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第一章 セレン国編(只今傷心旅行中)
17.ポイズンスネークと戦う俺
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※蛇のモンスターが出てくるのでうねうねが苦手な方は流し読みでサラッとお読みください。
******************
ポイズンスネーク────それは強力な麻痺毒を持つ魔物だ。噛まれたら筋肉が弛緩し身動きが取れなくなるし、最悪心臓麻痺で死んでしまうこともあるので危険である。
そんなポイズンスネークが大量発生…。
「うぇ…本当に気持ち悪いくらい多いな」
その光景はその一言に尽きた。
巨大な毒蛇が一匹だけじゃなく何匹も木々の間から現れて襲い掛かってくるのだからたまらない。
ギルドでも数は把握していないと言っていたが、大量発生とはいっても10匹前後だと思われますと聞いていた。
けれどこれは明らかにもっと多い。まるでこのあたり一帯に巣くっているかのようだ。一体どれだけいるのだろう?
これだけいるなら寧ろ二人で来なくて正解だったかもしれない。
「ルマンド!何匹倒せるか久しぶりに競争するか?!」
「え?それ、ポイズンスネーク相手だと俺が不利じゃない?!」
ヒースクリフがポイズンスネーク達の攻撃を躱しながら楽し気に剣を振るいそんな提案をしてくるけど、戦闘スタイルが全く違うから物凄く俺には不利なんだけど!
いや、これまでも有利だったことなんてないけどさ?
もうちょっと別な相手が良かったな~…。
せめて相手がポイズンスネークじゃなくてハーピーやワイバーンとかだったら良かったのに。
「大丈夫だ、俺の分も上乗せしていい」
けれど一緒に戦いながらメイビスが笑顔で提案してくる。
え?冗談だよな?
「私の分も当然ルマンド様に差し上げますよ!」
こちらも負けじとケインが言ってくる。
何それ、いくらヒースがS級でも三対一だと数に差が出るだろう?!
でもヒースはそれでも負ける気はないらしく、不敵に笑いながらゴーサインを出した。
「OK。じゃあ行くぞ!」
そこからは俺は全員に付与魔法をかけて補助しながら手近なポイズンスネークを拘束魔法で束縛し、コアを壊していく。
首付近を狙って地に拘束すれば毒の攻撃もくらい難い。
対するヒースはその剛腕から繰り出される鋭い剣で次々と首を切り落としていた。
(カッコいい!)
あれくらいスマートに倒せたらスッキリしそうだなと思いながら俺も負けじと倒していく。
うねうねと大量にいるから頭を探すのが大変だ。油断はしないようにしないと、毒は怖い。
ちなみにヒースは強力な魔法も使えるけど、基本的にメイビスと同じく身体強化で一閃しながら倒すタイプ。
でもケインは少しだけ違う。
剣に魔法を纏わせ攻撃力を上げ倒していくのが基本スタイルだ。
近衛はあんまり筋肉がつき過ぎていると繊細な王族の子に怖がられることがあるということで、俺と同じくらいか少しだけ胸板が厚い細マッチョ系が多い。
それ故に機動力が高く小回りが利くが、その分どうしても不足しがちになる攻撃力を魔法で補うのだ。
上級魔法を使うよりも省エネだから、こういう相手の数が多い時なんかにも重宝するのが魔法剣の特徴。
これはこれで俺も参考になるなとちょいちょい目で追ってしまう。
こうしてみるとこのパーティーはなかなかどうしてレベルが高い。
けれど流石に戦いが長引くと疲労は出てくるもので、暫くするとメイビスとケインに疲れが出てきたのを感じた。
このままだと毒を受ける確率が上がってしまう。
『リカバリー』
だからすかさず魔法を使って体力を回復させた。
怪我をした時はヒールだけど、こういう時はこの魔法が効くのだ。
あんまり使わないから練度が低くて他の魔法に比べて効果もそこそこだけど、何もしないよりマシだろう。
そうやって協力して全部倒したところで俺はホッとしながら荒い息を整えた。
総数は全部合わせて27体。
個々の倒した数はというと、俺が6体、メイビスが4体、ケインが6体、ヒースが11体だった。
圧倒的にヒースが多いけど、三人分で足すとこちらの方が多い。
「あ~…負けちまった」
負けたと言いながらもヒースは全く悲観した様子はない。
それもそのはず、戦ってる最中に気づいたがこれはヒースなりのパーティーのモチベーションアップのためのパフォーマンスに過ぎなかったからだ。
こういうところは本当に尊敬してしまう。
「ヒースって相変わらず頼りになるな~」
俺もこのくらいカッコいい男になりたい。
「惚れ直したか?」
「いつも惚れ直してばっかりだよ。強過ぎ、男前過ぎ!」
「そっかそっか」
そして嬉しそうにまた頭を撫でてくる。
ヒースって比較的わかりやすいから付き合いやすいんだよな。
城での人付き合いに疲れた時はヒースと話すに限る。
そう思いながらそれぞれの武器にサッとクリーンの魔法を掛けて綺麗にし、自分の武器を仕舞った。
周辺を索敵しても近辺に魔物はいないし大丈夫だろう。
そんな俺にヒースは上出来だと満足げに頷いてくれる。
「随分成長したな」
「そうかな?ヒースにそう言ってもらえたら自信がつくな」
そこへケインが不満げに混ざってきた。
「ルマンド様はいつもそんなにヒースクリフ殿と親しげなのですか?」
「え?まあいつもこんな感じだけど?」
「……今度からは私も必ず随従致します」
「へ?」
「ですから、国に帰ってからも魔物退治に行く際は必ず一緒についていきますので!」
「えぇ~……」
なんかまた面倒臭いことを言い出したぞ。
「いや、お前本職があるだろう?」
「近衛の仕事は王族の護衛ですので何ら問題はありません」
「いや、ほら、隊長の書類仕事とか溜まらないように色々忙しいんだとか言ってなかったっけ?」
「それは他の部下に任せれば済む話です」
「えぇ~……」
「そもそも転移魔法が使えるからと言って、お一人でひょいひょい出掛けてしまうルマンド様が問題です」
なんだか益々国に帰りたくなくなってきた。
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ポイズンスネーク────それは強力な麻痺毒を持つ魔物だ。噛まれたら筋肉が弛緩し身動きが取れなくなるし、最悪心臓麻痺で死んでしまうこともあるので危険である。
そんなポイズンスネークが大量発生…。
「うぇ…本当に気持ち悪いくらい多いな」
その光景はその一言に尽きた。
巨大な毒蛇が一匹だけじゃなく何匹も木々の間から現れて襲い掛かってくるのだからたまらない。
ギルドでも数は把握していないと言っていたが、大量発生とはいっても10匹前後だと思われますと聞いていた。
けれどこれは明らかにもっと多い。まるでこのあたり一帯に巣くっているかのようだ。一体どれだけいるのだろう?
これだけいるなら寧ろ二人で来なくて正解だったかもしれない。
「ルマンド!何匹倒せるか久しぶりに競争するか?!」
「え?それ、ポイズンスネーク相手だと俺が不利じゃない?!」
ヒースクリフがポイズンスネーク達の攻撃を躱しながら楽し気に剣を振るいそんな提案をしてくるけど、戦闘スタイルが全く違うから物凄く俺には不利なんだけど!
いや、これまでも有利だったことなんてないけどさ?
もうちょっと別な相手が良かったな~…。
せめて相手がポイズンスネークじゃなくてハーピーやワイバーンとかだったら良かったのに。
「大丈夫だ、俺の分も上乗せしていい」
けれど一緒に戦いながらメイビスが笑顔で提案してくる。
え?冗談だよな?
「私の分も当然ルマンド様に差し上げますよ!」
こちらも負けじとケインが言ってくる。
何それ、いくらヒースがS級でも三対一だと数に差が出るだろう?!
でもヒースはそれでも負ける気はないらしく、不敵に笑いながらゴーサインを出した。
「OK。じゃあ行くぞ!」
そこからは俺は全員に付与魔法をかけて補助しながら手近なポイズンスネークを拘束魔法で束縛し、コアを壊していく。
首付近を狙って地に拘束すれば毒の攻撃もくらい難い。
対するヒースはその剛腕から繰り出される鋭い剣で次々と首を切り落としていた。
(カッコいい!)
あれくらいスマートに倒せたらスッキリしそうだなと思いながら俺も負けじと倒していく。
うねうねと大量にいるから頭を探すのが大変だ。油断はしないようにしないと、毒は怖い。
ちなみにヒースは強力な魔法も使えるけど、基本的にメイビスと同じく身体強化で一閃しながら倒すタイプ。
でもケインは少しだけ違う。
剣に魔法を纏わせ攻撃力を上げ倒していくのが基本スタイルだ。
近衛はあんまり筋肉がつき過ぎていると繊細な王族の子に怖がられることがあるということで、俺と同じくらいか少しだけ胸板が厚い細マッチョ系が多い。
それ故に機動力が高く小回りが利くが、その分どうしても不足しがちになる攻撃力を魔法で補うのだ。
上級魔法を使うよりも省エネだから、こういう相手の数が多い時なんかにも重宝するのが魔法剣の特徴。
これはこれで俺も参考になるなとちょいちょい目で追ってしまう。
こうしてみるとこのパーティーはなかなかどうしてレベルが高い。
けれど流石に戦いが長引くと疲労は出てくるもので、暫くするとメイビスとケインに疲れが出てきたのを感じた。
このままだと毒を受ける確率が上がってしまう。
『リカバリー』
だからすかさず魔法を使って体力を回復させた。
怪我をした時はヒールだけど、こういう時はこの魔法が効くのだ。
あんまり使わないから練度が低くて他の魔法に比べて効果もそこそこだけど、何もしないよりマシだろう。
そうやって協力して全部倒したところで俺はホッとしながら荒い息を整えた。
総数は全部合わせて27体。
個々の倒した数はというと、俺が6体、メイビスが4体、ケインが6体、ヒースが11体だった。
圧倒的にヒースが多いけど、三人分で足すとこちらの方が多い。
「あ~…負けちまった」
負けたと言いながらもヒースは全く悲観した様子はない。
それもそのはず、戦ってる最中に気づいたがこれはヒースなりのパーティーのモチベーションアップのためのパフォーマンスに過ぎなかったからだ。
こういうところは本当に尊敬してしまう。
「ヒースって相変わらず頼りになるな~」
俺もこのくらいカッコいい男になりたい。
「惚れ直したか?」
「いつも惚れ直してばっかりだよ。強過ぎ、男前過ぎ!」
「そっかそっか」
そして嬉しそうにまた頭を撫でてくる。
ヒースって比較的わかりやすいから付き合いやすいんだよな。
城での人付き合いに疲れた時はヒースと話すに限る。
そう思いながらそれぞれの武器にサッとクリーンの魔法を掛けて綺麗にし、自分の武器を仕舞った。
周辺を索敵しても近辺に魔物はいないし大丈夫だろう。
そんな俺にヒースは上出来だと満足げに頷いてくれる。
「随分成長したな」
「そうかな?ヒースにそう言ってもらえたら自信がつくな」
そこへケインが不満げに混ざってきた。
「ルマンド様はいつもそんなにヒースクリフ殿と親しげなのですか?」
「え?まあいつもこんな感じだけど?」
「……今度からは私も必ず随従致します」
「へ?」
「ですから、国に帰ってからも魔物退治に行く際は必ず一緒についていきますので!」
「えぇ~……」
なんかまた面倒臭いことを言い出したぞ。
「いや、お前本職があるだろう?」
「近衛の仕事は王族の護衛ですので何ら問題はありません」
「いや、ほら、隊長の書類仕事とか溜まらないように色々忙しいんだとか言ってなかったっけ?」
「それは他の部下に任せれば済む話です」
「えぇ~……」
「そもそも転移魔法が使えるからと言って、お一人でひょいひょい出掛けてしまうルマンド様が問題です」
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