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第三章 コーリック王国編(只今恋愛堪能中)

57.進んだ関係 Side.メイビス

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ルマンドがコーリックに帰って三日。
たった三日なのにもうずいぶん会ってない気がして寂しくなった。
友達からでも交際は交際。
これから少しずつ意識を変えていき恋人同士になっていこうとは思っているものの、相手はルマンドだ。
そう簡単にはいかないだろう。
だから手始めに恋愛本を渡して様子を見ることにした。
初日に渡した本は既に読んだらしいから手紙と共に追加で本も送っておいた。

こういう時は小型転移装置が本当に便利だ。
各国の城には必ず一つ以上置いてあって、国交間の書簡のやり取りなどにも多々使用されている。
その一つを使ってルマンドとの手紙のやり取りを行えるようになっているのだが、自分自身が行くことが出来ないので酷くモヤモヤしていた。
せめて別れ際に渡した通信石で連絡をくれればいいのに、それすらもなくやはり一方通行の想いなのだと実感してしまう。
会いたいのに会えない。それがただただ辛い。
もういっそ魔力コントロールをもっと頑張って転移魔法を習得してしまおうか?
そんな気持ちもどんどん膨らんでしまって、今日は暇さえあれば練習をしていた。

父からルマンドがこちらへの遊学を希望していることと、コーリックの王から婚約は俺自身の誕生祭の場で行ってはどうかと打診してきたことなども聞かされていた。
だから遊学に来てくれたら毎日一緒に居られるんだからと自分を慰める日々をこの先淡々と送るのだと思っていた。
その夜までは────。




ソファで本を広げながら、ルマンドは今どうしているだろうと溜息を吐き、ちっとも読み進められないまま時間ばかりが経過していた夜半、唐突に通信石が震えた。

(え?)

ずっと待っていたルマンドからの通信に鼓動が跳ね、嬉しさが込み上げてくる。
連絡をもらえたことがすごく嬉しくて、気持ちを落ち着かせるため深呼吸を繰り返し、少し落ち着いたところでそれを手に取った。

「……ルマンド?」

魔力を通しそう呼び掛けてみるけれど、あちらからの反応がない。
何かあったのだろうか?
もしかして三日経って冷静になったら別れたくなったとか言わないよな?
そんなことを言われたら全力で引き留めるけど────。

「どうかしたのか?」

もう一度呼び掛けると今度はちゃんと反応があった。

「あ、ゴメン。もう寝てた?」
「いや、眠れないから本を読んでた」
「ははっ、一緒だ」

どうやら別れ話ではなさそうだとホッとする。
多分眠れないから話してみようかなと思い立っただけだろう。
まだ友達としか思ってもらえていないのだから、これ以上は何も望まない。
だから普通に友人同士の話題を口にした。

「今は何の本を読んでるんだ?」
「え?俺?王女と姫の秘密の逢瀬」
「ああ、あれか」

それは王女と他国の姫が恋仲になって密かに仲を深めていくという純愛ストーリーだ。
手を握り合い「心はずっと貴女だけのもの」と言うシーンがあったから、暗に俺の心はルマンドのものだと伝えたかった。
自己満足でもなんでもいいからこっそり気持ちを伝えたくて選んだだけだ。
それなのに……。

「うん。それで…ちょっと俺も秘密の逢瀬をやってみたいなと…思って」
「え?」

(え?何?聞き間違い…か?)

会いたくて仕方がない気持ちが幻聴に変わったんだろうか?

「今からそっちに行ったら…ダメか?」

ゴスッ!!

気づけば目の前のテーブルに頭をぶつけて、これが夢でないかどうか確認していた。
いつの間にか自分が寝てしまっていて夢を見てるんじゃないかと思ったからだ。
でも頭は物凄く痛い。

(痛い……。夢じゃない…のか?)

そうしてあまりの出来事にグルグル考え事をしていると、本当にルマンドがこちらへと転移してきてくれた。

「メイビス!凄い音がしたけど…」

しかも大丈夫かと言ってヒールまで掛けてくれたのだ。もうこれは夢じゃないと確信する。

「ル、ルマンド…」
「体調でも悪かったのか?俺が無理言ったなら断ってくれてよかったのに」
「いや、ちょっと驚いただけだから全然大丈夫だ」
「そうか?」

断るなんてするはずがない。寧ろいつでも来てくれ。毎日来てくれてもいいくらいだ。
いや、それよりも秘密の逢瀬をやってみたくて来てくれたんじゃないのか?
それなのに一瞬で帰ろうとするなんて────。

「じゃあもう帰るから…」

その言葉を聞いた途端逃がさないとばかりに捕まえて、腕の中に抱き込んだ。
折角来てくれたのに逃がすはずがない。
もっと一緒に居て欲しい。
こんな奇跡、もう二度とないかもしれないんだ。
もうちょっと傍に居て欲しい。

「え?あの、メイビス?」
「ん?」
「は、恥ずかしいんだけど…」
「でも、秘密の逢瀬をしに来てくれたんだろう?」

捕まえられたルマンドは恥ずかしそうに身をよじるけど、上手く言い包めておとなしくさせる。

もっと俺を意識してほしい。
もっともっと俺を見て?
そう考えるだけでどんどん笑みが深くなって、言葉に甘さが増していく。

「メ…メイビス……」
「うん?」
「その……」
「うん」
「…………こんなにドキドキしてたら眠れない」

(ふふっ…やった)

これでもかと意識してくれているのが嬉しすぎてつい笑いが漏れた。

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