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33.母から聞いた名前
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俺は知らなかったが、いつの間にやらダミアンと御堂は付き合い始めていたらしい。
それはまあいいんだ。
問題は────。
「あ、副会ちょ…、有馬先輩!」
最近やけにそうやって俺に声を掛けてくるところ。
「伊集院先輩に休み時間に会いに行ったりしないんですか?」
「しないな」
「え~?勿体ないですよ!折角好かれてるのに!行きましょう!一人で行きにくいなら僕、付き添いますから!」
「いらん」
自分達がラブラブだからってこっちまで巻き込もうとするなと言ってやりたい。
俺は別に伊集院と付き合ってるわけじゃないんだから、わざわざ休み時間にまで会いに行く必要なんてないんだ。
「生徒会も部活もなかったら接点がないじゃないですか。来月はもうクリスマスですよ?それまでにくっついて、ダブルデートがしたいです!」
「二人だけで行ってこい。興味ない」
「うっ…酷い。折角応援してるのに…グスッ…」
「いちいち泣くな!御堂!もう連れてくるな!」
「でもその…ダミアンも二人を本気で応援してるみたいなので…」
「大きなお世話だ!」
こんなやり取りが頻繁にあるからここ最近はストレスだった。
でも伊集院の方にも実は突撃しているらしい。
やんわり迷惑だとは伝えているらしいが、そっちも全く聞いてもらえないのだとか。
「もうすっかり俺と知臣はラブラブなのにな」
「やめろ。くっつくな。それに別にラブラブじゃない」
「知臣はわかってないな。俺がラブラブだと思ったらラブラブなんだ」
「そうか。良かったな」
放課後はいつもこんな感じだから、接点はありまくりだ。
ちなみに寮の中では部屋が近い奴は大体俺と伊集院が行き来してるのは知ってると思う。
でも多分友達的な行き来っぽく思われてるようだ。
『有馬。伊集院にキスの一つでも許してやれよ』と笑いながら揶揄われたこともあるし、西条みたいに『お試しで付き合ってやればいいのに』と言ってくる奴もいるから。
本当、皆暇人ばかりだ。
放っといてくれたらいいのに。
そんな日常が当たり前のある日のこと。
母さんが腰を痛めたと聞いて土日を使って一度実家へと戻った。
会うのは随分久しぶりだ。
久しぶりに会う母はなんだかちょっと小さく感じて、もうちょっと帰ってくればよかったなと後悔した。
幸い腰の方はぎっくり腰とまではいかなかったらしく、トイレやお風呂はなんとかなるといった感じだったから、少しだけマッサージをしてほぐしてあげた。
「知臣ももうすぐ大学生ね。あんなに小さかった知臣がもう大学生だなんて、本当に年を感じるわ」
「何言ってんだ。まだ若いくせに」
俺はそう言って書棚に目をやり、マッサージを終えた後で適当にアルバムを開いた。
「ほら、全然変わってないじゃないか」
「あら、懐かしいわね。これアメリカに住んでた頃の写真よ。ほら、ここ。仲の良かった誉ちゃん。今どうしてるのかしらね?」
「……え?」
「覚えてない?貴方毎日誉ちゃんのことばっかり話してたじゃない。『今日もハマーがね、こんなこと言って笑わせてきたんだよ』とか言って。ふふっ。将来結婚するんだーって言って。可愛かったわ~」
(誉…ちゃん?)
「…………母さん、ハマーのフルネームって覚えてるか?」
「もちろん覚えてるわよ?お迎えの時あちらのお母さんとも仲良くしてたから」
「何て名前?」
「伊集院くんよ。伊集院 誉くん」
俺はそれを聞いて一気に脱力した。
(言えよ…!!)
いや。気づいてない可能性もあるのか?
でもそう言えば俺があの時話してたらなんでか固まってたな?
もしかしてあの時、気づいて固まったのか?
(は、恥ずかしい……)
本人に向かって初恋話をするって、どうなんだ俺?!
しかも俺が好きって言ってきてる奴に、初恋だったけど今再会したら普通に友達になるとか言い放ってなかったか?
(無理だ。言えるわけないな…)
物凄く伊集院に申し訳なくて、合わせる顔がない。
「取り敢えず、メールで謝っとくか」
変に避けるよりかは多分その方がマシだろうと思って、俺は正直にメールを打った。
***
【Side.伊集院 誉】
有馬が実家に帰った。
母親が腰を痛めてしまったらしい。
心配だから様子を見に行ってくると言っていたし、この土日は音沙汰はないだろうなと思っていたのに、何故か有馬からメールが入った。
(なんだろう?)
そう思ってメールを開いて、俺はすぐに出かける準備をした。
行き先は有馬の実家だ。
『誉…ゴメン。俺お前のこと傷つけてたよな?さっき母さんからハマーがお前だったって聞いて正直合わせる顔がない。ちょっと暫く顔を合わせられないかもしれないけど、気にしないで欲しい。会ったらちゃんと直接謝るから、今はこれで許してくれ』
そんなもの見せられたら迎えに行かないはずがない。
これで距離を置かれたらたまったものじゃないからだ。
(折角両想いになったのに、誰が手放すか…!)
取り敢えず返信だけはしておいたけど、わかってくれるだろうか?
それだけが心配だった。
それはまあいいんだ。
問題は────。
「あ、副会ちょ…、有馬先輩!」
最近やけにそうやって俺に声を掛けてくるところ。
「伊集院先輩に休み時間に会いに行ったりしないんですか?」
「しないな」
「え~?勿体ないですよ!折角好かれてるのに!行きましょう!一人で行きにくいなら僕、付き添いますから!」
「いらん」
自分達がラブラブだからってこっちまで巻き込もうとするなと言ってやりたい。
俺は別に伊集院と付き合ってるわけじゃないんだから、わざわざ休み時間にまで会いに行く必要なんてないんだ。
「生徒会も部活もなかったら接点がないじゃないですか。来月はもうクリスマスですよ?それまでにくっついて、ダブルデートがしたいです!」
「二人だけで行ってこい。興味ない」
「うっ…酷い。折角応援してるのに…グスッ…」
「いちいち泣くな!御堂!もう連れてくるな!」
「でもその…ダミアンも二人を本気で応援してるみたいなので…」
「大きなお世話だ!」
こんなやり取りが頻繁にあるからここ最近はストレスだった。
でも伊集院の方にも実は突撃しているらしい。
やんわり迷惑だとは伝えているらしいが、そっちも全く聞いてもらえないのだとか。
「もうすっかり俺と知臣はラブラブなのにな」
「やめろ。くっつくな。それに別にラブラブじゃない」
「知臣はわかってないな。俺がラブラブだと思ったらラブラブなんだ」
「そうか。良かったな」
放課後はいつもこんな感じだから、接点はありまくりだ。
ちなみに寮の中では部屋が近い奴は大体俺と伊集院が行き来してるのは知ってると思う。
でも多分友達的な行き来っぽく思われてるようだ。
『有馬。伊集院にキスの一つでも許してやれよ』と笑いながら揶揄われたこともあるし、西条みたいに『お試しで付き合ってやればいいのに』と言ってくる奴もいるから。
本当、皆暇人ばかりだ。
放っといてくれたらいいのに。
そんな日常が当たり前のある日のこと。
母さんが腰を痛めたと聞いて土日を使って一度実家へと戻った。
会うのは随分久しぶりだ。
久しぶりに会う母はなんだかちょっと小さく感じて、もうちょっと帰ってくればよかったなと後悔した。
幸い腰の方はぎっくり腰とまではいかなかったらしく、トイレやお風呂はなんとかなるといった感じだったから、少しだけマッサージをしてほぐしてあげた。
「知臣ももうすぐ大学生ね。あんなに小さかった知臣がもう大学生だなんて、本当に年を感じるわ」
「何言ってんだ。まだ若いくせに」
俺はそう言って書棚に目をやり、マッサージを終えた後で適当にアルバムを開いた。
「ほら、全然変わってないじゃないか」
「あら、懐かしいわね。これアメリカに住んでた頃の写真よ。ほら、ここ。仲の良かった誉ちゃん。今どうしてるのかしらね?」
「……え?」
「覚えてない?貴方毎日誉ちゃんのことばっかり話してたじゃない。『今日もハマーがね、こんなこと言って笑わせてきたんだよ』とか言って。ふふっ。将来結婚するんだーって言って。可愛かったわ~」
(誉…ちゃん?)
「…………母さん、ハマーのフルネームって覚えてるか?」
「もちろん覚えてるわよ?お迎えの時あちらのお母さんとも仲良くしてたから」
「何て名前?」
「伊集院くんよ。伊集院 誉くん」
俺はそれを聞いて一気に脱力した。
(言えよ…!!)
いや。気づいてない可能性もあるのか?
でもそう言えば俺があの時話してたらなんでか固まってたな?
もしかしてあの時、気づいて固まったのか?
(は、恥ずかしい……)
本人に向かって初恋話をするって、どうなんだ俺?!
しかも俺が好きって言ってきてる奴に、初恋だったけど今再会したら普通に友達になるとか言い放ってなかったか?
(無理だ。言えるわけないな…)
物凄く伊集院に申し訳なくて、合わせる顔がない。
「取り敢えず、メールで謝っとくか」
変に避けるよりかは多分その方がマシだろうと思って、俺は正直にメールを打った。
***
【Side.伊集院 誉】
有馬が実家に帰った。
母親が腰を痛めてしまったらしい。
心配だから様子を見に行ってくると言っていたし、この土日は音沙汰はないだろうなと思っていたのに、何故か有馬からメールが入った。
(なんだろう?)
そう思ってメールを開いて、俺はすぐに出かける準備をした。
行き先は有馬の実家だ。
『誉…ゴメン。俺お前のこと傷つけてたよな?さっき母さんからハマーがお前だったって聞いて正直合わせる顔がない。ちょっと暫く顔を合わせられないかもしれないけど、気にしないで欲しい。会ったらちゃんと直接謝るから、今はこれで許してくれ』
そんなもの見せられたら迎えに行かないはずがない。
これで距離を置かれたらたまったものじゃないからだ。
(折角両想いになったのに、誰が手放すか…!)
取り敢えず返信だけはしておいたけど、わかってくれるだろうか?
それだけが心配だった。
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