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第四章 フォルクナー帝国編Ⅱ(只今恋愛&婚約期間堪能中)

78.フォルクナー帝国について学んだ俺

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折角遊学に来たのだからフォルクナーの文化を学ぼうと、俺はただいま勉強中。
ダンジョンデート以来メイビスが甘い雰囲気をちょっと控えてくれるようになったので、かなり平常心も保てるようになったし安心安心。
そして今日も今日とてレターニアがやってきて、俺を揶揄いながら良い本を差し入れてくれた。

「ルマンドは今フォルクナーの文化をお勉強中でしょう?だから息抜きにぴったりな本を用意したわ」
「どんなの?」
「ズバリ!恋人達に特化したフォルクナーの文化よ!」

レターニアによると、この本を一冊読むだけでこの国の恋人達の文化が学べるらしい。
本当かな?でもこれまでも色々考えて持ってきてくれているし、多分大丈夫だろう。

「ありがとう。早速夜にでも読んでみるよ」
「ええ!是非読んでみて。きっと背中を流してあげればお兄様も喜ぶわ」

キャッと嬉しそうにしながらレターニアは部屋から出て行ったが……。

(あれ?俺背中流したことあるんだけどな?)

何となく嫌な予感がして、夜ではなく今読もうと思い立ちそのままその本を手に取って読み始めた。




「~~~~ッッッ?!」

結果────俺はやらかしていた。

(メイビスも言ってくれればいいのに…!)

文化の違いを分かっていなかったから仕方がないけど、俺は既にメイビスに恋人同士でしかしないという『背中を流す』という行為をやらかしていたらしい。
しかもあの時断られた『全身を洗う』という行為は婚約者になってからの行為なので、普通付き合ってる段階でもやらないのだという。

(それは流石に断るよな…)

多分あの時のメイビスは物凄く悩んだと思う。
付き合ってないのに背中を流そうとする俺。しかも返事をしなかったらヒースの背中を流しに行こうとした俺。
きっと悩んだ結果ああなったんだろう。うん。

「えぇ~…っと。どうしようかな……これ」

ちょっと魂が口から出そうなほど放心してから、俺は再度念入りに本を読みこんでから考えようとページをめくった。


******


その日、俺はこっそりケインには内緒でメイビスの部屋へとやってきた。
最初の頃は目を光らせていたケインもここ最近は結構放置してくれている。
と言うのも、俺が夜にメイビスのところにわざわざ行かないからだ。
「昼間に結構会ってるし、メイビスも仕事で疲れてるだろうから行かない」って言って本当に全く足を向けなかったから安心したらしい。

「メイビス……」

だから小声でそう呼び掛けると、メイビスは物凄く驚いたようにソファから立ち上がった。

「ルマンド…!」

その姿は嬉しいをまるで全身で表しているかのように見えて恥ずかしい。

「その…今日は俺…お前に謝りたくて」
「謝る?」

メイビスは不思議そうにしながらも俺をソファへとエスコートしてくれた。

「その…今日タニアから借りた本に背中を流すのは恋人同士だけって書いてあったから…」
「…………気にしなくていいのに」
「いや、気にするよ!俺、知らなかったとはいえメイビスを困らせてたんじゃないかって……」
「じゃあ…恋人同士になった今ならいいだろう?」
「え?えっと……うん」
「それなら明日、一緒に風呂に入ってくれるか?」
「う……っ。わ、わかった」
「嬉しい」

そしてギュッと抱き寄せられてそのまま誘うような眼差しを向けられたのでそっと目を閉じた。

「んっ…」

片手で後頭部を支えられて、もう片方の手も腰を引き寄せられているので逃げられない。

「んぅ…ッ……」
「ルマンド…来てくれて凄く嬉しい」
「あ……」

そっと目を開けると優しくて甘い湖水の瞳が俺だけを映していて、ついつい魅了されてしまう。

「折角だから今日はキスに慣れようか?」

「まだ慣れていないだろう?」と俺の好きな優しい笑みで言われ、そのままゆっくりとソファへと押し倒される。
そして何故だかよくわからないままキスを仕掛けられ、終わった頃にはすっかり体に力が入らなくなってしまっていた。

「メイビス……」
「ルマンド…愛してる」

ソファでぐったりと寝そべる俺に乗っかってそんなことを言いながら髪を撫でてくれるけど、これ、傍から見たら襲ってる図だからな?
まあ凄く優しい目をしてるからこのまま襲う気は全くないんだろうけど…。

それから暫くはまったりしてたんだけど、不意に思いついたようにメイビスが意外な話題を出した。

「ちなみにコーリックでは性教育はもう終わってるのか?」
「ん~?俺はまだ受けてない」

そう。コーリックで王族が性教育を受けるのは成人を迎えた18の時だから、本来は終わっていてもおかしくはない。
でも俺は傷心旅行に行ったりしてたし、帰ってからも教育日が決まる前にこちらに来てしまったからまだ受けていないのだ。
だから知っていることと言えばごく僅か。
大人から聞きかじったことと、結婚前に挿入するのは絶対にやってはいけませんくらいのものだろうか。
王族が挿れてしまうと女性に子種を注ぐことになって、継承問題が発生する場合があるから絶対にやめましょう的なことを年頃になる学園入学の時くらいに指導されたのは覚えている。
でもここはコーリックではなくフォルクナーだから多少の違いはあるんじゃないかな。
だから世間話の一環で聞いてみることにした。

「コーリックでは王族は継承問題が生じるから結婚前は繋がらないって指導してるんだけど、こっちではどうなってるんだ?」
「こっちは王族だからと特に禁止されたりはしていないな。避妊さえすれば問題はないから。一般的に恋人同士の段階で繋がるのは割と普通。異性間なら避妊してするし、そもそも同性同士の場合は子供の問題は生じないから…」
「なるほど」

それは確かに言われてみればそうだなと妙に納得がいった。
ちなみにこっちには避妊ポーションとか言うのもあるらしい。
毒消しポーションから派生して作られたとか言ってたけどちょっと驚き。
薬草の種類が違うだけなんだろうけど、最初に作った人は凄いと思う。

そんな会話をしているうちにだいぶ体に力が入るようになってきたのでそろそろ部屋に戻ると口にしたら、少しだけ残念そうにされてしまったがこればっかりは仕方がない。

「泊って行ってくれたらいいのに」
「ケインにバレたら煩いし。明日背中が流せなくなるけど?」
「…………それもそうか。じゃあまた明日」

そして額にチュッとキスを落として俺を見送ってくれたのだった。


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