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第二章 フォルクナー帝国編(只今友情堪能中)
39.ダンジョンがある街にたどり着いた俺
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逸る気持ちを抑えながら馬を駆り、冒険者の街レイベルトへとたどり着く。
そこは冒険者の街と言われるだけあって、様々な冒険者の姿が見られて面白かった。
街も賑やかで、売られているものはダンジョンで取れた素材を使ったものが多いみたいだ。
しかもダンジョンでは宝箱というのがあるらしく、そちらではレアなアイテムも発見されるのだとか。
もしかしたらセレン国で冒険者が手に入れたという彼の魔剣はこのダンジョンから流れたものなのかもしれない。
それにしても冒険者が多い。
かなり大きな街なのに歩いている人のほとんどが冒険者のように見える。
パーティー編成も様々で、コーリックでは見かけない女性だけのパーティーなんかもあった。
見た感じ魔法使い二人魔法剣士二人といった感じだけど、魔法剣士の方は素早さ重視で戦っているんだろうか?
ちょっと戦い方が気になる。
そんな風に思いながらそちらを見遣っていたからだろうか?
メイビスがそっと耳元に口を寄せて尋ねてきた。
「ルマンド…あの女性パーティーが気になるのか?」
「えぇ?!」
いや、イケメンに耳元で囁かれてなんか背中がゾクッとしたんだけど?!
今俺の頭を占めてるのは間違いなくメイビスだよ!
良い声しすぎだろう?
いきなり甘いイケメンボイスで囁かれたらドキドキするからやめて欲しい。
まあメイビスも他意はないだろうから変に意識しているとか思われても嫌だし、揶揄われないよう口にはしないけど!
「ああ、うん。女性だけのパーティーって珍しいなって…」
「そうか。でもフォルクナーは同性婚も認められてるせいか、女性同士だけで組んでその中で恋人同士になることもあるみたいなんだ」
だからもしかしたらあそこもそうかもと言われてちょっと衝撃を受けた。
(え?フォルクナーって同性婚できる国なんだ…)
他人と湯船に浸かったり、ダンジョンがあったり、同性婚が認められていたり……コーリックとあまりにも文化が違うので激しくカルチャーショックを受ける。
本で同性婚が認められている国があると読んだことはあったけど、まさかフォルクナーがそうだったとは思ってもみなかった。
これは実際に来ないと実感できなかった事柄だろう。
自分の中の常識が大きく覆されたような気がした。
それを実感し改めて道行く人達をサッと見遣ると、そう言えば男性パーティーの中でもちょっと小柄な男性がガタイの良い男に甘えるようにしな垂れかかっている姿もちらほら見られるような……?
あれは仲の良い仲間同士というカテゴリーからはどう見ても外れているような気がする。
(おぉう…本当だ。しかもなんだか物凄くナチュラル……)
「うん。フォルクナーのこと、ちょっとわかった気がする」
あまりにも自然に見えすぎて無意識に完全にスルーしてしまっていたようだが、きっとこの光景がフォルクナーの『普通』なんだろうと思った。
流石帝国。大きい国なだけあって考え方が柔軟なんだな、きっと。
それを踏まえた上で、やっぱり温泉は自分達四人で行って正解だったと思う。
不特定多数のいるところにまかり間違って行っていたら、よそ様のイチャイチャにあてられる羽目になっていたかもしれないから────。
そんなのを目撃したら目のやり場に困っただろうし、初めて見る光景にショックを受けて珍しく熱でも出したかもしれない。
そうなるくらいなら俺は少人数で温泉を楽しんで、メイビスに癒されるほうがずっといいと思った。
でもここで「あれ?」とふと思い至る。
もしかしたらメイビスの恋愛対象は女性ではない可能性もあるかもしれないことに気づいてしまったのだ。
女性に言い寄られ過ぎたせいで女嫌いになったのなら当分恋愛はしたくないだろうなと勝手に思っていたけど、もしかしたらメイビスが誰か男性とくっつく可能性もなくはないのではないだろうか?
だってそれがフォルクナーの文化みたいだし。
(う~ん……?)
なんだかそれを考えると胸がモヤモヤする気がする。
初めて親友とも呼べるようになった友人を誰かに取られたくない心境とでも言うのか、ちょっと嫉妬のような感情が芽生えてしまった。
メイビスはその気になれば男性とだって普通に上手くいく気がする。
優しいからあんな風に可愛らしい男に寄り掛かられたらすごく甘やかしたりしそうだよなと、思わず通りがかった少年へと目を向けてしまう自分がいた。
(なんかそれは嫌だな)
自分以外に優しくするメイビスを想像するとモヤモヤが大きくなる気がして、慌てて思考を切り替える。
「さ、ギルドに行こう!まずは情報収集だ」
******
ギルドに着くとこれまたちょっと懐かしい賑やかな光景が見られて自然と笑みがこぼれる自分がいた。
セレンはお役所的なギルドだったけど、フォルクナーはコーリックと同じで掲示板に貼られた依頼を剥がして各自で受付へと持って行くスタイルだったからだ。
ただ流石に冒険者の街なだけあってその数は膨大。しかも内容もダンジョン都市なだけあってダンジョン内の素材採取系がとても多い。それも内容は様々だ。
薬草に鉱石、魔物の素材。
それが各冒険者ランク別に掲示板に貼られている。
「あ、そう言えば俺達のパーティーランクってどうなるんだ?」
考えたら四人でパーティーを組んで仕事を受けるのはこの国では初めてだ。
セレンでは受付嬢がそのあたりをセレクトしてこのあたりのご依頼はどうでしょうと示してくれたからわかりやすかったけど、自分達で選ぶのはどこから選べばいいのかわからない。
Sランク一人、Aランク一人、Bランクが二人というパーティー構成なのだ。
ここは無難にBランク依頼でいいんだろうか?
そう思ってヒースに聞いたら、なんとSまで受けられるぞと答えが返ってきた。
こういう場合はパーティーで一番ランクが高い人が基準になるらしく、その人の責任において依頼を選べるので俺達の場合はSランクまでの依頼で好きに選んでいいのだそうだ。
「まぁ今回はダンジョンも初めてだし、無難にBランク依頼でいいんじゃねぇか?」
ヒースクリフは悩む俺にあっさりとそう言ってBランク用の掲示板へと足を向け、ザッと依頼を見た後で1枚の紙を剥がして持ってきた。
「まずは小手試しにこれにするか」
俺達はヒースが持ってきたその紙をそっと覗き込む。
一体どんな依頼だろう?
そこにはこう書かれていた。
『月光草の採取』
それはダンジョンの10層に咲く月光草という貴重な花で、周辺にはウルフ系の魔物が多数生息しているという。
一口にウルフと言っても色々だけど、確かに初ダンジョンならこれくらいがちょうどいいのかもしれない。
「じゃあこの後は情報収集、食材の確保、各種ポーションの準備を整えて行くとするか」
ヒースのその言葉に全員で頷いて、俺達はその依頼書を手に受付窓口へと向かったのだった。
そこは冒険者の街と言われるだけあって、様々な冒険者の姿が見られて面白かった。
街も賑やかで、売られているものはダンジョンで取れた素材を使ったものが多いみたいだ。
しかもダンジョンでは宝箱というのがあるらしく、そちらではレアなアイテムも発見されるのだとか。
もしかしたらセレン国で冒険者が手に入れたという彼の魔剣はこのダンジョンから流れたものなのかもしれない。
それにしても冒険者が多い。
かなり大きな街なのに歩いている人のほとんどが冒険者のように見える。
パーティー編成も様々で、コーリックでは見かけない女性だけのパーティーなんかもあった。
見た感じ魔法使い二人魔法剣士二人といった感じだけど、魔法剣士の方は素早さ重視で戦っているんだろうか?
ちょっと戦い方が気になる。
そんな風に思いながらそちらを見遣っていたからだろうか?
メイビスがそっと耳元に口を寄せて尋ねてきた。
「ルマンド…あの女性パーティーが気になるのか?」
「えぇ?!」
いや、イケメンに耳元で囁かれてなんか背中がゾクッとしたんだけど?!
今俺の頭を占めてるのは間違いなくメイビスだよ!
良い声しすぎだろう?
いきなり甘いイケメンボイスで囁かれたらドキドキするからやめて欲しい。
まあメイビスも他意はないだろうから変に意識しているとか思われても嫌だし、揶揄われないよう口にはしないけど!
「ああ、うん。女性だけのパーティーって珍しいなって…」
「そうか。でもフォルクナーは同性婚も認められてるせいか、女性同士だけで組んでその中で恋人同士になることもあるみたいなんだ」
だからもしかしたらあそこもそうかもと言われてちょっと衝撃を受けた。
(え?フォルクナーって同性婚できる国なんだ…)
他人と湯船に浸かったり、ダンジョンがあったり、同性婚が認められていたり……コーリックとあまりにも文化が違うので激しくカルチャーショックを受ける。
本で同性婚が認められている国があると読んだことはあったけど、まさかフォルクナーがそうだったとは思ってもみなかった。
これは実際に来ないと実感できなかった事柄だろう。
自分の中の常識が大きく覆されたような気がした。
それを実感し改めて道行く人達をサッと見遣ると、そう言えば男性パーティーの中でもちょっと小柄な男性がガタイの良い男に甘えるようにしな垂れかかっている姿もちらほら見られるような……?
あれは仲の良い仲間同士というカテゴリーからはどう見ても外れているような気がする。
(おぉう…本当だ。しかもなんだか物凄くナチュラル……)
「うん。フォルクナーのこと、ちょっとわかった気がする」
あまりにも自然に見えすぎて無意識に完全にスルーしてしまっていたようだが、きっとこの光景がフォルクナーの『普通』なんだろうと思った。
流石帝国。大きい国なだけあって考え方が柔軟なんだな、きっと。
それを踏まえた上で、やっぱり温泉は自分達四人で行って正解だったと思う。
不特定多数のいるところにまかり間違って行っていたら、よそ様のイチャイチャにあてられる羽目になっていたかもしれないから────。
そんなのを目撃したら目のやり場に困っただろうし、初めて見る光景にショックを受けて珍しく熱でも出したかもしれない。
そうなるくらいなら俺は少人数で温泉を楽しんで、メイビスに癒されるほうがずっといいと思った。
でもここで「あれ?」とふと思い至る。
もしかしたらメイビスの恋愛対象は女性ではない可能性もあるかもしれないことに気づいてしまったのだ。
女性に言い寄られ過ぎたせいで女嫌いになったのなら当分恋愛はしたくないだろうなと勝手に思っていたけど、もしかしたらメイビスが誰か男性とくっつく可能性もなくはないのではないだろうか?
だってそれがフォルクナーの文化みたいだし。
(う~ん……?)
なんだかそれを考えると胸がモヤモヤする気がする。
初めて親友とも呼べるようになった友人を誰かに取られたくない心境とでも言うのか、ちょっと嫉妬のような感情が芽生えてしまった。
メイビスはその気になれば男性とだって普通に上手くいく気がする。
優しいからあんな風に可愛らしい男に寄り掛かられたらすごく甘やかしたりしそうだよなと、思わず通りがかった少年へと目を向けてしまう自分がいた。
(なんかそれは嫌だな)
自分以外に優しくするメイビスを想像するとモヤモヤが大きくなる気がして、慌てて思考を切り替える。
「さ、ギルドに行こう!まずは情報収集だ」
******
ギルドに着くとこれまたちょっと懐かしい賑やかな光景が見られて自然と笑みがこぼれる自分がいた。
セレンはお役所的なギルドだったけど、フォルクナーはコーリックと同じで掲示板に貼られた依頼を剥がして各自で受付へと持って行くスタイルだったからだ。
ただ流石に冒険者の街なだけあってその数は膨大。しかも内容もダンジョン都市なだけあってダンジョン内の素材採取系がとても多い。それも内容は様々だ。
薬草に鉱石、魔物の素材。
それが各冒険者ランク別に掲示板に貼られている。
「あ、そう言えば俺達のパーティーランクってどうなるんだ?」
考えたら四人でパーティーを組んで仕事を受けるのはこの国では初めてだ。
セレンでは受付嬢がそのあたりをセレクトしてこのあたりのご依頼はどうでしょうと示してくれたからわかりやすかったけど、自分達で選ぶのはどこから選べばいいのかわからない。
Sランク一人、Aランク一人、Bランクが二人というパーティー構成なのだ。
ここは無難にBランク依頼でいいんだろうか?
そう思ってヒースに聞いたら、なんとSまで受けられるぞと答えが返ってきた。
こういう場合はパーティーで一番ランクが高い人が基準になるらしく、その人の責任において依頼を選べるので俺達の場合はSランクまでの依頼で好きに選んでいいのだそうだ。
「まぁ今回はダンジョンも初めてだし、無難にBランク依頼でいいんじゃねぇか?」
ヒースクリフは悩む俺にあっさりとそう言ってBランク用の掲示板へと足を向け、ザッと依頼を見た後で1枚の紙を剥がして持ってきた。
「まずは小手試しにこれにするか」
俺達はヒースが持ってきたその紙をそっと覗き込む。
一体どんな依頼だろう?
そこにはこう書かれていた。
『月光草の採取』
それはダンジョンの10層に咲く月光草という貴重な花で、周辺にはウルフ系の魔物が多数生息しているという。
一口にウルフと言っても色々だけど、確かに初ダンジョンならこれくらいがちょうどいいのかもしれない。
「じゃあこの後は情報収集、食材の確保、各種ポーションの準備を整えて行くとするか」
ヒースのその言葉に全員で頷いて、俺達はその依頼書を手に受付窓口へと向かったのだった。
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