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13.少しの変化

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姉にも釘を刺したし、バドもしっかり魔力を補給したからかあれから特に問題なく過ごせているようだ。
助けに行った俺に感謝しているのか、研究室にまで手土産持参で礼を言いに来た。
しかも研究室の皆にも激励の言葉をかけていった。
随分殊勝な態度がとれるようになったんだなとちょっと感心してしまう。

「ルース。研究中につまめるものをこれからもたまに差し入れしてもいいか?」

研究の助けにとでも考えたのか、そんな感じで気遣いもみせるようになったし、協力できることがあれば協力したいとも言ってくれた。
それならデータも色々取らせてほしいと言って、異世界人とこっちの人間の違いなんかも色々調べて魔法陣に使えないかの検証もしてみた。
ほとんど同じだったからあまり意味はなかったかもしれないけど、魔素の吸収率は少し違っていたから、この辺りがバドの魔素摂取障害の要因になっているのかなと思った。
ちなみに向こうに行った者達はこれまで似た症状を訴えたことはなかったらしいから、向こうからこっちに来た場合のみ症状が出るのかもしれない。

「これは…向こうに行った者達が帰ってきた際に症状が出る可能性もなくはないかもしれないな」
「では輸血用の血液の確保に努めましょうか。それならすぐに処置も行えますし」
「ああ。そうだな。医師達に一応伝えておくか」

まだこちらに戻すための魔法はできていないが、先にそちらの対策は取っておくことにしよう。

そうして前よりも顔を合わせる確率が上がったバドと過ごしつつ研究を進めていたら、また父から呼び出しを受けた。
この間のパーティーはどうやら姉がやらかしたせいで途中退席したと思われたらしく、また再度仕切り直しをしようなんて言われてしまった。
正直うんざりだ。

「ですから、女性には全く興味をそそられないんです」
「どう言うところが嫌なんだ?」
「そうですね。やたらと胸を強調したり、胸を押し付けながら腕に絡みついてきたり、強引で図太い上にすぐ泣いて誤魔化すところとか、後は…」
「わ、わかったわかった!つまりそう言った面のない女性なら考えてもよいということだな?」
「う~ん…。どうでしょう?」
「で、今のお前の好みは?」
「可愛い感じの弟系年下男子です」
「難しいな。だがお前のためならペチャパイロリ体型且つ中身が知的な女子を探してみせる!」

何やら意気込んでるが、俺の好みはロリとかショタじゃないんだが?!
勘違いも甚だしい。
おかしな誤解はしないで欲しかった。

「別に必要ないのでいりません」
「いや。これは私の問題だ。いるいらないではなく、絶対に見つけてみせる!」

そして頑固な父は俺の相手を本気で探し始めた。
やめてくれ。


***


「…ってことがあったんだよ」

ひと月ぶりに魔力が尽きたと言うバドを抱き、俺はついでとばかりに父からの話をしていた。
最近バドと会う機会が多くなったからか、こう言ったプライベートな話も普通にするようになっていて、何がおススメだとかどういったのが好き等々好みの話なんかも普通にしていたから、まあその延長で話したに過ぎないんだけど…。

「…バド?」

なんでそんな複雑そうな顔をしてるんだ?

「ルース…」
「なんだ?」
「お前!それがひと月ぶりに俺を抱いた後にする話か?!」
「うぉっ?!何怒ってるんだよ?ちょっと小休止の間の雑談だろう?怒るなよ」

恋人でもなんでもないのにどうしてこんなに怒ってるんだ?コイツは。
嫌いな俺が女を押し付けられようとしてる話なんてしたら、絶対揶揄ってくると思ったんだけどな?
軽口で和んだところで続きをするつもりだった俺からしたら、こんな反応は予想外で意味不明だ。

「大体そんな話、きっぱり断れば済む話だろう?!」
「断っても聞いてもらえなかったんだ!俺はちゃんと年下の可愛い男が好きだって言った!」
「じゃあどうして探して連れてくるって話になるんだ?!」
「そんなの知るか!大体元はと言えばそっちが毎年召喚なんてしてくるからややこしい話になるんだ!」
「どういう意味だ?」
「俺は昔から天才って言われてきたからな。18才を超えたら絶対召喚されるだろうって言われてて、それなら婚約者を作っても悲しませるだけだって、同じ年頃の女と近づけないようにされてたんだ」

バドの問いに怒りながらではあったものの素直に答えたら、何故かバドが眉間に皺を寄せた。
まあ自分達のせいでそんなことになったんだし、これじゃあ文句があっても何も言えないだろう。

「……お前が女より男にいく理由はそれか」
「いや、違うけど?」

なんだか辛そうにそう聞かれたからもしかしたら罪悪感でも抱かせてしまったのかもしれない。

(でも、違うんだよな~)

「俺が可愛い男が好きになった切っ掛けは単純だぞ?」
「……?」
「あれは初めて俺が魔法を使った時だった」

今でこそ魔法は多々使いこなせるけど、誰にでも初めてというのはあるものだ。
俺はその日初めて教わった魔法をドキドキしながら発動させた。

第一魔法が光魔法だったから初めて発動させた魔法は光魔法の初歩の初歩。
指先に光を集めるだけのものだった。
できるのはできたけど、なんだか凄くしょぼいし、全然感動も何もなくて正直内心では落ち込んでいたんだ。
でもたまたま通りかかったどこかの可愛い年下の男の子がそれを見て、パッと顔を輝かせて凄い勢いでこっちに駆け寄ってきたんだ。

『凄い!お兄ちゃん、これ魔法?魔法だよね?凄く暖かい色!僕これ大好き!』

そう言って満面の笑みで褒め称えてくれた。
それがなんだか凄く嬉しくて、もっと凄いのを見せてやりたくなって、俺はそこから魔法にのめり込んでいったんだ。

「思えばあれが初恋だったんだよな」

それ以来俺の癒しとなった年下の可愛い弟系が俺の好みのタイプになった。
だから女じゃダメなんだと俺は言いたい。

「…………その後その男は?」
「え?ああ。実は後から聞いた話、あれは隣国の王子だったらしくてさ、ずっと会えず仕舞いなんだよな」
「会えず仕舞い…」
「そう。まあそのうちどこかの国際交流の場で会うこともあるだろうし、その時運命の出会いに繋がるかもなんて思ったりもするんだけどな」

あっけらかんとそう言い放った俺に、何故かバドはいきなり口づけてきた。

「んっ?!」
「ルース。雑談は終わりだ。研究資料にするんだろう?ちゃんと俺を抱いて、たっぷり魔力で満たせよ?」

確かにちょっと話が長くなりすぎたかもしれない。
なんだかバドの表情が暗い気がするけど、もしかして向こうでの婚約者でも思い出したのかもしれないな。
俺とは違ってバドは婚約者だって普通に居ただろうし。

「バド。そう落ち込むなよ。年上の女程サービスはできないとは思うけど、魔力はしっかり満たしてやれるし、いっぱい気持ちよくしてやるからな」

そう言って一先ずキスで雰囲気を作り直し、愛撫から丁寧にやり直してしっかり感じさせてやった。
閨については俺も数えるほどしか経験がなかったから、バドを抱きながら実践で学ぶしかない。
ちゃんと反応を見ながら気持ちいいところを探っていく。
こういうのは今後に生かせることだし、覚えておいて損はない。
バドを無事に国に帰して、向こうに散っている者達をこちらに戻して、全部終わってから初めて俺は自分の将来を考えたい。

(やっぱり明日、父上に直談判しに行くか)

そんなことを考えつつ、この後どうやってバドの可愛い顔を引き出してやろうかなと考えを切り替えた。



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