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第二部 ソレーユ編~失くした恋の行方~
29.※満たされた心
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愛しい人を抱き上げて彼の人の部屋へと向かう。
最初ライアードと話した時、はたから見た自分はそんな風に見えるのかと衝撃を受けた。
けれど確かに指摘されたら反論できない自分がいたのだからこればかりは致し方ないだろう。
そして突如身体が魔法に囚われ身動きがとれなくなった時は、もうミシェルに触れられなくなったのだと絶望感に襲われてしまった。
これは自分がミシェルに働いた不敬の償いなのだと────そう言われたような気がした。
けれどその後の二人とシュバルツとのやり取りを聞いて、これには別の意図があるのだと知り心を落ち着けて様子を見ることにしたのだが……。
まさかずっと分からなかったミシェルの本音を聞くことができるなんて思いもよらなかった。
はっきり言って、あんなにも取り乱すほどに愛されていたなんて考えもしなかった。
しかもずっと……兄がいる頃からずっと想ってくれていたなど思いもよらなかった。
もしもあの頃兄が死ななければ、今とはまた違った未来があったのだろう。
けれどこうしてミシェルの気持ちがわかったのなら今からでもまだ間に合うはずだ。
ずいぶん遠回りをしてしまったけれど、ミシェルが自分をこれ程までに想ってくれているのなら誤解を解いてやり直して欲しいと思った。
自分には幸せになってもらいたいと言ったくせに、自身の幸せはまるで諦めたかのように呟いた先程のミシェルの姿が痛々しく悲しくて仕方がなかった。
あんな姿はもう見たくはない────。
自分の手で幸せにしてやれるのなら、何があろうと幸せにしてやりたいと思った。
だからそれを伝えたくて、ゆっくり話せるようにとソファへとその身を運んだ。
「ミシェル様。少しは落ち着かれましたか?」
「……ああ。気にしなくても剣は先程のところに置いてきてしまった。お前は安心して戻っていい」
そう言いながら疲れたように溜息を吐くミシェルに、やはり自分の気持ちは全くわかってもらえていないのだなと残念に思いながらそっと隣へと寄り添う。
「こんな貴方を一人には致しません」
「アル……」
力なくこちらを見遣るミシェルは、恐らく先程の告白は自分には聞こえていないとでも思い込んでいるのだろう。
そして多分ここで好きだと気持ちを一言で伝えたとしても、同情とでも思い込まれてまた距離を置かれるのは明白だった。
「ミシェル様。私の話を聞いていただけますか?」
それならば、いっそのこと最初から全て語ってみようと思った。
きっとこの方法の方がミシェルの心に直接届くだろうと思ったのだ。
「私がミシェル様に初めて興味を持ったのは兄にミシェル様の話を聞かせてもらった時でした」
だからまだ十代の頃、ミシェルに言葉通り憧れの気持ちを抱いていたことを正直に話す。
「あの頃は四つ上のミシェル様は自分よりもずっと大人で、キラキラと輝く憧れの存在でした」
そして実際に会って話してその憧れはどんどんと好きへと変わっていったのだ。
「綺麗な貴方に会えるだけでいい。話せるだけで嬉しい。そうして幸せを感じていた中兄が亡くなり、貴方から距離を置かれ私は悲しみに沈みました。愛する兄と恋する貴方を両方とも一度に失ったからです」
それでもずっと想う気持ちは変わらなくて、頑張ればまた声をかけてもらえる日が来るかもしれない。少しでも目に止めてもらえるかもしれない。
「そうやってずっと貴方を想いながら必死に訓練に勤しんでいました。あまりにも無謀なその想いを同僚には呆れられ、時には宥められ、時には花街へと連れ出され、時には女性を紹介されたりしましたが、それでも気持ちはずっと変わりませんでした」
恋焦がれるのは自由だとただひたすらに努力し、気づけば8年以上の歳月が流れていた。
「だから…あの日お声掛け頂けた時は本当に舞い上がるほど嬉しかったのです」
その言葉と共にそっと隣を窺うとミシェルの頬が真っ赤に染まっているのが見て取れる。
どうやらちゃんと自分の気持ちは伝わっているようだ。
「貴方に必要とされたい。少しでも近づきたい。そう思って弾む胸を押さえて騎士として礼を尽くしたはずなのですが…正直あのように突き放されて、愚かにも死にたくなってしまいました。だからせめて口づけだけでいいから想いを遂げたいと実行に移し、不敬の償いとして死のうと思ったのです」
その言葉にミシェルが一気に蒼白になる。
「ミシェル様…勘違いなさらないで下さい。あれは私が悪いのです。今はあの時に止めていただいて良かったと本当に反省しております。きっと兄が生きていたら拳骨で吹き飛ばされていたことでしょう」
「アル……」
不安げなミシェルをそっと抱き寄せて、更に言葉を続けた。
「ミシェル様…ここまで話したらお分かりだとは思いますが、私はずっとずっと貴方をお慕いしておりました。それは決して敬愛などと言う綺麗なものではありません。貴方を恋しく思った日は貴方は閨ではどんな姿なのか、どんな風に乱れるのかと想像し自分を慰めたりも致しましたから……」
最初は口づけだけのつもりだった。
それなのに手淫を許され、口淫を許され、欲が出たのだと正直に語る。
「貴方を独り占めしたかった。お妃様がいらないと言うのなら、私だけの腕に閉じ込めてしまいたかった。最初から貴方を抱きたいという想いを抱えていたのに、それを悟られて離れられたくないと……」
身の程知らずだとミシェルから切り捨てられるのを恐れて、少しずつ少しずつ距離を縮めたのだと白状していく。
「貴方が悲しそうにするのに気づいてはいましたがそれが何故なのかわからなくて、もっともっと溺れさせれば言ってもらえるのかと行為をエスカレートさせてしまったのはライアード様からもお叱りを頂き反省致しました。申し訳ありません」
けれどそれだけ自分は必死だったのだ。
「手の届かない貴方と初めて身を繋げた時、貴方を初めて手に入れられたと幸せな気持ちになりましたが、貴方から終わりにしたいと言われて…正直ショックで…なんとか一縷の望みをとまた暴走してしまいました。お叱りは覚悟の上ですが、私は貴方の事が好き過ぎてもう普通ではいられないのです」
「アル…もういい…もうわかったから……」
「ミシェル様。どうか私をずっとお側に置いて下さい。私はもう貴方なしには生きられないほど深く愛してしまいました。これ以上貴方から突き放されたくはないのです……」
そうして全ての思いの丈を吐き出したところでミシェルがギュッと強く抱きついてきた。
「アル…すまない……」
「ミシェル様?」
このすまないはもしや気持ちが重過ぎてお断りという事なのだろうか?
けれどその後に続いたのはどこまでもミシェルの本心で……。
「うっ…私はお前の気持ちを裏切るようなことばかりをしていた」
「ミシェル様……」
「こんな私でも…お前に愛される資格はあるか?」
そんなこと…聞くまでもないのに────。
「もちろんです」
「私は…素直にお前に飛び込んでもいいのか?」
「そうしてくださるならこれ以上の幸せはございません」
「私は…お前が憧れているような男ではない。それでも…望んでくれるのか?」
「私は等身大のミシェル様を心から愛しております」
「アルッ…!」
ミシェルの目からポロポロとこぼれ落ちる涙はまるで宝石のように綺麗で、この美しい人が自分だけを見つめてくれたのが本当に嬉しかった。
「アル…私もずっとずっと…お前が好きだった……」
やっと素直に伝えられたその言葉がスッと胸に染み込んで、自分を喜びに満たしていく。
「ミシェル様…ありがとうございます」
そうして暫く二人で万感の思いで抱き締め合った。
「アル…少しだけ添い寝してほしい」
その後、そんな可愛い要求に応えたくてただ口づけだけを交わしながら二人で寝台に横になる。
そう言えば昨夜はあまり寝かせてあげられなかったのだ。
仮眠をとるのはいいかもしれない。
「アル…アル……」
素直に抱きついてくれるミシェルを抱き寄せて甘い時間を過ごすのは本当に夢のように幸せで、けれど少しだけ不安になった。
これは本当に現実なのだろうか?
そう思っていたところで、ミシェルもまた少し不安そうな表情を浮かべているのに気付いた。
胸に抱きながら優しく頭を撫でているのだが、まだ他にもその胸に不安を抱えているのだろうか?
「ミシェル様?」
「アル…。明日でいいから……次に抱く時は縛って抱いてくれないか?」
呼び掛けると物凄く言い難そうにポツリとそんな言葉が溢されて、意味が掴めずそっと顔を覗き込んでしまう。
そんな自分にミシェルは悩ましげに告げてきた。
「引かれるかもしれないが…私は不安なんだ。ずっとお前に愛されたかった…。だからいっそ縛り上げて束縛して、私がお前のものだと感じさせてほしい」
そんな言葉に胸が熱くなって、つい思い切り抱きしめてしまう。
どうやらミシェルも自分と同じように思ってくれていたらしい。
その言葉は本当にミシェルが自分の物になったのだと十分実感できるもので、これは夢でもなければ幻でもないのだと感じさせるものだった。
「ミシェル様。もちろんです。私は貴方のお望みなら何でも叶えさせていただきます。どんな貴方も愛しています」
そう答えるとミシェルはホッとしたように笑みを浮かべ、嬉しそうに自分にすり寄ってそのまま安心したように眠りについた。
***
「それで?あの二人はちゃんと話せたのか?」
ライアードがミシェルの仕事を片付けながら傍らのロイドへと話しかけると、眷属から報告を受けたロイドが小さく息を吐いてそれに答える。
「はい。今は話し終えて仮眠に入ったようです。それにしてもアルバートはなかなか丁寧な男ですね。あのミシェル王子にわからせるために一から十まで全て話し、誤解する暇など全く与えぬまま想いを伝えることに成功致しましたよ」
「それは凄いな。私なら面倒臭すぎてあっさり切り捨てるぞ」
ビスクドールのように完璧な冷たい美しさを持っているのに、中身は完璧から程遠い男……それが兄だ。
正直自分の『完璧な美しさを壊したい衝動』はこの辺りからきているのではないかと思ってしまうくらい見ていてイライラする存在だった。
それでも認めるべきところも多々あるから支えているし、育てようと思えるのだが…。
そうは言ってもやはりミシェルは身内でないなら付き合いたくない類の相手だと言えた。
それをこうも受け入れ上手く捕まえたアルバートは、恐らくミシェルに負けず劣らず生真面目な男なのだろうし、自分に足りないものを持ち合わせた人物なのだろうと思った。
「私は生真面目もまた問題だと思いますが……」
「何か不都合でも?」
そうやって感心していると、ロイドが珍しく微妙な顔をしたのでライアードは首を傾げてしまう。
生真面目な二人に何か問題でもあると言うのだろうか?
けれど次の言葉で納得がいった。
「ミシェル王子は生真面目ゆえに考えすぎて不安に思い、先程縛ってほしいと言ってましたし、アルバートは生真面目ゆえにお望みのままにと答えていました。私は別にあの二人がどこに行こうと構いませんが、その尻拭いを毎回シュバルツにさせるのは許せないと思っているのですが?」
「ああ…そうだったな」
そう言えばあの二人はその繰り返しのようなもので関係がエスカレートしていたのだった。
両思いになってもその関係は早々は変わらないだろう。
「それでは兄上には白魔道士のお抱え魔道士を用意しておくとするか。それならもうシュバルツ殿が呼び出される心配もあるまい?」
「それは名案です。人選はいかがなさいますか?」
「そうだな。生真面目な二人だしな…。偏見を抱かず、同じく生真面目で…淡々と仕事をこなせる白魔道士がいいな。探せるか?」
「ライアード様のご依頼とあれば」
「では任せる」
「はっ…」
そしてロイドは眷属へと指示をだし速やかに白魔道士を選定し始めたのだった。
***
明日でもいいと言われはしたが、想いが通じた喜びから────その日の夜そっと口づけを交わし合い、どちらからともなく繋がりたいと口にしそっと身を寄せあった。
服を脱がせたミシェルは本当に綺麗と言うよりも美しくて、アルバートは思わずゴクリと唾を飲み込んでしまう。
そんな自分にミシェルが約束通り縛って欲しいと訴えてきたのでキュッと捕縛の時と同じように縛ってみたのだが、それに対してミシェルは感嘆の息を吐いた。
「んっ…はぁあっ…」
「ミシェル様…痛くはないですか?」
「はぁ…大丈夫だ…。なんだかアルに抱きしめられているみたいで嬉しい…」
そんな言葉に思わず顔が赤くなってしまう。
どうしてミシェルはこんなに煽るようなことばかりを口にしてくるのか…。
「ミシェル様…貴方は本当に仕方のないお方だ…」
「んっんっ…。アル…今日は私の全てを愛してくれるか?」
「もちろんです」
いつも寝る時は衣服を身につけていたから、今日はこれまで触れられなかった肌を全てこの手で感じたかった。
「ミシェル様のお好きな事も全てできるよう道具の方もご用意しております。今日は沢山可愛がらせて下さい」
「んんっ…」
縛られながらも頬を染めこちらを見てくるミシェルが可愛くて、アルバートは何度も口づけを繰り返してしまう。
「はッ…はぁ…アル…。んっんっ…」
「わかっております。こちらを先にしましょうね」
そうしてミシェルの男根をいつものように口に含み舌で可愛がり始めた。
「は…はぁあッ…!」
グチュグチュと追い上げながら時折口を離し舌で後ろも舐め上げるとたまらないとばかりに腰を揺らしてくる。
「あんっ…!早くぅ…!」
「わかっております」
そして舌で後孔を抉るように嬲り、ヒクついてきたところでゆっくりと指を差し込んだ。
「あぁっ!アルッアルッ!」
ほぐれていくと共に甘い声を上げ、蕩ける眼差しをこちらへと向けられて思わず許しを請いたくなる。
「はあっ…ミシェル様。もう挿れさせて頂いても構わないでしょうか?」
「なんでも許す…から…前も可愛がって…」
その言葉にそれならばと一旦引き、玩具を手に取る。
「では後ろは一先ずこれを…。前はお好きなこちらを挿れて差し上げます」
「あぁあッ!」
後孔にミシェルの好きな張り型を挿入し、前には鈴のついた長い管を差し込んでやると腰をくねらせミシェルが啼いた。
「あ…あんんッ!」
縛られながらリンッと鈴の音を響かせ身悶えるあまりにも淫靡なその姿に、下半身が熱くなってしまう。
本当に可愛過ぎてたまらない。
「あ…アルぅ…早く可愛がって…」
「……ッ!ミシェル様のご命令なら…!」
鼻血が出そうだと思いながら張り型を動かしてやるとミシェルが可愛い声で喘ぎを上げ始める。
その声は気持ちが通じ合う前よりももっと甘い声で、まるで幸せだと言われているような気持ちになった。
「あっあぁんっ!あんんっ…」
「ミシェル様…もっと可愛い声を聞かせてください…」
張り型もいいがやっぱり自分のもので可愛がりたくて、結局それを抜き取り自分のものを挿れてしまう。
「あぁっ!きゅ…きゅんきゅんするぅ……!」
中へと全て挿れるとミシェルから戸惑いの声が上がった。
「ミシェル様?」
「あ…今までと違って、奥…奥がきゅんきゅんしてる…ッ」
意味がわからなくて、どこですかと言いながら奥を突くと更に甘い声が飛び出した。
「あっ…んぅ…!そこっ!」
ビクッと体を震わせ訴えられた所は確かにヒクついていて、まるで女のように種付けして欲しいとでも訴えているかのようだった。
「昨日種付けしたのを覚えてくださってるんですね」
「あっ…あぁあッ……」
「今日も種付けさせていただいても?」
ゴクリと唾を嚥下しながらコツンコツンと奥を軽く突くとミシェルの欲情した眼差しと目が合った。
そしてその首が小さくコクンと頷かれて、我慢できずに激しく動き始めてしまう。
「あぁああああぁッ!アルぅ……ッ!」
後ろ手に縛っている手が痛まないよう横倒しの態勢で片足を持ち上げながら腰を支え、何度も揺さぶりながら奥を責め立てるとあっという間にミシェルの理性が崩壊する。
正直最高過ぎてそのまま我慢できずに奥まで注いでしまった。
「あひゃぁあああぁ!熱いぃいぃ!」
「はぁっ…ミシェル様!あぁ…前も気持ち良くするお約束を忘れておりました。申し訳ございません…ッ」
ズブズブと軽く動かしてやるとミシェルから気持ち良さそうな声が溢れ始める。
「あっ…溶ける…溶けるぅ……ッ」
「気持ちいいですか?」
「あ…頭真っ白で気持ちいいっ…。アル…もっと愛して…」
そんな言葉に理性が飛ぶ。
もうなけなしの理性など振り払い、その白い肌へと荒々しく吸い付いた。
「はぁんッ!ヒッ…!きゃあぁあああッ!」
耳孔を舌で嬲り、口内も指で犯し、胸の突起も赤くなる程吸い付いた。
もちろん腰も最奥を突き上げ続け、そして弄ぶかのように前に入れた管も動かし鈴を鳴らしてやる。
「あぁあああああっ!」
快楽の高みで意識を飛ばしながらミシェルが悶えまくる。
「ひぃいいいいッ!ひぃいいいいッ!」
「ミシェル様っ!」
「イきゅ……も、イきゅぅううぅ…」
呂律が回らなくなりビクビクと小刻みに身体を震わせ続けるミシェルの奥でまた欲を弾けさせると、ミシェルが一際大きく身を震わせた。
それと同時に鈴口から管をゆっくりと抜いてやると、ビュクンビュクンと白濁が吐き出されてくる。
「ひはぁぁあああッ!!」
どこまでも淫らなその姿が自分だけのものだという事がたまらなくて、また奥まで突き上げてしまう。
「あっあんんッ!気持ちいいッ!アル…奥がずっと気持ちいいのぉッ…!疼いてたまらないっ!助けてッ!」
一度飛んで少し正気に返ったミシェルが涙目で訴えてくるのだが、それはもっとと言われているようで仕方がなかった。
「ミシェル様……ッ!いくらでもお付き合いさせてくださいッ!」
「あ、そこぉッ!大好きぃいいいッ!いっぱい突いてぇッ!はぁあッ!いいッ、いいぃいいぃッ!もっときてぇ…!」
「あぁ…ミシェル様…私だけのミシェル様…ッ」
「はぁんッ!アルッ…もっともっとアルを感じさせて……ッ!あっ…そこ、いいっ!いいぃッ!もっと抉ってぇええええッ!あんっ!あんっ!溺れるぅうううッ!」
そしてミシェルに煽られるままに、またどこまでも溺れ合う羽目になったのだった。
「……アルバート殿?」
「……っ!申し訳ございません!」
翌朝身を清めてバスローブは着せたもののベッドで死んだように眠るミシェルを前に、アルバートはシュバルツに土下座しそうな勢いで頭を下げていた。
しかもロイドまでこの場に居て睨みつけてくるので、本当に申し訳無さに居たたまれなくなる。
「……ミシェル王子にはお抱え魔道士として専属の白魔道士を用意させてもらうので、そのつもりで」
ロイドから冷たく言われたその言葉に思わず目を瞠るが、ライアードからの命令だと言われれば自分としても何も口出しはできなかった。
「全く…シュバルツはこれでも王族だぞ?雑用で朝から何度も呼び出すなんて失礼だと思わないのか?」
そんな言葉に確かに申し訳なかったとうな垂れたのだが、シュバルツはその可愛らしい顔をロイドの方へと向けて不快そうに言い放った。
「ロイド?思ってもいないことを口にするな」
「ふっ…こういう奴には『私のペットを軽々しく呼び出すな』と言うより、ずっと効果的なんだ」
なんだか物凄い言い様だが、この二人は本当に恋人同士なのだろうか?
「……っ!ロイド!」
「お前は私のものだ。勝手に使われるのは不快だと言っている」
「……ッ!」
急に目の前でイチャイチャされて、やっぱり恋人同士だったと認識して、本当に朝から何度も呼び出したことを猛省してしまう。
「本当に申し訳ありませんでした!」
そんな自分にロイドがそっとこちらを向いて、その優しげな風貌からは想像しにくい言葉を繰り出してきた。
「淫乱に育て上げそれに踊らされて溺れるとは本末転倒だな。いっそのことドMに付き合ってドSにでもなってみたらどうだ?」
「…ミシェル様は大切な主人だ。ひどい事をする気もないし、沢山愛して差し上げたい」
あまりな言い様に、『ドSになるつもりなど毛頭ない』と答えると、何故か新人類だと言わんばかりに笑われてしまった。
「クハッ……!その言葉、どこかのドSに聞かせてやりたいものだな」
「?」
「気に入った。困った事があれば力になってやろう。シュバルツ。面倒だろうが、お抱え魔道士が見つかるまで回復してやってくれ」
「はぁ…ロイドがそう言うなら……」
そしてふわりと回復魔法を掛けてミシェルを癒してくれる。
「ん…」
そして小さな呻きを上げミシェルがその綺麗な目を開けた。
「アル…おはよう」
いつもは冷たく見えがちなその表情が、自分を認めてまるで花開くように美しく綻び幸せそうに微笑んだのを見て、今度こそ本当に鼻血を吹いた。
「はっ?!アルッ?!」
一体どうしたのだと慌てて起き上がったミシェルの肌蹴た肌がまた眩しくて、もう死んでもいいと思った。
この人と気持ちが通じ合ったのだと思うだけでもう本当に幸せ過ぎてたまらない。
そんな自分に背後でロイドが楽しげに笑い、ミシェルの顔が忽ち剣呑なものへと変わる。
「ロイド…。シュバルツ殿は兎も角、貴様がここにいるというのはどう言った了見だ?今すぐ出て行け」
そんなミシェルにロイドが楽しげにしながらも態度を改め口を開いた。
「我が主人よりご伝言があり、不躾とは思いましたがこちらで控えさせていただきました」
その変わり身の早さは本当に見事としか言いようがない。
「…申してみよ」
「はっ…近日中にミシェル王子にはお抱え魔道士として白魔道士をご用意させていただきます…と」
「……わかったと伝えておけ」
そしてそっと自分の隣に腰を落とすと、打って変わってキラキラした心配そうな顔で覗き込んできた。
「アル…大丈夫か?」
「ブッ……いえ。大丈夫です……」
朝から素敵すぎて鼻血が出ましたとは言えず、真っ赤な顔で鼻を押さえることしかできない自分が情けなかった。
他者と自分に対する態度のギャップに萌え死にしてしまいそうだ。
そんな自分を見兼ねたのか、シュバルツが呆れたように止血のために呪文を唱えてくれるのを感じた。
正直有難い。
これにはミシェルも感謝したようで、そっとそちらに向かって礼を述べていた。
「さて、支度をするから皆下がってくれるか?」
その言葉を合図に三人揃って部屋を出る。
そして扉が閉まると共に、とても同情的な眼差しでポンッとシュバルツから肩を叩かれてしまった。
「アルバート殿。お気持ち、お察し致します」
どうやら先程の件だけで自分が暴走してしまう理由を察してもらえたらしい。
あんなミシェル相手に抑えが利かなくなってしまうのだという事を────。
最初ライアードと話した時、はたから見た自分はそんな風に見えるのかと衝撃を受けた。
けれど確かに指摘されたら反論できない自分がいたのだからこればかりは致し方ないだろう。
そして突如身体が魔法に囚われ身動きがとれなくなった時は、もうミシェルに触れられなくなったのだと絶望感に襲われてしまった。
これは自分がミシェルに働いた不敬の償いなのだと────そう言われたような気がした。
けれどその後の二人とシュバルツとのやり取りを聞いて、これには別の意図があるのだと知り心を落ち着けて様子を見ることにしたのだが……。
まさかずっと分からなかったミシェルの本音を聞くことができるなんて思いもよらなかった。
はっきり言って、あんなにも取り乱すほどに愛されていたなんて考えもしなかった。
しかもずっと……兄がいる頃からずっと想ってくれていたなど思いもよらなかった。
もしもあの頃兄が死ななければ、今とはまた違った未来があったのだろう。
けれどこうしてミシェルの気持ちがわかったのなら今からでもまだ間に合うはずだ。
ずいぶん遠回りをしてしまったけれど、ミシェルが自分をこれ程までに想ってくれているのなら誤解を解いてやり直して欲しいと思った。
自分には幸せになってもらいたいと言ったくせに、自身の幸せはまるで諦めたかのように呟いた先程のミシェルの姿が痛々しく悲しくて仕方がなかった。
あんな姿はもう見たくはない────。
自分の手で幸せにしてやれるのなら、何があろうと幸せにしてやりたいと思った。
だからそれを伝えたくて、ゆっくり話せるようにとソファへとその身を運んだ。
「ミシェル様。少しは落ち着かれましたか?」
「……ああ。気にしなくても剣は先程のところに置いてきてしまった。お前は安心して戻っていい」
そう言いながら疲れたように溜息を吐くミシェルに、やはり自分の気持ちは全くわかってもらえていないのだなと残念に思いながらそっと隣へと寄り添う。
「こんな貴方を一人には致しません」
「アル……」
力なくこちらを見遣るミシェルは、恐らく先程の告白は自分には聞こえていないとでも思い込んでいるのだろう。
そして多分ここで好きだと気持ちを一言で伝えたとしても、同情とでも思い込まれてまた距離を置かれるのは明白だった。
「ミシェル様。私の話を聞いていただけますか?」
それならば、いっそのこと最初から全て語ってみようと思った。
きっとこの方法の方がミシェルの心に直接届くだろうと思ったのだ。
「私がミシェル様に初めて興味を持ったのは兄にミシェル様の話を聞かせてもらった時でした」
だからまだ十代の頃、ミシェルに言葉通り憧れの気持ちを抱いていたことを正直に話す。
「あの頃は四つ上のミシェル様は自分よりもずっと大人で、キラキラと輝く憧れの存在でした」
そして実際に会って話してその憧れはどんどんと好きへと変わっていったのだ。
「綺麗な貴方に会えるだけでいい。話せるだけで嬉しい。そうして幸せを感じていた中兄が亡くなり、貴方から距離を置かれ私は悲しみに沈みました。愛する兄と恋する貴方を両方とも一度に失ったからです」
それでもずっと想う気持ちは変わらなくて、頑張ればまた声をかけてもらえる日が来るかもしれない。少しでも目に止めてもらえるかもしれない。
「そうやってずっと貴方を想いながら必死に訓練に勤しんでいました。あまりにも無謀なその想いを同僚には呆れられ、時には宥められ、時には花街へと連れ出され、時には女性を紹介されたりしましたが、それでも気持ちはずっと変わりませんでした」
恋焦がれるのは自由だとただひたすらに努力し、気づけば8年以上の歳月が流れていた。
「だから…あの日お声掛け頂けた時は本当に舞い上がるほど嬉しかったのです」
その言葉と共にそっと隣を窺うとミシェルの頬が真っ赤に染まっているのが見て取れる。
どうやらちゃんと自分の気持ちは伝わっているようだ。
「貴方に必要とされたい。少しでも近づきたい。そう思って弾む胸を押さえて騎士として礼を尽くしたはずなのですが…正直あのように突き放されて、愚かにも死にたくなってしまいました。だからせめて口づけだけでいいから想いを遂げたいと実行に移し、不敬の償いとして死のうと思ったのです」
その言葉にミシェルが一気に蒼白になる。
「ミシェル様…勘違いなさらないで下さい。あれは私が悪いのです。今はあの時に止めていただいて良かったと本当に反省しております。きっと兄が生きていたら拳骨で吹き飛ばされていたことでしょう」
「アル……」
不安げなミシェルをそっと抱き寄せて、更に言葉を続けた。
「ミシェル様…ここまで話したらお分かりだとは思いますが、私はずっとずっと貴方をお慕いしておりました。それは決して敬愛などと言う綺麗なものではありません。貴方を恋しく思った日は貴方は閨ではどんな姿なのか、どんな風に乱れるのかと想像し自分を慰めたりも致しましたから……」
最初は口づけだけのつもりだった。
それなのに手淫を許され、口淫を許され、欲が出たのだと正直に語る。
「貴方を独り占めしたかった。お妃様がいらないと言うのなら、私だけの腕に閉じ込めてしまいたかった。最初から貴方を抱きたいという想いを抱えていたのに、それを悟られて離れられたくないと……」
身の程知らずだとミシェルから切り捨てられるのを恐れて、少しずつ少しずつ距離を縮めたのだと白状していく。
「貴方が悲しそうにするのに気づいてはいましたがそれが何故なのかわからなくて、もっともっと溺れさせれば言ってもらえるのかと行為をエスカレートさせてしまったのはライアード様からもお叱りを頂き反省致しました。申し訳ありません」
けれどそれだけ自分は必死だったのだ。
「手の届かない貴方と初めて身を繋げた時、貴方を初めて手に入れられたと幸せな気持ちになりましたが、貴方から終わりにしたいと言われて…正直ショックで…なんとか一縷の望みをとまた暴走してしまいました。お叱りは覚悟の上ですが、私は貴方の事が好き過ぎてもう普通ではいられないのです」
「アル…もういい…もうわかったから……」
「ミシェル様。どうか私をずっとお側に置いて下さい。私はもう貴方なしには生きられないほど深く愛してしまいました。これ以上貴方から突き放されたくはないのです……」
そうして全ての思いの丈を吐き出したところでミシェルがギュッと強く抱きついてきた。
「アル…すまない……」
「ミシェル様?」
このすまないはもしや気持ちが重過ぎてお断りという事なのだろうか?
けれどその後に続いたのはどこまでもミシェルの本心で……。
「うっ…私はお前の気持ちを裏切るようなことばかりをしていた」
「ミシェル様……」
「こんな私でも…お前に愛される資格はあるか?」
そんなこと…聞くまでもないのに────。
「もちろんです」
「私は…素直にお前に飛び込んでもいいのか?」
「そうしてくださるならこれ以上の幸せはございません」
「私は…お前が憧れているような男ではない。それでも…望んでくれるのか?」
「私は等身大のミシェル様を心から愛しております」
「アルッ…!」
ミシェルの目からポロポロとこぼれ落ちる涙はまるで宝石のように綺麗で、この美しい人が自分だけを見つめてくれたのが本当に嬉しかった。
「アル…私もずっとずっと…お前が好きだった……」
やっと素直に伝えられたその言葉がスッと胸に染み込んで、自分を喜びに満たしていく。
「ミシェル様…ありがとうございます」
そうして暫く二人で万感の思いで抱き締め合った。
「アル…少しだけ添い寝してほしい」
その後、そんな可愛い要求に応えたくてただ口づけだけを交わしながら二人で寝台に横になる。
そう言えば昨夜はあまり寝かせてあげられなかったのだ。
仮眠をとるのはいいかもしれない。
「アル…アル……」
素直に抱きついてくれるミシェルを抱き寄せて甘い時間を過ごすのは本当に夢のように幸せで、けれど少しだけ不安になった。
これは本当に現実なのだろうか?
そう思っていたところで、ミシェルもまた少し不安そうな表情を浮かべているのに気付いた。
胸に抱きながら優しく頭を撫でているのだが、まだ他にもその胸に不安を抱えているのだろうか?
「ミシェル様?」
「アル…。明日でいいから……次に抱く時は縛って抱いてくれないか?」
呼び掛けると物凄く言い難そうにポツリとそんな言葉が溢されて、意味が掴めずそっと顔を覗き込んでしまう。
そんな自分にミシェルは悩ましげに告げてきた。
「引かれるかもしれないが…私は不安なんだ。ずっとお前に愛されたかった…。だからいっそ縛り上げて束縛して、私がお前のものだと感じさせてほしい」
そんな言葉に胸が熱くなって、つい思い切り抱きしめてしまう。
どうやらミシェルも自分と同じように思ってくれていたらしい。
その言葉は本当にミシェルが自分の物になったのだと十分実感できるもので、これは夢でもなければ幻でもないのだと感じさせるものだった。
「ミシェル様。もちろんです。私は貴方のお望みなら何でも叶えさせていただきます。どんな貴方も愛しています」
そう答えるとミシェルはホッとしたように笑みを浮かべ、嬉しそうに自分にすり寄ってそのまま安心したように眠りについた。
***
「それで?あの二人はちゃんと話せたのか?」
ライアードがミシェルの仕事を片付けながら傍らのロイドへと話しかけると、眷属から報告を受けたロイドが小さく息を吐いてそれに答える。
「はい。今は話し終えて仮眠に入ったようです。それにしてもアルバートはなかなか丁寧な男ですね。あのミシェル王子にわからせるために一から十まで全て話し、誤解する暇など全く与えぬまま想いを伝えることに成功致しましたよ」
「それは凄いな。私なら面倒臭すぎてあっさり切り捨てるぞ」
ビスクドールのように完璧な冷たい美しさを持っているのに、中身は完璧から程遠い男……それが兄だ。
正直自分の『完璧な美しさを壊したい衝動』はこの辺りからきているのではないかと思ってしまうくらい見ていてイライラする存在だった。
それでも認めるべきところも多々あるから支えているし、育てようと思えるのだが…。
そうは言ってもやはりミシェルは身内でないなら付き合いたくない類の相手だと言えた。
それをこうも受け入れ上手く捕まえたアルバートは、恐らくミシェルに負けず劣らず生真面目な男なのだろうし、自分に足りないものを持ち合わせた人物なのだろうと思った。
「私は生真面目もまた問題だと思いますが……」
「何か不都合でも?」
そうやって感心していると、ロイドが珍しく微妙な顔をしたのでライアードは首を傾げてしまう。
生真面目な二人に何か問題でもあると言うのだろうか?
けれど次の言葉で納得がいった。
「ミシェル王子は生真面目ゆえに考えすぎて不安に思い、先程縛ってほしいと言ってましたし、アルバートは生真面目ゆえにお望みのままにと答えていました。私は別にあの二人がどこに行こうと構いませんが、その尻拭いを毎回シュバルツにさせるのは許せないと思っているのですが?」
「ああ…そうだったな」
そう言えばあの二人はその繰り返しのようなもので関係がエスカレートしていたのだった。
両思いになってもその関係は早々は変わらないだろう。
「それでは兄上には白魔道士のお抱え魔道士を用意しておくとするか。それならもうシュバルツ殿が呼び出される心配もあるまい?」
「それは名案です。人選はいかがなさいますか?」
「そうだな。生真面目な二人だしな…。偏見を抱かず、同じく生真面目で…淡々と仕事をこなせる白魔道士がいいな。探せるか?」
「ライアード様のご依頼とあれば」
「では任せる」
「はっ…」
そしてロイドは眷属へと指示をだし速やかに白魔道士を選定し始めたのだった。
***
明日でもいいと言われはしたが、想いが通じた喜びから────その日の夜そっと口づけを交わし合い、どちらからともなく繋がりたいと口にしそっと身を寄せあった。
服を脱がせたミシェルは本当に綺麗と言うよりも美しくて、アルバートは思わずゴクリと唾を飲み込んでしまう。
そんな自分にミシェルが約束通り縛って欲しいと訴えてきたのでキュッと捕縛の時と同じように縛ってみたのだが、それに対してミシェルは感嘆の息を吐いた。
「んっ…はぁあっ…」
「ミシェル様…痛くはないですか?」
「はぁ…大丈夫だ…。なんだかアルに抱きしめられているみたいで嬉しい…」
そんな言葉に思わず顔が赤くなってしまう。
どうしてミシェルはこんなに煽るようなことばかりを口にしてくるのか…。
「ミシェル様…貴方は本当に仕方のないお方だ…」
「んっんっ…。アル…今日は私の全てを愛してくれるか?」
「もちろんです」
いつも寝る時は衣服を身につけていたから、今日はこれまで触れられなかった肌を全てこの手で感じたかった。
「ミシェル様のお好きな事も全てできるよう道具の方もご用意しております。今日は沢山可愛がらせて下さい」
「んんっ…」
縛られながらも頬を染めこちらを見てくるミシェルが可愛くて、アルバートは何度も口づけを繰り返してしまう。
「はッ…はぁ…アル…。んっんっ…」
「わかっております。こちらを先にしましょうね」
そうしてミシェルの男根をいつものように口に含み舌で可愛がり始めた。
「は…はぁあッ…!」
グチュグチュと追い上げながら時折口を離し舌で後ろも舐め上げるとたまらないとばかりに腰を揺らしてくる。
「あんっ…!早くぅ…!」
「わかっております」
そして舌で後孔を抉るように嬲り、ヒクついてきたところでゆっくりと指を差し込んだ。
「あぁっ!アルッアルッ!」
ほぐれていくと共に甘い声を上げ、蕩ける眼差しをこちらへと向けられて思わず許しを請いたくなる。
「はあっ…ミシェル様。もう挿れさせて頂いても構わないでしょうか?」
「なんでも許す…から…前も可愛がって…」
その言葉にそれならばと一旦引き、玩具を手に取る。
「では後ろは一先ずこれを…。前はお好きなこちらを挿れて差し上げます」
「あぁあッ!」
後孔にミシェルの好きな張り型を挿入し、前には鈴のついた長い管を差し込んでやると腰をくねらせミシェルが啼いた。
「あ…あんんッ!」
縛られながらリンッと鈴の音を響かせ身悶えるあまりにも淫靡なその姿に、下半身が熱くなってしまう。
本当に可愛過ぎてたまらない。
「あ…アルぅ…早く可愛がって…」
「……ッ!ミシェル様のご命令なら…!」
鼻血が出そうだと思いながら張り型を動かしてやるとミシェルが可愛い声で喘ぎを上げ始める。
その声は気持ちが通じ合う前よりももっと甘い声で、まるで幸せだと言われているような気持ちになった。
「あっあぁんっ!あんんっ…」
「ミシェル様…もっと可愛い声を聞かせてください…」
張り型もいいがやっぱり自分のもので可愛がりたくて、結局それを抜き取り自分のものを挿れてしまう。
「あぁっ!きゅ…きゅんきゅんするぅ……!」
中へと全て挿れるとミシェルから戸惑いの声が上がった。
「ミシェル様?」
「あ…今までと違って、奥…奥がきゅんきゅんしてる…ッ」
意味がわからなくて、どこですかと言いながら奥を突くと更に甘い声が飛び出した。
「あっ…んぅ…!そこっ!」
ビクッと体を震わせ訴えられた所は確かにヒクついていて、まるで女のように種付けして欲しいとでも訴えているかのようだった。
「昨日種付けしたのを覚えてくださってるんですね」
「あっ…あぁあッ……」
「今日も種付けさせていただいても?」
ゴクリと唾を嚥下しながらコツンコツンと奥を軽く突くとミシェルの欲情した眼差しと目が合った。
そしてその首が小さくコクンと頷かれて、我慢できずに激しく動き始めてしまう。
「あぁああああぁッ!アルぅ……ッ!」
後ろ手に縛っている手が痛まないよう横倒しの態勢で片足を持ち上げながら腰を支え、何度も揺さぶりながら奥を責め立てるとあっという間にミシェルの理性が崩壊する。
正直最高過ぎてそのまま我慢できずに奥まで注いでしまった。
「あひゃぁあああぁ!熱いぃいぃ!」
「はぁっ…ミシェル様!あぁ…前も気持ち良くするお約束を忘れておりました。申し訳ございません…ッ」
ズブズブと軽く動かしてやるとミシェルから気持ち良さそうな声が溢れ始める。
「あっ…溶ける…溶けるぅ……ッ」
「気持ちいいですか?」
「あ…頭真っ白で気持ちいいっ…。アル…もっと愛して…」
そんな言葉に理性が飛ぶ。
もうなけなしの理性など振り払い、その白い肌へと荒々しく吸い付いた。
「はぁんッ!ヒッ…!きゃあぁあああッ!」
耳孔を舌で嬲り、口内も指で犯し、胸の突起も赤くなる程吸い付いた。
もちろん腰も最奥を突き上げ続け、そして弄ぶかのように前に入れた管も動かし鈴を鳴らしてやる。
「あぁあああああっ!」
快楽の高みで意識を飛ばしながらミシェルが悶えまくる。
「ひぃいいいいッ!ひぃいいいいッ!」
「ミシェル様っ!」
「イきゅ……も、イきゅぅううぅ…」
呂律が回らなくなりビクビクと小刻みに身体を震わせ続けるミシェルの奥でまた欲を弾けさせると、ミシェルが一際大きく身を震わせた。
それと同時に鈴口から管をゆっくりと抜いてやると、ビュクンビュクンと白濁が吐き出されてくる。
「ひはぁぁあああッ!!」
どこまでも淫らなその姿が自分だけのものだという事がたまらなくて、また奥まで突き上げてしまう。
「あっあんんッ!気持ちいいッ!アル…奥がずっと気持ちいいのぉッ…!疼いてたまらないっ!助けてッ!」
一度飛んで少し正気に返ったミシェルが涙目で訴えてくるのだが、それはもっとと言われているようで仕方がなかった。
「ミシェル様……ッ!いくらでもお付き合いさせてくださいッ!」
「あ、そこぉッ!大好きぃいいいッ!いっぱい突いてぇッ!はぁあッ!いいッ、いいぃいいぃッ!もっときてぇ…!」
「あぁ…ミシェル様…私だけのミシェル様…ッ」
「はぁんッ!アルッ…もっともっとアルを感じさせて……ッ!あっ…そこ、いいっ!いいぃッ!もっと抉ってぇええええッ!あんっ!あんっ!溺れるぅうううッ!」
そしてミシェルに煽られるままに、またどこまでも溺れ合う羽目になったのだった。
「……アルバート殿?」
「……っ!申し訳ございません!」
翌朝身を清めてバスローブは着せたもののベッドで死んだように眠るミシェルを前に、アルバートはシュバルツに土下座しそうな勢いで頭を下げていた。
しかもロイドまでこの場に居て睨みつけてくるので、本当に申し訳無さに居たたまれなくなる。
「……ミシェル王子にはお抱え魔道士として専属の白魔道士を用意させてもらうので、そのつもりで」
ロイドから冷たく言われたその言葉に思わず目を瞠るが、ライアードからの命令だと言われれば自分としても何も口出しはできなかった。
「全く…シュバルツはこれでも王族だぞ?雑用で朝から何度も呼び出すなんて失礼だと思わないのか?」
そんな言葉に確かに申し訳なかったとうな垂れたのだが、シュバルツはその可愛らしい顔をロイドの方へと向けて不快そうに言い放った。
「ロイド?思ってもいないことを口にするな」
「ふっ…こういう奴には『私のペットを軽々しく呼び出すな』と言うより、ずっと効果的なんだ」
なんだか物凄い言い様だが、この二人は本当に恋人同士なのだろうか?
「……っ!ロイド!」
「お前は私のものだ。勝手に使われるのは不快だと言っている」
「……ッ!」
急に目の前でイチャイチャされて、やっぱり恋人同士だったと認識して、本当に朝から何度も呼び出したことを猛省してしまう。
「本当に申し訳ありませんでした!」
そんな自分にロイドがそっとこちらを向いて、その優しげな風貌からは想像しにくい言葉を繰り出してきた。
「淫乱に育て上げそれに踊らされて溺れるとは本末転倒だな。いっそのことドMに付き合ってドSにでもなってみたらどうだ?」
「…ミシェル様は大切な主人だ。ひどい事をする気もないし、沢山愛して差し上げたい」
あまりな言い様に、『ドSになるつもりなど毛頭ない』と答えると、何故か新人類だと言わんばかりに笑われてしまった。
「クハッ……!その言葉、どこかのドSに聞かせてやりたいものだな」
「?」
「気に入った。困った事があれば力になってやろう。シュバルツ。面倒だろうが、お抱え魔道士が見つかるまで回復してやってくれ」
「はぁ…ロイドがそう言うなら……」
そしてふわりと回復魔法を掛けてミシェルを癒してくれる。
「ん…」
そして小さな呻きを上げミシェルがその綺麗な目を開けた。
「アル…おはよう」
いつもは冷たく見えがちなその表情が、自分を認めてまるで花開くように美しく綻び幸せそうに微笑んだのを見て、今度こそ本当に鼻血を吹いた。
「はっ?!アルッ?!」
一体どうしたのだと慌てて起き上がったミシェルの肌蹴た肌がまた眩しくて、もう死んでもいいと思った。
この人と気持ちが通じ合ったのだと思うだけでもう本当に幸せ過ぎてたまらない。
そんな自分に背後でロイドが楽しげに笑い、ミシェルの顔が忽ち剣呑なものへと変わる。
「ロイド…。シュバルツ殿は兎も角、貴様がここにいるというのはどう言った了見だ?今すぐ出て行け」
そんなミシェルにロイドが楽しげにしながらも態度を改め口を開いた。
「我が主人よりご伝言があり、不躾とは思いましたがこちらで控えさせていただきました」
その変わり身の早さは本当に見事としか言いようがない。
「…申してみよ」
「はっ…近日中にミシェル王子にはお抱え魔道士として白魔道士をご用意させていただきます…と」
「……わかったと伝えておけ」
そしてそっと自分の隣に腰を落とすと、打って変わってキラキラした心配そうな顔で覗き込んできた。
「アル…大丈夫か?」
「ブッ……いえ。大丈夫です……」
朝から素敵すぎて鼻血が出ましたとは言えず、真っ赤な顔で鼻を押さえることしかできない自分が情けなかった。
他者と自分に対する態度のギャップに萌え死にしてしまいそうだ。
そんな自分を見兼ねたのか、シュバルツが呆れたように止血のために呪文を唱えてくれるのを感じた。
正直有難い。
これにはミシェルも感謝したようで、そっとそちらに向かって礼を述べていた。
「さて、支度をするから皆下がってくれるか?」
その言葉を合図に三人揃って部屋を出る。
そして扉が閉まると共に、とても同情的な眼差しでポンッとシュバルツから肩を叩かれてしまった。
「アルバート殿。お気持ち、お察し致します」
どうやら先程の件だけで自分が暴走してしまう理由を察してもらえたらしい。
あんなミシェル相手に抑えが利かなくなってしまうのだという事を────。
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