき基本的なことをすっ飛ばしてしまったのだった。
「本当にごめんなさい」
「ああ、いや、いいよ、うん」
「それで、〈アイテムボックス〉の使い方だけど、特に難しいことはなくて、手にした物を〝収納する〟って念じるだけよ」
「念じる…………おお!」
言われたとおり〝収納する〟と念じると、手に持っていた加護板がフッと消えた。
「収納した物は、なんとなく〝そこ〟にある、というのを感じられると思うわ」
「あ、ああ……そうだな。不思議な感覚だ」
ルーシーの言うとおり、〈アイテムボックス〉に収納した加護板は〝そこにある〟という感覚でその存在を認識できた。
ならばその〝そこ〟がどこなのかは、言語化することが難しいのだが、とにかくいつでも手の届く場所にある、としか言えない感覚だった。
それを手に取るようイメージすると――、
「……出た」
――手の中に加護板が現れた。
どうやら〈アイテムボックス〉の使い方はマスターできたようだ。
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