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24.行方不明のレイ
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「……レイ?」
いつも通り家に帰ってきたのにいつもみたいに出迎えてくれるレイの姿がない。
今日は仕事で何かトラブルでもあったんだろうか?
そう思いながら家へと入り、手早く料理の支度にとりかかる。
きっと帰ってきたら疲れ切った顔で今日あったことを話してくれるだろう。
そう思いながらも何となくいつもと違うような…妙な胸騒ぎを覚えた。
気のせいだと思いたい。
でも…何故か気になる。
だから料理を作り終えて30分待ったところでギルドへと行ってみることにした。
ギルドで会えたらそれでいいし、何かトラブルがあったなら報告は入っているだろう。
そう思っての事だったのに────。
「え?レイさんですか?今日は特にトラブルもなく依頼を終えて結構前に帰られましたよ?」
「……え?」
正直その言葉に愕然としてしまう。
だってそうだろう?
いつもレイは仕事が終われば真っ直ぐに家に帰ってくるのだから。
一応いつ頃帰ったのか確認してみたけど、買い物をしてたとしてもとっくに帰っていておかしくはない時間帯だ。
(何か…あったのか?)
もしかしてレイの身に何かあったんだろうか?
事故?それとも事件に巻き込まれた?それとも……。
「もしかして…記憶が戻って…………?」
俺のことや家のことを忘れてしまったのだろうか?
なくはない。
それでもこんなに急にと愕然としてしまう。
「いや。まだそうと決まった訳じゃないし」
自分自身にそう言い聞かせ、では何があったのかを考えるけど、それにしても事件や事故に巻き込まれたとしか思えなかった。
レイからは特に親しい友人ができたとも聞いてはいないし、飲みに行く友達がいるわけでもない。
だからこそ心配ばかりが膨れ上がっていく。
(レイ……)
レイがいる日常が音を立てて崩れていくような錯覚に陥り、グッとこぶしを握り込む。
(探そう…)
そうだ。レイを探そう。
杞憂に終わったら笑い話にすればいい。
街の中、森の中を手あたり次第探して回ろう。
そう思い立ったら居ても立ってもいられなくなって、家からありったけのポーションをかき集め鞄に詰め、そのままレイを探しに出た。
「レイ!レイ!!」
キョロキョロあたりを見回しながら探すけど、段々と外は暗くなるばかりで一向にレイは見つからない。
冒険者達にもレイを見なかったかと聞いて回ってみたけど、皆今日は帰ったんじゃないのかって口にするばかりだった。
(そんなわけない…!)
だから俺はそのままダンジョン化した森へと入った。
当然魔物除けポーションを使用した上でだ。
俺は最低限の身を守る術しか持っていない。
魔物に狙われたら最後、あっという間に死んでしまうだろう。
だから普段、早朝は兎も角魔物の数が激増する夜にここに踏み入ったりはしない。
でもレイのためなら全然平気だった。
リスクを冒してでもレイを探したかった。
「レイー!どこだ、レイー!!居たら返事をしてくれ!レイー!」
魔物が沢山いる中でそんな大声で探す馬鹿がどこにいると誰もがきっと言うだろう。
でも声を出さずにはいられなかった。
魔物達がざわつくのを感じるが、嗅覚がマヒし視覚的にも俺の姿を捉えにくくしているため攻撃されることはほぼない。
とは言え声を出している人間が近くにいると言うことは伝わるから、彼らの殺気がどんどん膨らんでいくように感じられた。
超音波で甲高い鳴き声を発してきた魔物には辟易したが、状態異常に効くポーションを飲めばすぐに回復したのですぐさまその場から離脱して更に森の奥へと進んでいく。
「レイッ!レイーッ!」
今見つけられなければもう二度と会えないような気がして、焦りから足元が疎かになり、木の根に足を取られてその場に倒れこむ。
「レイ…どこに行ったんだよ……」
ザワザワと風に揺られる木々のざわめきが不安を煽ってしょうがない。
(もう…帰ってこないなんて言わないよな?)
当たり前になっていた存在の喪失が胸に痛い。
「はは……。レイとは寝てないのに…結局こうなるなんて…………」
いなくなってからどれだけレイとの時間を大事に思っていたのかを思い知らされる。
レイがいないだけで胸にぽっかりと穴が開いたような気持ちになってしまった。
「レイ…帰ってこいよ……」
こんなに急にいなくならないでくれと涙が止まらなくなってしまう。
記憶が戻って俺のことを忘れてしまうだけならまだ構わなかった。
でも…こんな風にいなくなられるなんて思ってもみなかったんだ。
「レイ…レイ……」
俺はなんとか立ち上がると、再度レイの姿を探して森を彷徨い始める。
けれど朝まで探して回ったにもかかわらず、レイは見つかることなくそのまま消息を絶ったのだった────。
いつも通り家に帰ってきたのにいつもみたいに出迎えてくれるレイの姿がない。
今日は仕事で何かトラブルでもあったんだろうか?
そう思いながら家へと入り、手早く料理の支度にとりかかる。
きっと帰ってきたら疲れ切った顔で今日あったことを話してくれるだろう。
そう思いながらも何となくいつもと違うような…妙な胸騒ぎを覚えた。
気のせいだと思いたい。
でも…何故か気になる。
だから料理を作り終えて30分待ったところでギルドへと行ってみることにした。
ギルドで会えたらそれでいいし、何かトラブルがあったなら報告は入っているだろう。
そう思っての事だったのに────。
「え?レイさんですか?今日は特にトラブルもなく依頼を終えて結構前に帰られましたよ?」
「……え?」
正直その言葉に愕然としてしまう。
だってそうだろう?
いつもレイは仕事が終われば真っ直ぐに家に帰ってくるのだから。
一応いつ頃帰ったのか確認してみたけど、買い物をしてたとしてもとっくに帰っていておかしくはない時間帯だ。
(何か…あったのか?)
もしかしてレイの身に何かあったんだろうか?
事故?それとも事件に巻き込まれた?それとも……。
「もしかして…記憶が戻って…………?」
俺のことや家のことを忘れてしまったのだろうか?
なくはない。
それでもこんなに急にと愕然としてしまう。
「いや。まだそうと決まった訳じゃないし」
自分自身にそう言い聞かせ、では何があったのかを考えるけど、それにしても事件や事故に巻き込まれたとしか思えなかった。
レイからは特に親しい友人ができたとも聞いてはいないし、飲みに行く友達がいるわけでもない。
だからこそ心配ばかりが膨れ上がっていく。
(レイ……)
レイがいる日常が音を立てて崩れていくような錯覚に陥り、グッとこぶしを握り込む。
(探そう…)
そうだ。レイを探そう。
杞憂に終わったら笑い話にすればいい。
街の中、森の中を手あたり次第探して回ろう。
そう思い立ったら居ても立ってもいられなくなって、家からありったけのポーションをかき集め鞄に詰め、そのままレイを探しに出た。
「レイ!レイ!!」
キョロキョロあたりを見回しながら探すけど、段々と外は暗くなるばかりで一向にレイは見つからない。
冒険者達にもレイを見なかったかと聞いて回ってみたけど、皆今日は帰ったんじゃないのかって口にするばかりだった。
(そんなわけない…!)
だから俺はそのままダンジョン化した森へと入った。
当然魔物除けポーションを使用した上でだ。
俺は最低限の身を守る術しか持っていない。
魔物に狙われたら最後、あっという間に死んでしまうだろう。
だから普段、早朝は兎も角魔物の数が激増する夜にここに踏み入ったりはしない。
でもレイのためなら全然平気だった。
リスクを冒してでもレイを探したかった。
「レイー!どこだ、レイー!!居たら返事をしてくれ!レイー!」
魔物が沢山いる中でそんな大声で探す馬鹿がどこにいると誰もがきっと言うだろう。
でも声を出さずにはいられなかった。
魔物達がざわつくのを感じるが、嗅覚がマヒし視覚的にも俺の姿を捉えにくくしているため攻撃されることはほぼない。
とは言え声を出している人間が近くにいると言うことは伝わるから、彼らの殺気がどんどん膨らんでいくように感じられた。
超音波で甲高い鳴き声を発してきた魔物には辟易したが、状態異常に効くポーションを飲めばすぐに回復したのですぐさまその場から離脱して更に森の奥へと進んでいく。
「レイッ!レイーッ!」
今見つけられなければもう二度と会えないような気がして、焦りから足元が疎かになり、木の根に足を取られてその場に倒れこむ。
「レイ…どこに行ったんだよ……」
ザワザワと風に揺られる木々のざわめきが不安を煽ってしょうがない。
(もう…帰ってこないなんて言わないよな?)
当たり前になっていた存在の喪失が胸に痛い。
「はは……。レイとは寝てないのに…結局こうなるなんて…………」
いなくなってからどれだけレイとの時間を大事に思っていたのかを思い知らされる。
レイがいないだけで胸にぽっかりと穴が開いたような気持ちになってしまった。
「レイ…帰ってこいよ……」
こんなに急にいなくならないでくれと涙が止まらなくなってしまう。
記憶が戻って俺のことを忘れてしまうだけならまだ構わなかった。
でも…こんな風にいなくなられるなんて思ってもみなかったんだ。
「レイ…レイ……」
俺はなんとか立ち上がると、再度レイの姿を探して森を彷徨い始める。
けれど朝まで探して回ったにもかかわらず、レイは見つかることなくそのまま消息を絶ったのだった────。
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