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62.国際会議㊼

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兄にもいざという時のため秘密通路と地下道を教えた方がいいと思い、お出掛けと称して教えておくことにした。
騎士達があんなに頼りないのなら兄が一人で逃げる事態が起こらないとも限らない。
そんな時にきっとこの通路は兄の命を守ってくれるだろう。

「兄上。どうぞ」

そう言って秘密通路へと兄を誘い込む。
秘密通路と地下道の間には一応分岐もあるのでそれについてもちゃんと教えておいた。

「地下に入る前のこっちの道に行くと城内の別の場所に出るので気を付けてくださいね」
「あ…ああ」
「厨房付近と使用人部屋が集まる付近、それと騎士達の宿舎付近は鉢合わせる可能性があるので、そちら方面にはできるだけ向かわないようにしてください」
「わかった」
「そしてここをこっちに行ってここをこうすると…地下道への入り口になっています」

他にも何ヶ所かあるのでまた教えますねと言ったら驚かれたけど、ここだけでいいなら無理にとは言わないですがと言ったら慌てて全部教えて欲しいと言ってくれた。

「全部は俺も把握しきれていないと思うんですが、知っている範囲で伝えておきますね」

そして仲良く地下道を歩き、いつもの場所とは違うところへと出た。

「いつもは闇医者の拠点近くに出るんですけど、今日はこっちで」
「ここは?」
「ふふ…。一度来てみたかった場所なんですよ」

そう。昔から一度は来てみたいと思っていた場所に来てみたのだ。

「裏稼業の男達がよく酒場で話していた場所なんですけど、お子様には無理だってずっと言われてたんですよね。でも昨日俺もそろそろ楽しめるんじゃないかって言われたので、折角だし兄上と来てみようかと思って…」
「ほぅ…」
「じゃあ行きましょうか」
「……ちなみにここはどういった場所なんだ?」
「え?手に入れにくい物を手に入れたり、夜を楽しむ場所だって聞きましたけど?」
「嫌な予感しかしないんだが?」
「そうですか?裏ルートでしか出回っていない商品とかも見られて、玩具とか媚薬とか、楽しいものも沢山手に入ったりするらしいですよ?日によってはオークションなんかもあるとか」

気に入ったものがあったら買って帰りましょうねって笑って言ったら何故かドン引きされてしまった。
ちょっと悲しい。

「ダメでしたか?もしかして安全性が心配とか?それならミュゼにでも試してから兄上に使いますよ?」
「え?!」
「一応この中でもリスク説明はされるらしいですけど…そうですよね、心配ですよね」
「いやいやいや?!だ、大丈夫だ。行ってみよう」
「そうですか?じゃあ…」

そう言って揃って中へと入り、分類分けされた品々を見遣りながら興味の惹かれるものを順に見ていく。
今日はオークションはなかったようだが、気になった品の説明を聞いたり、実際に使っている人達が楽しんでいるところを見させてもらったり、ちょっと盛り上がったので俺も一部屋借りて兄と楽しんだりとなかなか充実した夜を堪能することができた。

初めて宙吊りにされながら犯され、微妙に欲しいところにもらえない中、ちょっと特殊な媚薬で感じまくり俺に責め立てられながら悶え狂っていた兄。
その後ギリギリまで虐めてベッドに下ろし奥まで挿れてやったら初めて抱いた時くらい可愛らしく快楽に堕ち切って、舌ったらずに喘ぎながら合間合間に卑猥な事を口にし、されるがままになっていた。
理性なんて全く残らず全部吹き飛んで『いっぱい可愛がって。もっと何度も奥まで犯して』っていつも以上に全力で縋り甘えてもらえたのもあって、ちょっと懐かしくなってこれでもかと壊したくなってしまったけど、理性を総動員してなんとか耐えた。
あんなに可愛い兄が見られるなら是非また来よう。

でも後日それを酒場で皆に言ったら『流石ぶっ壊れ野郎!そりゃデートって言わねぇぞ!』って大笑いされてしまった。
『しかもよりにもよって感度が上がるのに薬が切れるまで絶対気絶できない拷問にも使えるその媚薬を選んだのかよ?!』ってゲラゲラ笑われたけど、俺も大満足だったし兄もとっても悦んでいたのにな…。
薬が切れた後理性が崩壊したりもしないし、後遺症も全くないって説明も受けたし、あの媚薬は長く楽しめて最高に良かったと思うんだけど、何かダメだったんだろうか?

(でもそうか……)

二人で出掛ける=デートじゃなかったのかと勉強になった。
次は失敗しないよう、ちゃんとリヒターに相談してみようかなと思った。


***


兄と出掛けた翌日、セドリック王子達の見送りをした。
滞在していた他の面々も同じく帰るようなので順次見送る形だ。

「ロキ陛下。機会があればブルーグレイにも遊びに来るといい。歓迎するぞ」
「ありがとうございます。また手紙で近況を送らせて頂きますね」
「ああ。もし何か楽しい事を思いついたら何でも書いてくるといい」
「はい。ありがとうございます。ではまた。お気をつけて」

そうして非常に楽しんでくれたような顔でセドリック王子は満足げに帰っていった。
兄がそれを見てどこかホッとしたような顔をしていたので俺も嬉しくなる。
それから次々と笑顔で全員見送って、終わった頃にはやっと肩の荷が下りたような気持ちになった。

「兄上。お疲れさまでした」
「ああ。お前も」
「俺は全然疲れてないですよ。兄上の方が疲れたでしょう?仕事も俺の代わりに沢山こなしてくれてましたよね。本当にありがとうございます」

そう言いながらそっと抱き寄せてこれでもかと兄の温もりを堪能する。
賓客の見送りが全部終わったらなんだか公に結婚したんだとじわじわ実感できて、兄に抱き着きたくなったのだ。
昨夜の兄を思い出すと『大好き』が溢れて止まらなくなる。
けれどチュッチュッと沢山慈しむようにキスしていたら、物凄く申し訳なさそうな声が割り込んできた。

「その…ロキ陛下?レオナルド皇子がお話があるので別室でお待ちしていますとのことです」

どうやらまだ一人、帰っていない人物が残っていたらしい。
でも出来れば少しは空気を読んでもう暫くしてから声を掛けて欲しかった。

(それか見送りの前に言ってくれていればよかったのに…)

いいところを邪魔されてしまったこともあり、声を掛けてきた人物へつい不機嫌な眼差しを向けてしまう。
でも相手はミュゼだったので、パアッと顔を輝かせて熱い眼差しで俺を見つめ始め、もっとその目を向けてくれと言わんばかりにしっぽを振り始めた。
そんな姿に疑念を抱く。

(狙ってこのタイミングで言ってきたんじゃないだろうな?)

非常に疑わしいし、見ていて鬱陶しい。

「……リヒター。案内してくれるか?」
「はい。ミュゼ。場所は?」
「ええっ?!私がご案内しますよ?!」
「ミュゼ。俺はリヒターがいいんだ。わかったら場所を教えろ」
「…はい。第二賓客室です」
「わかった。では兄上。ちょっと行ってきますね」
「俺も行くぞ?」
「嬉しいですが、疲れてないですか?」
「大丈夫だ。ミュゼ、そういうわけだから、資料と書類の振り分けを補佐官全員でやっておいてくれ」
「…………かしこまりました。お早いお戻りを」

ミュゼは不満げだったが、仕事をしろと言って冷たく見つめ突き放してやると嬉しそうに下がっていった。
ミュゼのドMな思考回路は今いちよく分からない。
そして俺は溜息を吐くと、兄とリヒターと共にレオナルド皇子が待つ部屋へと足を向け歩き出した。




「ロキ陛下!」

部屋に入るとすぐにレオナルド皇子が待ってましたと言わんばかりに歓迎してくれる。

「セドリック王子の見送りは無事に終わったかな?」
「ええ」
「それは良かった。じゃあ本題だけど……」

そう言ってレオナルド皇子が提示してきたのは、年に4回ほどミラルカと騎士団の合同演習をしないかという事だった。

「このままヘタレな騎士団のままじゃ心配だし、やっぱり比較対象があるのとないのじゃ大違いかなと思って」

それは思ってもみない非常に有難い申し入れだった。
確かにあの騎士達にはそれくらい刺激が必要だろう。
ただ本当にいいのかと思ったので尋ねたら、ミラルカも国際会議の時に刺客を安易に城内へと入れてしまったので鍛え直している最中らしく、お互いに切磋琢磨したいし是非とのこと。

「ロキ陛下が守りたいものの為に大親友の俺が一肌脱ぐから!できればいっぱい頼ってほしい」
「ありがとうございます」

なんだか他国の人達はみんな親切だなと思いながら、兄の為にもなるならとその申し出を受け入れた。
またどこかでこのお礼はしっかりしておかないと…。

「因みにあれからアンシャンテは何か言ってきた?」
「え?ああ、そう言えば今朝手紙が届いていたような…」
「何?!聞いてないぞ、ロキ!」
「受け取ったのは兄上が着替えている時だったんですよ。俺もその時は眠かったんで後でいいかと思ってしまってまだ見てないんです。後で一緒に見ましょうか?」

多分今回の条件であちら側で理解が得られなかったものの報告と今後の予定などの擦り合わせだろう。
別に兄と読んでも問題はないはず。
そう思っていたらレオナルド皇子まで興味があるから支障がなさそうなら一緒に見たいなと言ってきた。
仕方がないのでリヒターに頼んで部屋まで取りに行ってもらい、その場で開封してみたのだが…。
その文面を確認後、問題ないと踏んで二人に見せたところ、「うわぁ……」とレオナルド皇子は絶句し、「ふざけるな!」と兄は激怒してしまった。
俺はというと単純に、『あの条件を全部通したんだ。本当にすごいな』ということと、親切な人だなと改めて思ったくらいだったんだけど……。

内容としては契約書の準備は全部整ったけど、ちょっと些事が発生したから一週間から十日ほどこちらに来るのが遅くなる。申し訳ないが待っていてほしいというもの。
その代わりと言ってはなんだが、周囲が頼りない騎士達ばかりでは心配だし、暗部を二人ほど王の・・護衛として送るので遠慮せず使ってほしいというものだった。
俺の護衛が元アンシャンテの暗部だったことも把握しているようで、いざという時の連携もとりやすいと思うとの一文が添えてあった。

「誠実で気配りが行き届いた方ですね」

率直に俺はそう思ったのだが、兄はそうは思わなかったらしく、そんな奴らは送り返せの一点張りだ。

「でも折角の好意ですよ?」

無碍にするのもどうかと思うと口にしたら、とっても可愛く嫉妬されてしまった。

「ロキは俺のだろう?!それにあいつはお前を攫った張本人だぞ?!危険すぎる!いつ手のひらを返して敵に回るかわかったもんじゃない!安易に喜ぶな!暗部なら俺のを使ったらいい!」
「兄上は本当に可愛いですね。兄上の暗部には兄上を死ぬ気で守れと言っておいてくれればそれでいいですよ?」

裏切る可能性があるのなら確かに危険だから兄の側には置けない。
でも他国の王からの好意からの申し出だし、断ると角が立つので今回は俺が預かると言った形になるのではないだろうか?
こういう事は初めてでよくわからないから後でリヒターとカーライルにも聞いてみよう。

何はともあれ兄に嫉妬されて嬉しいなと思いながらニコニコしていたら、レオナルド皇子がとっても複雑そうな顔で不可解な言葉を溢してきた。

「これは意外にも危なっかしいな。下手をすると本格的に争奪戦が始まりそうだ……」

「レオナルド皇子?」
「え?ああ!うん。なんでもない」
「そうですか?」
「ああ。とりあえずまだまだ大変そうだけど、事業の件でちょこちょこ顔は出すようにするから、絶対!カリン陛下の側から離れないように!」
「…?はい」

そんなに力一杯言われなくても結婚したし、仕事も一緒にやっているから早々離れたりしないと思うんだが?

「うん。思う存分イチャイチャして幸せを満喫しつつ、絶対に一人にはならない事!」

そうやって念を押すように強く言った後、レオナルド皇子はミラルカへと帰って行った。
これでやっと静かな日々が戻ってくる。

(長かったな……)

そんな事を思いながら俺はホッと息を吐き、また今日からいつもの日常が始まると気持ちを切り替えたのだった。


****************

※国際会議編はこれで一先ず一区切りです。
後は閑話でシャイナーサイドと裏稼業の者達サイドを入れようと思いますので、よろしければそちらもお付き合いください。
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