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第2章 辺境伯爵領
第105話 えっ!? 変食!?
しおりを挟む「主君ーーっ!」「「「ハクト――ッ!」」」「「「ハクトさ~んっ!」」」
「おわっ!? 何だ!? ちょっ、どわーーっ!?」
死体から出る血としょんべんの臭いが鼻を突く中、ゆっくりと体を起こして、座り直したところへ肉の塊が7つ飛んできた。受け止め損ねてそのまま倒れちまう。
いや、【粉骨砕身】でパワーアップしてるから受け止められねことはねえとは思ったんだが、力の加減を間違うととんでもねえ事になりそうでな。抵抗しなかったってのが正しいのさ。
それを良いことに、顔や肩を触られまくる……。
おいっ待てって、擽ってえだろうがよ!
「主君! 大事ないか!?」「ハクト大丈夫!?」「あんたの頭が潰れちまったのかと思ったんだよ!?」「ハクトさん、生きてるっスね!?」「吃驚させないでください~」「オークジェネラル強敵。ハクトが倒せなかったら絶望」「ぶ、無事で、よ、良かったです!」
一度に話しかけんな! 誰が誰だかさっぱり分らん!
「ぶわっはっはっ!! や、やめ、擽ってえっ!! ま、まだオークが残ってるだろうがよっ!」
堪え切れなくなって、吹き出しちまったぜ。というか、お前らまだ全部終わった訳じゃねえだろうが。気い抜き過ぎだってえの。
「問題ない。ガイが居る」
つんつんとちびっ娘に頬を突かれ、指差す方向に目を向けたら、居たよ。白い全身鎧で身を固めた騎士が白い斧槍を振り回して、襲ってくるオークをぶった切ってる奴が、な。
てか、普通にガイって馴染んでねえか?
早くね?
てか、俺の出る幕ねえじゃねえかよ。
「ふぅ。【解除】。いつつっ。【骨接ぎ】。【骨接ぎ】。【骨接ぎ】。【骨接ぎ】」
ああ、【粉骨砕身】な。熟練度レベルが10になったら、【解除】出来るようになったんだわ。勿論、今までどおり全身骨折の危険は付いて回るんだが、使用時間が短いと罅割れ程度で済むようになったのさ。
100分で【粉骨砕身】を使ったら、間違いなく死ねる程の全身複雑骨折が襲ってくるんだが、調整できるようになったのは大きいぜ?
我慢できる程度の痛みに耐えて、【骨接ぎ】を数回掛ければ回復できるんだからよ。
残りの討伐はガイのやつに任せておけば良いか、と思った時だったーー。
《レベルが上がりました》
「は?」
例のアナウンスが頭の中で響き渡ったのさ。
『は?』
スピカが左肩に降りて来て首を傾げた。可愛い。
1つだけ上がったのかと思ったら、念仏のように同じアナウンスが頭の中を流れ始めたじゃねえか。
《レベルが上がりました。レベルが上がりました。レベルが上がりました。 ーーーーーーーーレベルが上がりました。レベルが上がりました。レベルが上がりました》
他の者が不審がらねえように、額を押さえながら短く説明しておく。
「すまん。レベルが上がったらしい。ちょっと待っててくれるか?」
「仕方ないねえ」「オークジェネラルを討伐すれば上がるのは当然」「問題ないっスよ」「どれくらい上がるのかしら~」「だ、大丈夫でしゅっ! あ……」
恐らくだが、俺だけじゃなくヒルダとプルシャンの頭ん中で同じことが起きてるはずだ。
時間にして5分くらいか。相変わらず、抑揚のないアナウンスを聞き続けるのは苦痛以外の何物でもないな。
久し振りにレベルが上がったのは良いんだが、どれくらい上がったかは後で確認だ。
《【骨法】のレベルが上がりました》
おっと。こっちもか。あの時と同じだな。
《【骨法】のレベルが上がりました。【骨法】のレベルが上がりました。ーーーーーーーー【骨法】のレベルが上がりました。【骨法】のレベルが上がりました》
このアナウンスは2分も掛からずに終わった。10回? 9回位か?
《【骨盗り】の【熟練度】が3になりました。【骨槍】の熟練度が2になりました》
熟練度が上がるのはありがたい。今までのも結構時間かかったからな。
けど、ここまで来たらあれを堪えねえと……。
そう思った瞬間ーー。
「「「いっ!?」」」
「いってえええぇぇぇー―――ーーっ!!!」「「いったあああぁぁぁーーーーーーいっ!!!」」
俺たち3人の絶叫が森に谺したーー。
◆◇◆
俺は今、オークの集落の中に生えてる大きな木の幹に背中を預けて、自分の【ステータス】を見てる。他の面々は、討伐サインだというオークの耳刈りをしてるとこだ。
オークの肉は食べれねえし、皮も骨も使い道がないらしい。まあ、あの姿はそうだわな。
で、アンデッドにならないように焼却が基本なんだと。なら、俺が全部貰うと言っておいた。
「えっ!? 変食!?」っスか!?」
と、ちびっ娘とホビット娘に驚かれたが、即座に否定しておいた。んな訳あるかい。
それをしちまったら、完全な人喰いだろうがよ。
俺の中では、オークは人だ。魔族とは言うが、人の姿だからな。今回は無理だったが、分かり合える奴も居るんじゃねえか、という思いもどっかにある。
ま、骨は俺が使ってやるからよ。成仏してくれや。
ちびっ娘2人にジト目で怪しまれたが、固有スキルのことを何となく匂わせ、追求を逃れて今に至るってとこだな。
んで、俺の【ステータス】はこうなってた。
◆ハクト◆
【種族】兎人族:雪毛種
【性別】♂
【職業】骨仙人
【レベル】Lv100 ↑99up
【状態】健康
【生命力】16730 / 16730 ↑2130up
【魔力】16678 / 16678 ↑2248up
【力】3855 ↑2405up
【体力】3738 ↑2268up
【敏捷】4347(3847+500) ↑2392up(+種族特性1Lv×5)
【器用】3825 ↑2355up
【知性】3869 ↑2399up
【ユニークスキル】
無限収納
☆骨法 Lv30 ↑9up
【アクティブスキル】
鑑定眼 Lv5
爪戯Lv3
【パッシブスキル】
回復強化 Lv10
耐痛 Lv10
耐魅了Lv1
耐火Lv1
耐磁力Lv1
偽装Lv2
【称号】
竜殺し
【装備】
魔法鞄(容量:2アンフォーラ)
ベルト
剣鉈×1
森躄蟹の草摺
森躄蟹の籠手
森躄蟹の脛当て
森躄蟹の胸当て
【従者】
ヒルデガルド・セイツ・アイヒベルガー(隷従)
プルシャン(隷従)
【所持金】
銀貨2枚
どうゆう計算でステータスは上がってんのかね?
阿呆みたいに、ボーンと上がってる訳でもねえし。ま、このレベルでこうならと、勝手に俺の中では収まってたりする。これで、桁が1つ2つ多かったら「どうなってやがる!?」って突っ込んでただろうがな。
あと、こっちの度量衡が未だにさっぱり解らん。
折を見て教えてもらわねえと、そろそろ恥かきそうだな。
「おーーいっ! ハクトーーッ! ちょっとこっちに来てくれるかーーいっ!!」
そんな事をぼんやり思っていると、虎女の声が血生臭い集落に響き渡ったーー。
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