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【その後の話】

18.姫の護衛騎士は逃げ出したい。

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馬車の中で暫くは言葉遣いの特訓とやらをしていたのだが────。
気づけばのっぴきならない状況へと陥っていた。

「アル…ちっとも素直じゃないのはこの口か?」

そう言いながら王子は俺の口へと指を突っ込み、舌を絡ませろと命令してくる。
これ、護衛のやる事じゃないから!

「ふ…ぅうんっ……」

そう思って抵抗しようとするけど、またしてもガッチリ捕まってて動けない。
どうしてこの王子は俺を捕まえて行動を制限するのが得意なんだ?
これじゃあ逃げられないじゃないか!

「いい顔だなアルフレッド。その涙目がそそられる…」
「んぅー!へぅたひ(変態)ッ…!」

やっぱりとんでもない男だと泣きたくなる。
これまでの人生でこんな目にあったことなんてないから対処法がさっぱりわからなかった。
腐っても王子だから殴って気絶させるわけにもいかないし、脅してこちらの言い分を押し通すわけにもいかないし…。

「んっんっ…も、やめへくぇ……」
「やめて欲しいのか?じゃあ今夜舐めてくれるなら考えなくもないぞ?」
「ふぇ…?」
「今夜夜伽に付き合って俺のものを舐めろと言っている」

(なんだと~?!)

誰がそんなことするか!この変態王子!
俺は苦しかったがなんとか体勢を立て直して王子をギッと睨み上げた。

「またそんな可愛い顔で……より一層そそられるだけだぞ?」

そして王子は指を口から引き抜くとギュッと俺の腰を抱き寄せ深く深く口づけてくる。

「んふっ…はっ…あぁっ…」
「アル…。ここ最近避けられていたから今日という日をどれほど待ったか…」
「んっんぅぅ…ッ」
「ここも、こっちも、全部可愛がってやるからな」
「やっ…!」
「お前の嫌だは『気持ちいいからもっと触って』だろう?ふっ…」

(誰がだ?!笑うな!腹が立つッ!)

「ちょっ…服をはだけさせるなッ!」
「誰も見ていないのだからいいだろう?」
「いいわけあるか!ちょッ…ん、そこ、ダメだったら…ッ!」
「ん?触るより舐められる方が好きか?」

(誰もそんなこと言ってねーーーーー!!!)

そうやって散々馬車の中で悪戯をされていると、突然外から馬の嘶きが聞こえてきた。

「襲撃だ!!」

そんな護衛騎士達の声が聞こえてきて、俺は王子の手が緩んだのをこれ幸いにすぐさまはだけた胸元をたぐり寄せ剣を手に取り馬車から飛び出した。
ここは内の敵より外の敵だ。

「アルッ!待てっ!」

王子のどこか慌てた声が聞こえてくるが聞こえないふりだ!
何故なら俺は護衛だからな!




外に飛び出ると荒くれ者達が馬車を囲んでいて、護衛達と刃を交えていた。

「行け!馬車の中の側妃の身柄を確保しろ!」

(あーあ…)

俺を前にしてそんなことを言うってことは、きっとこの男達は側妃の情報を知らないんだろう。
どう考えても女と勘違いしていそうだ。
だが護衛達はそうじゃない。

「アルフレッド殿?!何をしている!馬車に戻れ!それは流石に(王子に護衛含めて全員)殺されるぞ?!」
「はぁ?護衛が外で戦って何か悪いか?」

そして剣を手に一足飛びに男達へと向かっていく。

「グハッ!」
「ぐぇっ…!」
「ほらほら、かかって来いよ!」

(何人かかってこようと余裕で倒せるぞ?)

そう思って剣を振るっていると、さっきまで悪戯されてた関係で乱れていた衣服が男によってグイッと引っ張られて胸元がはだけてしまった。
けど俺も男だからそんなものは関係ないとばかりにその男をすぐさまやっつける。
でも、急にその場に満ちた殺気に慌てて馬車の方を見遣ると、王子が物凄く怖い顔でこっちを見て低い声で威圧を放ってきた。

「誰だ…人の側妃に手を出したのは……。万死に値するぞ?」

「「「「「ひぃっ!!」」」」」

その場の誰もが悲鳴を上げる中で俺だけが心の中でツッコミを入れていた。

(元々着乱れさせたのはお前だろ?!)

そこからの制圧は物凄く速かった。
こんな殺気ダダ洩れの王子の前では戦意だって喪失するよな。

護衛達が男達を縛り上げていく中、俺も手伝おうと思ったのに王子に阻止されてできなかった。
何故か手早くささっと衣服を整えられて、チュッと口づけを落とされたんだが…?
一応自分がやらかした姿を人には見せたくないと思える程には常識を持ち合わせていたのかとちょっと安心した。

(ただの変態じゃなくてよかった、よかった)

うんうんと頷きながらそう考えていると、その場の片づけが終わったのでまた馬車へと戻る。

「アル…さっきみたいに襲撃があったら落ち着いて衣服を整えてから外へ出ろ」
「え?」
「お前の色っぽい姿は俺だけにしか見せるな」
「……お前が襲わなかったらいいだけの話じゃないのか?」
「クッ…本当に面白いな、アル。また素が出てるぞ?」
「あ…っ!」

しまったと思ったが、なんだかずっと傍に居ると調子が崩れるのだ。腹立つことばっかり言われるからかな?

「気にするな。お前は側妃なのだから、そのままのお前でいい」
「そういうわけには…」
「そういうわけには?」
「……じゃあ二人きりの時だけ、その言葉に甘えることにしようかな」

もうなんだか取り繕うのも段々面倒臭くなってきたし、王子がそうしろと言うならと開き直ることにした。

「アル…やっと素直になったな」
「これは素直になったと言うより、開き直ったって言うんだ」
「なんでもいい。お前と距離が近づいたようで嬉しいぞ」
「……えっと?この手は何かな?」
「もちろん、素直になったついでに宿に着くまでに一度愛でておこうと思ってな」
「な、な、な……っ?!」
「ほら、逃げるな」
「逃げる!俺は逃げるぞ!!」
「逃がすわけがないだろう?」
「は~な~せ~ッ!!」

そしてまたまた着乱れさせられながら好きなように悪戯されて、俺は涙目で叫んだ。

「絶対絶対、視察が終わったら逃げてやるーーーーーーー!!!!」────と。


****************

※次回皆様への御礼として視察帰りのお話をアップさせて頂きます。R‐18なのでお気を付けください。

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