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【番外編】
☆2.ルマンドと俺 Side.メイビス
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ルマンドと結婚して約一月、なんだか最近仕事が楽になった。
「仕事が減ったのか?」
不思議に思って侍従に尋ねると、侍従がああそれはと言って俺に教えてくれた。
「ルマンド殿下が補佐として働いてくれているからですよ。ご結婚後メイビス様の仕事の見直しをしてくださいまして、どんどん効率化を図ってくださったんです」
視察の予定なども入れたいのに入れられないと侍従が四苦八苦していたところそっと手を差し伸べてくれたのだと嬉しそうに話す。
「お陰でこちらも気が楽になりましたし、メイビス様の仕事もはかどって本当に助かっています。いい伴侶をお選びになられましたね」
ルマンドを褒められるのは嬉しいが、何となく侍従がルマンドに惚れているように見えて嫌だ。
「そうそう。騎士団の方でも団長と意見交換をして大きく訓練法を見直してくださったそうで、魔物への対処法も色々確立してくださったそうですよ。新しい隊列の組み方なんかも考えてくださったそうです」
「そうか」
それは良いことだなと感心していたのも束の間…。
「そういうこともあって今騎士団の連中はルマンド殿下に惚れこむ輩が続出みたいですね。元々強くて気さくで話しやすいって言われていましたが、最近では輪をかけて大人気のようです」
「…………」
それは嫌だ。出禁にしたい。ルマンドにそれとなく言っておこうかな。
けれどそんな気持ちが漏れ出てしまったのか、侍従に溜息を吐かれてしまった。
「ルマンド殿下は交友関係が円滑なら緊急時にまとまりやすく、仲良くなるのはいいことだと捉えられております。ですからどうか騎士団への出入り禁止等を口に出されるのはおやめくださいね」
「…………」
「ルマンド殿下は大臣方との仲も良好でして、素晴らしいコミュニケーション能力をお持ちです。そうそう。そんな感じでルマンド殿下があちこちで調整を掛けてくださいまして、メイビス様のご予定も比較的動かしやすくなりましたし、そろそろご視察がてらルマンド殿下とご旅行など如何です?新婚旅行に行きたいと以前仰っておられたでしょう?今なら可能だと思われますが…」
「……!それは嬉しいな。早速予定を立てよう」
「そう仰ると思っておりました。ではすぐにでもご予定を詰めましょうか」
優秀な侍従の言葉に踊らされている気はするが、ここは旅行優先だ。
行先はどこがいいだろう?
ルマンドが喜びそうなところを厳選しないと。
そうと決まればさっさと仕事を片付けてルマンドの意見も聞きに行こう。
レイベルトとは違う街のダンジョンに行ってみるのもいいかもしれないし、武器の街 サーベルトに行ってみるのも楽しいかもしれない。あるいはルマンドが一度行ってみたいと言っていた魔法使いが多く住む魔法都市ベッケルも候補に入れてみようか。
ルマンドの喜ぶ顔が早く見たい。
そしてその日の夜、部屋でのんびりと寛いでいる時に聞いてみたら、案の定目を輝かせてどこも気になると言ってすごく嬉しそうにどこがいいかなとウキウキしていた。
けれどそこでハッとしたようにそう言えばと言い出した。
「メイビス…俺、メイビスに聞きたいことがあったんだけど」
「なんだ?」
「…………俺に足りないスパダリ要素ってなんだと思う?」
(スパダリ?)
どうしていきなりそんなことを言い出したんだろうと首を傾げざるを得ない。
ルマンドはそのままで十分条件を満たしていると思うんだが。
今日の侍従の話じゃないが、ルマンドは本当によくやってくれていると思う。
「俺、愛情深くていつも俺のために色々考えて動いてくれて、それこそロマンチックなこととか俺が望むことをなんでも叶えてくれるようなメイビスみたいなカッコいい男になりたいんだ。でも何が足りないか考えても全然わかんなくて…」
悩んでいるんだとルマンドは言うけれど、そんなことを言ってくれている今がどれだけ幸せかわかっていないのか?こちらを褒めてくれて、そんな自分を好きだから尽くしたいと言ってくれているようにしか聞こえないんだが…。
「ルマンド…どうして急にそんなものを目指そうと思ったんだ?」
「もちろん、メイビスに俺と同じくらい幸せを感じてもらいたくて!」
「もう十分幸せにしてもらってるからルマンドはそのままで文句なしにスパダリだと思う」
「え?」
「仕事面もプライベートも全部支えてくれて、こうして沢山愛情を注いでくれて不満に思う事なんてあるはずがないだろう?」
「でも……お前、たまに不安そうにしてるから」
「え?」
「焼きもち、妬くだろ?そういうのを払拭するのも男の甲斐性だからさ」
その言葉に思わず笑みがこぼれた。本当にルマンドには敵わない。
ルマンドはいつまで経っても考え方が男前だ。
それこそ俺なんかよりもずっと……。
「ふっ…」
「どうして笑うんだよ」
「いや。ルマンドがルマンドらしくて…」
「俺らしい?」
「そう。いつでも太陽のように男らしく輝いているルマンドは誰かを魅了せずにはいられないんだと改めて思った」
太陽に焦がれるのは誰にも止められない。
ならばそんな特別な存在に愛情を示してもらえている自分を成長させて、胸を張って誇れるように頑張るしかない。
(良い伴侶をもらった…か)
本当にその通りだと思う。
ルマンドが傍に居る限り自分はきっと良き皇帝になれるようこの先ずっと頑張り続けることだろう。
ルマンドを失望させないよう、顔向けできないようなことには手を染めず善政を敷き、国を豊かにしていく。
それはとても素晴らしいことだと思えた。
ルマンドの失恋から始まった出会いだったが…今はそのことに心から感謝したいと思う。
ルルーナという少女がルマンドの魅力に落ちなくてよかった。愚かでよかった。俺と出会わせてくれてよかった。
「ルマンド」
「何?」
「今日はもう休もうか」
「え?もうちょっと話したかったのに…」
「話すだけならベッドでも出来るだろう?」
「う~ん…まあ?」
渋々答えたルマンドを抱き上げてチュッとキスを落として連れて行く。
「今日もいっぱい愛し合おう」
与えられた、つかみ取ったこの日々に感謝を。
俺はこの幸せを噛みしめながらこれからを生きて行く。ルマンドと共に────。
******************
※昨日のルルーナの話と合わせて、太陽を手に入れた人と手に入れなかった人の対比を書いて終わりたかった感じですかね。
なので本来はここで完結!という形でした。
あとはリクエスト分の更新となりまして、まずは初夜編を夜にアップさせて頂きますのでよろしくお願いします(^^)
「仕事が減ったのか?」
不思議に思って侍従に尋ねると、侍従がああそれはと言って俺に教えてくれた。
「ルマンド殿下が補佐として働いてくれているからですよ。ご結婚後メイビス様の仕事の見直しをしてくださいまして、どんどん効率化を図ってくださったんです」
視察の予定なども入れたいのに入れられないと侍従が四苦八苦していたところそっと手を差し伸べてくれたのだと嬉しそうに話す。
「お陰でこちらも気が楽になりましたし、メイビス様の仕事もはかどって本当に助かっています。いい伴侶をお選びになられましたね」
ルマンドを褒められるのは嬉しいが、何となく侍従がルマンドに惚れているように見えて嫌だ。
「そうそう。騎士団の方でも団長と意見交換をして大きく訓練法を見直してくださったそうで、魔物への対処法も色々確立してくださったそうですよ。新しい隊列の組み方なんかも考えてくださったそうです」
「そうか」
それは良いことだなと感心していたのも束の間…。
「そういうこともあって今騎士団の連中はルマンド殿下に惚れこむ輩が続出みたいですね。元々強くて気さくで話しやすいって言われていましたが、最近では輪をかけて大人気のようです」
「…………」
それは嫌だ。出禁にしたい。ルマンドにそれとなく言っておこうかな。
けれどそんな気持ちが漏れ出てしまったのか、侍従に溜息を吐かれてしまった。
「ルマンド殿下は交友関係が円滑なら緊急時にまとまりやすく、仲良くなるのはいいことだと捉えられております。ですからどうか騎士団への出入り禁止等を口に出されるのはおやめくださいね」
「…………」
「ルマンド殿下は大臣方との仲も良好でして、素晴らしいコミュニケーション能力をお持ちです。そうそう。そんな感じでルマンド殿下があちこちで調整を掛けてくださいまして、メイビス様のご予定も比較的動かしやすくなりましたし、そろそろご視察がてらルマンド殿下とご旅行など如何です?新婚旅行に行きたいと以前仰っておられたでしょう?今なら可能だと思われますが…」
「……!それは嬉しいな。早速予定を立てよう」
「そう仰ると思っておりました。ではすぐにでもご予定を詰めましょうか」
優秀な侍従の言葉に踊らされている気はするが、ここは旅行優先だ。
行先はどこがいいだろう?
ルマンドが喜びそうなところを厳選しないと。
そうと決まればさっさと仕事を片付けてルマンドの意見も聞きに行こう。
レイベルトとは違う街のダンジョンに行ってみるのもいいかもしれないし、武器の街 サーベルトに行ってみるのも楽しいかもしれない。あるいはルマンドが一度行ってみたいと言っていた魔法使いが多く住む魔法都市ベッケルも候補に入れてみようか。
ルマンドの喜ぶ顔が早く見たい。
そしてその日の夜、部屋でのんびりと寛いでいる時に聞いてみたら、案の定目を輝かせてどこも気になると言ってすごく嬉しそうにどこがいいかなとウキウキしていた。
けれどそこでハッとしたようにそう言えばと言い出した。
「メイビス…俺、メイビスに聞きたいことがあったんだけど」
「なんだ?」
「…………俺に足りないスパダリ要素ってなんだと思う?」
(スパダリ?)
どうしていきなりそんなことを言い出したんだろうと首を傾げざるを得ない。
ルマンドはそのままで十分条件を満たしていると思うんだが。
今日の侍従の話じゃないが、ルマンドは本当によくやってくれていると思う。
「俺、愛情深くていつも俺のために色々考えて動いてくれて、それこそロマンチックなこととか俺が望むことをなんでも叶えてくれるようなメイビスみたいなカッコいい男になりたいんだ。でも何が足りないか考えても全然わかんなくて…」
悩んでいるんだとルマンドは言うけれど、そんなことを言ってくれている今がどれだけ幸せかわかっていないのか?こちらを褒めてくれて、そんな自分を好きだから尽くしたいと言ってくれているようにしか聞こえないんだが…。
「ルマンド…どうして急にそんなものを目指そうと思ったんだ?」
「もちろん、メイビスに俺と同じくらい幸せを感じてもらいたくて!」
「もう十分幸せにしてもらってるからルマンドはそのままで文句なしにスパダリだと思う」
「え?」
「仕事面もプライベートも全部支えてくれて、こうして沢山愛情を注いでくれて不満に思う事なんてあるはずがないだろう?」
「でも……お前、たまに不安そうにしてるから」
「え?」
「焼きもち、妬くだろ?そういうのを払拭するのも男の甲斐性だからさ」
その言葉に思わず笑みがこぼれた。本当にルマンドには敵わない。
ルマンドはいつまで経っても考え方が男前だ。
それこそ俺なんかよりもずっと……。
「ふっ…」
「どうして笑うんだよ」
「いや。ルマンドがルマンドらしくて…」
「俺らしい?」
「そう。いつでも太陽のように男らしく輝いているルマンドは誰かを魅了せずにはいられないんだと改めて思った」
太陽に焦がれるのは誰にも止められない。
ならばそんな特別な存在に愛情を示してもらえている自分を成長させて、胸を張って誇れるように頑張るしかない。
(良い伴侶をもらった…か)
本当にその通りだと思う。
ルマンドが傍に居る限り自分はきっと良き皇帝になれるようこの先ずっと頑張り続けることだろう。
ルマンドを失望させないよう、顔向けできないようなことには手を染めず善政を敷き、国を豊かにしていく。
それはとても素晴らしいことだと思えた。
ルマンドの失恋から始まった出会いだったが…今はそのことに心から感謝したいと思う。
ルルーナという少女がルマンドの魅力に落ちなくてよかった。愚かでよかった。俺と出会わせてくれてよかった。
「ルマンド」
「何?」
「今日はもう休もうか」
「え?もうちょっと話したかったのに…」
「話すだけならベッドでも出来るだろう?」
「う~ん…まあ?」
渋々答えたルマンドを抱き上げてチュッとキスを落として連れて行く。
「今日もいっぱい愛し合おう」
与えられた、つかみ取ったこの日々に感謝を。
俺はこの幸せを噛みしめながらこれからを生きて行く。ルマンドと共に────。
******************
※昨日のルルーナの話と合わせて、太陽を手に入れた人と手に入れなかった人の対比を書いて終わりたかった感じですかね。
なので本来はここで完結!という形でした。
あとはリクエスト分の更新となりまして、まずは初夜編を夜にアップさせて頂きますのでよろしくお願いします(^^)
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