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第一部 アストラス編~王の落胤~
30.勅命
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ロックウェルに自分を信じてほしいと言われたその日、クレイは寝台に突っ伏しながら考えていた。
もう二度とロックウェルに甘えたりしないと…そう決意した気持ちを全て払拭させられるかのようにロックウェルから散々啼かされた。
けれど素直に本音を吐き出したその先に与えられたのは彼からの優しさだった。
たまには…本音をぶつけてもいいだろうか?
素直に…自分の気持ちを吐露してもいいのだろうか?
甘えるなと…見限られないだろうか?
一体どれくらい許してもらえるのかわからなくて途方に暮れる。
そっと隣で眠るロックウェルに視線を向けて、眠っている時なら甘えられるかなと…思い切ってその胸に寄り添ってみた。
(温かい…)
それを感じられるのが素直に嬉しかった。
(そうだ。気づかれないようにたまに甘えるだけにすればいい…)
それならロックウェルに呆れられたり、見捨てられたりしないかもしれない。
(そうだな。そうしよう…)
そしてクレイはロックウェルの温もりを感じながら、やっと安心して眠りへと落ちていった。
***
その日、一眠りして目を覚ますと自分の腕の中にまるで甘えるかのように寄り添うクレイがいて驚いた。
その寝顔はひどく安心しているように見えて面映ゆい気持ちになる。
(可愛い…)
思わず愛しさが込み上げてきてギュッと抱きしめてしまった。
昨夜から散々啼かしてやっとずっと聞きたかった本音を聞くことができた。
やっと…捕まえて、今度こそ自分の物にできたと思う。
折角恋人同士になれたのだから、これからはその心をもっと素直に見せてほしい。
それには自分の努力も必要だとは思うけれど────。
「クレイ…もっと私に甘えてくれ…」
こうして閨で聞き出すのもいいが、できればファルに対するように普段からも素の自分をさらけ出してほしかった。
このまま寝台の上でしか素直になってくれなかったら、どんどんエスカレートして調教したいと思ってしまうかもしれない。
さすがにそれは可哀想だ。
けれどやってしまいそうな自分が怖い。
「…何もかも、お前が可愛すぎるのが悪い」
正直今回の嬌態はたまらなかった。
「もっともっと私色に染めたくなる…」
愛しすぎていくら抱いても抱き足りない気がする。
そうやってどうしたものかなと考えていると、クレイが腕の中で僅かに身じろいだ。
「ん…?」
「起きたか?クレイ」
「ロックウェル…?」
「ああ」
どうもまだ寝ぼけているのかクレイはそのままスリスリと甘えるように胸へと頬を擦りつけた。
「温かい…」
そう呟いた後はにかむように笑って見せた顔が可愛くて、また────襲いたくなった。
「お前は本当に私を誘うのが上手いな」
その声に一気に覚醒したのかバッと目を見開いて身を離して逃げようとしたが、当然逃がすはずがない。
「待て、ロックウェル!さっきまで散々やっただろう?!それにお前は仕事があるんじゃないのか?!」
必死に訴えてくるがそんなものは何の牽制にもならない。
「今日は休みだ。昨日散々お前を泣かせたいと思って二~三日分捌けるだけ捌いてきたからな」
お前ももう私の事がわかってきただろう?と言ってやるとクレイが蒼白になるが、体に灯ったこの熱はそう簡単に治まりそうになかった。
けれどそこでふと思い直す。
ここで無理強いをしてまた逃げられても大変だ。
だからほんの僅か逃げ道を用意してやることにした。
「まあお前の言い分もわかるし、それならシャワーを浴びながら一緒に気持ち良くなるというのでどうだ?」
それなら一石二鳥だろうと誘ってみたら案の定少し考えた後で、ほんのり頬を染めてコクリと頷いてくれる。
どうやら思った通り、このままベッドでまた執拗に啼かされるよりはそちらの方がまだマシだと判断してくれたらしい。
(色んな体位で開発されるだけだと…わかっていないところもまた可愛いな)
そうほくそ笑みながら、ロックウェルはそのまま捕獲に成功したのだった。
***
その頃、アストラス国の王宮では国王がそっと決心を固めていた。
「クレイ……やはりお前に一度会いたい」
ショーンの報告でクレイが行方不明となっていた息子である可能性が極めて高いと結論づけ、瞳を隠しているとしても一度直接会って確認してみたいと思った。
だから人を呼び、言付けた。
サシェの件で貢献してくれた黒魔道士クレイに褒美を与えたいから呼び出してほしい…と。
それなのに────。
「陛下…毎日のように人をやってお伝えしても、彼は遠慮するの一点張りでして…」
連日そんな報告が上がるばかりだ。
まさか王からの呼び出しをここまではっきりと断ってくるとは思っても見なかった。
これでは自分に会いたくないと言っているようにしか思えない。
恐らく事情を本人自身よくわかっているのだろうと察することができたが、それ故に好感度は上がり、益々会ってみたいという気持ちにさせた。
「ショーン。お前に彼を迎えに行ってもらいたい」
一週間待っても快い返事がもらえなかったので、とうとうそうやってショーンを呼び出したのだが、ショーンは少し考えた後でこう提案してきた。
「それなら私じゃなくロックウェル様に頼んだ方が確実ですよ?勅命を出せばロックウェル様も否とは言えないでしょうし、何とかして連れてきてくれると思います」
その言葉を受けてそう言えばロックウェルはクレイの友人だったと思い出す。
友人からの言葉なら確かにショーンの言う通り、彼が動いてくれる可能性は高いだろうと思われた。
「ではそのように」
「はい♪ではすぐにロックウェル様をお連れしますね」
ショーンはそうやってすぐにロックウェルを呼んできてくれる。
「ロックウェル。お前に勅命をもって命じたい」
その言葉にロックウェルが一体何事だと眉を顰めたが構わずその言葉を続けて言った。
「サシェの件で貢献してくれた黒魔道士、クレイに私から直接褒賞を与えたい。彼を一週間以内に私の前に必ず連れてくるように」
「……御意」
ロックウェルは静かに頭を下げると確かに承ったと踵を返した。
これで恐らく大丈夫だろう。
「クレイ…お前に会える日を楽しみにしている…」
こうして王はそっと微笑んだ────。
もう二度とロックウェルに甘えたりしないと…そう決意した気持ちを全て払拭させられるかのようにロックウェルから散々啼かされた。
けれど素直に本音を吐き出したその先に与えられたのは彼からの優しさだった。
たまには…本音をぶつけてもいいだろうか?
素直に…自分の気持ちを吐露してもいいのだろうか?
甘えるなと…見限られないだろうか?
一体どれくらい許してもらえるのかわからなくて途方に暮れる。
そっと隣で眠るロックウェルに視線を向けて、眠っている時なら甘えられるかなと…思い切ってその胸に寄り添ってみた。
(温かい…)
それを感じられるのが素直に嬉しかった。
(そうだ。気づかれないようにたまに甘えるだけにすればいい…)
それならロックウェルに呆れられたり、見捨てられたりしないかもしれない。
(そうだな。そうしよう…)
そしてクレイはロックウェルの温もりを感じながら、やっと安心して眠りへと落ちていった。
***
その日、一眠りして目を覚ますと自分の腕の中にまるで甘えるかのように寄り添うクレイがいて驚いた。
その寝顔はひどく安心しているように見えて面映ゆい気持ちになる。
(可愛い…)
思わず愛しさが込み上げてきてギュッと抱きしめてしまった。
昨夜から散々啼かしてやっとずっと聞きたかった本音を聞くことができた。
やっと…捕まえて、今度こそ自分の物にできたと思う。
折角恋人同士になれたのだから、これからはその心をもっと素直に見せてほしい。
それには自分の努力も必要だとは思うけれど────。
「クレイ…もっと私に甘えてくれ…」
こうして閨で聞き出すのもいいが、できればファルに対するように普段からも素の自分をさらけ出してほしかった。
このまま寝台の上でしか素直になってくれなかったら、どんどんエスカレートして調教したいと思ってしまうかもしれない。
さすがにそれは可哀想だ。
けれどやってしまいそうな自分が怖い。
「…何もかも、お前が可愛すぎるのが悪い」
正直今回の嬌態はたまらなかった。
「もっともっと私色に染めたくなる…」
愛しすぎていくら抱いても抱き足りない気がする。
そうやってどうしたものかなと考えていると、クレイが腕の中で僅かに身じろいだ。
「ん…?」
「起きたか?クレイ」
「ロックウェル…?」
「ああ」
どうもまだ寝ぼけているのかクレイはそのままスリスリと甘えるように胸へと頬を擦りつけた。
「温かい…」
そう呟いた後はにかむように笑って見せた顔が可愛くて、また────襲いたくなった。
「お前は本当に私を誘うのが上手いな」
その声に一気に覚醒したのかバッと目を見開いて身を離して逃げようとしたが、当然逃がすはずがない。
「待て、ロックウェル!さっきまで散々やっただろう?!それにお前は仕事があるんじゃないのか?!」
必死に訴えてくるがそんなものは何の牽制にもならない。
「今日は休みだ。昨日散々お前を泣かせたいと思って二~三日分捌けるだけ捌いてきたからな」
お前ももう私の事がわかってきただろう?と言ってやるとクレイが蒼白になるが、体に灯ったこの熱はそう簡単に治まりそうになかった。
けれどそこでふと思い直す。
ここで無理強いをしてまた逃げられても大変だ。
だからほんの僅か逃げ道を用意してやることにした。
「まあお前の言い分もわかるし、それならシャワーを浴びながら一緒に気持ち良くなるというのでどうだ?」
それなら一石二鳥だろうと誘ってみたら案の定少し考えた後で、ほんのり頬を染めてコクリと頷いてくれる。
どうやら思った通り、このままベッドでまた執拗に啼かされるよりはそちらの方がまだマシだと判断してくれたらしい。
(色んな体位で開発されるだけだと…わかっていないところもまた可愛いな)
そうほくそ笑みながら、ロックウェルはそのまま捕獲に成功したのだった。
***
その頃、アストラス国の王宮では国王がそっと決心を固めていた。
「クレイ……やはりお前に一度会いたい」
ショーンの報告でクレイが行方不明となっていた息子である可能性が極めて高いと結論づけ、瞳を隠しているとしても一度直接会って確認してみたいと思った。
だから人を呼び、言付けた。
サシェの件で貢献してくれた黒魔道士クレイに褒美を与えたいから呼び出してほしい…と。
それなのに────。
「陛下…毎日のように人をやってお伝えしても、彼は遠慮するの一点張りでして…」
連日そんな報告が上がるばかりだ。
まさか王からの呼び出しをここまではっきりと断ってくるとは思っても見なかった。
これでは自分に会いたくないと言っているようにしか思えない。
恐らく事情を本人自身よくわかっているのだろうと察することができたが、それ故に好感度は上がり、益々会ってみたいという気持ちにさせた。
「ショーン。お前に彼を迎えに行ってもらいたい」
一週間待っても快い返事がもらえなかったので、とうとうそうやってショーンを呼び出したのだが、ショーンは少し考えた後でこう提案してきた。
「それなら私じゃなくロックウェル様に頼んだ方が確実ですよ?勅命を出せばロックウェル様も否とは言えないでしょうし、何とかして連れてきてくれると思います」
その言葉を受けてそう言えばロックウェルはクレイの友人だったと思い出す。
友人からの言葉なら確かにショーンの言う通り、彼が動いてくれる可能性は高いだろうと思われた。
「ではそのように」
「はい♪ではすぐにロックウェル様をお連れしますね」
ショーンはそうやってすぐにロックウェルを呼んできてくれる。
「ロックウェル。お前に勅命をもって命じたい」
その言葉にロックウェルが一体何事だと眉を顰めたが構わずその言葉を続けて言った。
「サシェの件で貢献してくれた黒魔道士、クレイに私から直接褒賞を与えたい。彼を一週間以内に私の前に必ず連れてくるように」
「……御意」
ロックウェルは静かに頭を下げると確かに承ったと踵を返した。
これで恐らく大丈夫だろう。
「クレイ…お前に会える日を楽しみにしている…」
こうして王はそっと微笑んだ────。
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