11 / 51
11.棚ぼた?
しおりを挟む
朝起きたら何故かいつものソファではなくベッドで寝ていて驚いた。
当然自分の後ろからはレイの温もりが伝わってくる。
しかも寝惚けているのかギュッと抱きしめられてしまった!
(えぇ~?!まさか俺、夜中に寝惚けたのか?!)
間違って寝惚け眼でベッドに潜り込んで寝てしまったのかもしれない。
そんなことをグルグル考えていると、背後から名前を呼ばれて思わずビクッと身体を震わせてしまう。
正直罪悪感でいっぱいだ。
こんな言い逃れできない状況で、俺は一体どうしたらいいんだろう?
でも恐る恐る呼び掛けた俺に、レイは極自然におはようと言ってくれた。
そんなレイに俺は益々申し訳なくなってしまう。
「ゴメン!もしかして俺、やらかした?!夜中に寝惚けてベッドに潜り込んだかも?!」
だから慌ててそう言って謝ったのに、今度はレイが慌てたようにそれを遮ってくる。
「え?いや、違うっ!違うから!」
「でも、俺ソファで寝たはずなのに…」
「う……その、ゴメン」
そしてレイが口にしたのは意外なことで……。
「その…夜中にトイレに行ったらジェイドが寝返りを打った拍子に落ちそうになってて…」
「うん」
「慌てて受け止めたら…その、ずっと抑えてた気持ちが暴走してしまって……」
「…うん?」
助けてくれたのはわかるとして……気持ちが暴走って?
「その……調子に乗ってキス…を……。ゴメン!!」
(キス?キスってあのキス?)
「……え?レイから?」
「え?うん」
「俺が誘ったんじゃなく?」
(あれ?これ、もしかして夢?俺まだ寝てる?)
「……え?」
でもレイの温もりはちゃんとあるし、そのレイの驚いた表情を見る限り、どうも本当っぽい。
これはもしかしてもしかしなくても棚ぼたというやつではないだろうか?
「なんだ。良かった~…。俺、レイの事いいなって思ってたからついうっかり寝惚けてやらかしたのかと…んっ」
良かったと心底安堵したところで、何故かレイに唇を優しく塞がれてしまう。
「ジェイド…本当に?嫌じゃないか?」
「んっ…別に嫌なんかじゃ……」
「それじゃあ…もっとさせて…?」
その極自然なキスにうっとりしてしまいそうになる。
どうしてレイとのキスは全然嫌じゃないんだろう?
助けた時はあんまり考えなかったけど、よく考えたらその後水を飲ませるのは別に口移しじゃなくてもよかったよな?
それでもそうして飲ませてしまったのは……俺がレイとキスしたかったからなのかな?
わからないけど……こうして唇を合わせるのも、積極的に舌を絡められるのも単純に気持ち良かった。
「レイ…キス上手いな」
だからそう言ったんだけど、それを聞いたレイはクスッと笑って「それ、夜寝惚けながらも言ってた」と言ってくる。
(恥ずかしすぎる!!────でも…ま、いっか)
このことは前向きに考えよう。
「あ、でも…」
そう、懸念点が一つあるからすぐにお付き合いという訳にはいかないんだよな。
「レイの記憶が戻るまで、ちゃんとした付き合いはやめとかないか?俺、忘れられたら嫌だし」
レイからキスをしたと言ってくれたから弱みに付け込んで~っていう心配はないだろうけど、いざ付き合い始めて、好きになってしまってから記憶が戻った途端忘れられて捨てられるのは多分結構ショックだと思うんだ。
今も好きだけどまだ引き返せる”好き”ではある。
これがそれこそどっぷり好きになってから別れるとかなったらちょっと辛い。
だから狡いかもしれないけど予防線だけは張っておきたかった。
そんな俺にレイも少し考えて、わかったと言ってくれる。
「でも……キスはしたいな」
そう言ってくれたから、じゃあ同居人以上恋人未満の関係でって言っておいた。
「うん。今はそれでもいい。でも……予約は入れておきたい。ジェイドが好きだから…」
そんな風に甘く耳元で囁いてくるレイはやっぱりかなり俺的に好きなタイプ。
だってちょっとは駆け引きとかやってみたいじゃないか!
聖女だって似たようなことやってるだろうって?
あれは全然違うから!
あれはどう考えても駆け引きじゃなくて嫌がらせだろう。
俺がやってみたいのはこう…なんて言うか、色っぽい恋愛的意味合いのやつなんだ。
「ん…じゃあ、記憶が戻ったらまたその時、考えさせて?」
「わかった」
ちょっと色っぽい表情で答えてきたその普段とのギャップもまた良くて、俺はご機嫌にチュッとレイにキスを落とすとサッとベッドから降りて悪戯っぽく笑った。
「じゃあ今夜はワインで乾杯でもしようか」
身体の関係は今はまだ持つ気はないけど、ちょっとだけ恋人っぽく演出しながらイチャイチャしよう。
それくらい楽しんだっていいはずだ。
普段のちょっと可愛いレイも、こうやって少し背伸びしたっぽいレイも全部好きだと思った。
***
【Side.レイモンド】
嘘みたいだ────。
やっぱり夢じゃないだろうか?
まさかジェイドが…こんな怪しい素性の俺を受け入れてくれるなんて思ってもみなかった。
正直、こんなに自分に都合のいい展開があっていいのかと信じられない気持ちでいっぱいだった。
更にジェイドが俺に求めたのが『同居人以上恋人未満の関係』だったというのもまた信じられなかった。
俺が記憶喪失だと嘘を吐いたせいだとは思うけど、ジェイドは狡い俺にそんな魅力的な提案をしてくれたのだ。
これは願ったり叶ったりの展開と言っても過言ではない。
好きだからキスはしたい。でも寝てしまったらきっと後戻りできない。
もっともっとと願って、いざ危険が迫った時にジェイドを逃がしてあげられなくなってしまう。
手放せなくなるほど大切になってしまったら困るのだ。
ただでさえ好きなのに、危険な目には合わせたくはない。
でも自分に繋ぎ止めておきたい。
抱き締めて思う存分キスをしたい。
勝手な言い分だなんて、ちゃんとわかってる。
我儘な狡い自分が嫌になる。
でも…ジェイドは怒りもせず、ただ受け入れてくれた。
そんなジェイドに益々嵌ってしまう。
大人なジェイドに釣り合う自分になりたい。
そう思って少しだけ背伸びして手慣れた風を装ってみたけど、きっとジェイドにはバレバレだったと思う。
でもそれでもいいんだ。
今だけでも夢を見ていたい。
好きな相手と幸せな時間を過ごす────そんな夢を…。
当然自分の後ろからはレイの温もりが伝わってくる。
しかも寝惚けているのかギュッと抱きしめられてしまった!
(えぇ~?!まさか俺、夜中に寝惚けたのか?!)
間違って寝惚け眼でベッドに潜り込んで寝てしまったのかもしれない。
そんなことをグルグル考えていると、背後から名前を呼ばれて思わずビクッと身体を震わせてしまう。
正直罪悪感でいっぱいだ。
こんな言い逃れできない状況で、俺は一体どうしたらいいんだろう?
でも恐る恐る呼び掛けた俺に、レイは極自然におはようと言ってくれた。
そんなレイに俺は益々申し訳なくなってしまう。
「ゴメン!もしかして俺、やらかした?!夜中に寝惚けてベッドに潜り込んだかも?!」
だから慌ててそう言って謝ったのに、今度はレイが慌てたようにそれを遮ってくる。
「え?いや、違うっ!違うから!」
「でも、俺ソファで寝たはずなのに…」
「う……その、ゴメン」
そしてレイが口にしたのは意外なことで……。
「その…夜中にトイレに行ったらジェイドが寝返りを打った拍子に落ちそうになってて…」
「うん」
「慌てて受け止めたら…その、ずっと抑えてた気持ちが暴走してしまって……」
「…うん?」
助けてくれたのはわかるとして……気持ちが暴走って?
「その……調子に乗ってキス…を……。ゴメン!!」
(キス?キスってあのキス?)
「……え?レイから?」
「え?うん」
「俺が誘ったんじゃなく?」
(あれ?これ、もしかして夢?俺まだ寝てる?)
「……え?」
でもレイの温もりはちゃんとあるし、そのレイの驚いた表情を見る限り、どうも本当っぽい。
これはもしかしてもしかしなくても棚ぼたというやつではないだろうか?
「なんだ。良かった~…。俺、レイの事いいなって思ってたからついうっかり寝惚けてやらかしたのかと…んっ」
良かったと心底安堵したところで、何故かレイに唇を優しく塞がれてしまう。
「ジェイド…本当に?嫌じゃないか?」
「んっ…別に嫌なんかじゃ……」
「それじゃあ…もっとさせて…?」
その極自然なキスにうっとりしてしまいそうになる。
どうしてレイとのキスは全然嫌じゃないんだろう?
助けた時はあんまり考えなかったけど、よく考えたらその後水を飲ませるのは別に口移しじゃなくてもよかったよな?
それでもそうして飲ませてしまったのは……俺がレイとキスしたかったからなのかな?
わからないけど……こうして唇を合わせるのも、積極的に舌を絡められるのも単純に気持ち良かった。
「レイ…キス上手いな」
だからそう言ったんだけど、それを聞いたレイはクスッと笑って「それ、夜寝惚けながらも言ってた」と言ってくる。
(恥ずかしすぎる!!────でも…ま、いっか)
このことは前向きに考えよう。
「あ、でも…」
そう、懸念点が一つあるからすぐにお付き合いという訳にはいかないんだよな。
「レイの記憶が戻るまで、ちゃんとした付き合いはやめとかないか?俺、忘れられたら嫌だし」
レイからキスをしたと言ってくれたから弱みに付け込んで~っていう心配はないだろうけど、いざ付き合い始めて、好きになってしまってから記憶が戻った途端忘れられて捨てられるのは多分結構ショックだと思うんだ。
今も好きだけどまだ引き返せる”好き”ではある。
これがそれこそどっぷり好きになってから別れるとかなったらちょっと辛い。
だから狡いかもしれないけど予防線だけは張っておきたかった。
そんな俺にレイも少し考えて、わかったと言ってくれる。
「でも……キスはしたいな」
そう言ってくれたから、じゃあ同居人以上恋人未満の関係でって言っておいた。
「うん。今はそれでもいい。でも……予約は入れておきたい。ジェイドが好きだから…」
そんな風に甘く耳元で囁いてくるレイはやっぱりかなり俺的に好きなタイプ。
だってちょっとは駆け引きとかやってみたいじゃないか!
聖女だって似たようなことやってるだろうって?
あれは全然違うから!
あれはどう考えても駆け引きじゃなくて嫌がらせだろう。
俺がやってみたいのはこう…なんて言うか、色っぽい恋愛的意味合いのやつなんだ。
「ん…じゃあ、記憶が戻ったらまたその時、考えさせて?」
「わかった」
ちょっと色っぽい表情で答えてきたその普段とのギャップもまた良くて、俺はご機嫌にチュッとレイにキスを落とすとサッとベッドから降りて悪戯っぽく笑った。
「じゃあ今夜はワインで乾杯でもしようか」
身体の関係は今はまだ持つ気はないけど、ちょっとだけ恋人っぽく演出しながらイチャイチャしよう。
それくらい楽しんだっていいはずだ。
普段のちょっと可愛いレイも、こうやって少し背伸びしたっぽいレイも全部好きだと思った。
***
【Side.レイモンド】
嘘みたいだ────。
やっぱり夢じゃないだろうか?
まさかジェイドが…こんな怪しい素性の俺を受け入れてくれるなんて思ってもみなかった。
正直、こんなに自分に都合のいい展開があっていいのかと信じられない気持ちでいっぱいだった。
更にジェイドが俺に求めたのが『同居人以上恋人未満の関係』だったというのもまた信じられなかった。
俺が記憶喪失だと嘘を吐いたせいだとは思うけど、ジェイドは狡い俺にそんな魅力的な提案をしてくれたのだ。
これは願ったり叶ったりの展開と言っても過言ではない。
好きだからキスはしたい。でも寝てしまったらきっと後戻りできない。
もっともっとと願って、いざ危険が迫った時にジェイドを逃がしてあげられなくなってしまう。
手放せなくなるほど大切になってしまったら困るのだ。
ただでさえ好きなのに、危険な目には合わせたくはない。
でも自分に繋ぎ止めておきたい。
抱き締めて思う存分キスをしたい。
勝手な言い分だなんて、ちゃんとわかってる。
我儘な狡い自分が嫌になる。
でも…ジェイドは怒りもせず、ただ受け入れてくれた。
そんなジェイドに益々嵌ってしまう。
大人なジェイドに釣り合う自分になりたい。
そう思って少しだけ背伸びして手慣れた風を装ってみたけど、きっとジェイドにはバレバレだったと思う。
でもそれでもいいんだ。
今だけでも夢を見ていたい。
好きな相手と幸せな時間を過ごす────そんな夢を…。
21
お気に入りに追加
1,689
あなたにおすすめの小説
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
運命を変えるために良い子を目指したら、ハイスペ従者に溺愛されました
十夜 篁
BL
初めて会った家族や使用人に『バケモノ』として扱われ、傷ついたユーリ(5歳)は、階段から落ちたことがきっかけで神様に出会った。
そして、神様から教えてもらった未来はとんでもないものだった…。
「えぇ!僕、16歳で死んじゃうの!?
しかも、死ぬまでずっと1人ぼっちだなんて…」
ユーリは神様からもらったチートスキルを活かして未来を変えることを決意!
「いい子になってみんなに愛してもらえるように頑張ります!」
まずユーリは、1番近くにいてくれる従者のアルバートと仲良くなろうとするが…?
「ユーリ様を害する者は、すべて私が排除しましょう」
「うぇ!?は、排除はしなくていいよ!!」
健気に頑張るご主人様に、ハイスペ従者の溺愛が急成長中!?
そんなユーリの周りにはいつの間にか人が集まり…。
《これは、1人ぼっちになった少年が、温かい居場所を見つけ、運命を変えるまでの物語》
自己評価下の下のオレは、血筋がチートだった!?
トール
BL
一般家庭に生まれ、ごく普通の人生を歩んで16年。凡庸な容姿に特出した才もない平凡な少年ディークは、その容姿に負けない平凡な毎日を送っている。と思っていたのに、周りから見れば全然平凡じゃなかった!?
実はこの世界の創造主(神王)を母に持ち、騎士団の師団長(鬼神)を父に持つ尊い血筋!? 両親の素性を知らされていない世間知らずな少年が巻き起こすドタバタBLコメディー。
※「異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ」の主人公の息子の話になります。
こちらを読んでいなくても楽しめるように作っておりますが、親の話に興味がある方はぜひズボラライフも読んでいただければ、より楽しめる作品です。
転生したら乙女ゲームの攻略対象者!?攻略されるのが嫌なので女装をしたら、ヒロインそっちのけで口説かれてるんですけど…
リンゴリラ
BL
病弱だった男子高校生。
乙女ゲームあと一歩でクリアというところで寿命が尽きた。
(あぁ、死ぬんだ、自分。……せめて…ハッピーエンドを迎えたかった…)
次に目を開けたとき、そこにあるのは自分のではない体があり…
前世やっていた乙女ゲームの攻略対象者、『ジュン・テイジャー』に転生していた…
そうして…攻略対象者=女の子口説く側という、前世入院ばかりしていた自分があの甘い言葉を吐けるわけもなく。
それならば、ただのモブになるために!!この顔面を隠すために女装をしちゃいましょう。
じゃあ、ヒロインは王子や暗殺者やらまぁ他の攻略対象者にお任せしちゃいましょう。
ん…?いや待って!!ヒロインは自分じゃないからね!?
※ただいま修正につき、全てを非公開にしてから1話ずつ投稿をしております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる