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第二章 側妃問題はそっちのけでイチャつきたい!
20.もてなし
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「つまりディオと連日ツンナガールでお楽しみ、と」
ルイージ王子がゴッドハルトへやって来る日、待ち時間にディア王女が話を振ってきたから素直に答えたら呆れたように返された。
「ツンナガール越しでよくそこまで浮かれられますわね。物足りないでしょうに」
「そこを上手くするのが醍醐味なんじゃないか」
如何に言葉を互いに尽くして相手を高みに導くか、ある意味これは戦いだ。
ディオがエロ可愛くてすごく燃える。
「……ここにバカ夫婦がいますわ」
「何とでも言ってくれ」
勿論実際に抱く方がいいに決まってるけど、会えないんだから仕方がない。
その時、侍従から連絡が入った。
「ルイージ王子が到着なさいました」
「すぐ向かおう」
今日は公務で父と母がいないから出迎えにはセレナと一緒に俺も出る。
そのためディア王女をエスコートしながら出迎えに行くと、そこにはパーティーで見掛けた時と同じく凛とした雰囲気で立つルイージ王子の姿があった。
(確かロロイア国の今の国王はルイージ王子の母君が代理でしているんだったか?)
父親の不祥事でブルーグレイの属国のようになって早幾年。
ルイージ王子はディオと同じく、早く王位を継ぐべく頑張っている王太子のうちの一人だったはず。
そう言った意味でもセレナには彼の癒しになってやれればとは思うのだけど…。
「ルイージ王子!ようこそいらっしゃいました。お待ちしておりましたわ!」
「セレナ王女。この度はご招待ありがとうございます」
「どうぞごゆっくりして行ってくださいね」
「光栄です。ただ、ブルーグレイの方へもご挨拶に向かう予定ですので、あまりゆっくりはできなさそうなのです。申し訳ありませんがご了承ください」
なるほど。
確かにここまで来たらブルーグレイは近い。
海を渡ればすぐだ。
当然ルイージ王子からすれば挨拶をと思うだろう。
「そ、そうですか。残念ですが仕方ありませんわ。ええと…あ、兄をご紹介しますわね」
「ルイージ王子、パーティー以来ですね。ようこそ遠路はるばるゴッドハルトへ。急な招待にも関わらずご足労いただけて感謝しています。ブルーグレイへ旅立たれる日まで精一杯歓待させていただきますので、どうぞゆっくりとお過ごしください」
「ルーセウス王子、ご丁寧にありがとうございます。噂によるとご婚約なされたのだとか。今回はお祝いも兼ねて足を運ばせていただきました」
なるほど。
招待を受けてくれたのはそれもあってのことだったのかもしれない。
「それはありがとうございます。こちらが婚約者のディア王女です」
「ガヴァム王国王女ディア=リーベ=ヴァドラシアですわ。ルイージ王子にはご機嫌麗しく。これから国を導く者同士、どうぞよろしくお願い致します」
「ガヴァムの華ディア王女にお目にかかれて光栄です。パーティーではお話しできず残念に思っておりました」
「まあ私もですわ。ロロイアから手に入れた薬はどれも素晴らしいものばかりですもの。ご滞在中にお話しさせて頂けたら嬉しく思いますわ」
ディア王女がにこやかに微笑むとルイージ王子の頬がポッと赤く染まる。
「ルーセウス王子、このような場にいつまでもルイージ王子をお待たせしてはいけませんわ。お部屋にご案内して旅の疲れを癒していただいた後、後ほどゆっくり晩餐の席でお話ししては如何でしょう?」
「そ、そうだな。ではルイージ王子、晩餐の際に色々とお話しできれば嬉しく思います。お部屋へご案内させますので、どうぞゆるりとお寛ぎください」
「お気遣いありがとうございます。ではまた後程」
なんとか恙無く出迎えられて良かったと安堵したのも束の間。
セレナが何故かディア王女を睨みつけているのを目にしてしまった。
「セレナ?どうした?」
「ルーセウス!どうして注意しなかったの?!」
「何を?」
「何をって今目の前でディア王女がルイージ王子に色目を使っていたじゃない!」
色目?
ああ、あのルイージ王子が頬を染めていたやつのことか?
「ディア王女は単純に微笑んだだけだろう?」
話していた内容も特に問題はなかったように思う。
「でもルイージ王子は頬を染めていらっしゃったわ!」
「単純にお前より気品があって綺麗に見えたからじゃないか?うちとガヴァムだと王族としての歴史が違うし、しょうがない」
「酷い!ルーは女心に疎すぎるわ!この脳筋!」
「ルーセウス王子…悪意がないだけにグサグサ抉りにいきますわね。意外な一面にびっくりですわ」
「どうして揃って俺を攻撃するんだ?何か間違ったことでも言ったか?」
「いいえ。何も」
よくわからないがディア王女は笑顔だし、セレナも取り敢えず黙ったからヨシとしよう。
「セレナ。ディア王女に絡む暇があったらもてなしをしっかりやれよ?俺もちゃんとするつもりだけど、お前が招待したんだからな」
「わかってるわ!もうルーは黙ってて!」
本当にわかってくれていたらいいんだが…。
晩餐の席にはルイージ王子と俺とセレナ、ディア王女が同席した。
もてなせと俺が伝えていたからか、セレナはだいぶ頑張って話を振ってはいたものの、どちらかと言うと空回りしていてヒヤヒヤしてしまう。
(そうか。俺とディオは王太子同士だったから共通の話題があったけど、セレナはそう言うのがないんだな)
ロロイアのことでわかっていることと言えば薬関係に特化した国ということくらい。
それ以上の事をセレナは知らない。
だから趣味や食べ物の好みなどそちら方面に話を振るのだが、小難しい薬草の研究について話されても話についていけないし、わかったふりをしてフンフンと頷いても『セレナ王女はどう思われますか?』なんて聞かれれば言葉も詰まる。
食べ物の好みだって『ハーブを使った料理全般が好みです』『そうですか…』で終わりだった。
正直言ってこれは無理だろうと俺さえ思う。
話の持っていき方がさっぱりわからない。
そんな中、ディア王女が見兼ねたように救いの手を差し伸べてくれた。
「ルイージ王子。最近ロロイアでは薬効を濃縮する技術を使って、劇的に怪我の治療促進に繋がった薬ができたと聞きましたが、本当ですか?」
「ご存じなんですか?」
「ええ。それは手術等の縫合後にも使用できるでしょうか?」
「十分可能だと思います」
そこからはルイージ王子は明るい表情でディア王女と盛り上がり始めた。
どうやらディア王女は医療系に強いらしい。
薬草だけでなく毒草にも詳しかったし、最新のロロイア事情にも詳しかったから、全く飽きることなくルイージ王子は話せたようだ。
「ディア王女は本当に聡明な方ですね。もっと早くに知り合えていればルーセウス王子より先に婚約を打診できていたかもと思えて仕方ありません」
「嬉しいお言葉ありがとうございます。光栄ですわ」
確かにすごく盛り上がっていたし、言ってはなんだがセレナよりずっとお似合いにも見える。
すごく残念だが、ディア王女の方が気に入られたのは明らかだ。
それからルイージ王子が部屋へと戻った後、セレナは悔し涙を浮かべながらディア王女を睨みつけ、そのままバタバタと自室に帰っていった。
ちょっと居た堪れない。
「ディア王女。セレナがすまない」
「別に構いませんわ」
「それと、ルイージ王子と話が弾んでいたようだが…その、俺の婚約者のままでいいのか?」
ちょっと気になったから聞いてみると、ディア王女は予想外のことをあっけらかんと言い放ってくる。
「前にも言いましたけれど、私、初めての相手はテクニシャンがいいんです。あんな如何にもな童貞、お呼びじゃないですわ」
「…………そうか」
正直ちょっとルイージ王子が可哀想になった。
「あんなに楽しそうに話が盛り上がっていたのに…」
「あれくらい誰とだって盛り上がれますわ。私はそれだけ各国の情報を把握してますもの」
つまり話が合う云々よりテクニシャンであることの方が重要、と。
そっち方面に興味津々なところがすごくガヴァムの王女らしいと思う。
「ではルーセウス王子。また明日」
妖艶に微笑むディア王女は例えるなら蝶のようだ。
俺はそう思わないが、今日のルイージ王子を見て、彼女と結婚したいと思う男は多いんだろうなと普通に思う。
そんな彼女をただの隠れ蓑に使ってしまっている俺は、確かに刺客の一人や二人送られてきてもおかしくはない状況だなと妙に実感した夜だった。
ルイージ王子がゴッドハルトへやって来る日、待ち時間にディア王女が話を振ってきたから素直に答えたら呆れたように返された。
「ツンナガール越しでよくそこまで浮かれられますわね。物足りないでしょうに」
「そこを上手くするのが醍醐味なんじゃないか」
如何に言葉を互いに尽くして相手を高みに導くか、ある意味これは戦いだ。
ディオがエロ可愛くてすごく燃える。
「……ここにバカ夫婦がいますわ」
「何とでも言ってくれ」
勿論実際に抱く方がいいに決まってるけど、会えないんだから仕方がない。
その時、侍従から連絡が入った。
「ルイージ王子が到着なさいました」
「すぐ向かおう」
今日は公務で父と母がいないから出迎えにはセレナと一緒に俺も出る。
そのためディア王女をエスコートしながら出迎えに行くと、そこにはパーティーで見掛けた時と同じく凛とした雰囲気で立つルイージ王子の姿があった。
(確かロロイア国の今の国王はルイージ王子の母君が代理でしているんだったか?)
父親の不祥事でブルーグレイの属国のようになって早幾年。
ルイージ王子はディオと同じく、早く王位を継ぐべく頑張っている王太子のうちの一人だったはず。
そう言った意味でもセレナには彼の癒しになってやれればとは思うのだけど…。
「ルイージ王子!ようこそいらっしゃいました。お待ちしておりましたわ!」
「セレナ王女。この度はご招待ありがとうございます」
「どうぞごゆっくりして行ってくださいね」
「光栄です。ただ、ブルーグレイの方へもご挨拶に向かう予定ですので、あまりゆっくりはできなさそうなのです。申し訳ありませんがご了承ください」
なるほど。
確かにここまで来たらブルーグレイは近い。
海を渡ればすぐだ。
当然ルイージ王子からすれば挨拶をと思うだろう。
「そ、そうですか。残念ですが仕方ありませんわ。ええと…あ、兄をご紹介しますわね」
「ルイージ王子、パーティー以来ですね。ようこそ遠路はるばるゴッドハルトへ。急な招待にも関わらずご足労いただけて感謝しています。ブルーグレイへ旅立たれる日まで精一杯歓待させていただきますので、どうぞゆっくりとお過ごしください」
「ルーセウス王子、ご丁寧にありがとうございます。噂によるとご婚約なされたのだとか。今回はお祝いも兼ねて足を運ばせていただきました」
なるほど。
招待を受けてくれたのはそれもあってのことだったのかもしれない。
「それはありがとうございます。こちらが婚約者のディア王女です」
「ガヴァム王国王女ディア=リーベ=ヴァドラシアですわ。ルイージ王子にはご機嫌麗しく。これから国を導く者同士、どうぞよろしくお願い致します」
「ガヴァムの華ディア王女にお目にかかれて光栄です。パーティーではお話しできず残念に思っておりました」
「まあ私もですわ。ロロイアから手に入れた薬はどれも素晴らしいものばかりですもの。ご滞在中にお話しさせて頂けたら嬉しく思いますわ」
ディア王女がにこやかに微笑むとルイージ王子の頬がポッと赤く染まる。
「ルーセウス王子、このような場にいつまでもルイージ王子をお待たせしてはいけませんわ。お部屋にご案内して旅の疲れを癒していただいた後、後ほどゆっくり晩餐の席でお話ししては如何でしょう?」
「そ、そうだな。ではルイージ王子、晩餐の際に色々とお話しできれば嬉しく思います。お部屋へご案内させますので、どうぞゆるりとお寛ぎください」
「お気遣いありがとうございます。ではまた後程」
なんとか恙無く出迎えられて良かったと安堵したのも束の間。
セレナが何故かディア王女を睨みつけているのを目にしてしまった。
「セレナ?どうした?」
「ルーセウス!どうして注意しなかったの?!」
「何を?」
「何をって今目の前でディア王女がルイージ王子に色目を使っていたじゃない!」
色目?
ああ、あのルイージ王子が頬を染めていたやつのことか?
「ディア王女は単純に微笑んだだけだろう?」
話していた内容も特に問題はなかったように思う。
「でもルイージ王子は頬を染めていらっしゃったわ!」
「単純にお前より気品があって綺麗に見えたからじゃないか?うちとガヴァムだと王族としての歴史が違うし、しょうがない」
「酷い!ルーは女心に疎すぎるわ!この脳筋!」
「ルーセウス王子…悪意がないだけにグサグサ抉りにいきますわね。意外な一面にびっくりですわ」
「どうして揃って俺を攻撃するんだ?何か間違ったことでも言ったか?」
「いいえ。何も」
よくわからないがディア王女は笑顔だし、セレナも取り敢えず黙ったからヨシとしよう。
「セレナ。ディア王女に絡む暇があったらもてなしをしっかりやれよ?俺もちゃんとするつもりだけど、お前が招待したんだからな」
「わかってるわ!もうルーは黙ってて!」
本当にわかってくれていたらいいんだが…。
晩餐の席にはルイージ王子と俺とセレナ、ディア王女が同席した。
もてなせと俺が伝えていたからか、セレナはだいぶ頑張って話を振ってはいたものの、どちらかと言うと空回りしていてヒヤヒヤしてしまう。
(そうか。俺とディオは王太子同士だったから共通の話題があったけど、セレナはそう言うのがないんだな)
ロロイアのことでわかっていることと言えば薬関係に特化した国ということくらい。
それ以上の事をセレナは知らない。
だから趣味や食べ物の好みなどそちら方面に話を振るのだが、小難しい薬草の研究について話されても話についていけないし、わかったふりをしてフンフンと頷いても『セレナ王女はどう思われますか?』なんて聞かれれば言葉も詰まる。
食べ物の好みだって『ハーブを使った料理全般が好みです』『そうですか…』で終わりだった。
正直言ってこれは無理だろうと俺さえ思う。
話の持っていき方がさっぱりわからない。
そんな中、ディア王女が見兼ねたように救いの手を差し伸べてくれた。
「ルイージ王子。最近ロロイアでは薬効を濃縮する技術を使って、劇的に怪我の治療促進に繋がった薬ができたと聞きましたが、本当ですか?」
「ご存じなんですか?」
「ええ。それは手術等の縫合後にも使用できるでしょうか?」
「十分可能だと思います」
そこからはルイージ王子は明るい表情でディア王女と盛り上がり始めた。
どうやらディア王女は医療系に強いらしい。
薬草だけでなく毒草にも詳しかったし、最新のロロイア事情にも詳しかったから、全く飽きることなくルイージ王子は話せたようだ。
「ディア王女は本当に聡明な方ですね。もっと早くに知り合えていればルーセウス王子より先に婚約を打診できていたかもと思えて仕方ありません」
「嬉しいお言葉ありがとうございます。光栄ですわ」
確かにすごく盛り上がっていたし、言ってはなんだがセレナよりずっとお似合いにも見える。
すごく残念だが、ディア王女の方が気に入られたのは明らかだ。
それからルイージ王子が部屋へと戻った後、セレナは悔し涙を浮かべながらディア王女を睨みつけ、そのままバタバタと自室に帰っていった。
ちょっと居た堪れない。
「ディア王女。セレナがすまない」
「別に構いませんわ」
「それと、ルイージ王子と話が弾んでいたようだが…その、俺の婚約者のままでいいのか?」
ちょっと気になったから聞いてみると、ディア王女は予想外のことをあっけらかんと言い放ってくる。
「前にも言いましたけれど、私、初めての相手はテクニシャンがいいんです。あんな如何にもな童貞、お呼びじゃないですわ」
「…………そうか」
正直ちょっとルイージ王子が可哀想になった。
「あんなに楽しそうに話が盛り上がっていたのに…」
「あれくらい誰とだって盛り上がれますわ。私はそれだけ各国の情報を把握してますもの」
つまり話が合う云々よりテクニシャンであることの方が重要、と。
そっち方面に興味津々なところがすごくガヴァムの王女らしいと思う。
「ではルーセウス王子。また明日」
妖艶に微笑むディア王女は例えるなら蝶のようだ。
俺はそう思わないが、今日のルイージ王子を見て、彼女と結婚したいと思う男は多いんだろうなと普通に思う。
そんな彼女をただの隠れ蓑に使ってしまっている俺は、確かに刺客の一人や二人送られてきてもおかしくはない状況だなと妙に実感した夜だった。
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